コロナ禍で「衛生」のために、これまで普段の衛生習慣ではあまり使ってこなかったモノがいろいろ投入されました。「UV(紫外線)」「オゾン」「次亜塩素酸水」などが挙げられます。今回は衛生家電としてこれらを使った除菌に着目した製品をご紹介します。
コロナ禍で注目される「衛生家電」
特異な状況は、いろいろな技術を進化させます。一番劇的なのは戦争です。機能要求は厳しいのですが、開発予算がすごいですし、開発責任者の権限も可能な限り上げてもらえます。労働時間などは、黒々、ブラック企業の比ではありません。戦争のたびに技術革新が行われるのは、そのためです。
コロナ禍では、そこまでのことはありませんが、「衛生」のために、普段使うのを躊躇してきたモノがいろいろ投入されました。「UV(紫外線)」「オゾン」「次亜塩素酸水」などが挙げられます。中にはコロナ禍以前から緻密なデータを積み上げ、世に出ていたモノもありますが…。
今回は、それらを使った衛生家電を紹介します。
UV除菌家電のおすすめ
UV(紫外線)って何?
UV(ultraviolet)は、非常にポピュラーな電磁波です。科学的に言うと、10 – 400 nm波長の電磁波(非可視光線)ですが、可視光線と共に太陽から放出され、日焼けの原因としても有名です。名前の「紫外」と言うのは可視光線の紫色の外側という意味です。逆に可視光線より波長が長い方は「赤外線」になります。
また、紫外線は、波長により幾つかに分類されます。覚えておいて、損がないのは、次の3つ。2つは「日焼け」に、1つは「殺菌」に関わりがあります。
(1)UV-A (波長 315–380 nm)
太陽から放射されたモノのうち、5.6%が大気を通過します。冬季及び朝夕でもあまり減衰しません。色素が沈着し皮膚が黒くなる、いわゆるサンタン (suntan)と呼ばれる日焼けを起します。
(2)UV-B (波長 280–315 nm)
太陽から放射されたモノのうち、0.5%が大気を通過します。日焼けとしては皮膚が赤くなり痛む、いわゆるサンバーン (sunburn)と呼ばれる日焼けを起します。最終的にはサンタンとなります。
(3)UV-C (波長 200–280 nm)
オゾン層で守られている地表には到達しないとされています。強い殺菌作用があり、生体に対しても破壊性が強いとされます。冷蔵庫、クーラーに使われていた冷媒、フロンをはじめとするハロン系物質によりオゾンホールが発生すると、地表に到達して生物相に影響が出るとされています。
さて紫外線には、殺傷力はありますが、使いやすいかと言うとそうではありません。と言うのは、紫外線はそのエネルギーにより殺傷します。要するに紫外線が直接当たらなければ、効果がグンと下がります。影になったりしたら、効果は見込めません。このためでしょうか? 消毒という目で見ると、ちょっと曖昧なところがあります。
このため、医療では、ここは確実に滅菌消毒したいというところではあまり使われないようです。
UVの長所と短所
UVの最大の長所は手軽ということです。極端な話、ランプ一つあればことが足りる。逆に短所はかなり多いです。
短所は大きく2つに分かれます。1つ目は使用環境で効果が激変すること。波長により効果が違います。対象物までの距離で効果に差があります。当然、影などは論外です。常に一定の状態で使うには対象物の設置も含め、結構大変です。
もう1つは、紫外線が見えないことです。紫外線で一番最初にやられるのは「眼」です。ところが可視光線ではないので、発しているかどうかもわかりません。このため、青い光を同時発光させ、紫外線があることを示します。しかし、それを見た時は、紫外線の害を受け始めているわけです。
レイコップ
掃除機「RAYCOP GO」
ホームページにもうたわれているように、レイコップは、「UV除菌ポータブルクリーナー」と銘打っています。また、UVだけで使える「UVオンリーモード」も持っており、UVでの除菌に力を入れていることが伺えます。ランプの波長は、波長:253.7nmで殺菌効果も抜群。UV除菌、ウイルス除去、ダニ除去に対して、実験結果もホームページに掲載されています。
「除菌は菌液を含むシャーレに製品のUVを1cm上に置いて3秒照射。ウイルス除去は同様の距離で5秒間照射。ダニ除去は、10×10cmの布のダニを3秒で1往復させて吸引。」それがテスト条件です。
要するに、対象物は真っ直ぐに、影ができないようにし、ごくゆっくり掃除することが必要です。
シロカ
食器洗い乾燥機「SS-MU251」
一方、シロカの食洗機は、ちょっとニュアンスが異なります。食洗機は専用洗剤でのお湯洗い。それで99.9%。菌、ウイルスをやっつけられます。では何故、UVなのでしょうか? それは、特に清潔に保って置きたい食器があるからです。例えば、哺乳瓶がそうです。洗って置いておくうちに、菌とか繁殖すると大変です。UVで清潔さを保とうというわけです。繁殖の妨げです。
こちらの方も「UV除菌専用コース」を持っています。これは水を使わずUVを照射するモードです。これなら、使用途中のマスク、ケースなども、清潔に保つことができます。
当然、扉などは窓も含め、UV対応がされていますので、使いやすくもあります。
乾燥方式:送風
標準使用水量:約6L
洗浄方式:回転ノズル噴射式
最大消費電力:726W/740W
オゾン除菌家電のおすすめ
オゾンって何?
地球の上空に「オゾン層」があり、紫外線を含む強力な電磁波から地球を守っています。人間が、どんどん出したフロンガスに代表されるハロン系ガスで随分オゾン層に穴を開けました。しかし、なんとか今、小康状態。全世界でハロン系ガスを追放したことが、功を奏したわけです。ただ復活はしておらず、有害UVもガンガン地球に降り注いでいるのが現状です。
こう書くと随分安定した物質のように思えるかもしれませんが、化学記号はO3。地上の酸素がO2ですから、外れやすい酸素原子を持っていることがわかります。つまり、安定なんてとんでもない、ものすごく反応しやすい物質なのです。その反応でいろいろなことをします。殺菌もその一つというわけです。ただし反応後は、有害な物質を残しません。
最終的には、完全に無害ですので、食材、食品の殺菌、医療関係を含め、いろいろなところで使われます。最もポピュラーなのは、水道の殺菌でしょうか?
一方、最の酸化力のフッ素につぐ酸化力(塩素性漂白剤より強い!)なので、高濃度だと毒物となります。日本の場合、0.1ppmが作業環境基準です。パーセント表示だと、0.0000001%。実に微量です。
この能力の高さは長所でもありますが、短所でもあります。短所的な言い方をすると、扱いが難しい。そして長所は、微量でも確実に効くということです。
CADO
除菌脱臭機「SAP」
CADOのSAPの原点は、2020年8月26日に、藤田医科大学が発表した、「村田貴之教授が人体に安全な低濃度オゾンガスで新型コロナウイルスを不活性化できる事実を世界で初めて発見した」ことに由来します。その時の濃度は、0.05ppmと0.1ppm。要するに作業環境基準以下で、コロナウイルスをやっつけることが確認されたわけです。
それを商品化したのが、CADOのSAPです。
オゾンは缶に入っているのを売っているようなことはありません。人が手に触れるようなものではないのです。このためSAPは「自動」、お任せで使います。それでも効果は絶大です。
次亜塩素酸水除菌家電のおすすめ
次亜塩素酸水とは?
最後は、次亜塩素酸水。化学物資ではありますが、2002年6月に食品添加物の仲間入りしたために、厚生労働省により使用基準及び成分規格が定められています。
それによると、次亜塩素酸水は「殺菌料の一種て゛あり、塩酸又は食塩水を電解することにより得られる次亜塩素酸を主成分とする水溶液」となっています。
また、『新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)』では、『「次亜塩素酸水」は、「次亜塩素酸」を主成分とする、酸性の溶液です。酸化作用により、新型コロナウイルスを破壊し、無毒化するものです。いくつかの製法がありますが、一定濃度の「次亜塩素酸水」が新型コロナウイルスの感染力を一定程度減弱させることが確認されています(NITEの検証)』。
人体への影響を考えた場合、安心して使うには「食塩水を電気分解し、作った次亜塩素酸」が正解になります。それ以外の次亜塩素酸はダメ、いろいろな意味で人体に対し危険をもたらす可能性があります。
家電で使う多くの場合は、食塩水から、その場で作ります。逆にNGなのでは、薬機法の表現NGに抵触しているモノ、成分・液性能の表示がないモノ、使用方法・保存方法に関する記載がないモノ、ミスリードを導き出すモノなどです。ここでモノというのは、市販の次亜塩素酸液であり、次亜塩素酸液を使う家電のことです。じっくりラベルを読んでみて、ちょっとでも疑問が沸いた場合は、買わないことをお勧めします。
パナソニック
ジアイーノ
さて、次亜塩素酸家電で一番有名なのは、パナソニックの次亜塩素酸除菌脱臭機「ジアイーノ」です。もう3〜4年も前になりましょうかね。新宿駅のトイレで、消臭の実証実験をした時はすごかったです。ものの見事に匂いがしません。駅の公衆トイレですからニオイが染み付いているように思うのですが、それをものの見事にシャットアウト。化学を学んで、化学の力は熟知しているつもりですが、改めて驚きました。そのくらいすごいのです。
ジアイーノがあると、安心ですね。開発元のパナソニックも、世界初、人間に害がないように、何度となくテスト、チェックをかけています。大メーカーが、真剣に、テストした結果は、それはすごいものです。日本メーカーの矜持と言ってもいいかも知れません。
しかし、ジアイーノも、もう少しというところがあります。それは、空気清浄機能を持っていないことです。ジアイーノは、空調家電では、完全に新しいカテゴリーに属するものです。
空調家電の増え続けるカテゴリーには、結構イラっとするところがあります。
というのは、場所をとって仕方がないからです。エアコンは空調家電の雄ともいうべき家電が、エアコンだけでは、空調は完結しません。他に必要とされるものは多くあります。空気清浄機、扇風機、換気扇。次亜塩素酸除菌脱臭機もその一つです。
日立
ジアクリン ZP-GA1000T
それに対し、2021年4月に日立が上市したジアクリン ZP-GA1000Tは、衛生機能にプラス空気清浄機機能を持たせました。その分、重く、分厚いのですが、効果はすごく、消臭は、活性炭フィルターを有する空気清浄機より、すごいモノがあります。目には見えませんが、ウイルスもバッチリだと思います。
新しいモノ使う時は、正確な情報と知識で必要です。情報過多の現在、家電セレクトと同じように、情報セレクトも必要です。
風量:[次亜塩素酸]1.6~6.7m3/分、[加湿]1.6~6.7m3/分、[空清]1.1~9.2m3/分
タンク容量:約2.2L
運転音:[次亜塩素酸]20~48dB、[加湿]20~48dB、[空清]15~55dB
最後に
今回、UV、オゾン、次亜塩素酸という、人に対して危険度の高いとされるモノを使った衛生家電を紹介しました。この記事では、私自身が使ってみて、使って致命的欠点のないモノをセレクトして紹介してあります。
衛生=黴菌、ウイルスを除去するとなると、生き物を殺すわけですから、当然、小なりといえども人間にも影響があります。
わかりにくいところがあるかも知れませんが、ここに書いたレベルが現在のレベルです。健康に生きるのも面倒くさい時代になったものですね。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。