【小西博之さん】止まらない耳鳴りへの心構え「耳もとで鳴くのはセミではなくかわいい鈴虫」

美容・ヘルスケア

先生は「普通の人は耳鳴りをセミの鳴き声みたいだと感じるけど、君の耳にいるのはかわいい鈴虫だと思いなさい」っていうんです。耳鳴りは、疲れがたまると大きくなります。だから、疲れの度合いを鈴虫が教えてくれるんだと考えるようになりました。【体験談】小西博之(タレント)

プロフィール

小西博之(こにし・ひろゆき)
1959年、和歌山県生まれ。愛称は「コニタン」。大学卒業後、NHK『中学生日記』の体育教師役でデビュー。その後、萩本欽一さんのバラエティ番組『欽ちゃんの週刊欽曜日』にレギュラー出演。欽ちゃんファミリーの一員として人気を得る。現在は、俳優として多数のドラマ、映画に出演する。

うるさくて眠れなかったことは一度もない!

突発性難聴を発症したのは、18年前です。

目が覚めたら、飛行機で耳が詰まるような感じがありました。つばを飲んだり耳抜きをしたりしても、よくならない。さらに、ものすごい耳鳴りも起こってました。「ゴーッ」という低音と、「キーン」という高音が同時にです。しかも、天井がぐるぐる回る猛烈なめまいにも襲われました。

こんな状態だったのに、「病気だと思うから病気になる」なんて考えちゃったんです。なんとか2~3日我慢すればよくなるかも、と。

しかし、これが全然よくなりません。耳鳴りもめまいも一日中続いていて、イライラが募りました。耳鳴りがひどくて、3日間で一睡もできません。

こんな状態のまま、1週間も我慢したけど限界だと思って、耳鼻科に行ったら突発性難聴だと診断されたんです。しかも、すぐに受診しなかったせいで、右耳の聴力は戻らないと宣告されました。あきらめ切れずに三つ病院を回りましたけど、どこでも同じ結果でした。

こうなると、ドラマの撮影なんてうまくいかない。すっかり落ち込んでいたら、知り合いがある著名な病院を紹介してくれたんです。名医と噂の高い、まるで水戸黄門のような雰囲気の高齢の先生でした。

その先生がにっこりして、「今日は来てよかったね」というから、「ああ、治るんだ!」と思うじゃないですか。期待で胸がいっぱいでしたよ。

すると、「普通の人は耳鳴りをセミの鳴き声みたいだと感じるけど、君の耳にいるのはかわいい鈴虫だと思いなさい」っていうんです。先生は、戸惑う僕にはかまわず、「セミはうるさいけど、鈴虫の鳴き声はかわいいだろ。耳の中で大事に飼ってあげなさい」って。

これで、診察は終り(笑)。実は、僕は呆然としながらも、途中から涙が止まりませんでした。先生の言葉が胸に響いたからです。それは、僕の師匠である萩本欽一の教えにも通じることだったんです。

僕たち欽ちゃんファミリーは、大将の教えを胸に刻んでいます。「とにかく一生懸命やる。責任は全部自分。失敗してもそれを受け入れないといけない。悔しかったら泣きなさい。悪いときにしっかり落ち込むから、次に上がることができるんだ」

20代のころはこの教えを頭で理解しているだけでしたが、そのときは、ストンと腑に落ちました。悪いことも受け入れれば、新しい展開が見えてくるんだ、と。

その晩、僕は、発症後10日めにして、初めて熟睡できました。もちろん、耳鳴りは続いていましたが、全く気になりません。それ以来、耳鳴りがうるさくて眠れなかったことは、一度もないんです。

少しでも異変を感じたらすぐに耳鼻科へ行こう!

耳鳴りは、疲れがたまると大きくなります。だから、疲れの度合いを鈴虫が教えてくれるんだと考えるようになりました。耳鳴りは、僕の健康のアドバイザーなんです。

もしも、残念ながら、突発性難聴から耳鳴りに悩まされるようになった皆さんには、僕のような考え方もあることをお伝えしたいんです。

耳鳴りが起こると眠れなくて、イライラしたり憂鬱になったりするでしょう。僕の耳鳴りは、今でもすごい音がしてますが、自分の一部として受け入れて気持ちを切り替えることもできるんです。

突発性難聴の3年後、腎臓ガンになりました。死んでもおかしくない状態でしたが、なんとか乗り切ることができました。

宣告された日の夜は、泣きまくってドン底まで落ち込み、翌日には気持ちを切り替えて病気を受け入れられたんです。

僕の経験からいえることは、少しでも耳に異変を感じたら、すぐに耳鼻咽喉科に行ってください、ということです。もし、なんでもなかったとしてもいいじゃありませんか。「思い過ごしだったな」って、笑っちゃいましょう。

耳に限らず、半年に1回くらいは病院で「どこかおかしくありませんか?」って相談する習慣を持ってください。そうしたことが、かかりつけの医師の先生を作ることにつながります!

この記事は『壮快』2019年9月号に掲載されています。

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