スマホのスペック(性能)は分かりにくい。なかでもWi-Fiの性能・速さは具体的な数値を目にする機会も少なく、自分のスマホや、これから買おうと思っているスマホのWi-Fi性能を把握しにくいものだ。ここでは、現状のスマホのWi-Fi性能(速さ)と、Wi-Fi性能を決める要素について解説する。
スマホのWi-Fi性能は、採用されているWi-Fi規格で決まる
Wi-Fiとは「無線LAN」の別称だということは、みなさんご存じだろう。Wi-Fiに表1(※)のような通信規格がある。
スマホは機種ごとに、Wi-Fiのいずれかの規格を採用しており、その規格の性能がスマホのWi-Fi性能の上限となる。
規格名 | 使用周波数帯 | 理論最高速 |
---|---|---|
IEEE802.11b | 2.4GHz | 11Mbps |
IEEE802.11a | 5GHz | 54Mbps |
IEEE802.11g | 2.4GHz | 54Mbps |
IEEE802.11n | 2.4GHz | 72Mbps-600Mbps |
IEEE802.11n | 5GHz | 72Mbps-600Mbps |
IEEE802.11ac | 5GHz | 433Mbps-6900Mbps |
結論からいうと、現在発売されているスマホは、ほぼ例外なく「IEEE802.11ac」(アイトリプルイー・はちまるにーてんいちいち・エーシー)、通称「いちいちエーシー」という規格が採用されている。
スマホの代表格であるiPhoneでいうと、2014年秋に発売されたiPhone6から11acが採用されており、他社のスマホもそれ以降続々と採用しているので、現在販売されているすべての機種、およびユーザーの手元にある大半の機種は、11acを採用していると考えていいだろう。
11acの速度はアンテナ数と帯域幅で決まる
しかし、表を見ればわかるように、11acの性能には幅があり、「11acを採用しているスマホ」というだけでは、具体的にどの程度の性能を持っているのかを見極めることはできない。
なぜ11acの性能には幅があるのか。それは11acが通信する仕組みにある。
11nと11nの次に登場した11acには、「MIMO」(マイモ)と呼ばれる技術が採用されている。
これは、送信と受信それぞれに複数のアンテナを使って並列にデータ通信を行うことで、通信速度を速めるというものだ。
IEEE802.11n | EIEEE802.11ac | |||
---|---|---|---|---|
20MHz | 40MHz | 80MHz(Wave1) | 160MHz(Wave2) | |
MIMOなし(アンテナ1本) | 72Mbps | 150Mbps | 433Mbps | 866Mbps |
MIMO2×2(アンテナ2本) | 144Mbps | 300Mbps | 866Mbps | 1.7Gbps |
MIMO3×3(アンテナ3本) | 217Mbps | 450Mbps | 1.3Gbps | 2.6Gbps |
MIMO4×4(アンテナ4本) | 289Mbps | 600Mbps | 1.7Gbps | 3.5Gbps |
MIMO8×8(アンテナ8本) | 3.5Gbps | 6.9Gbps |
上の表2(※)を見てもらうとわかるように、アンテナの数が増えるほど、通信速度も速くなる。
また、アンテナ1本が使用する電波の幅(帯域幅)も規定されていて、速度性能の上限は帯域幅×アンテナの本数で決定されるわけだ。
ちなみに、11nも11acも帯域幅は2種類用意されており、18年冬現在では11nは40MHz、11acは80MHzが主流となっている。
あなたのスマホのWi-Fi性能は「867Mbps」
では、実際のスマホは、どのレベルの性能を持っているのか。
iPhoneの場合、iPhone6から11acが採用されているが、iPhone6は帯域幅80MHzのアンテナ1本を搭載していて「433Mbps」となっている。
それ以降、iPhone6Sから最新のiPhoneXS・iPhoneXS Max・iPhoneXRまで帯域幅80MHzのアンテナを2本(MIMO2×2)搭載しているので「887Mbps」の性能を持っていることになる。
Androidの場合は、メーカーごとに11ac採用時期が微妙に異なるが、ほとんどのメーカーがiPhone6Sから大きく遅れることなく11acの2本アンテナを採用しており、現行機種はほぼすべて「867Mbps」の性能を持っている。
ちなみに、Androidスマホは、ドコモから販売されている機種に関しては、ドコモの製品ページの「スペック」にWi-Fiの通信速度性能が記載されている。
まとめ
スマホのWi-Fi性能は、現状では機種による差がほとんどないので、キャリアやメーカーが熱心にアピールしない。
しかし、これを把握していないと、自宅にWi-Fiを導入しようとするときに、どんなWi-Fi機器を用意すればいいのかわからなくなってしまう。
ぜひ、「MIMO2×2(2本アンテナ)の867Mbps」と覚えておこう。
◆福多利夫
デジタル家電関連の記事を得意とする、モノ系ホビー系のフリーライター。一般財団法人家電製品協会認定の家電総合アドバイザーでもある。長年にわたり月刊特選街の製作に携わり、現在は気になる分野を比較検証する「何でもズバッと比べ隊!」を連載中。パソコン関連の著書も多い。