【ネスプレッソのSDGs】回収問題を解決?ネスプレッソの 「サステイナビリティプロジェクト」に感嘆させられた話

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SDGsが注目される今、色々なメーカーが環境やリサイクルに関するプレス発表をします。リサイクルといえばペットボトルの回収率の高さが話題となりますが、他の回収率はそこまで高くないのだとか。この記事では、「ネスプレッソ サステイナビリティプロジェクト」をレポートします。

ネスプレッソのSDGs「サステイナビリティプロジェクト」

SDGsとは

SDGs(Sustainable Development Goals)、日本語は「持続可能な開発目標」と訳されます。2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。

この一環ですかね。だんだん各メーカーも環境、リサイクル関係のプレス発表が多くなりました。20年前でしょうか。環境が見捨てられていた状況と比べると、現在は月とスッポンとでもいうほど、注目され、投資もできるようになりました。今回は、「ネスプレッソ サステイナビリティプロジェクト」をレポートします。

ネスプレッソは、カプセルエスプレッソのトップメーカーです。現在当たり前の方式の一つになっている「カプセル式」は、同社から始まりました。元々エスプレッソは、カップ毎に抽出するのが当たり前の文化ですから、違和感もなく受け入れられたと思います。

そんなトップメーカーが「ネスプレッソ サステイナビリティプロジェクト」を打ち立てたのですが、今置かれているコーヒー産業の問題もあり、「 サステイナビリティ」と聞いた瞬間にいくつもの疑問が湧いてきます。

フェアトレード

まず一つ目に、まだコーヒー豆の売買がフェアトレードとは言い難いところがあると聞いています。要するに中間で搾取する人がいるのですね。昔の話で恐縮ですが、日本がジャマイカからブルーマウンテンを輸入する際、間をつないだ英国の会社にかなり中抜きをされていたそうです。ジャマイカは元々イギリスの植民地、1962年にジャマイカ共和国として独立しましたが、宗主国は利権関係は、そんな簡単に手放してくれませんからね。これが発覚したのは、英国に送られるFAXが誤って日本に送られてきたためだそうです。映画のワンシーンのような話です。

この時、日本はジャマイカと直接取引にすることにします。日本が持ちかけた条件は「英国から買う値段と同じ額で取引しませんか?」ということ。英国の搾取分を、日本はジャマイカの取り分としたわけです。フェアトレード復活の一幕です。信義を大切にした日本人の良さが出ているエピソードでもあります。

これが有名だということは、レアケースだからです。コーヒー豆の取引は非常に複雑であり、単純に判断することはできませんが、作り手に労力に見合うお金が渡されていないことが多いと聞いています。

農業と自然保護の両立

2つ目が、「農業」です。コーヒー豆は農家が栽培します。農業は基本同じものを植え続けます。自然では農場レベルの群生はほとんどありません。雑木林がいいとされるのは、多雑な植物による助け合いがあるからです。特に土中の栄養が重要なポイント。同じものを作り続けた時、栄養分が足らなくなり、休耕地にしなければならないというのはよくあるパターンです。またこれは生物多様性にも問題が出ます。典型なのが、植林で作られたスギ、ヒノキ林。ゾッとするくらい虫がいません。虫がいなくなると受粉ができず、生える植物が淘汰される可能性があります。

コーヒーも農業です。ある意味、存在が自然破壊になる可能性は否めません。これにどう折り合いをつけるのかは大きな問題です。

豆カスのリサイクル

3つ目の大きな問題は「ゴミ」です。コーヒーはコーヒーの実を抽出して入れます。エスプレッソも、コーヒーですから「豆カス」は必ず出ます。

しかし「コーヒー豆カス」の有効性はメディアでもお馴染み。色々なことに使えます。しかし、それには、乾かしてやることが必要。あると重宝しますが、ちょっと面倒なことも事実です。また、自分で飲んだものを処理するのはできても、それが一週間連続、一ヶ月連続だと持て余します。

そしてネスプレッソの場合「カプセル」も問題になります。カプセル中のコーヒー粉を水気から守るため、カプセルは「アルミニウム」でできています。アルミニウムは、再利用、リサイクルしやすい金属として知られていますし、簡単にクリアできそうな問題です。しかし、なんといってもリサイクルビジネスを想定する時の最大の問題は、量。使用済みカートリッジをいかに集めるかです。

計算しやすように、カートリッジに10gのアルミニウムが使われているとします。となると材料:1t集めるのに、10万個回収する必要があります。一人 30個/月使い完全回収するとして、3333人分のカプセルを集める必要があります。

今回の発表は、リサイクルシステムがうまく作動し始め、豆カスは培養土に、アルミニウムからは色々なモノが作れるようになったと言うものでした。

ペットボトルのリサイクル率は「高い」日本

日本のペットボトル回収率は、実に90%を超えます。2019年のデータですが、リサイクル率:85.8%。これは欧州のリサイクル率:39.6%、米国:19.7%をはるかに凌ぎます。(数値データは、PETボトルリサイクル推進協議会による)

回収率とリサイクル率に差があるのは、キャップが付けられた状態ではリサイクルできない。(使用しているプラスチック樹脂種が異なるため)中に飲み残しが入っていてもリサイクルできないからです。

しかし、ここまでの回収率があるのは、まず、公共の場でも専用の廃棄ボックスがあること。家の場合、資源ごみとして回収することになっているなど、負担にならないレベルで回収できるようにしたわけです。この努力が実り、回収することができたわけです。

ちなみに、日本はぺットボトルの回収率はすごいのですが、他のものはそれなりです。

困難な「回収」の解決方法は?

専用リサイクル袋と、ユーザーに動いてもらうこと

この回収という大きな問題に対して、ネスプレッソはどのように取り組んだのでしょうか?ネスプレッソは大きく3つのことをやってきました。

まず、環境整理と告知です。ここでいう環境整理は、二つ意味があります。一つ目は、リサイクル可能なものであることです。豆カスは色々なことに使えますし、カプセルはアルミニウム。双方とも、容易にリサイクルできそうなことがわかります。そしてもう一つは、リサイクルし易い形を整えることです。ネスプレッソはキャリーバッグを導入しました。完全密閉可能で、革の書類バッグに入れても問題ないレベル。リサイクルを押し出したデザインは、今の世の中にあったかっこよさが漂います。

そして告知。告知というのは、自分たちの商品がリサイクルをどんなに大切に思っているか、知ってもらうということ。そしてお客様も、その担い手の一人になってもらうことです。

さて回収ですが、ネスプレッソブティックが回収場所になります。東京でも23区全部にあるわけでもないですし、立地も必ずしも言い訳ではありません。私などでしたら、もっぱらオンラインストアで行かないかも知れません。法制化されている小型家電ですら、回収場所の少なさにあまり上手くいっていません。

私、これがネックになるかなぁと思ったのですが、なんと全世界での回収率は30%を超えたそうです。そして日本もビジネスベースに乗るレベルだとか。

金属はリサイクルで優位

プラスチックス樹脂と金属のリサイクルを比べると、その性質上金属の方が有利です。というのは樹脂はリサイクルするにつれ、強度が落ちやすくなります。また濁りも出ます。色が濁った場合、黒色にして誤魔化すという手があるのですが、樹脂の黒色着色はカーボン添加。強度を落とすことになります。実は、このため用途も限られます。理由は、強度保証ができないからです。一方、金属は、ほぼ完全再生ですから問題はありません。今後、リサイクルすることを前提に、脱樹脂化が進むかも知れません。

最後に

今回、リサイクルの部分を取り上げさせていただきましたが、先に提示しました、一つ目・二つ目の問題に関しても、AAAサステイナブル・クオリティ(持続可能品質)プログラム、ネスプレッソでは、サステイナビリティ・イノベーション・ファンドなどを通じ手を打っています。

ただ、もっと踏み出してもいい気がします。例えば、回収場所。他の金属回収と一緒でよければ、もう少し回収地点を増やすことができるのではないかと思います。そのためには、一企業だけでなく、企業連盟、自治体との親和性が大切になります。

江戸時代、鎖国をしていた日本は、全商品、リユース、リサイクルしたそうです。囲炉裏の灰を専門に扱う業者もいたそうです。それで生計が成り立ったわけです。今は「ゴミ」ですが、逆に江戸時代はゴミはほぼ出なかったようですね。本気で、リサイクル率をあげていくなら、「ゴミ」と考えないような意識改革が必要です。そうすると環境問題も特別なことではなく、より当たり前の感覚で捉えられるかも知れませんね。

それはともかく、ネスプレッソのリサイクル事業は日本でも軌道に乗ったようです。今後、これらがうまく維持できることを願います。

◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。

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多賀一晃(生活家電.com主宰)

企画とユーザーを繋ぐ商品企画コンサルティング「ポップアップ・プランニング・オフィス」代表。米・食味鑑定士の資格を所有。大手メーカーでオーディオ・ビデオ関連の開発に携わる。趣味は東京散歩とラーメンの食べ歩き。

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