世界一キュートなどとも言われる野鳥界のアイドル「雪の妖精・シマエナガ」。北海道では多くの場所に生息していますが、実は筆者が住む新千歳空港からクルマで15分程度の千歳市内の青葉公園でもかなりの確率で出会うことができます。本記事では、そんなシマエナガを見つけるコツを解説します。
シマエナガを撮影するコツはこの記事で!>【レビュー】シマエナガを撮影するコツを写真家が解説!素早い、小さい、遠い被写体をマイクロフォーサーズ『OM SYSTEM OM-1』でとらえる【超望遠レンズ】
シマエナガって何者?
エナガの亜種で日本では北海道にしかいない小鳥
世界一かわいい小鳥という話まで飛び出すほど大人気の小鳥界のアイドルであるシマエナガ。多くの人を虜にするかわいさ
ここ数年、圧倒的な人気でバードウォッチング業界のアイドルと言って間違いないのがシマエナガです。日本では基本的に北海道にしかおらず、エナガの亜種で本州に住むエナガは目の周りが黒っぽいの対して、シマエナガは上に掲載した写真のとおり、真っ白な顔に黒くてつぶらな瞳とクチバシと、非常にシンプルで愛くるしいのが特徴です。
この見た目から雪の妖精などと呼ばれ、圧倒的大人気の野鳥。実は北海道ではかなり広い範囲に分布し、各地でみることができるため、道内の道の駅などではシマエナガ関連のお土産が多くの場所で販売されています。
しかし、どこでも簡単にみられるのか? と聞かれると、これが意外と難しいのです。おそらくバードウォッチングに興味のない道民のほとんどが、実はすれ違っていてもシマエナガを認識していないことも珍しくありません。
千歳市の中心部である駅や市役所からも歩いて行ける距離なのですが、すっかり森の中という印象の千歳市青葉公園の林道
理由はいくつかあるのですが、まずひとつがシマエナガが予想以上に小さいこと。実はシマエナガは小鳥の中でもかなり小さく、クチバシから尾っぽまでが約14cm、体重は8g程度とスズメの約24gと比べてもかなり小さいのです。日本で2番目に小さい鳥の仲間とも言われています。そして、冬はかなりフワフワの羽毛に覆われて、エサが少ないため人家の近くにまで現れるのですが、夏はこの羽毛が少なくなりよりスマートになり、エサが豊富なので森の奥に移動します。そのため日本では12月〜3月くらいまでの厳寒期の北海道でしか普通の人が出会うことはほぼないのです。
しかも、日本で2番目クラスと言われるほど小さな鳥なので当たり前かもしれませんが、かなり用心深いうえに、素早い。警戒を解くと木々の下の方に来ることもあるといいますが、筆者がみたことのある限り、基本的に林の上のほうの樹冠部分を多くて10羽程度のグループで移動していることが多く、慣れていないとシマエナガの群とすれ違っても、それがシマエナガの群だとは認識できないことが多いのです。
そのため、実は公園や神社の森などでシマエナガとすれ違っていても、それをシマエナガだと認識していない道民も多いと言えます。ですが、シマエナガをシマエナガだと認識できれば、北海道の空の玄関口である新千歳空港からクルマで約15分で訪れることのできる千歳市の青葉公園でもかなり確率でシマエナガを観察することができるのです。
シマエナガの住む千歳市の青葉公園とは?
青葉公園の中にある千歳市立図書館。無料の駐車場もあり、開館時間中は暖房の効いた施設内で自動販売機も利用できるのがありがたい
市立図書館やウォーキングコースもある市民憩いの公園
シマエナガは北海道の全域に住んでおり、北海道一の都会である札幌周辺の公園や神社の森などでも出会うことが可能です。しかし、ある意味、冬の北海道であれば、どこでも出会える可能性のあるシマエナガを探すのに、千歳市内の青葉公園をおすすめするにはいくつか理由があるのですが、最大の理由は、新千歳空港からクルマで15分という立地になります。
しかも、青葉公園には無料駐車場が多数あるのでアクセスが楽チンです。多くの地元民は青葉公園までクルマで来て、1周最大4kmほどのランニングやウォーキング用のコースを歩いたり、走ったりしながら、バードウォッチングやエゾリス、エゾシカなどとの出会いを楽しんでいます。この約4kmという距離も重要なポイントで、時速6km程度で歩けば40分で1周できますし、かなりゆっくり歩いても1時間もあれば雪道でも1周できる程度。はじめて零下の北海道の森を歩く人にも気軽におすすめできるポイントです。
冬季でも開放されているトイレのうちのひとつ。暖房も完備されているのがうれしい。また、案内板も数多く設置されているのではじめての方も安心
そして、ありがたいことに公園のトイレの一部は冬季閉鎖されていますが、それでも複数のトイレが冬季でも暖房設備ありで開放されています。また、時間帯などにもよりますが、暖房の効いた市立図書館やテニスコートのクラブハウスなども利用できることもあり、北海道の冬の寒さに慣れていない方にも安心と言えるわけです。
Googleマップなどで検索して訪れるなら、青葉公園よりも千歳市立図書館で検索するとわかりやすいでしょう。個人的には午前中、8時〜10時の間くらいに訪れるのをおすすめしますが、12月から3月のこの時間帯の千歳市内は気温は多くの場合零下になりますので、しっかりとした防寒装備で訪れることをおすすめします。
観察用の双眼鏡だけは用意しておくこと
軽くてコンパクトで、しかも明るいケンコー「ウルトラビューEXコンパクト 8×32」。レンズコーティングがしっかりしているので逆光にも強いと感じる
できれば実勢価格が2万円を超えるミドルクラスの双眼鏡がおすすめ
青葉公園だけではないと思うのですが、シマエナガをしっかりと観察したいのであれば、双眼鏡を用意することをおすすめします。逆に、そのほかの小鳥やエゾリス、エゾシカなどに青葉公園で出会いたいなら、実は双眼鏡はなくてもいいかと筆者は思っています。
なぜなら、シマエナガ以外の多くの野鳥やエゾリス、エゾシカなど青葉公園で出会う個体は、ある程度人に慣れていることもあるのでしょうが、双眼鏡がなくてもかなり細部まで観察できる距離に近寄らせてくれることが多いのです。しかし、筆者にとってはシマエナガは例外となっています。
多くの場合、しっかりとシマエナガであることがわかるサイズで観察するためには8倍から10倍程度の双眼鏡が必要になります。逆に言うと、シマエナガを観察、撮影したいと思うまでは、筆者はあまり双眼鏡が好きではなく、ほとんど持ち歩くこともなく、エゾリスなどを撮影していました。
ちなみに筆者の場合、双眼鏡を装着して、背中に超望遠レンズを装着したカメラを背負って、青葉公園を走っていることも多く、このランニングの合間にシマエナガを観察・撮影するので明るい大口径でありながら、軽くてコンパクトなケンコー「ウルトラビューEXコンパクト 8×32」(108.5×49.5×124mm/約375g・実勢価格 30,000円・発売中)を使っています。
ケンコー「ウルトラビューEXコンパクト 8×32」は実勢価格3万円前後と決してお安い双眼鏡ではないのですが、実は筆者はこの双眼鏡に出会うまで、なにか目が疲れるような気がして双眼鏡を使うのが嫌いで、被写体らしきものに出会ったら、その詳細を確認せずにカメラに装着した超望遠レンズで向けて撮影していました。
どうも、それまで使っていた双眼鏡が、日本国内でもっとも売れているエントリークラスといわれる実勢価格1万円以下のもので、普段使っている撮影用の超望遠レンズなどと比べても見づらく、どうも目が疲れるように感じ、しかも被写体がくっきりと観察できない印象だったのです。
これを双眼鏡に詳しい知人に相談したところ、推薦してくれたのが「家電批評2023年8月号」でライブ鑑賞向けミドルクラス双眼鏡としてベストバイにも選ばれたケンコー「ウルトラビューEXコンパクト 8×32」でした。
写真を撮影する前に被写体の状態を確認できれば十分と考えて導入していたエントリー向けの双眼鏡はどうしてもコストパフォーマンス最優先になるので、レンズのコーティングやプリズムなどが安価なものになり解像度が低く、口径の小さなレンズを使っているので薄暗い森のなかなどでは暗く感じるといいます。
筆者の場合ケンコー「ウルトラビューEXコンパクト 8×32」を首から提げて、ランニング用バックパックに固定し装備しています。軽くて楽
これに対してミドルクラスのケンコー「ウルトラビューEXコンパクト 8×32」は約375gと非常に軽量でありながら、対物レンズの有効径が32mmと大きいので明るく、誘電体多層膜、フルマルチコーディング、フェイズコートといったフルスペックプリズムシステムを採用しているため、やや逆行気味になることの多い、樹冠部分を見上げるようにシマエナガの様子を確認するときもクリアに被写体が確認できて、非常に快適です。
また、実際にシマエナガに遭遇すると気付くのですが、それでなくても素早い野鳥のなかでも、シマエナガはさらに素早く、常に動き回っている印象。そんなシマエナガにピントを合わせて観察するのにも中級クラスのケンコー「ウルトラビューEXコンパクト 8×32」はピント調整ダイヤルのサイズも大きく、動きもスムーズで非常に操作しやすいので、ピント合わせのストレスも小さいのです。
せっかくシマエナガに出会いに行くなら、しっかりと気持ちよくシマエナガを観察するためにもケンコー「ウルトラビューEXコンパクト 8×32」のようなミドルクラス以上の双眼鏡を用意することをおすすめします。肉眼だけでは、せっかくシマエナガに出会っても表情などがまったくわからなかったという結果になることもあると思います。
せっかく出会ったシマエナガを見逃さないために
こんな感じの木のてっぺん近くをシマエナガは群で移動していることも多いので、双眼鏡がないとシマエナガであることを認識できないことも
YouTubeなどで鳴き声はしっかり予習、ほかの人の動きにも注目
青葉公園などの北海道の林や森のなかを歩いて、シマエナガの姿を探しているときの最大のヒントは、多くの方がいうように鳴き声です。シマエナガは「ピー、ピー、ジュリジュリ」や「ピピ、ジュルリ、ジュルリ」などと表現されるような独特の鳴き声を発するので、この鳴き声をヒントに探します。
実際に現地に行く前にはしっかりとYouTubeなどで検索して、動画でその声を予習しておくことをおすすめします。しかし、ながら筆者は鳴き声だけで、最初シマエナガをみつけることはできませんでした。多くの種類の野鳥がいるなかで、素人が鳴き声だけを頼りにシマエナガをみつけるのは、かなり難しいと思います。
そこでおすすめしたいのが、以下の2つの方法です。
シマエナガを探して、青葉公園を散策しているとかなり頻繁に出会うエゾリス。冬眠しないので冬でも出会えて、人懐っこいのでかなり癒やされる
1つは、双眼鏡やカメラの望遠レンズをかなり上向きに構え、筆者は上方60度以上などと言っていますが、計ったわけではありせん、で木の上の方をみつめているほかの方がいれば、青葉公園の場合、だいたい、その先にシマエナガがいます。バードウォッチングとは関係なく青葉公園の林道は走っている方などもいるので、大声を出すなど邪魔にならないようにそっと近づいて、いっしょに観察させてもらうのもありでしょう。タイミングをみてあいさつができれば、みつけかたのコツなども教えてもらえるかもしれません。
2つめは、シマエナガ以外の小鳥が現れはじめたら、その上の樹冠部分に、さらに小さな小鳥が移動していないかを確かめて、なにかいるようなら双眼鏡でシマエナガではないかを確認してみましょう。明確な理由や理屈があるわけではないのですが、青葉公園の林道を歩いていて、いくつかの種類の小鳥たちが混合し移動している群のようなものと遭遇することがあります。このタイミングで少し立ち止まって、木々の上の部分を観察していると、シマエナガの群が移動していることも珍しくありません。
冬の青葉公園では、結構な確率でシマエナガとすれ違っていることも珍しくないのですが、最初はその姿を認識できないことも珍しくありません。ランニング・ウォーキングコースを1周しただけでは出会えないこともあるでしょうが、体力に余裕がある方はもう1周してみるのもありでしょう。また、シマエナガに出会えなくても、エゾリスやそのほかの野鳥、オジロワシなどに出会えることも、北海道旅行の最終日、帰路の飛行機に乗る数時間前に少し時間を作ってシマエナガ探しにチャレンジしてみてはどうでしょうか。かなり手軽に北海道の自然の一端を楽しむことができると思いますよ。
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