今の日本の家電メーカーが作る空気清浄機は、2つの特徴があります。1つめは、椅子での生活が基本であること。そしてもう1つは、多機能化です。典型的な例が、加湿器との融合。空気清浄機、加湿器共に床置きだと場所を取ります。このため合体させる。だから設置場所を取らない製品のニーズが高まる、となるわけです。その結果、ちょっといい空気清浄機は、製品の「高さ」がかなり高い。
なぜアメリカで売れたのか、考えてみた。
ところが、椅子での生活が当たり前のアメリカで、なんとロースタイルの空気清浄機、韓国Coway(コーウェイ)社の「AIRMEGA MIGHTY(エアメガ・マイティ) AP-1512HH」が、売れまくったそうです。値段は222ドル(US Amazon価格=約2万4000円)。スタイルが椅子&ベッド生活のアメリカで、あまり適切とは思えない「ロー」が売れたというので、正直ビックリしました。
なぜかなぁと思い、取り寄せて使って見ました。その中で、「なるほど」と見えてくるところがありましたので、レポートしたいと思います。
「AIRMEGA MIGHTY」は、床面積目安:〜49.5m2(約30畳)、8畳を約10分でキレイにする空気清浄機で、いろいろな機能が付いたモデルではありません。性能は「並みの上」というところでしょうか。まぁ、普通の性能です。
ところが、このモデルの魅力は、数値に出てこないところにあります。いや、数値化されてはいるのですが、分かり難いと言った方がイイでしょう。
それは「サイズ」です。
幅:42.7cm、高:46.5cm、奥:24.3cmですから、トートバックに似た大きさです。そして、重さ:5.6kg。取っ手が付いており、容易にあちこちに持って行けるのです。
「部屋」なのか「人の周り」なのか。
昨年、花粉症の友人と一緒にテストした結果分かったのは、ニア・フィールドで空気清浄機を使用すると、ポータブルサイズでも十分効果がある(=花粉症の友人が安眠できる)ことが分かりました。このため、私は、空気清浄機は「2つに分けて考えるべき」と考えています。
1つめは、空気清浄機は「位置を固定して使用する」という考え方です。最も一般的な考え方です。これで注意すべきは、そのとき使用する空気清浄機は、大きく、パワフルであることが必要だ、ということです。部屋全体を清浄するので当たり前のことです。また、この「部屋全体をキレイにする」という考え方は、分かりやすく、律儀な日本人が好む方法です。
このためでしょうか、日本の規格は、「部屋をどの位で清浄化できるか」で決められています。日本の建築は法律で、30分に一度、部屋の空気が入れ替わるように定められています。24時間の強制換気などはこれに準拠しています。このため、空気清浄機の最低性能は「30分で空気を清浄化させること」です。
逆に、海外に多いのは、オープンスペース。個人のリビングでも、扉が無いところもあります。こうなると、部屋ではなく「人」がポイントになります。要するに、部屋の隅々なんて知りません、空気清浄機は「常に人の隣に」という考え方です。実際は部屋も浄化はされていくのですが、「隅々まで」という考えではありません。
このため、海外では、空気清浄機は「1分間にどの位の空気を清浄できるのか」で評価することが多いのです。元々はアメリカの規格ですが、中国もこれも採用。国際的にはこの考え方に賛同する国が多いようです。
そう考えると、アメリカで売れた理由も分かるような気がします。「AIRMEGA MIGHTY」は、横に置きやすいのです。持ち運びやすく、使いやすい。222ドルなら買ってもイイかなぁという感じだったのだと思います。
COWAY 空気清浄機
AIRMEGA MIGHTY
AP-1512HH(B)
日本人の私は、こう感じた。
では、日本人の私はどう感じたかというと、起きている間の「普段使い」は、アメリカと変わりないです。なるべく近くに置いて作動。そのお陰かどうかは分かりませんが、この冬、風邪一つ引かず過ごしています。
しかし、しみじみイイと思ったのは、寝るとき。私は布団派ですから、頭は床に近い、かなり低い位置になります。この頭近くに空気清浄機をセットするのですが、通常の空気清浄機の場合、ちょっと高さがあるので怖い。地震等で万が一倒れたら嫌だ、と思うのですね。
ところが、「AIRMEGA MIGHTY」は、低い。実に安心。よい睡眠を取るうえで、「安心」は大きな要素です。そのうえ、動作音もかなり抑えられています。ですから、より「近く」に置けます。より確実に、布団などから出るハウスダスト、花粉類も始末してくれます。
空調家電のイロハのイは、「畳数合わせ」です。使用想定場所の畳数以上で、なるべく速く浄化するモノがベストです。これは、その「部屋を」という考えです。部屋ではなく「人」を中心とすると、超凄い性能でなくてもいいわけです。単純に性能ではなく、自分に合った使い方で選べるわけです。
こうなると、空気清浄機らしからぬデザインも、かなりクールに見えてきます。この「らしからぬデザイン」が好きな人は多いのではないでしょうか。
最後に、思ったこと。
ということで、大いに「AIRMEGA MIGHTY」を気に入ったわけですが、残念なこともあります。日本のAmazonで確認する限り、価格が3万2780円。アメリカよりちょっと高いのです。日本市場を本気で奪取するつもりなら、「安くてイイモノ」で評判を取ることが重要です。ここら当たりは、もう少しの頑張りを期待したいと思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。