【キャノンの自動撮影カメラ】PowerShot PICKをレビュー 自分では絶対撮れないアングルとシーンが尊い

レビュー

キヤノンから発売された自動撮影カメラ「PowerShot PICK」。置いておくだけで、カメラが自ら人の顔を見つけ、自然な表情の写真を撮影してくれるといいます。特筆すべきは、これまで子どもを撮影する役であったパパやママなども、いっしょに入った写真が撮れるという点です。本当に自動で写真が撮れるの?そして、その腕前は?といった疑問を解消するため、実際に筆者の自宅に配置して、息子の写真や動画を撮影してみました。その様子を紹介します。

執筆者のプロフィール

齋藤千歳(さいとう・ちとせ)

元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在はキャンピングカーを「方丈号」と名付け、約9平方メートルの仕事部屋として、車内で撮影や執筆・レビューなどを行っている。

「PowerShot PICK」撮影結果の一部

予想以上に撮れるが、遠距離の撮影に弱い印象

キヤノン最新の自動撮影カメラである「PowerShot PICK」。なぜか今回、2台お借りする機会に恵まれました。そこで、自宅で自由にふるまう息子を撮影するべく、活用することに。息子の手が届かない場所に、三脚などを使って配置してみました。

数日間(実際には6日間半)様子をみて、どのくらい写真が撮れるか、どの程度のクオリティで撮れるかを実験した結果の一部が、これらの写真になります。実際には、6日間で2台の「PowerShot PICK」で約1,500枚の写真を撮影、そのほかに500回の動画を撮影していました。そのなかから、筆者のプライベート的に公開できないもの、なぜ撮影されたのか意味がわからないものなどを省き、さらにある程度のクオリティをクリアしたものを公開したわけです。

初日の昼間「PowerShot PICK」の存在に気づいていないので、非常に自然な表情で歩いています。

このあと「PowerShot PICK」は息子につかまれ、レンズにべったりと指紋をつけられます。被写体が近接するとシャッターを切る頻度が上がる印象です。

暗い場所でのISO感度特性は今ひとつ

夜になるとリビングがあまり明るくないため、高ISO感度で撮影されているのですが、その際に画質が荒れる点が気になります。高ISO感度ノイズだと思われるのですが、ISO 3200あたりでは顕著です。

息子の近くに「PowerShot PICK」を移動して撮影。夜の自宅のリビングは光量が少なくISO感度が3200まで上がったせいか、画像の荒れが気になります。

リビングの出窓に三脚で設置しておいてあった「PowerShot PICK」を襲撃しにきた息子。ISO感度は3200までアップしています。

また、自動撮影をしている途中で気が付いたのですが、35mm判換算で19〜57mm相当という広角寄りのズームレンズを採用しているためか、1歳半の息子の手が届かない高い場所などに設置していると、被写体までの距離が遠いのか、積極的に撮影を行わないようです。

筆者のズボンの尻ポケットを触って喜ぶ息子。当たり前ですが、筆者自身にはこんなアングルから撮影することはできません。

息子から50cm〜1m程度の距離に「PowerShot PICK」を設置すると、顔が検知しやすいのか、自動撮影の枚数が増える傾向が感じられました。そうなると、近距離に設置したくなるがの人情。食事のときなどはテーブルの上に「PowerShot PICK」を置くのですが、「PowerShot PICK」が動く様子が子どもの興味を引き、手を出してしまいます。ある程度子どもが大きくなれば、触らずにいるのかもしれませんが、今は大人がしっかり見張っておくしかないでしょう。わがままをいえば、子どもが触っても平気なように、耐ショック&防水の機能があるとよいのですが……。

食事中の息子の近くに「PowerShot PICK」を配置して撮影した1枚。息子が「PowerShot PICK」をつかんで投げたりするので注意が必要です。

とはいえ、写真全体のクオリティとしては、完全に筆者の予想を上回っていました。まだまだ慣れた人間が撮るほうがクオリティは高いですが、自分たちが撮影してないときにサブのカメラマンとして使うには十分でしょう。

逃げ回る息子と追う筆者。残念ながらピントは筆者の顔で、しかも目をつぶっています。しかし、自分で撮影していては絶対に見ることのないアングルです。

なにやら掃除のマネを始めたところ。ちょうど私も妻もリビングにおらず、実際には見ていません。私たちの知らない息子の姿です。尊い……。

操作アプリ「Mini PTZ」の使い勝手

頻繁に再接続されるのが煩わしい

「PowerShot PICK」本体には、ボタンやスイッチ類は電源ボタンとワイヤレス通信ボタンしかありません。背面液晶などもないので、操作はスマホやタブレットに専用アプリ「Connect app for Mini PTZ Cam」をインストールして行う必要があります。

残念ながら、2022年4月時点での「Connect app for Mini PTZ Cam」のApp Storeでの評価とレビューは1.8/5と低評価。「接続すらできなかった」というレビューも散見されます。

筆者は、2022年4月にバージョン1.2.0でテストしました。セキュリティの問題もあり、やや接続自体は複雑なものの、初回の接続は意外と簡単に行えました。

ただし、このアプリと「PowerShot PICK」本体の接続が比較的簡単に切れ、その度に再接続を行うのが、かなり煩わしいことは事実です。また、これは想定外なのでしょうが、筆者は1台のスマホから2台の「PowerShot PICK」に接続を行っていたのですが、この切り替えは設定の初期化などが必要で、かなり面倒でした。

「Connect app for Mini PTZ Cam」のホーム画面。「PowerShot PICK」と接続されていないと、ほとんど何もできないのですが、頻繁に接続が解除され、再接続が行われます。

撮影データの再生画面や、遠隔からカメラを自分で操作できるカメラメニュー、自動撮影モードの詳細設定など、さまざまなメニューが用意されています。しかし、すべてにおいて手探り状態なのか、ざっくり言ってしまうと、作り込みがあまい。

現在のキヤノンのカメラ製品の完成度と比べると、そういった完成度の低さにはびっくりするかもしれません。筆者のような新しモノ好きは、逆に「さすが新カテゴリーの製品!すべてが粗い!」と、ちょっとテンションが上がってしまうのですが……。

「PowerShot PICK」の場合、操作系のほぼすべてが「Connect app for Mini PTZ Cam」からのコントロールなので、アプリのバージョンが上がれば、操作性も改善されるのだと思います。この点に期待したいところです。

さまざまなメニューが用意されているが、残念ながら作り込みが甘い。

「PowerShot PICK」の概要

人の顔を見つけてシャッターを切る!キヤノンの自動撮影カメラ

写真のようにブラックとホワイトの2色から選択が可能。カメラ本体にシャッターボタンすらない自動撮影カメラになっています。

本体サイズは最大径約56.4mm、高さ81.9mm、重さは約170g。自動でパン、チルト、ズームを行い、自分で人の顔を見つけてシャッターを切る自動撮影カメラ。アスペクト比4:3の静止画の有効画素数は最大約1,200万画素、動画は16:9のアスペクト比でフルHDでの撮影が可能。35mm判換算で19〜57mm相当のズームレンズを搭載、手ブレ補正機構ISも搭載されています。充電式リチウムイオン電池を内蔵しており、屋外での撮影にも対応。

8言語(日・英・中・仏・独・伊・西・韓)による音声コマンドでの操作ができ、リモート撮影を行うこともできます。

一般財団法人日本カメラ財団が主催する2021年の「歴史的カメラ」5機種にも選定されました。

記録メディアであるmicroSDカードを含んで約170gしかありません。コンパクトなので、外出先でもかなり便利に使うことができます。

まとめ

可能性しか感じない!現在最先端の未来カメラ「PowerShot PICK」

「PowerShot PICK」が、どこまで撮影できるのか?単純にそれが知りたくて、実際に自宅で6日ほどいっしょに過ごしてみました。

完全に新しいカテゴリーのカメラなので、操作やソフトなど、あらゆる部分がまだまだ手探りをしている印象で、作り込みがあまく感じる部分は多々ありました。例えば、被写体が距離が離れると撮影頻度が低くなる傾向や、操作性の悪さなどがあります。これらは、アプリやファームウェアのバージョンアップで、改善を期待したいところです。そういったことも含め、そのほとんどは将来的に解決できる技術的な問題。カメラが自分で撮影してくれるという新しさやおもしろさに比べると、些末な問題といえるでしょう。

筆者の場合、自分も写りたいという欲求はあまりないのですが、筆者が撮影できない食事中の様子や、筆者の見えないところで遊んでいる息子の姿などを、画像に残したいという気持ちがあります。そういったシーンを「PowerShot PICK」が撮影してくれることに期待したのですが、結果は予想以上。今後も、誕生会や外食の際のサブカメラマンとして食卓に置き、メインカメラマンの筆者が見逃したシーンを撮影してほしいと思っています。

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齋藤千歳(フォトグラファーライター)

元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在はキャンピングカーを「方丈号」と名付け、約9㎡の仕事部屋として、車内で撮影や執筆・レビューなどを行っている。北海道の美しい風景や魅力を発信できればと活動中。

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