キャベツのダイエット効果については、広く知られています。ただ、キャベツなどの生野菜を大量にとると体を冷やしてしまい、体は脂肪を蓄積しようとします。では、どうすればいいのでしょうか?答えは、「ヒハツ」というスパイスにありました。近年の研究で、ヒハツに含まれる「ピペリン」という成分に、傷んだ毛細血管を修復し、毛細血管の血流をよくする作用を助けることが明らかになっているのです。なお、本稿は『ゆほびか2020年6月号』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。【解説】井上宏一(南砂町おだやかクリニック院長)
解説者のプロフィール
井上宏一(いのうえ・ひろかず)
1971年生まれ。兵庫県神戸市出身。2000年、順天堂大学医学部卒業後、一つの臓器だけを専門にするのではなく、人間の体全体を診ることができる医師を目標に、小児科医、内科医として、さまざまな病院で研鑽を積む。日本内科学会認定総合内科専門医、日本抗加齢医学専門医、南砂町おだやかクリニック院長。
キャベツのダイエット効果を高めるスパイス
今年は暖冬の影響もあり、この時期に出回る野菜は比較的安く手に入るようです。なかでもキャベツは、家計に優しい野菜として優等生と言えるでしょう。
このキャベツのダイエット効果については、広く知られています。まず、その噛みごたえです。咀嚼回数が自然と増え、満腹中枢が刺激されるため、少量でも満腹になります。100g食べても、エネルギー量はわずか23kcalのため、とてもヘルシーな野菜です。
食物繊維も非常に豊富なため、腸内環境をキレイにし、消化を促してくれます。食物繊維は消化酵素で分解されずに大腸に届き、腸内細菌のエサになるのですが、その過程で酪酸やプロピオン酸、酢酸などの短鎖脂肪酸が作られます。酪酸やプロピオン酸は食欲を抑え、過食を防ぐ腸管ホルモンを分泌します。酢酸は、脳に直接作用して、食欲を抑える働きをしてくれます。
栄養素で言えば、免疫力アップに役立つビタミンC、胃腸の粘膜を正常に保つビタミンU、骨からカルシウムが流出するのを防ぐビタミンK、造血のビタミンと呼ばれる葉酸など、栄養素が豊富に含まれています。
ただ、ダイエットのためにキャベツなどの生野菜を大量にとると、体を冷やしてしまいます。体が冷えると、身体は当然、脂肪を蓄積しようと働きます。そのため、生野菜を多くとることは、ダイエットに向きません。では、どうすればいいのか?
その答えは、「ヒハツ」というスパイスにありました。
毛細血管の血流を促し太りにくい体を作る
私は毎日の診察の際、患者さんの体の冷えの有無を意識しながら診ています。季節や性別、年齢に関わらず、多くの人が自覚症状なしに冷えからくる不定愁訴に悩んでいることを実感しています。
体や内臓の冷えを改善するために、ヒハツはとても効果的な食材です。ヒハツは、「ロングペッパー」「ヒバーチ」などとも呼ばれ、さわやかな香りがある細やかな粒状で、コショウの代替品としても使えます。
ヒハツは、「ロングペッパー」「ヒバーチ」「ナガコショウ」「島コショウ」などとも呼ばれる。さわやかな香りがある細やかな粒状で、コショウの代替品としても使える。スーパーや百貨店、アマゾンや楽天でも購入できる。
インドの伝統医学であるアーユルヴェーダでは、ヒハツは古くから体の冷えを取る薬草として用いられてきました。さらに、近年の研究で、ヒハツに含まれる「ピペリン」という成分に、傷んだ毛細血管を修復し、毛細血管の血流をよくする作用を助けることが明らかになっています。
毛細血管の血流をよくすることは、冷えを解消するうえで非常に重要です。人体の血管の99%は毛細血管であり、毛細血管の血流が悪くなると、血液とともに体熱を全身にくまなく運ぶことができなくなるだけでなく、熱を生み出す体の働きそのものも低下してしまうからです。
私たちの体熱は、細胞内にあるミトコンドリアという細胞内小器官で、酸素と水、栄養素(グルコース)を用いてATPというエネルギー物質を作り出す過程で生まれます。体内で起こるあらゆる生体活動に欠かせない酵素は、体温が1℃下がると働きが50%も低下し、代謝、免疫力、ホルモンバランスなどが悪くなり、あらゆる体調不良の原因になります。
つまり、毛細血管の血流が悪く、細胞にじゅうぶんな酸素が供給されないと、燃料はあっても燃えない状態になり、体や内臓が冷えてしまうのです。この「燃料があっても燃えない状態」とは、「太りやすくやせにくい体」と言い換えることもできます。 ヒハツは、直接的に内臓温度を上昇させ、全身の毛細血管を修復して血流をよくするので、冷え解消に総合的な効果が期待できるのです。
コショウの代わりに幅広い料理に使えるため、サラダや炒め物はもちろん、みそ汁やスープなどの汁物とも相性抜群です。
つまり、このヒハツをキャベツに振りかけたレシピこそが、「脂肪燃焼キャベツ」なのです。
「冷え」を改善し自己治癒力を強化しよう
私は、あらゆる病気は、「自己治癒力」と「自己病気力」のバランスが崩れた結果だと考えています。
自己治癒力とは、人間にもともと備わっている「病を治し癒やす力」のことで、具体的には免疫や自律神経、内分泌(ホルモン)系の働きが支えています。自己病気力とは、その人のストレスや思考パターン、不健康な生活習慣など、病気につながるようなライフスタイル全般です。
今、表に出ている症状を薬などで抑えたとしても、自己治癒力が弱く、自己病気力が強い状態だと本当の意味で健康とは言えません。いずれ再発したり、別のかたちで不調や症状が現れたりすることもあります。そのために私は、西洋医学だけでなく東洋医学の視点も取り入れて、患者さんの体全体を診る医療を心がけているのです。
そうしたホリスティック医学の観点から見ると、「冷え」は非常に重要な問題です。
ですから、あなたの生活習慣全般を見直したうえで、今回ご紹介した脂肪燃焼キャベツを食生活に取り入れることをお勧めします。冷えの解消効果が、より実感できるでしょう。
本稿は『ゆほびか2020年6月号』(マキノ出版)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
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