【ディスプレイオーディオとは?】iPhoneやAndroidとスマホ連携する車載機 カーナビ主流の日本で定着するか

家電・AV

最近、カーナビに代わって「ディスプレイオーディオ」を装着する動きが進み始めている。これはカーナビ機能を搭載しないAVユニットのことで、特に自動車メーカーが純正として相次いで採用するようになってからは日本でも認知度が急速にアップ。これまで海外でこれを展開していた市販カーオーディオメーカーも同様製品が相次いで登場させるようになっている。今回はそのディスプレイオーディオが日本でも普及するのか、そのメリット/デメリットを紹介したい。

執筆者のプロフィール

会田 肇(あいだ・はじめ)

1956年茨城県生まれ。大学卒業後、自動車系出版社の勤務を経てフリージャーナリストとして独立。カーAVやカーナビなど、カーエレクトロニクスの分野を中心にレポート活動を展開しつつ、カメラ系の評論も行う。日本自動車ジャーナリスト協会会員。
▼日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ会員)
▼走りも楽しいエコカーの実力(イミダス)

スマートフォンと接続

まず「ディスプレイオーディオ(DA)」について簡単にご説明しよう。DAは、ディスプレイを備えているため、見かけ上はカーナビとほとんど同じだ。しかし、冒頭でも述べたように、カーナビ機能は備えず、あるのはオーディオとして音声を出力するアンプを搭載するのみ。DVD/CDドライブを非搭載とする機種もある。これがDAと呼ばれる所以だ。

パイオニア/カロッツェリアのディスプレイオーディオ「DMH-SZ700」。6.8インチモニターを備えリモコンも付属。CD/DVDドライブは備えない

トヨタ「ヤリス」のディスプレイオーディオ。CarPlay/Android Autoには今年から無料オプションとなった

では、ディスプレイとアンプだけのDAをどうやって楽しむのかというと、手持ちのスマートフォンを、DAに有線、あるいは無線で接続し、iPhoneなら「Apple CarPlay」、Androidなら「Android Auto」を使うことが基本となる。

ケンウッドのディスプレイオーディオ「DDX5020S」。DVD/CDドライブも備え、ハイレゾ音源も再生できるなど多彩なソースに対応した。写真ではAndroidAuto起動中

このアプリ上で動作させることで、普段使っているスマホと同様にカーナビをはじめとする様々なコンテンツが楽しめるようになるのだ。つまり、DAはスマホがあって初めて役割を果たすと思って差し支えないだろう。

iPhoneを接続して表示されたCarPlayのメインメニュー。CarPlayに対応するアプリだけが絞り込まれて自動表示される

トヨタやスズキは独自のアプリを用意

最初の接続時には、利用を可能にする設定が必要だが、iPhoneでもAndroidでも、DAに接続すると見慣れたアイコンが画面上に表示される。これで、DAでスマホ内のコンテンツが使える状態となったことを示す。ただ、すべてのコンテンツが使えるのではなく、CarPlay/Android Autoそれぞれに対応したアプリのみが対象で、DA上には使えるアプリのみが表示される。

また、トヨタのDAやスズキのカーナビでは「SDL(Smart Device Link)」と呼ばれる独自のアプリを用意する。これは、自動車メーカーやサプライヤーが独自に立ち上げた規格で、CarPlay/Android Autoとは別に機能する。いずれも、カーナビ機能や音楽再生、さらには通話、スケジュールといった、スマホ内にあった機能を、DA上の大画面で使えるようになるのは、CarPlay/Android Autoと同じだ。

トヨタ「ヤリス」に標準装備されたSDL対応のディスプレイオーディオ。LINEカーナビやNAVITIMEが使える

目的地を探す時は音声で検索するだけ

スマホには、多くのアプリを入れている人がほとんどだと思うが、これを車載として使うには様々な制約がつきまとう。そんな中で大きな役割を果たすのが、DAで使える「音声によるコントロール」だ。スマホと同じように、CarPlayなら「Siri」が、AndroidAutoなら「Googleアシスタント」が使え、それは運転中であってもスケジュール管理や音楽再生、周辺スポットのチェックなども行える。これらがハンズフリーのままで行えるところがポイントだ。

CarPlayのMUSICを起動して表示されるメインメニュー。Appleのストリーミングサービスも利用できる。写真はケンウッドのディスプレイオーディオ「DDX5020S」

特に便利さを感じるのが、カーナビ機能で目的地を探す時。操作は音声で検索するワードを入力するだけでよく、従来のカーナビのように、メニューからカテゴリーを絞って・・なんてことは一切不要。それだけで、一発で行きたいところを表示できる。クラウド経由で対象を探すため、提供される情報も常に最新。認識率も高く、周辺施設を探したいときは本当に便利。一度使い始めたら手放せなくなることは間違いない。

CarPlayではウェイクワード「Hi、siri!」とを呼びかけると音声入力モードが起動する

測位状態は安定していない

ただ、DAでカーナビアプリを使うとき知っておくべきことがある。それは、自車位置の測位はGPSでのみ行われるのが基本で、測位状態は常に安定しているわけじゃない、ということだ(クラリオンは業務用機で車速パルスを併用)。

たとえば、トンネルの中では測位をストップしてしまうし、ビルが建ち並ぶ都市部ではGPSがビルの影響を受けて位置を大きくずらしてしまう可能性もある。Android AutoのGoogleマップではトンネルに入ったときの速度を継続して自車位置を表示させるが、それもあくまで擬似的なものであって正確ではない。

ケンウッドのディスプレイオーディオ「DDX5020S」で、CarPlayのマップアプリを表示。検索をタップすると目的地検索モードに入る

地図データがカーナビに比べチープ

それと、案内ルートについても、良く言えば個性的、悪く言えば不都合な案内をすることも少なからずあることも知っておいて欲しい。極端にショートカットするために、クルマ同士がすれ違えない狭い道を案内したり、高速道路をほとんど使わず、一般道を経由して案内することもある。さらに、交通情報も、CarPlayの純正ナビアプリは今もなお非対応だし、AndroidAutoの交通情報も、独自のプローブによるもの。馴染みのあるVICSの情報がすべて正しいとは言わないが、これらは全国レベルで安定した情報が提供できているとは限らない。

この要因は、使う地図データの情報が、カーナビに比べてチープであることにある。カーナビは、最初からローカルでデータをフルで置いておけるが、カーナビアプリの多くは、通信を経由するためにデータは可能な限り軽くしておく必要がある。そのため、道路の道幅情報や施設の入口情報なども削られ、ジャイロセンサーとのリンクも、道路の高低差情報が未収録であるために、その認識もできない。つまり、DAで使うナビ機能は、カーナビ並みの高精度な測位と案内は期待できないとの認識で使うべきものなのだ。

フォルシアクラリオンのディスプレイオーディオ「TY-1000A-B」は、ジャイロや車速パルスを併用できる機能を装備。首都高速中央環状線 山手トンネル内でも測位を継続できる

まとめ

スペインの自動車メーカー「SEAT(セアト)」のレオンに搭載されたディスプレイオーディオ。グローバルではこの流れが急速に進んでいる。

これらの状況さえ納得できれば、DAはかなり魅力的だ。市販されているDAは、価格も3万~4万円前後と少し高めのカーオーディオ並み。カーナビを買うよりは安い。特に、走行中でも音声入力で様々な機能が使えるのは、安全上としてもメリットがあるし、何よりこれを使うことの使い勝手は、DAに大きなアドバンテージがある。普段は、通勤とか買い物とか、知っている道しか走らないからカーナビはほぼ使わない。かといって遠くに出掛けるときはナビ機能はあると便利だ、そんな人に向けてDAは少しずつ日本でも普及していくものと予想される。

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