ひとつのドライバーユニットだけで音を出すことができるフルレンジスピーカー。多くのスピーカーが複数のユニットを使っているのに、なぜ高音から低音まで出すことができるのか、わかりやすく解説する。また、「理想のスピーカー」といわれるフルレンジスピーカーだが、複数のユニットを使ったスピーカーと比較して、音質や音色に違いはあるのだろうか。それぞれの長所や短所について知り、オーディオの世界をより深く知ろう。【2019年4月4日更新】

フルレンジスピーカーとは

●ドライバーユニットひとつのシンプルなスピーカー

フルレンジスピーカーとは、低音から高音までひとつのドライバーユニットだけで音を出すスピーカーのこと。逆に大型のスピーカーとなると、低音用のウーハー、高音用のツイーターという具合に複数のユニットに分割して音を出すものが多くなる。

●なぜ一つの振動板で高音も低音も出るのか

スピーカーは振動板を音楽信号に合わせて前後に動かし、空気圧の変化として音を再生する仕組みだ。周波数の低い低音では振動板はゆっくりと動き、周波数が高くなるとより素早く動くようになる。しかし、高音の素早い動きに振動板がついていくことができず、動きの速い高音は振動板の中心付近だけが動き、動きの遅い低音は振動板全体が動くようになる。これを分割振動という。この分割振動をうまく活かすことで、ひとつの振動板でも高音から低音まで幅広い音域をカバーすることが可能だ。

●ユニットの多くが10~16センチサイズの理由は?

例えば、低音専用と呼ばれるサブウーファーでも、ローパスフィルターをオフにして音楽信号を入力すると中音域のボーカルなどもそれなりに再生できることがわかる。しかし、サブウーファーには不要な音域なので、基本的にはローパスフィルターを使って高音域が再生されないようにカットしているのだ。ひとつの振動板だけで無理に広い音域をカバーしようとすると高音域の歪みが増えるなど音質的な影響も出てしまうためだ。

そのため、現代のフルレンジスピーカーは、振動板の素材の工夫をして対策しているほか、低音から高音までバランスよくカバーできるようにサイズも最適なものになってきている。フルレンジスピーカー用のユニットの多くが10~16センチほどのサイズなのはこれが理由だ。一般的な音楽に含まれる音域ならばこのサイズでも十分にカバーすることができる。

フルレンジスピーカーユニット
FOSTEX P800K

画像2: www.amazon.co.jp
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複数のユニットを組み合わせて使う場合はどんな時?

●大きな部屋や大音量で再生する場合に有利

一方で、大きな部屋で大音量で再生する場合や、広いホールの響きもしっかりと再現するにはより大口径の振動板を持ったスピーカーが必要になる。また、高音域をより明瞭に再現するには、高音の再生に適した小口径の振動板を使う方が音質的に有利にもなる。こうなってくると、ひとつの振動板でカバーするよりも、役割を分担して複数のユニットで構成するほうが、有利になる。

複数のユニットでスピーカーを構成した場合に、問題になってくるのが音の位置のズレ。低音、高音のそれぞれのユニットから音が出るので、厳密に言えばふたつの位置から音が出ていることになり、音の定位がにじんだり、ステレオ音場の空間感が再現しにくいといった問題が出てくる。ユニットごとに振動板の素材が異なると、それぞれの音色の違いが全体の音に影響してしまうという問題もある。

フルレンジスピーカーの音質は?

●一般的な広さの部屋なら高音質で使い勝手がよい

フルレンジスピーカーは音源がひとつしかなく、原理的に音の位置のズレや音色の違いが生じない。シンプル・イズ・ベストというわけで、これが「理想のスピーカー」と呼ばれる理由だ。特に音の定位の良さやステレオイメージの再現は、フルレンジスピーカーならではの良さがあるのは間違いない。大音量再生や広い部屋での再生には向かないが、一般的な家庭ならばサイズも小型で使い勝手がよいことも魅力だろう。

まとめ

●スピーカーのことを知るほどオーディオが面白くなる!

複数のユニットで構成されたスピーカーでも、音の位置のズレを解消する同軸構造ユニットの採用や、仮想同軸配置などの工夫を持つものもあるし、フルレンジスピーカーのような音の定位や空間感の再現を可能にしているスピーカーも数多くある。

さまざまなスピーカーの構成や音質的なメリットを知り、使う場所や聴く音量によって使い分けることも重要。さまざまなスピーカーのユニット構成や設計上の工夫などを詳しく知ったうえで、いろいろなスピーカーの音を聴いてみると、オーディオがより奥深く楽しめるようになるだろう。

画像: ●スピーカーのことを知るほどオーディオが面白くなる!

◆鳥居一豊
オーディオ、AVの分野で活躍するAVライター。専門的な知識をわかりやすく紹介することをモットーとしている。自らも大の映画・アニメ好きで自宅に専用の視聴室を備え、120インチのスクリーン、有機ELテレビなどを所有。サラウンド再生環境は6.2.4ch構成。

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