【J1王者】川崎フロンターレはなぜ風呂桶を掲げるのか フロ桶の歴史を振り返る

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今回は、Jリーグで圧倒的な強さを誇る川崎フロンターレの「フロ桶」をご紹介します。はい、見間違いでも書き間違いでもなく「フロ(風呂)桶」です。J1王者でサッカー日本代表にも数々選手を送り出すフロンターレには、優勝するたびに「フロ桶」を掲げる変わった伝統があります。優勝を重ねるごとに、ひのき、漆塗り、芝生風、プラスチック、アルミ、石、コルクと素材を変えているため、担当者は「次の素材は何にするか」という謎のプレッシャーにさらされているとか。フロンターレがフロ桶を掲げるようになった経緯と、歴代のフロ桶にせまります。

なぜフロンターレはフロ桶を掲げるのか

なぜ、J1王者のフロンターレは優勝時にフロ桶を掲げる伝統ができたのでしょうか? まず最初にその理由について解説します。

悲願の初タイトル獲得時に起きたこと

現在では、1点差での勝利や引き分けでも「失速」と言われるほどの強者となったフロンターレですが、2017年にJ1リーグで優勝するまでは、優勝にあと一歩で届かない「シルバーコレクター」と揶揄されてきました。

同2017年だけでも、フロンターレは元日に行われた天皇杯と11月に行われたYBCルヴァンカップで2度の準優勝を喫しています。J1リーグ最終節で勝ち取った奇跡的な逆転優勝は、選手、チーム、フロンターレを応援するサポーター全員にとって待ちに待った悲願の初タイトルだったのです。

優勝セレモニーで、フロンターレに渡されたのは、シャーレ(優勝銀皿)がプリントされたパネルでした。J1チャンピオンに王者の証として授与されるシャーレは、最終節の開始時点で首位に立っていた鹿島アントラーズの試合開催地に運ばれていたからです。

初タイトルに歓喜しながらも「あー、パネルなんだ」「ちょっと残念だね」と囁きあっていた我々サポーターは、高々と掲げられた “あるモノ” を見て一気に沸き立ちました。

「え、ケンゴ(中村憲剛選手)が何か掲げてるよ」「…風呂桶?」「風呂桶だ!シャーレの柄が描かれてる!」

初戴冠でフロ桶を掲げるなんてフロンターレらしい、と観客席のあちこちで楽しそうな笑い声があがります。本物のシャーレがないという本来ならばマイナスになる要素を、エンターテイメントに転換させるユニークな一手。まさにこのときに、「優勝をするとフロ桶を掲げる」というフロンターレの伝統が生まれたのです。

ほかにはない「らしさ」を求めて

では、なぜフロ桶だったのでしょうか。それは、フロンターレが地域と密接に関わりながら地道に人気を獲得してきたそれまでの歩みゆえでした。

フロンターレは、地域貢献活動に力を入れているチームとしても知られています。その一環で「Jリーグで唯一チーム名に『フロ』がつくクラブですから」と、2010年から川崎浴場組合と協力して川崎市内にある銭湯の利用促進キャンペーン「いっしょにおフロんた~れ」を行ってきました。

各種イベントで「フロ」をアピールしていたため、フロ桶はサポーターにとっても馴染みのあるグッズだったのです。

「サポーターにもシャーレを掲げる喜びを味わってもらいたい」「フロ桶ならお風呂で毎日掲げられる」「形もシャーレと同じく丸い」という理由で、フロ桶は優勝記念グッズとして商品化されました。

当初「50個ぐらい」と想定していた売上個数は、初優勝特需もあり、伸びに伸びて約3000個に達したといいます。イベントにもグッズ販売にもほかにはないフロンターレ「らしさ」を出すことが、強さだけではない魅力を生み出しているのです。

ここからは、歴代のフロ桶を振り返っていきます!

歴代フロ桶を振り返る

ここからは、J1王者の川崎フロンターレが掲げてきた歴代のフロ桶をご紹介していきます。

J1優勝時に掲げたシャーレ柄の歴代フロ桶

国内の3大タイトルの中で、優勝時にシャーレを授与されるのはJリーグのみとなっています。そのため、優勝するたびにフロ桶を新調して掲げるフロンターレですが、桶の外底にシャーレがデザインされているのはJ1優勝時の桶のみです。

まずは、2017年の初タイトル獲得時に販売されたフロ桶から見ていきましょう。

2017明治安田生命J1リーグ優勝記念のひのきフロ(風呂)桶 4,536円(税込)

初めてのことだったため、優勝セレモニー時に渡された選手たちは「何?何?え、風呂桶?」と戸惑いながら掲げてくれたそうです。「この頃はフロ桶として、正しい道を歩いていました」と担当者が懐かしむ、「The 風呂桶」といった風格のある、ひのきフロ桶でした。

2018年、J1リーグを連覇して2度目のJ1王者になると、フロ桶は早くも風呂桶としての道を外れます。優勝セレモニー時に選手たちは、ラインストーンのカスタムオーダーセレクトショップに特注した、きらびやかな桶を掲げたのです。

2018明治安田生命J1リーグ優勝時に掲げられたきらびやかなフロ桶(非売品)

2つめの星(タイトル)を獲得したということで、2つの星と「ニボシ(2星)」があしらわれた、キラキラ具合がまぶしい豪華なフロ桶でした。

2018年は、この特注品とは別に優勝記念グッズとして漆塗りの風呂桶も製作されました。

2018明治安田生命J1リーグ優勝記念の漆フロ(風呂)桶 10,000円(税込)

ここで「前回を超えなくては」と闘志を燃やして漆塗りにしてしまったのが、毎回桶の素材を変えることになる始まりとなったそうです。漆塗り工程が手作業のため、数量限定での販売でした。

翌2019年にJ1制覇を逃したフロンターレは、2020年に再びJ1王者に返り咲きます。そのときのフロ桶がこれです。

2020明治安田生命J1リーグ優勝記念のアルミフロ(風呂)桶 10,000円(税別)

タイトルを奪還ということで、還ならぬ缶でフロ桶をつくろうと地元高津区に本社をかまえる今野工業株式会社に協力を仰ぎ、シャーレのような輝きがあるフロ桶となりました。

そして、今年2021年もフロンターレは連覇を果たしてJ1王者となっています。最新のフロ桶はなんとコルク製です。

2021明治安田生命J1リーグ優勝記念のコルクフロ(風呂)桶 11,000円(税込)

ワインの熟成にかかせず、吸水性も高いコルク素材に、25周年を迎えたフロンターレの熟成と、下部組織や新たな戦力を川崎の水として吸水してますます成長していきたいという願いが込められました。

ちなみにこのフロ桶は、CIRCLE OF CORKという商品製作を通して、リサイクルを社会に役立てる活動に参加しています。

シャーレ柄以外の歴代フロ桶

J1リーグ以外の大会の優勝時にも、フロンターレはもちろんフロ桶を掲げます。ただし、シャーレを受け取れる国内大会はJリーグのみのため、フロ桶にもシャーレ柄はあしらわれていません。

まず、2019年にFUJI XEROX SUPER CUP の優勝記念としてつくられたのが芝フロ桶です。

FUJI XEROX SUPER CUP 2019優勝記念の芝フロ(風呂)桶 10,000円(税込)

もちろん本物の芝ではなく、芝生をモチーフにした素材になります。川崎という地域に根を張り、今後も勝ち癖が根付くようにとの想いを込めて、サッカーに欠かせない大地に根付く芝生をテーマにした一品です。

2019年はYBCルヴァンカップでも優勝をしました。お菓子メーカーのヤマザキビスケットが特別協賛している大会ということで、優勝セレモニー時にはお菓子のフロ桶が掲げられています。これは「お菓子風」ではなく本物の食べられるフロ桶です。

ただし、お菓子のフロ桶は優勝セレモニー時限定で、優勝記念グッズとしてはプラスチックのフロ桶が販売されました。

2019JリーグYBCルヴァンカップ優勝記念のプラスチックフロ(風呂)桶 1,000円(税別)

こちらは、より多くの人に購入してもらえるようフロンターレのフロ桶史上「最大サイズ」「最安値」「最低クオリティ」がうたい文句となっています。檜や漆塗りと比べるとクオリティは落ちますが、しっかりとしたつくりで風呂桶としてはかなり正統派なのではないでしょうか。

逆に風呂桶としては異端のフロ桶史上「最大重量」となったのが、2020年に天皇杯優勝を果たしたときのフロ桶です。

天皇杯優勝記念の石フロ(風呂)桶 14,000円(税別)

天皇杯決勝を最後に引退をする川崎のバンディエラ・中村憲剛選手の背番号14(=イシ)にちなんで、「ケンゴの意志(イシ)を引き継ぐ」という想いを込めた石のフロ桶となっています。約4kgあるということで、商品を運ぶ運送屋さんが苦労をした重みのある一品です。

まとめ

今度のフロ桶はどんな素材でくるのか、とサポーターを楽しませてくれているフロ桶ですが、毎回素材を変えるため、担当者たちは常に頭を悩ませているといいます。再生紙などアイデアを出したもののボツになった案も多いとか。これからも、フロンターレが優勝をどんどん重ねて、担当者たちが嬉しい悲鳴をあげるのを楽しみにしたいと思います。

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