白物家電で、最先端と言われる日本市場。ダイソンがトップシェアを占めています。このダイソン、発明当初は、サイクロンシステムをいろいろなメーカーに持っていったのですが、断られたそう。ならば自分でと頑張り、今の地位までのぼりつめたのは家電でも数少ない、サクセスストーリーです。しかし、その一方で、頑張ったのが、紙パック掃除機。サイクロンに追いつけ、追い越せと奮闘努力しました。今の紙パック掃除機はそんな感じです。どこが、どうすごいのかをレポートします。
紙パック掃除機の1番のポイント
先日行われた共通テストは、受験生が着用するマスクの素材を「不織布マスク」とすることで乗り切りました。何故、あれだけ布マスクを使ってきておきながら、今回はNGなのかと、疑問を投げかける人もいましたが、マスクのフィルタリング性能を考えれば当たり前のことです。
何かをトラップするのに、フィルターを使う。これは昔からのお話。そうして、人はいろいろなものを分離してきました。
そう紙パック掃除機で一番のポイント。掃除機としてのあり方を規定しているのは、掃除機本体ではなく「紙パック」なのです。本体(掃除機)はそれを活かす器にしかすみません。
その矜持を示した紙パックが、日立にあります。それが紙パック「GP-2000FS」。ですが、本体に記載されているのは、「ナノテク高捕じんプレミアム衛生フィルター」。
掃除機の紙パックは、単なる「ゴミ袋」ではなく、貴方の生活を守る「フィルター」なのです。
紙パックが「フィルター」化した理由は?
では、何故、「紙パック」が「フィルター」化しなければならなかったのでしょうか?
それは日本の住宅事情によります。
もともと、日本は風通しのよい作りの住宅が理想とされてきました。夏を涼しく過ごすためです。ところが、これに「待った」をかけたのがエアコン。夏でも休みを取らず、仕事ができるようになります。
今や、一家に一台ではなく、各部屋に一台の時代です。当然、電気代を見ると、ここまで使ったのかと「青く」なります。となると、家から冷気を逃さないように「密閉度」がアップ。北欧並みの密閉度の家が当たり前になります。そして、そこに断熱材をいっぱい入れます。
四季の風を常に感じながら生活していた日本人は、風が通らない家で生活するようになったわけです。昔の家では、窓を開け部屋の中の埃を外(庭)に吐き出すのを覚えている方もいるかもしれませんが、いまではありえないですね。それぐらい外と途切れています。
これは掃除中もそう。基本は窓を開けて換気をしながらですが、春先花粉の舞う時期に、花粉症の人がそんなことは厳しい。ついつい窓開けなしで掃除をしてしまいます。それまで、掃除機の排気は、外へ出ていくのが当たり前だったのですが、排気は家の中にあるという時代になります。
先ほど、「花粉症」にちょっと触れましたが、家の中での最大の問題は「ハウスダスト」です。ハウスダストは埃を食べて生活するホコリダニのフン、脱皮カス、死骸のことです。まずハウスダストの埃は「綿埃」、紙粉、繊維クズのことです。普通に生活すると必ず出てきます。そしてホコリダニはそれを食べて繁殖します。そしてホコリダニが、いない家などなく、どこにでもいます。つまりハウスダストは、人が生活する限り、掃除機で取らない限り、増えていくのです。
さて問題は、ハウスダストのサイズです。大きくて、だいたい100μmですが、それが分子、原子のような最小ユニットではありません。どこかにぶつかると細かくなります。サイズで言うと、1μmのオーダーは当たり前ではないでしょうか? 1μmと書きましたが、空中で問題になっているPM2.5は2.5μmの意味です。
要するに生活スタイルが変わったことにより、このオーダーのゴミを確実に吸い取ること、排気で出す二次被害はさけること、ということが、掃除機に課せられたわけです。
ダイソン社の掃除機発売は、1993年。こうなった後です。サイクロンと特徴は皆さんも知っての通り「吸引力が変わらない」ことですが、特徴の一つに排気がきれいなことが挙げられます。ただし、サイクロンシステムも、それをシステムだけで行うには、掃除機では、サイズもパワーも不足しています。このため、「排気フィルター」を付けたわけです。
新世代の紙パック掃除機は、これが相手なのです。紙パックがフィルター化した理由もおわかりいただけたと思います。
紙パックの矜恃
では、紙パック「GP-2000FS」は、どこまですごいのか、見てみましょう。
まず3層構造です。それぞれの材質開示はされていまえんが、不織布に似たものではないかと思います。不織布マスクでも0.3μmレベルまでトラップできます。マスクと違うのは、それぞれに、独立した機能を与えていることです。
まず、一層目(最も内側。空気は内側から外へ流れる)は、「ナノチタン・ナノポーラスゼオライト消臭・抗菌層」。菌の繁殖と匂いをここで抑えようという機能です。空気清浄機では「活性炭フィルター」にあたるところです。「チタン」の採用はすごいですね。ただ菌を繁殖させないとなると、それ以外では「銀(Ag)」とかですから、高いものに付きますね。
二層目は、極細強力帯電層。こちらはチリの担当です。帯電しているので、目より細かいチリにも効果があります。空気清浄機でいうと「メインフィルター」といったところです。ちなみに、帯電の技術は、ブルーエア社など、一流の空気清浄機でもお馴染みのものです。
そして三層目。ここは丈夫であることが求められます。衣類でいうとアウター。ラフに扱われても、ゴミを、ホコリを外に漏らさないためです。
さすがに、「ナノテク高捕じんプレミアム衛生フィルター」と銘打つだけあります。ここまで揃えたのかという感じです。それがパック本体にデカデカと書かれています。「ゴミ袋とは違うんだ」と言う矜恃があります。
実際、空気清浄機並みのクリーン度です。知ると認識が変わると思います。
紙パック掃除機のメリット
紙パック掃除機のキーポイント、紙パックが上々の場合、紙パック掃除機は、非常にメリットが多くなります。それは紙パックの構成要素はシンプルだということです。
ヘッドでゴミを吸い、ホースで送る。それはサイクロンも紙パックも同じです。しかし、紙パックは吸ったものを紙パックで受けて終わりです。そう紙パックの後ろにあるのは、モーターとファンだけというシンプルさです。
このため、「小型化」できる。「軽量化」できる。「動作音も抑えやすい」。などなど掃除のテーマも一挙解決。その上、捨てる時、ゴミに触らない。ダストボックス(紙パック)は使い捨てなので、洗浄する必要はありません。
ダストボックスの掃除は、確かに短期時間でできるのですが、洗ったものを、どこに置いておくのか? 乾燥後セットする必要があるなど、ちょっと手間です。
このゴミは、アレルゲンと書いても間違ってはいません。そう私はアレルギー性体質の人には、紙パックを使って欲しいのです。
まとめ
相方のキャニスター掃除機「日立CV-KP900H」もいい
日立「CV-KP900H」は、そんなメリットに溢れたモデルです。本体重量:2.3kg。自在に動きます。また、動作音も五月蝿くない。ホース、ヘッドも今まで培ってきた日本製。これと紙パック「GP-2000FS」は鬼に金棒というより、2つの良いところが全て出ている感じです。
本体重量:2.3kg
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。