長期間のキャンピングカー生活をしていると、道の駅などのフリーWi-Fiもなければ、持ち歩いているポケットWi-Fiも入らない場所に泊まることもあります。キャンピングカーのエンジンも止めているので、クルマのテレビやラジオも使えません。それでも最新の情報が見たい、聞きたいという夜もあるでしょう。そんなときのために、ケンコーのポータブル ワンセグTV/AM・FMラジオ「KR-006AWFT」を導入しました。その結果を報告します。
執筆者のプロフィール
齋藤千歳(さいとう・ちとせ)
元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在は、昨年8月に生まれた息子と妻の3人、キャンピングカー生活にハマっており、約1カ月かけて北海道を一周するなどしている。
Wi-Fiがないと情報が遮断される
スマホとパソコンで十分と考えていた
キャンピングカーなどで旅をしていると、クルマが走っている(エンジンが掛かっている)ときは、クルマのラジオなどで常に最新のニュースなどをチェックすることができます。また、キャンピングカー泊や車中泊の際は、道の駅やRVパークなどであれば、フリーWi-Fiが用意されていることがほとんどです。そのため、クルマのエンジンを切って、お泊まりモードの入っても、インターネットで最新のニュースや動画、音楽などを楽しむことができます。
つまり、スマホやパソコンがあれば、各種情報のチェックは問題ないと考えていたわけです。
インターネットのない吹雪の夜
スマホも、タブレットも、パソコンも、PS4も、Fire TV Stickも、インターネット接続がないと最新情報はチェックできません。とはいえ、基本的に宿泊場所は道の駅かRVパークなので、ネットがつながらないという事態は想定していませんでした。そんな状況なら最悪移動すればいいですし、どうしてもの場合はスマホのパケット通信でしのげばいいわけです。
しかし、そんな状況は、あまりうれしくない状況でやってきました。
近くに車中泊可能な道の駅やRVパークもなく、24時間利用可能なトイレのある駐車スペースに逃げ込んだ夜に、残念ながら吹雪き始めたのです。
最新情報を確認し続けるすべがない
吹雪の状況を確認したいので、ラジオやテレビのような、リアルタイムで最新情報を確認できるものを付けたままにしておきたいのです。しかし、スマホのパケット通信がなんとか使えるくらいの状況。さすがに従量制のパケットで「radiko(インターネット経由でラジオをほぼリアルタイムで聞けるサービス)」を一晩中流し続けるのは、ちょっと現実的ではありません。
「なんでラジオの1台くらい、積んでこなかった?」と深く後悔しました。
ネット接続のいらないラジオを買おう
アナログ放送のノイズが苦手
筆者は、もうここ何年も、電波を受信してラジオを聞くのはクルマの中だけ。しかも、カーステレオのもののみです。それ以外は、インターネット経由の「radiko」で聞いています。アナログ放送のノイズは、エンジン音と混ざった状態なら我慢できるのですが、静かな環境では耐えられず、すぐに「radiko」に切り替えてしまいます。
ワンセグにも対応したポータブルラジオを検討
非常時には、多少ノイズが多くても、AM・FMラジオを受信できることは重要です。しかし、普段使うことも考えると、ノイズの少ないデジタル放送が受信できる、ワンセグに対応したポータブルテレビ・ラジオがよいのではと思いました。
そこで、「ポータブル ラジオ テレビ」で検索したのですが、見知ったメーカーの製品はほぼなく、どうしようか悩んでいました。そんなときに発見したのが、ケンコー(Kenko)のポータブル ワンセグTV/AM・FMラジオ 「KR-006AWFT」です。テレビ画面のサイズは3インチと小さいですが、本体サイズは約132×87×20mmとジーンズの尻ポケットに入るほどコンパクト。質量もわずかに約108g(乾電池含まず)と、持ち歩きにも便利です。しかも、フォトグラファーライターである筆者にとって、ケンコーはレンズフィルターの製造・販売の国内最大手で、なじみ深いメーカーといえます。アフターサービスなどのことも考えて、なじみのあるケンコーの「KR-006AWFT」を選択しました。
3インチ(400×240)の大画面でワンセグTVを視聴可能
テレビは最長連続12時間、ラジオは19時間視聴可能(イヤホン使用時)
受信周波数:FM:76.0MHz~108MHz(0.1MHzステップ)、AM:522kHz~1701kHz(9kHzステップ)
受信チャンネル(TV):ワンセグUHF13ch~62ch
ボタン操作で直感的に操作可能
電源:ACアダプター・単3形乾電池を使用可能
「KR-006AWFT」が到着
思ったより付属品が多い
キャンピングカー生活や車中泊の際、Wi-Fiのない環境でもリアルタイムの情報を入手するために購入した、ポータブル ワンセグTV/AM・FMラジオ 「KR-006AWFT」。当然、宅配でやってきました。まず、驚いたのはブリスターパックでの包装だったこと。
また、開封してみると、本体と取扱説明書のほかに、USBケーブル、ACアダプター、そしてイヤホンまで付属していました。個人的には、イヤホンは自分のを使うので、なくてもいいかと思うのですが……。
乾電池にもUSBにも対応
「KR-006AWFT」を導入することを決めた大きな理由のひとつが、乾電池とUSBの両方に対応する電源供給方法です。単3形アルカリ乾電池3本で、イヤホンを使うとラジオモードで約19時間、テレビモードで約12時間、内蔵スピーカーを使うとラジオモードで約16時間、テレビモードで約10時間使用できます。コンビニなど、どこででも入手しやすい単3形乾電池で、かなり長時間使用できるのは、非常時にも便利です。また、筆者は充電式の単3形ニッケル水素乾電池を入れてみましたが、こちらでも駆動しました。
単3形乾電池だけでなく、USBケーブルからの電源入力にも対応しているのが、車中泊やキャンピングカー生活、非常時にもとても魅力的です。家庭用AC電源からの電気を供給するためのACアダプターは付属していますし、USBコネクタへの電源供給なら、クルマのシガーソケットやポータブル電源、モバイルバッテリーなどからも簡単に行えます。単3形乾電池が入手できないような状態でも、さまざまな選択肢があり、汎用性が高いのが魅力です。
ただし、注意してほしいのが、「KR-006AWFT」本体側のUSBコネクタの形状がUSB Mini Bであること。現在、Androidスマホなどで一般的なUSB Micro Bとは形状が異なり、同じケーブルは使えないことを覚えておきましょう。
いずれしても、USBからの電源供給と単3形乾電池に対応していると、電源の選択肢が豊富で扱いやすいといえます。
ぜいたくをいうなら、ニッケル水素充電池を入れて、USBから給電すると充電も可能だと、さらに便利でしょう。ただし、これには対応していません。
実際の使い勝手、画質・音は?
ラジオモードは非常時に十分役目を果たしてくれるレベル
前述したように、筆者は普段からラジオは基本的にインターネット経由の「radiko」で聞くのが習慣になっており、アナログ放送のノイズが嫌いです。そのため、インターネット環境のある場所では「radiko」でラジオを聞いています。
この前提で聞いてほしいのですが、いくつか宿泊した道の駅などでも、それなりの音質で「KR-006AWFT」はラジオを受信してくれました。ただし、小型のポータブル受信機を、窓際とはいえキャンピングカーの室内で受信しているので、インターネット環境のある場所で、わざわざアナログ波を受信してラジオを聞きたいと思うレベルではありませんでした。ネット環境があるならノートパソコンで「radiko」を聞く方が高音質です。
ただし、筆者は胆振東部地震直後の停電を経験しています。非常時には、「ラジオが受信できる」だけで心強いのです。その点において、「KR-006AWFT」は十分な役目を果たしてくれることが確認できました。
テレビモードは期待以上で大満足
「KR-006AWFT」の液晶モニターのサイズは、わずか3インチです。実測で約65×40mm程度しかありません。しかも、解像力は400×240ドット。ちょっと大きめのデジタルカメラの背面モニター程度です。「こんなのでいいの?」という意見もあるでしょう。しかし、筆者は十分だと考えています。
実は、ワンセグの画質は320×240ドットで、毎秒15フレームしかありません。もともとワンセグ自体が、大画面・高画質な映像を楽しむための仕組みではないわけです。ただし、リアルタイムの情報をデジタルで受信するには、非常に便利なシステムといえます。
ワンセグはデジタル放送なので、受信してしまえば、音声のノイズなどはほとんど感じられません。長時間がつけっぱなしにしても、不快な印象がないのです。テレビをつけっぱなしにして、台風や吹雪などの気象情報のチェックにも向いています。ただし、内臓スピーカーはモノラルなので、気になる場合はイヤホンジャックから外部スピーカーをつなぐのもありでしょう。
気になる点は、「どの程度受信するか?」でしょう。これについては、一概にはいえません。当然場所にもよりますが、しっかりとアンテナを伸ばした状態で、キャンピングカーの窓際であれば、だいたい受信したという印象です。アンテナの角度や本体の位置を変えるだけで受信することもあるので、試してみてください。
ワンセグなどの「放送エリアのめやす」は「A-PAB(一般社団法人放送サービス高度化推進協会)」からチェックできるので参考にしてください。とはいえ、人口密度の高い地域を基本にカバーしているようです。人口密度の低い自然豊かな地域では、受信できないこともあります。
まとめ
買うならテレビ付きがおすすめ
ワンセグやラジオ機能を搭載したスマホは、徐々に少数派になっているといいます。iPhone派でなくても、Wi-Fiなどのインターネット環境がないと、スマホで最新の情報を手に入れるのが難しいようです。筆者は最初、ポケットラジオを購入しようと思いましたが、それだとネット環境のないとき専用になります。
それなら、普段は見ない地上波放送が受信できるワンセグ付きにしようと考えたわけです。期待以上の結果に満足しています。「動画はネットで」がすっかり習慣化していたので、インターネット環境なしでデジタル受信できるワンセグは、筆者にとって逆に新鮮でした。ラジオだけでは非常時専用になってしまいますが、ワンセグ付きなら、普段の車中泊やキャンピングカー生活でも活用できるのでおすすめです。また、災害時などにも、音声だけより情報量が多く、重宝するでしょう。