中古のキャンピングカーを購入して約9カ月の筆者。我が家のキャンピングカーは持ち主の都合に関係なく、トラブルを次々と発生してくれます。今回は「低速走行時の異音」。またもやディーラーでの大手術かと思いましたが、原因は意外なところに。その結果、筆者は「いつかは買わないと……」と思っていた「トルクレンチ」を購入しました。キャンピングカーでは意外と多いという低速走行時の異音の原因と、筆者がキャンピングカーユーザーに「トルクレンチ」をおすすめする理由を解説します。
執筆者のプロフィール
齋藤千歳(さいとう・ちとせ)
元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在は昨年8月に生まれた息子と妻の3人、キャンピングカー生活にハマっており、約1カ月かけて北海道を一周するなどしている。
低速時の異音が発生
自動車整備士である叔父から指摘された
筆者は、もともとペーパードライバーで、クルマの知識もほとんどゼロなのですが、まわりの人々はなぜか、クルマの関係した仕事の人が多く、当然クルマにも詳しいのです。
先日、自動車整備士でもある叔父に、うちのキャンピングカーを貸しました。すると返却時に、「超低速のときに、何か叩くような異音がしているぞ。スピードが出ると消えるけど、デフやシャフトだと大きな故障になるかもしれないから、ディーラーに見てもらえ」とのこと。
残念ながら、筆者には動いているクルマの音から小さな異音を聞き分ける才能はありませんが、自動車整備士である叔父の指摘は聞き流せません。「また、お金がかかるの!?」と思いながら、1年点検でもお世話になった「札幌トヨタ自動車(株) 千歳店」に連絡。「極低速での走行の際、何か叩くような異音がします。スピードが出るとわからなくなるのですが…」と、叔父に言われたとおりに伝えました。
ちなみに、「私自身にはよく聞き取れない」ことも小声で告白しておきました。
ディーラー点検
問答無用でホイールの取り付けトルクチェック
札幌トヨタ自動車(株) 千歳店に着くと、1年点検も担当してくれた副店長の五十嵐さんが出迎えてくれました。
「きっとクルマをリフトアップして点検、これだけで数千円かかり、足りない部品があれば、後日さらに修理で別料金……」と筆者は思っていたわけです。
ところが、駐車場にキャンピングカーを止めると、レンチ(トルクレンチ)を持った整備の方が登場。テキパキとホイールのナットを確認、締まっていなかったナットを次々と適切なトルクに調整していきます。ものの数分で終了。
そして「異音がないか、店舗の裏を低速で走ってみましょう。ご一緒しますよ」と五十嵐さんがいいます。
5〜10kmくらいので超低速で異音がしていたと叔父はいうので、アクセルはほぼ踏まずクリーピングで走ってみると、異音はしません。
正直に言いますと、筆者の判断は役に立たないので、助手席に座る五十嵐さんに確認してもらったのですが。
「これでおそらく大丈夫だと思いますよ」と笑顔の五十嵐さん。修理はどうやら終了のようです。修理費用はサービスでした。
ナットが緩むこともある
長距離運転前には必ずチェックしたいが……
さて今回のトラブルは、どういうことだったのでしょうか?
筆者にはまったくわからなかったのですが、「超低速のときだけど異音がする」という筆者からの情報だけで、五十嵐さんと担当の整備の方はホイールナットのゆるみを想定していたようです。
駐車場で筆者のキャンピングカーとホイールを確認し。ホイールナットのゆるみである可能性が高いと判断したようです。
五十嵐さんに聞いたところ、「カムロードのホイールをカムロード用の純正ホイールから、純正以外のアルミホイールなどに変更すると、一概にはいえないが、ホイールナットが緩みやすくなることがある」とのこと。
換えたのは筆者ではありませんが(中古なので前の持ち主が換えたのでしょう)、確かに筆者のキャンピングカー(カムロード)は、純正のホイールから、カムロード専用ではないアルミホイールに変更済み。
これにプラスして、ホイールナットのさび具合などから、おそらくホイールナットのゆるみであろうと推測したといいます。さすがプロといったところでしょう。大がかりな修理という事態は回避できました。大変ありがたいです。
しかし、問題があります。現在の筆者のキャンピングカーの条件だと、ある程度の期間でホイールナットが緩む可能性がありますが、どのくらいの期間にどの程度ゆるむのかわかりません。やや気になるのは、前回の冬タイヤから夏タイヤへの交換を筆者が行ったので、もともと緩んでいた可能性もあります。ただ、このあたりもチェックできないのが問題です。できれば長距離の運転の前には、それを確認し増し締めなどをしたいのですが、その都度ディーラーに行くのは現実的ではないでしょう。
トルクレンチを購入
安いものなら2,000円台〜、ぜひ1本持っておきたい
クルマのホイールナットなどの締まり具合(トルク)を確認する機能の付いたレンチが、トルクレンチです。北海道では年に2回、冬タイヤから夏タイヤ、夏タイヤから冬タイヤへの交換があり、筆者も自分でタイヤ交換を行うことがあるので、存在は知っていました。
しかし、基本的に年に2回、我が家の場合はキャンピングカーのほかにもう1台普通車があるので、年に4回。たまにしか使わないものなので、トルクレンチは前出の叔父に借りていました。
北海道ではクルマのタイヤ交換を自分でやる方は多いようですが、トルクレンチは使っていない人も多いようです。
しかもトルクレンチは、筆者のイメージでは1万円を越えるような高価な工具。年に数回しか使わないのに買うのはもったいない。今回ホイールナットが緩んでいた件も、叔父が「遠乗りの前は、うちに寄ってトルクを確認していけばいい」と言ってくれました。ありがたいことです。
しかしながら、キャンピングカーで出掛けるときは、だいたい深夜に近い時間帯に出発することが多く、毎回叔父の家に寄るのは無理があります。
さらに今回のことで、ある程度たびたび、ホイールナットのトルクを確認する必要があることがわかりました。
そこで、もう買ってしまうことにしました。当然、ネットで検索、すると予想以上に安いのです。
筆者が購入した「エマーソン トルクレンチセット EM-29 ソケット5個付(14/17/19/21薄口ロング/24mm)+エクステンション ケース付 40-200N・m対応 EMERSON EM29(以下、エマーソン トルクレンチセット EM-29)」は、Amazonでも人気で価格も手ごろです。
さらに安いものでは、2,000円台後半くらいから購入可能です。
我が家のキャンピングカーはリアフェンダーが大きく張り出しており、タイヤ交換の際、ナットを締めるのに非常に苦労した記憶がありました。そのため、付属のエクステンションでは足りない可能性があるため、追加で「TRUSCO(トラスコ) エクステンションバー 差込角凹凸12.7 全長250mm TSEB4-250(以下、TRUSCO エクステンションバー TSEB4-250)」も購入しました。
キャンピングカーと普通自動車の両方のタイヤ交換をディーラーなどにお願いすると、年間2万円程度の出費になります。今後、トルクレンチを使って自分で行えば、十分に元は取れるはず。
まあ、「よくわかっていないのに、いろいろ自分でやっちゃうのがトラブルの原因」という指摘もあるので、このあたりは自己責任でお願いします。
付属品:14/17/19/24mmソケット
差込角:12.7mm 21mm薄口ロングソケット/エクステンションバー
n・m(ニュートンメーター)表示
重量2.3kg
本体サイズ幅465mm×高さ45mm×奥行き35mm
設定値: 103n・m(10.5kgf・m)
負荷方向:右
実際に使ってみた
トルク設定さえ覚えてしまえば使い方は簡単
「エマーソン トルクレンチセット EM-29」と「TRUSCO エクステンションバー TSEB4-250」が届きました。早速使ってみたいのですが、キャンピングカーのホイールナットはつい最近ディーラーで調整してもらったばかり。今回は、ちゃんと締まっていることを確認するだけになります。
トルクレンチは、どのくらいのトルクに締めるかを設定しておくと、レンチでナットを締めているときにカチッと音を立てて、十分なトルクで締まっていることを教えてくれます。
筆者のキャンピングカー・カムロードの場合、マニュアルによると135N・m(1,350kgf・cm)です。ただし、ホイールを変更している場合は、ホイールのマニュアルを確認する必要があるといいます。このあたりは、しっかりとマニュアルを確認ください。
筆者のキャンピングカーのホイールにはマニュアルがないので、カムロードの標準である135N・mに調整しました。
ロックを外してトルクレンチの柄を回すと、上下に移動します。上下の位置で10位までのトルク、回転の量で1位のトルクを調整します。
調整したばかりのカムロードは、プロがしっかりと調整したあとなので、きちんと締まっていることを確認しただけです。
そこで目を付けたのが、我が家の普通車。こちらも筆者が冬タイヤから夏タイヤに交換したのでトルクが足りない可能性があります。
こちらの締め付けトルクは108N・m。設定を変更して、トルクレンチで増し締めです。
タイヤ4本、それぞれ4本、計16個のナットをチェックしましたが、どれも108N・m以上のトルクで締まっているようで、増し締めしたものはありませんでした。
こうなると逆に、強いトルクで締めすぎているのでは? という不安があります。しかし、確認する方法はありません。次回のタイヤ交換の際には、しっかりトルクレンチを使い、規定のトルクで締めようと思います。
とはいえ、操作自体は非常に簡単ですし、チェックだけでも確実に安心感が得られるのは大きなメリットです。
まとめ
キャンピングカーユーザーならトルクレンチは必携
筆者のように異音でホイールの緩みを発見したという人は少ないようですが、ネットなどの情報を見ると、キャンピングカーのホイールの緩みは比較的よく起きる問題のようです。
定期的なホイールの取り付けトルクの確認は必須と言えますし、キャンピングカーユーザーならばトルクレンチは必携と言えるでしょう。
今回購入した「エマーソン トルクレンチセット EM-29」のように比較的安価なトルクレンチは、プロの目などから見ると不満な部分もあるようです。しかし、ディーラーなどでのチェックと組み合わせれば、筆者のような素人にとっては、何らかの指標があるだけで安心感が非常に増します。
安価なものも多数出ているので、トルクレンチを1本持っていると安心でしょう。