【果樹】苗木の植え方 土作りのポイント|庭に植える場合と鉢に植える場合

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苗木を購入したら、植えつける場所を決めて苗木を植えましょう。植えつけ場所は日当たりと水はけがよく、強風が当たらないところが適します。よい土の条件や果樹が育つ土作り、植え方について、書籍『おいしい果樹の育て方』著者で、千葉大学環境健康フィールド科学センター助教の野田勝二さん(農学博士)に解説していただきました。

解説者のプロフィール

野田勝二(のだ・かつじ)

千葉大学環境健康フィールド科学センター・助教。農学博士。
専門は果樹園芸学、健康機能園芸学。柑橘類の研究のほか、園芸療法・園芸福祉に関する研究も行っている。また市民とともに、サスナティブルな街づくりの活動にも参画している

本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

イラスト/角しんさく、はやしゆうこ

苗木を植える

苗木を購入したら、植えつける場所を決めて苗木を植えましょう。植えつけ場所は日当たりと水はけがよく、強風が当たらないところが適します。

よい土の条件を知ろう

植物を育てる土は、ほどよく水分を含んだやわらかい状態がよいとされます。手で軽くにぎると、手の形にまとまったまま崩れない状態ですが、それを指で押すとホロリと崩れるものです。こういった土は有機物を多く含み、果樹栽培にも最適です。

さらに果樹は、種類によって栽培に適した土壌酸性度(pH)があるので、栽培場所の酸性度も確認しましょう。酸性度は、市販の酸度測定液や土壌酸度計で測定できます。土の状態は、2年に一度程度は確認し、必要なら土壌改良を行います。

条件(1)通気性がよい

土の中で根が健やかに伸びるためには、ある程度の空気が必要となる。粘土質のべったりとした重い土では、土の粒のあいだに空気が少なく植物は十分に根を張ることができない。

条件(2)水はけがよい

植物の根は土の中で呼吸をしている。つねに水浸しだと、根が呼吸できず、生長に必要な養分や水分の吸収もできないため、根の呼吸を妨げない水はけのよい土にする。

条件(3)保水性がよい

樹木の根には太い部分と細い部分があり、おもに細い根の先端部分で水分や養分を吸収している。細い根は乾燥しやすく枯れやすいので、乾燥しない程度に水分を保つことが大切となる。

条件(4)肥料もちがよい

肥料もちとは、土の中で肥料の養分が失われないように保つ性質のこと。土の中の養分は有機物と無機物により保持されているので、これらが適度に含まれている土がよい土。

条件(5)有機物が多く含まれている

土に含まれている有機物は、土をやわらかくして空気を多く含むようにする。また、土壌の改良に役立つ微生物を呼び寄せて水はけや水もち、肥料もちのよい土に変える効果がある。

条件(6)酸度が適している

土壌の酸性度はpHで示される。ほとんどの果樹はpH5.5〜6.5の弱酸性を好むが、ブルーベリーやクランベリーなど、pH5.0以下の酸性土壌で育つ果樹もある。

土壌酸性度の改良

酸性よりの場合
pH7以下は酸性。雨が多い日本の土壌は雨水でアルカリ性のミネラルが流れてしまうため、酸性にかたむきがち。苦土石灰などアルカリ分の多い資材で中和させる。

苦土石灰(くどせっかい)

アルカリ性よりの場合
pH7以上はアルカリ性。アルカリ度が高いと土壌内のカリウムや鉄などのミネラル分が不足し、生育に影響を与える。無調整のピートモスなどの改良土で中和させる。

ピートモス

各果樹に適したpH

本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

果樹が育つ土作り

果樹が育つ土作り

樹木は根から水分や養分を吸って育つので、根がのびのび生長できる土を作ると、枝や葉がよく茂りおいしい果実ができます。
庭植えの場合は、土壌酸性度を確認したあとに、庭土に有機質を加えて苗木が育ちやすいやわらかい土壌にします。酸性度の中和調整をした場合は、1〜2週間まってから有機質を加えましょう。
鉢植えの場合は、腐葉土と赤玉土を1:1の割合で混ぜたものを基本の用土とします。
土作りは冬の間、苗木を植えつける1〜2か月前から始めるのがおすすめです。

庭の土作り

土作りは、植えつけ場所を中心にしてさらに広めの範囲で行うのが理想。直径50〜100cm程度、深さ30〜40cm程度の土を掘り上げたら、土と同量の堆肥や腐葉土を加え、よく混ぜ合わせてから戻す。有機質を加えて耕すことで、空気を含んだやわらかい土に変わる。

堆肥
牛や馬のフンなどを原料とした動物性堆肥と、樹皮などを原料とした植物性堆肥がある。微生物の働きで土を肥沃にしてくれる。完熟したものを使う。

腐葉土
広葉樹の落ち葉を微生物の力で分解、発酵させたもの。通気性、排水性、保肥性がよくなる。完熟したものを使う。

パーライト
鉱石の一種を高温高圧で焼いて多孔質にしたもの。黒曜石系と真珠岩系があり、通気性、排水性を高めるのは黒曜石系。真珠岩系は保水性をよくする。

鉢植えの用土

腐葉土と赤玉土を1:1の割合で混ぜ合わせたものを基本土とし、環境に合わせて改良土を追加する。

腐葉土
通気性、水はけ、保肥性を高める。

赤玉土
赤土を粒の大きさによって大玉・中玉・小玉にわけたもの。通気性、水はけをよくする。

バーミキュライト
蛭石を高温で焼いて、多層の薄板状にしたもの。保水性や通気性をよくする。

パーライト
水やりを頻繁にできる場合は、黒曜石系で排水性をよくし、水やりの機会が限られる場合は、真珠岩系で保水性を高める。

ピートモス
無調整のものは、ブルーベリーなど酸性を好む果樹の酸度調整に使う。調整されたものは、保水性、保肥性をよくする。

培養土について

培養土とは、基本の用土に改良用土や肥料などを加え、そのまま使えるようになっている土です。
初心者の場合は、果樹の栽培用にミックスされた市販の培養土を使うのもおすすめです。培養土を使う場合は、鉢底に大粒の赤玉土や軽石を敷いて、通気性と排水性をよくします。

本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

庭に植える

庭に植える

庭に植えるときは、日当たりと水はけがよく、強風が当たらない場所を選びます。植えつけの1〜2か月前から酸度を調整し、腐葉土や堆肥を入れて土作りをしておくのが理想ですが、間に合わなければ植えつけの際に行ってもかまいません。植えつけ時の元肥には、根の張りをよくする「熔成リン肥」がおすすめです。

用意するもの

苗木(今回はウンシュウミカン2年生接ぎ木苗)
堆肥(完熟牛糞堆肥)
熔成リン肥(または速効性化成肥料)
スコップ
土を混ぜ合わせるための容器(箕など)
バケツ(水を入れる)
支柱(2m程度のもの)
麻ひも
ジョウロ

(1)植え穴を掘る

直径・深さとも、植えつけ苗の根鉢の約2倍を目安に植え穴を掘る。深さは根鉢の下に元肥や土を入れてから苗木を置くので、鉢やポットのまま苗を入れてみて深さを確かめながら、やや深めに掘る。水はけの悪い土壌で植えつけと土作りを同時に行う場合は、この段階でパーライトを穴底へ。

(2)苗木を水につける

ポットから抜いた苗木は、根を傷めないように根鉢の土を落とし、バケツに入れた水に30分程度つけておく。根の乾燥を防ぎ活着がよくなる。

(3)元肥を入れる

掘り上げた庭土を両手に1杯ほど箕にとり、堆肥を2倍、元肥の熔成リン肥を庭土の半分の割合で入れ、よく混ぜる。混ぜたものはすべて植え穴の底に入れる。

(4)埋め土を作る

掘り上げた庭土の残りを箕にとり、庭土3:堆肥1の割合で混ぜ合わせ、植え穴の3分の1ほどの深さまで入れる。土作りと同時の場合は、庭土と堆肥を1:1に。

(5)苗木を植える

苗木の根を広げて穴に据え置き、(4)の埋め土で植えつける。周囲の地面よりも低い位置で土を平らにならす。

(6)支柱を立てる

支柱を穴の底まで届くようにしっかり突きさして立てる。苗の幹と支柱を麻ひもなどで結び、苗木を固定する。

(7)水をやり覆土する

植え穴に水が溜まるようにたっぷりの水をやる。水が引いてきたら、残っている埋め土や庭土をかぶせる。接ぎ木苗の場合は、接ぎ目部分が地面から出るようにする。

(8)完成

枝の先端を切り返すと新しい芽の発生が促される。新しい芽が動き出したあと1か月後くらいから肥料を与える。

本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

鉢に植える

鉢に植える

果樹を植える鉢は、苗木のポットより2回りくらい大きく、高さのあるものを選びましょう。果樹は樹高が高くなるので、深い鉢に植えたほうが重心が低くなって安定し、根も深く張ることができます。
さまざまな素材の鉢が売られていますが、樹木を植えた鉢はかなり重くなるので、移動するときのことを考え、軽い素材を選ぶのもよいでしょう。鉢植えの土は、市販されている果樹用の培養土を使うのが便利です。

用意するもの

苗木
植木鉢(コンテナ)
鉢底ネット
市販の培養土(元肥入り)
赤玉土(大粒)
バケツ(水を入れる)
土入れ
ジョウロ

(1)苗木を水につける

ポットから苗木を抜き、根鉢を崩さずそのままバケツの水に30分程度つけておく。

(2)鉢底に赤玉土を入れる

鉢の底に、鉢穴の大きさに合わせてカットした鉢底ネットを置き、赤玉土を1〜2cmほどの高さまで入れる。土が流れ出すのを防いでくれる。

(3)鉢に苗を仮り置きする

鉢に苗を仮り置きし、高さを確認する。接ぎ木苗の場合は接ぎ目が土の上に出るようにするため、苗木が低すぎる場合は、赤玉土の上に培養土を入れ高さを調整する。
培養土が用意できない場合は、赤玉土と腐葉土を1:1の割合で混ぜ、元肥として粒状の緩効性肥料を規定量加えたものでもOK。

(4)苗を植える

苗の高さがだいたい決まったら、培養土を入れて植える。培養土を入れるのは鉢の縁から3〜4cmほど下がったところまでにし、ウォータースペースをつくっておく。

(5)土を整える

苗の根と鉢の間に隙間ができないよう、棒などで土を突きながら土を流し込む。突いて土がへこんだら、さらに培養土を加えて表土面をなめらかにする。

(6)水をやる

鉢底から水が流れるまでたっぷりと水をやる。棒苗の場合は、水やりの前に支柱を立てるとよい。

(7)完成

2年生以上の苗は先端から3分の1程度の位置で切り返すとよい。表土が乾いたらたっぷり水をやり、新しい芽が動き出したあと1か月後くらいから肥料を与える。

鉢の選び方

いきなり大きい鉢に植えると、鉢の中の水分が乾ききらず、根腐れの原因になります。現状の鉢(ポット)のサイズよりも2回り程度大きい鉢を準備するとよいでしょう。鉢のサイズは直径を示す「号」が使われ、1号は約3cmです。5号鉢は直径が15cmの鉢ということです。

さらに果樹は、地上部を支えるように深く根を張るので、高さのある鉢がおすすめです。口径は同じでも背の高い「深鉢」と呼ばれるものを選ぶとよいでしょう。最近は、鉢の側面にスリットの入っている鉢があり、これは根が鉢底で巻くのを防いでくれるので便利です。

側面にスリットの入った鉢は「スリット鉢」や「根はり鉢」などと呼ばれ、水はけや通気性のよいのが特徴。構造上、根詰まりしにくく根の張りがよくなる。

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なお、本稿は書籍『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。果樹を育てたいけれど、どんなものがいいのか…。基本的には自分の好きなもの、食べたいものを選ぶのがいちばんです。だた果樹栽培に慣れていない人は、庭の広さや環境、手間をかけられる時間などを考慮して育てやすそうなものを選ぶのも一案です。本書では、苗木の選び方、幼木から成木までのお世話のコツ、肥料や病害虫対策など、果樹栽培の基本的な知識や、収穫した果実の保存方法とレシピなど、豊富な写真とともに紹介しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。

おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで
¥1,540
2022-01-25 10:04

※(4)「【果樹】苗木の買い方・良い苗の選び方 最適な時期・種類|植え付けカレンダー」の記事もご覧ください。

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