【軽量小型の超広角レンズ】作品撮影だけでなく取材や記録にも活躍 使い勝手のよさが魅力の「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」

文具・ホビー・カメラ

LAOWA(ラオワ)といえば、最大撮影倍率が等倍を超える「どアップ」を可能にする2.0倍マクロレンズや、35mm判フルサイズ対応の9mmレンズといった高性能な超広角レンズで、カメラ愛好家に認知されているレンズブランドです。そんなラオワが、質量わずか約254gと小型軽量の35mm判フルサイズ対応の超広角レンズ「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」を発売。詳細に性能をチェックする機会を得たので、みなさんに報告します。

執筆者のプロフィール

齋藤千歳(さいとう・ちとせ)

元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在は昨年8月に生まれた息子と妻の3人、キャンピングカー生活にハマっており、約1カ月かけて北海道を一周するなどしている。

気軽に撮影できる超広角レンズ

わずか約254gで126度の画角を実現

「LAOWA 11mm F4.5FF RL」は、35mm判フルサイズに対応する11mmの超広角レンズです。画角はなんと126度を実現。ライカ M、ライカ L、ニコン Z、ソニー Eマウントに対応するものがそれぞれ用意されています。実際のテストでは、筆者はソニー Eマウント用を使用しました。開放F値は4.5と、単焦点としてはやや暗めですが、レンズ長は約63.5mm、最大径は約58mm、質量は約254gと、気軽に撮影できるコンパクトなレンズに仕上がっています(※大きさ、質量はライカMマウント用の数値です)。

レンズ構成は10群14枚。2枚の非球面、3枚のED(特殊低分散)レンズを採用することで、シャープな画質を実現。また、色収差やディストーションも最小限に抑えているといいます。一般的に10mm前半の焦点距離を実現した超広角レンズは、レンズ前玉が大きくドーム状に膨らみ、ねじ込み式のレンズフイルターを装着できないことが多いものです。しかし、「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」は62mm径の丸型フィルターがそのまま使用できます。とても便利です。しかも、最短撮影距離はわずか19cm、最大撮影倍率は0.1倍。超広角レンズながら近接撮影にも強いレンズに仕上がっています。

今回は、この「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」の実力をAmazon Kindle電子書籍『LAOWA 11mm F4.5 FF RL レンズデータベース』を制作する際に撮影した実写チャートを元に解説します。

「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」の実勢価格はソニー Eマウント用で115,000円前後。安さが売りのレンズではないことがわかります。

解像力

中央部は絞り開放から非常にシャープ、周辺部も実用十分

「LAOWA 11mm F4.5FF RL」は、マウント部分にカメラと各種情報をやりとりするための電子接点をもたない、フルマニュアルタイプのレンズです。そのため、カメラ本体による各種レンズ補正の恩恵は受けられません。しかし、現在において、「レンズ補正はあり」が基本と考えています。そのため、今回のレビューや各種チャートなどの撮影結果は、参照している電子書籍も含めて、撮影時のカメラ設定は基本的に初期設定のままです。今回、「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」を装着した「Sony α7R III」の「レンズ補正」も、「周辺光量補正:オート」、「倍率色収差補正:オート」、「歪曲収差補正:オート」と初期設定のままになっています。ただし、この効果を得ることはできません。このことも理解しておいてください。

本レンズの大きな特徴としては、質量約254gに象徴される軽量コンパクトがあります。超広角で、絞り開放から周辺部まで、バキバキに解像させたいと考えて設計したレンズであれば、もっと大きくなるだろうと予測していました。ですから、解像力は多少あまいのも仕方ないだろうと考えた訳です。

結果は、中央部については、絞り開放から予想以上にシャープ。有効画素数約4,240万画素のSony α7RIIIの基準となるチャートの0.8を完全に解像、さらに小さなチャートの0.7の一部までも解像します。絞るとさらにシャープになり、F8.0あたりまで絞るとチャートの0.7を半分近く解像する印象です。ただし、さすがに周辺部は、中央部に比べると解像力が弱い結果。周辺光量落ちの影響も見られ、コントラストが弱く感じられます。解像力のピークはF8.0前後、筆者は被写界深度がさらに深くなるF11あたりをベストとしました。それでもチャートの0.8を完全に解像することはありません。絞れば、実用レベル以上の解像力を発揮しますが、周辺部までの解像力を重視した同社の「LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D」などとは方向性の違いを感じます。また、F16よりも絞ると絞り過ぎによる解像力低下が発生するので注意しましょう。

歪曲収差は、カメラによるデジタル補正が得られない超広角なので、それなりに発生、形は陣がさとなっています。色収差についても絞り開放付近でそれなりに観察されるので、必要なシーンでは後処理による補正を行うとよいでしょう。

解像力のチェック方法

レンズの解像力は選択する絞り値でも変化するので、各絞り値でA1サイズの小山壮二氏オリジナル解像力チャートを撮影し観察しています。

絞り開放から、非常にシャープな中央部に比べて、周辺部は絞ってもチャートの0.8が完全に解像することはありませんでした。

周辺光量落ち

大きな周辺光量落ちには後処理で対処

今回のレビューでは、撮影時のカメラ設定は基本的に「初期設定」のまま。そのため「レンズ補正」の「周辺光量補正」は「オート」です。ただし、「LAOWA 11mm F4.5 FFRL」は、カメラ本体とレンズは情報のやりとりを行えないため、カメラ本体によるデジタル補正の効果は期待できません。

カメラ本体によるデジタル補正なし、しかも11mmという超広角なので、周辺光量落ちはかなりはっきりと観察されます。周辺光量落ちは絞り開放でもっとも強く発生しますが、絞ってもほとんど改善されない傾向です。

ラオワの広角レンズは、周辺光量落ちは必要なシーンでは後処理で補正することを基本として設計されている傾向が強く、かなりはっきりとした周辺光量落ちは驚くに値しません。カメラ本体との情報のやりとりができる、ミラーレス一眼向けの最新レンズでも同傾向です。ただし、ミラーレス一眼向けの最新レンズの場合、リアルタイムでデジタル補正処理や、撮影者が周辺光量落ちなどを気にする必要はほぼありません。

「LAOWA 11mm F4.5 FFRL」のようなフルマニュアルレンズでは、カメラ本体によるリアルタイムでのデジタル補正は利用できないので、RAW現像時などに補正を行うことになります。しかし、筆者が原稿を書いた現時点(2021年2月中旬)には、Adobe Camara Rawには専用のレンズプロファイルが用意されていませんでした。早急にレンズプロファイルが用意されることを期待します。

周辺光量落ちのチェック方法

周辺光量落ちは、フラットにライティングした半透明のアクリル板を各絞りで撮影し、観察しています。

本レンズの場合、絞り開放のF4.5でも、F22でも、はっきりとした周辺光量落ちが観察されます。必要なシーンでは後処理で対応しましょう。

ぼけ描写

ぼかすなら形の美しい絞り開放がおすすめ

ぼけ描写のチェックは、ぼけディスク(意図的に発生させた玉ぼけ)から、主にぼけの質と形をチェックしています。

「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」のような超広角レンズは、焦点距離が短く、被写界深度が広いため、基本的にぼけが発生しづらい性質をもっています。そのため、本レンズにぼけの美しさを求めて購入する方はかなり少数派といえるでしょう。

ぼけの質から見ていくと、中央部のぼけディスクの中はザワつきもあり、フチには色付きも発生しているのがよくわかります。端側に至っては絞り開放から円形を保っておらず、色のグラデーションが発生していました。ただし、11mmの超広角レンズの結果としては一般的です。

ぼけの形については、絞り開放では中央部のぼけの形が円形を保っているのは立派といえます。絞ると、5枚羽根の絞りの形がかなりはっきりと目立つ傾向です。11mmであることを考慮すると十分以上ともいえますが、あまりぼけの美しいレンズではありません。ぼかすのであれば、ぼけの形がきれいな絞り開放を活用することをおすすめします。

ぼけ描写のチェック方法

ぼけ描写は、画面内の点光源を撮影して発生する玉ぼけの描写、ぼけディスクの様子を観察して、ぼけの形、なめらかさ、美しさなどを観察しています。

ぼけの美しさを期待するタイプのレンズではありませんが、ぼかすときにはぼけの形が美しい絞り開放を使うことをおすすめします。

最大撮影倍率と最短撮影距離

ワーキングディスタンスはわずかに約13cmと優秀

ラオワの広角レンズは最短撮影距離が短く、近接撮影に強いものが多いことも知られています。「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」も同傾向で、最短撮影距離は19cm、最大撮影倍率は0.1倍となっています。最短撮影距離は撮像素子面からピント合わせた被写体までの距離なので、「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」はレンズ長が約63mm。これを考慮するとレンズ先端から被写体までの距離であるワーキングディスタンスはわずか13cm程度です。超広角レンズですが、必要なシーンでは思い切って被写体に近づき、迫力のある写真も撮影できます。覚えておいて、ぜひ活用してください。

最大撮影倍率と最短撮影距離のチェック方法

切手やペン、コーヒーカップなどが実物大になるように印刷したプリントを複写して、撮単撮影距離での描写を確認しています。

11mmの超広角ですが、最短撮影距離が短いので、チャートをしっかりとアップで撮影することができました。実際の撮影時にも便利です。

実写と作例

作品撮影だけでなく、日常も撮影したくなる

「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」を使って撮影していると、感じるのは軽くて小さいこと、そして、これだけ軽くて小さいと、超広角で日常生活やちょっとした記録的な写真までを撮影したくなることです。

実写作例の1枚目には、稚内の北防波堤ドームを選択。日常生活というよりは、レンズ作例的に撮影したものを掲載しました。絞り羽根が5枚と奇数のため、絞り羽根枚数の2倍の10本の光条が発生することを意識しています。また、レンズ作例なので、周辺部までの解像力がアップするように、夜景ですがF8.0まで絞り、三脚にしっかりと固定して長秒露光で仕上げています。

LAOWA 11mm F4.5 FF RL/Sony α7R III/11mm/絞り優先AE(F8.0、2.5秒)/ISO 100/露出補正:-0.7EV/WB:晴天 稚内にある北防波堤ドームを日没後に撮影しました。F8.0まで絞って画面全体の解像力をアップし、点光源のライトから10本の光条が発生するように撮影しました。

「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」は、コンパクトで軽量なため、大ぶりで大きくせり出した出目金レンズなどと呼ばれる超広角のように、しっかりと心構えをして撮る必要を感じません。超広角なのに、非常に軽快に撮影できるのが大きな特徴です。

LAOWA 11mm F4.5 FF RL/Sony α7R III/11mm/シャッター速度優先AE(F4.5、1/80秒)/ISO 5000/露出補正:+0.7EV/WB:オート 乳児の息子といっしょに旅をする際に利用した家族風呂を、メモも兼ねて記録的に撮影した1枚。大きく重い超広角レンズなら、こういう使い方はしませんでした。

情報を多く入れられるので記録撮影に最適

超広角レンズは多くの場合、大きく、重く、しかもキズが付きそうで怖くなるような大きな前玉です。そのため筆者は、きっちりと作品的な撮影をするときに、三脚の取り付けて使うイメージがありました。ただ、広い範囲が写るので、1枚の写真に多くの情報を入れ込むことができ、記録的な写真やメモ的な写真にも超広角レンズが向いていることはわかっていました。しかし、大きさや重さといった物理的な制限により、気軽に手持ちで記録的な写真を撮るにはおっくうだったのです。

その点、「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」は質量約254gと軽く、しかもコンパクトなので、家族風呂のような狭い空間を記録するにはぴったりです。家族風呂の記録はもちろん、キャンピングカーの車内の様子などを撮影するのにも活躍してくれました。

LAOWA 11mm F4.5 FF RL/Sony α7R III/16.5mm相当/絞り優先AE(F5.6、1/160秒)/ISO 100/露出補正:+0.7EV/WB:オート クロップで35mm判フルサイズセンサーのAPS-C相当部分だけを利用して撮影しました。超広角の11mmなので、それでも16.5mm相当の広角として撮影できます。

16.5mm相当の広角レンズとしても活躍

現在販売されている35mm判フルサイズ撮像素子を搭載したミラーレス一眼カメラには、クロップなどと呼ばれる撮像素子中心のAPS-Cサイズ相当部分だけを使って撮影する機能が搭載されているのが一般的です。APS-C撮像素子用のレンズを装着して使用する場合や、望遠レンズでの撮影の際に、擬似的に焦点距離を伸ばすのに利用されます。焦点距離が約1.5倍になったときに相当する範囲が写るのです。これは広角レンズでも同じように起こるので、「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」で利用する16.5mm相当の広角レンズのように撮影することもできます。わざわざ、超広角の11mmを買って、16.5mmとしては使うのは……という方もいるでしょう。しかし、超々広角だからこそ、クロップしても16.5mmと十分な広角で利用できるのが便利なところです。

ラオワの超広角でもっとも好きな1本

「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」は筆者にとって、「いちばん、しっくりくるレンズ」という印象です。2021年2月現在、最新の超広角シフトレンズ「LAOWA 15mm F4.5 Zero-D Shift」を除く、すべての現行35mm判フルサイズに対応するラオワの超広角をテストしました。そのなかでも筆者にとって「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」がもっともしっくりくるのです。これまでは、すでに名玉ともいえる絞り開放から高性能な超広角「LAOWA 12mm F2.8 ZERO-D」がいちばんのお気に入りでした。しかし、約610gの重量は、普段使いにはちょっと重いのです。これに比べて約254gの「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」は圧倒的に取り回しがよく、常用レンズとしてすら使用可能だと思います。

軽くてコンパクトというだけなら、同じラオワでも「LAOWA14mm F4.0 FF RL Zero-D」は約228gです。しかし、筆者は9mm、10mm、11mm、そして12mmあたりまでの、いうならば超々広角と、14mm、15mm、16mm、17mmあたりまでの超広角は、異なるカテゴリーだと考えています。超々広角や超広角では、1mmの焦点距離の違いは大きな違いを産むのです。そして、使うほどに好みもはっきりしてきます。超々広角は比較的新しいカテゴリーなので、「9mmと10mmのどちらが好きか」と聞かれても、明確に好みのある人は珍しいでしょう、しかし、超広角では筆者は16mmが好きなのです。となると、35mm判フルサイズで11mmの超々広角、クロップして16.5mm相当も使える「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」は、画角的にも気持ちがよいといえます。12mmでクロップして18mmはちょっと物足りなく、10mmでクロップして15mmは少し広すぎるわけです。このあたりは好みもあるでしょう。

まとめ

光学性能より使い勝手のよさを重視した最新設計

35mm判フルサイズのミラーレス一眼カメラが各社から登場した当初、一眼レフ用では実現できなかった光学性能の高いレンズが数多く発売されました。それらは大きく、重く、そして高価ですが、光学性能的にパーフェクトに近いといえるものが主流でした。しかし、光学性能的に正しく、高性能なだけでは、ユーザーのニーズをつかめなかったのでしょうか。最近では、レンズの光学性能だけに頼らず、デジタル補正を併用、高ISO感度性能の高さを活用して開放F値が暗い代わりに、コンパクトで軽量といった、ミラーレス一眼のアドバンテージを活かした使い勝手のよいレンズが数多く設計・発売されています。「LAOWA 11mm F4.5 FF RL」もそういった、ミラーレス一眼用レンズのなかでも、より新しい使い勝手を重視した最新設計の超々広角です。バランスのよい高性能は、超々広角を気軽に気持ちよく楽しむことができます。ぜひ、一度試してみてはどうでしょうか。

(写真・文章:齋藤千歳 技術監修:小山壯二)

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齋藤千歳(フォトグラファーライター)

元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在はキャンピングカーを「方丈号」と名付け、約9㎡の仕事部屋として、車内で撮影や執筆・レビューなどを行っている。北海道の美しい風景や魅力を発信できればと活動中。

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