植えつけから数年間は、木を充実させる期間です。将来の姿を想像しながら、丈夫な果樹になるように管理、お世話をしていきましょう。幼木期の育て方と対策について、書籍『おいしい果樹の育て方』著者で、千葉大学環境健康フィールド科学センター助教の野田勝二さん(農学博士)に解説していただきました。
解説者のプロフィール
野田勝二(のだ・かつじ)
千葉大学環境健康フィールド科学センター・助教。農学博士。
専門は果樹園芸学、健康機能園芸学。柑橘類の研究のほか、園芸療法・園芸福祉に関する研究も行っている。また市民とともに、サスナティブルな街づくりの活動にも参画している
本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/角しんさく、はやしゆうこ
幼木期のお世話
植えつけから数年間は、木を充実させる期間です。将来の姿を想像しながら、丈夫な果樹になるように管理、お世話をしていきましょう。
幼木期のお世話の基本
幼木期と呼ばれるのは、接ぎ木や挿し木をしてから5〜6年ほどです。将来たくさんの果実を実らせるためにも、幼木の間は実を楽しむより、枝や葉の充実を優先するようにします。とくに2〜4年ほどは、実をつけないように管理することが大切です。
また、幹や枝が細く、根づきも完全ではないため、風や熱暑からも守ってやる工夫も大切です。幼木期間は果実をがまん! 丈夫な木にすることを意識ししましょう。
2〜4年生の果樹
種類によるが、接ぎ木や挿し木をしてから2〜4年は、花が咲かないものもある。
花が咲き実がついたものでも、熟す力がないため途中で落下する場合が多いため、花が咲いたら早いうちに摘み取り、樹勢が弱くなるのを防ぐ。骨格作りの剪定もスタートする。
5〜6年生の果樹
多くの種類では、接ぎ木や挿し木から5〜6年で実をつけ始め成木の仲間入りをするが、それでも木はまだ若いため十分な養分を蓄えていないと考えたほうがよい。
実を結んでも、できるだけ若いうちに摘み取って(摘果)、熟す果実の数を少なめに管理する。
水やり
苗木が根づくまでは地面が乾燥したらたっぷりと水をやる。ただ、多くの果樹は湿った場所を好まないので、つねに水浸しになるような状態は避ける。鉢栽培の場合は冬の間も水を切らさないように注意する。
寒さ
厳冬期は浅い部分の根が凍らないように地面にわらを敷くなどの対策をするとよい。
比較的寒さに弱い柑橘類、ビワ、キウイフルーツなどの幼木は、園芸用の不織布で全体を覆い防寒する。
強風
強風時にひもなどでまとめてしまうと、風が抜けず逆に倒れやすくなる。
ある程度生長した果樹はそのままにし、倒れたら戻して必要なら支柱を立てる対処でOK。根張りが弱い幼木は、事前に支柱を立て幹を支えておく。
強光
ほとんどの果樹が日当たりのよい場所を好むが、あまりに強い日差しで葉焼けを起こすようなときには、周囲に遮光ネットを張って日ざしをさえぎる。
雨
梅雨などで雨が続くときは、鉢植えの果樹は軒下や室内に取り込む。庭植えの場合はそのままでもよいが、台風など強風が伴うときは支柱で幹を支える。
熱暑
夏の猛暑で地温が上がりすぎると、根が傷み生育を妨げるので、地面にわらや刈り取った草などを敷いて保護する。鉢植えは日陰に移す。
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なお、本稿は書籍『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。果樹を育てたいけれど、どんなものがいいのか…。基本的には自分の好きなもの、食べたいものを選ぶのがいちばんです。だた果樹栽培に慣れていない人は、庭の広さや環境、手間をかけられる時間などを考慮して育てやすそうなものを選ぶのも一案です。本書では、苗木の選び方、幼木から成木までのお世話のコツ、肥料や病害虫対策など、果樹栽培の基本的な知識や、収穫した果実の保存方法とレシピなど、豊富な写真とともに紹介しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
※(5)「【果樹】苗木の植え方 土作りのポイント|庭に植える場合と鉢に植える場合」の記事もご覧ください。