ちょっとの工夫で写真が断然うまくなるプロ技を伝授! ここでは「自然編」として、紅葉・花・滝や渓流・海などを撮影する方法を紹介する。例えば、一枚の葉は裂片の先端にピントを合わせて撮影したり、滝や渓流は遅めのシャッター速度で撮ると、水の流れが大きくブレて幻想的な写真に仕上げることが可能だ。
解説者
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フォトグラファー
吉森信哉(よしもり・しんや)
キメ技 自然編(1)紅葉をクッキリ撮るなら、PLフィルターが効果的!
紅葉撮影のポイントは、何といっても”色鮮やかに仕上げる”ということだろう。カメラの仕上がり設定を「ビビッド」や「風景」に設定するのも一案だが、最も効果的なのがPLフィルターの使用である。このフィルターには反射除去効果があり、葉の表面の反射を除去することで、紅葉本来の美しい色が再現できるのだ。
ただし、被写体や反射状態によっては、目立った効果が出ない場合もあるし、逆に、効果が過剰になる場合もある。そのあたりを見極めながら、紅葉撮影に活用してほしい。〈吉森〉
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反射除去の効果を確かめつつ撮ろう
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真っ赤な紅葉の枝が目を引く風景。その色をクッキリ撮って強調するため、PLフィルターを使用した。
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レンズにPLフィルターを装着したら、フィルター前枠を回転させ、反射除去効果を調整する。
キメ技 自然編(2)紅葉は主役の葉の先端にピントを合わせよう
樹木の全体から一枚の葉まで、紅葉の撮り方はさまざま。特に、アップで撮りたい場合は、ピント合わせに注意したい。望遠レンズを使用したり、紅葉に極端に接近すると、被写界深度(シャープに見えるピント位置前後の範囲)が浅くなる。だから、的確な部分にピントを合わせないと、不鮮明な印象の写真になってしまうのだ。
枝単位であれば、その中で目を引く葉にピントを合わせるといい。また、一枚の葉をアップでねらう際には、目立つ裂片の先端部分にピントを合わせると、シャープな印象になりやすい。〈吉森〉
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被写体により、的確な部分にピントを合わせる
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マクロレンズによるクローズアップ。太くて目立つ裂片の先端にピントを合わせた。
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木漏れ日を浴びる逆光の紅葉。その枝の中から、大きくて最も光を浴びる葉をねらった。
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一枚の葉なら裂片の先端にピントを!
キメ技 自然編(3)花はコンティニュアスAFと追尾AFで撮ろう
屋外の花撮影で厄介なのが、風による揺れ。それによって構図が変わったり、ピントが外れたりするからだ。特に、ピント外れは、明らかな失敗作につながる。
そういう難条件でも、確実なピント合わせが可能なのが「コンティニュアスAF+追尾AF」設定。コンティニュアスAFは、シャッター半押しからシャッターが切れる直前までAFが作動し、スポーツや乗り物などの撮影で多用されるAFモード。追尾AFは、AF枠内にとらえた被写体を、被写体の移動に合わせて追尾するAFエリアモードである。
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2種類の機能を駆使し、確実にピントを合わせる
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最近のカメラの追尾AF機能は、とても高性能。大きく揺れる花もみごとに追尾した。
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オリンパス製カメラには、AF方式の中に「追尾AF」というモードが搭載されている。
キメ技 自然編(4)花は周辺ではなく手前にピントを合わせよう
被写界深度が浅くなる撮影では、花の一部分にしかピントが合わないこともある。そういう状況では「どの部分にピントを合わせるか」が重要。一般的には”シベの先端にピント”といわれるが、シベが目立たない場合は無理だし、シベが見えない花も多い。”その花の最も目立つ部分にピント”が正解だろう。
特に目立つ部分がない場合は、できるだけ手前(近い)部分にピントを合わせるといい。被写体の手前部分がボケてしまうと、奥の部分がボケた写真よりもピンボケっぽい印象になるからだ。
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手前に合わせるというのが鉄則
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ダリアを斜めアングルでねらう。手前の花弁にピント。後方はボケるが、不自然さはない。
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奥の花弁にピントを合わせると、手前の花弁が大きくボケて、全体的にピンボケの印象。
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近いほうにピントを!
キメ技 自然編(5)花を撮るときは日の丸構図を恐れるな
被写体を画面の中央に配置する「日の丸構図」は、単調で平凡な写真になりやすく、”よくない構図”として語られることが多い。だが、本当に単調で平凡な写真になるかどうかは、被写体の形状や画面内での大きさによって変わる。
一輪の花を正面から撮る場合、周囲の空間が広めだと、確かに日の丸構図になりやすい。だが、周囲に枝葉やツボミなどがあって、それらとのバランスが取れていれば、花が画面中央でも不自然さはない。むしろ、日の丸構図を避けるためだけに被写体の位置を変更することのほうが問題だ。
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周囲とのバランスに留意し、画面中央に置く
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花は画面中央だが、左側には枝、右側にはツボミがある。そのため、変化に富んだバランスのいい構図となっている。
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画面中央に一輪のバラ。周囲は変化のないボケた背景。典型的な日の丸構図である。
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日の丸構図は必ずしもダメではない
キメ技 自然編(6)花の群生は手前に見どころを持ってこよう
同じ種類の花が密集して咲くさまは、一輪や二輪の花とは違うダイナミックさが魅力。そういう群生を撮る場合、できるだけ余計な空間(花のない部分)を排除し、花の密度を高めたい。
その際に悩むのが、「どこにピントを合わせるか」ということ。群生内に目立つ花があれば、そこに合わせるといい。
だが、目立つ花がない場合、撮影範囲内の手前から奥までの距離の“手前1/3”くらいの位置にピントを合わせる。
そうすれば、ピント位置前後のどちらかが極端にボケるといった不自然な描写になることはない。〈吉森〉
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手前1/3の距離の部分にピントを合わせる
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この写真では、画面中央あたりが手前1/3の距離になる。前後の描写も自然に見える。
キメ技 自然編(7)水の流れは1秒より長いシャッターで撮ろう
滝や渓流などの水の流れは、遅めのシャッター速度で撮影すると、流れが大きくブレて幻想的な写真に仕上がる。
遅めのシャッターといっても、1/30秒や1/15秒程度ではない。もっと遅い(低速な)シャッターでないと、十分なブレ効果は得られない。
適切なシャッター速度は、水の量や流れの勢いで変わるが、1秒より長い速度なら、ほとんどのケースで満足できる結果が得られるだろう。
だが、ここまで低速になると、手ブレで画面全体がブレる危険性が高いため、基本的に三脚使用が前提になる。
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低速シャッターで幻想的な写真になる
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カメラをシャッター速度優先モードにして、「1秒」の設定で撮影。幻想的に仕上がった。
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光量を減らせるNDフィルターを使用すれば、日中でも1秒以上の低速撮影が可能になる。
キメ技 自然編(8)海を撮るときはプラスαの要素を見つけよう
広々とした海の景色は、誰もがカメラを向けたくなる魅力的な被写体である。だが、実際に海を撮影してみると、意外と単調で、絵になりにくい……。そう感じる人は多いだろう。
しかし、海の上や周辺にある別の要素を取り入れると、画面にメリハリが生まれて、開放感や奥行き感のある写真に仕上げられる。
例えば、海の割合を抑え、雲が流れる青空を広く入れる。海岸を歩く人や沖合の舟を小さく入れる。
こういったアプローチによって、海の広大さや奥行きなどが表現できるのだ。〈吉森〉
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海以外の要素を入れて海の広さを表現する
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防波堤にある白い燈籠と、海に浮かぶ舟。それだけでも絵になるが、青空を広めに入れて開放感を高めた。
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貨客船の周囲を飛び回るたくさんのカモメたち。そのうちの1羽が、近くの手すりに止まった瞬間をとらえた。
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空を大きく入れるのも一つの手
解説/吉森信哉(フォトグラファー)