読者から「雨が強く降ると、BS2Kのほうは何でもないのに、BS4Kのチャンネルは受信不能になることがある 」という質問が届いた。今回は、AV評論家の藤原陽祐さんに解説していただいた。
大雨が降ると、BSの4Kが受信できない!
読者からの質問
雨が強く降ると、BS2Kのほうは何でもないのに、BS4Kのチャンネルは受信不能になることがあります。これはなぜでしょうか?(I.Hさん 静岡県 88歳)
編集部:
この質問は、AV評論家の藤原陽祐さんに聞きます。
専門家の回答
専門家:
「最近、超大型台風やゲリラ豪雨などが増えていることもあって、衛星放送であるBSの受信関連のトラブルが増えているようです。まず、BS放送がなぜ雨の影響を受けやすいのか、簡単に説明しておきましょう。
これは、電波を伝送する周波数帯域と深く関係しています。現在、地デジは470M〜770Mヘルツの帯域で伝送されていますが、BSについては11.7G〜12Gヘルツという超高帯域を利用しています。(ヘルツは1秒間当たりの波の揺れる回数(周波数)を表す単位。1Gヘルツ=1000Mヘルツとなる。
。)
12Gヘルツ帯ともなると、特性としては光に近づき、遮るものがなければ、微弱な電波でも大量のデータをより遠くまで正確に届けられます。しかし、雨や雪などの影響を受けやすいという特質(降雨減衰)もあります。
BS放送の基本的な周波数帯域はアナログの時代から変わっていませんから、アナログ/デジタルを問わず、BSは大雨・大雪が降ると映像も音声も乱れてしまうという悩みを抱え続けているというわけです。
雨が小降りになり、やんでしまえば、映像・音声とも安定した状態に戻ることになりますが、その影響を最小限に抑えたいという場合は、より大きなパラボラアンテナの設置が推奨されています。集められる電波が増えることで、受信障害を解消していこうという考え方ですが、実は、これも万能ではありません。たとえ直径1メートル前後の大型パラボラアンテナを設置したとしても、最近の台風やゲリラ豪雨では、映像・音声への影響を払拭することは不可能。しかも、大型のアンテナになるほど指向性が強くなるため、よりシビアな調整が強いられ、わずかなズレでも映像がブラックアウトする可能性が高まります。家庭用アンテナは、大きくても50センチ径前後に抑えておきましょう。
さて、通常のBSデジタル(2K)放送は問題なく視聴できているのに、BS4K放送が受信不能になるのはなぜかというご質問ですが、いくつかの原因が考えられます。まず、電波の種類の違いです。2Kでは右旋円偏波と呼ばれる電波が使われていますが、新4K8K衛星放送では、これに加えて左旋円偏波が使われるようになりました。この電波は、アンテナで受信したあと、右旋の伝送周波数の上の帯域(22.2G〜32.2Gヘルツ)に変換され、1本の同軸ケーブルで送り出されています。変換処理が入り、しかもより高周波の信号に変換されるわけですから、右旋で送られるBS4Kと比べると、伝送ロスや受信障害の影響など、条件としてはいっそう厳しくなると考えられます」
編集部:
まず、BS4Kでも、特に左旋だと、変換などの影響で降雨にはより弱いのではないか、ということですね。
専門家:
「そうです。次に、同じ右旋で送られる2Kと4Kとの比較で、後者の映像が先に乱れるというのなら、信号圧縮技術による違いが考えられます。2KではMPEG-2を使っていますが、新4K8K衛星放送では約4倍の高効率圧縮が可能なHEVCに変更されました。個人的には、これによって降雨減衰の影響も受けやすいように感じています。
わが家では、大雨のとき、左旋の8K→左旋の4K→右旋の4K→2Kの順に画像が乱れ始め、さらに雨が強くなると、8Kなどについてはブラックアウトしてしまうケースもあります。左旋円偏波伝送の難しさと、HEVCの信号処理の複雑さが、大雨のときの画質の乱れに少なからず関係しているように思われます」
編集部:
なるほど。MPEG-2とHEVCの違いも、影響があるかもしれないんですね。丁寧なご説明、ありがとうございました!
イラスト/はやし・ひろ