最近の4Kカメラ(実売価格10万円前後)は、家庭用とはいえ、従来のHD(2K)カメラに比べると、その表現力は飛躍的に向上。小型のハンディタイプなら、家庭用と業務用の垣根がほとんどない。その一方で、スタジオで使用するような大型の4Kテレビカメラは別物。今回は、専門家に解説してもらった。
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業務用カメラと家庭用との価格差の理由は?
読者から質問
先日、家庭用4Kビデオカメラを購入し、2K(ハイビジョン)とは明らかに違う、鮮明な映像に感激しました。そこで質問ですが、放送局が使用する数百万円の4Kテレビカメラと数万円の家庭用のビデオカメラの価格差は、何によるものなのでしょうか?(U.Tさん 大阪府 39歳)
専門家の回答
編集部:
この質問は、AV評論家の藤原陽祐さんに聞きましょう。
専門家:
「確かに最近の4Kカメラ(実売価格10万円前後)は、家庭用とはいえ、従来のHD(2K)カメラに比べると、その表現力は飛躍的に向上。4倍のきめ細かさで、色再現、階調性についても磨きがかかり、プロ用としても十分通用するレベルです。小型のハンディタイプなら、家庭用と業務用の垣根がほとんどなくなっています。価格はどうしても業務用のほうが割高になりますが、基本画質については、そう大きな違いはないと考えていいと思います」
編集部:
ハンディタイプなら家庭用と業務用の差はほとんどないということですね。
専門家:
「そうです。ただ、スタジオで使用するような大型の4Kテレビカメラは別です。スタジオカメラの場合、価格はケースバイケース、つまりメーカーと放送局との関係性やオプションの内容で決まるのですが、だいたいレンズが1本300万~500万円、カメラ本体が500万~700万円といったところでしょうか。
まずレンズですが、口径・長さなど、そのサイズの違いは一目瞭然。スタジオ仕様の大口径レンズは今でも一本一本、熟練の職人により手磨きされ、桁違いの面精度が確保されています。明るく、しかも画面全面で4Kを超える解像力が保証されるわけですが、サイズやコストの制約を受ける家庭用では、ここまでの性能は期待できません。ズーム倍率についても、家庭用は20倍前後ですが、スタジオカメラは100倍を超えるレンズが数多く用意されています。当然、画角も望遠端、広角端ともに広がることになりますが、特に広角端については、家庭用の25ミリ前後に対してスタジオ用は10ミリ前後(いずれも35ミリ換算)と、より広く、鮮明に被写体をとらえられることになります。
スタジオカメラの撮像素子のタイプはさまざまですが、そのサイズとシステムが異なります。家庭用4Kカメラで最も採用されているのが1/2.5型CMOSセンサー(単板式)ですが、スタジオ用では大判の2/3型CMOSセンサーによる3板式が広く採用されています。センサーの面積は約3倍で、それがRGB用に独立して配置されるため、より高い感度が確保され、色純度も有利になります。結果としてスタジオカメラでは、感度的に厳しくなる夕暮れや夜景のシーンなどでも、ノイズを抑えつつ、鮮明な画像が確保できるわけです。
このほか、業務用カメラはピント合わせ、感度設定などの各種マニュアル機能が充実していますし、カメラとしての耐久性も大きく異なります」
編集部:
性能差がすごいので、価格差が大きいのも当然だと感じますね。ありがとうございました!
イラスト/はやし・ひろ