【果樹】苗木の買い方・良い苗の選び方 最適な時期・種類を解説|植え付けカレンダー

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果樹の苗木は、専門の栽培家が接ぎ木や取り木、挿し木などの方法で作っています。よい苗木を購入して栽培を始めるのが確実です。ホームセンター、園芸店、オンラインショップなどで購入できます。苗木の買い方について、書籍『おいしい果樹の育て方』著者で、千葉大学環境健康フィールド科学センター助教の野田勝二さん(農学博士)に解説していただきました。

解説者のプロフィール

野田勝二(のだ・かつじ)

千葉大学環境健康フィールド科学センター・助教。農学博士。
専門は果樹園芸学、健康機能園芸学。柑橘類の研究のほか、園芸療法・園芸福祉に関する研究も行っている。また市民とともに、サスナティブルな街づくりの活動にも参画している

本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

イラスト/角しんさく、はやしゆうこ

苗木を買う

果樹の苗木は、専門の栽培家が接ぎ木や取り木、挿し木などの方法で作っています。よい苗木を購入して栽培を始めるのが確実です。

苗木を購入できる場所

ホームセンター

直接苗木を観察できることと、専門の用土や鉢、支柱、肥料など必要な道具や資材を一緒に購入できるのがメリット。初心者には便利。

園芸店

人気の果樹なら、近所の小規模店で扱っていることも。大規模店なら、果樹にくわしいスタッフがいることもあるので、栽培方法などを相談するのもよい。

オンラインショップ

種苗会社の通信販売サイト、苗木を作る専門業者のサイトなど専門的なショップが豊富。めずらしい品種を手に入れることができるのも魅力のひとつ。

苗木の購入に最適な時期

苗木は植えつけに適した時期に購入するのがベストです。
落葉果樹は、葉が落ちたあとの休眠期となる11〜3月が植えつけの適期。寒い地域では、年明け以降で厳冬期が過ぎるのを待ちます。
常緑果樹は、新しい芽が動き始める前の3月ごろが適期です。お店でも植えつけの適期に出荷されるのが一般的です。
オンラインショップの場合は、植えつけに適した時期に畑から掘り上げて送られてくるため、注文時が適期でない場合は、苗木が届くまでに時間がかかることがあります。

果樹ごとの適期

果樹 植えつけ適期 果樹 植えつけ適期
イチジク 12〜3月 ブドウ 11〜4月
ウメ 12〜3月 ブルーベリー 10〜3月
(真冬は避ける)
カキ 暖地    11〜12月
または    2〜3月
それ以外  2〜3月
ラズベリー 10月中旬〜3月中旬
(真冬は避ける)
リンゴ 11〜3月
(真冬は避ける)
ウンシュウミカン 暖地 3月
低温地 4月
ナシ 12〜  3月
雑柑 3〜4月 西洋ナシ 11〜12月
キンカン 3月下旬〜5月上旬 モモ 12〜  3月
ユズ 3〜4月 クリ 12〜  3月
レモン 3月中旬〜4月中旬 サクランボ 11〜  3月
キウイ
フルーツ
暖地 10〜12月
低温地  3〜4月
オリーブ 暖地 4〜5月
または9〜10月
低温地 4〜5月
ビワ 3〜4月 ザクロ 12〜  3月

本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

2品種以上の苗木が必要な果樹

2品種以上の苗木が必要な果樹

果樹のなかには、自分の株または同一品種の株の花粉では結実しない性質 (自家不和合性)のものと、株がひとつあれば結実する性質 (自家和合性)のものがあります。
自家不和合性の種類は受粉のための受粉樹が必要で、同じ果樹でも品種の違うものを受粉樹として近くに植えます。
開花が同じ時期で、花粉量の多い品種を選ぶのがポイントです。相性のよい品種同士を一緒に販売している店もあります。
また、雄花だけをつける雄木と雌花だけをつける雌木が分かれている「雌雄異株」の果樹は、両方の木を植えないと果実が実りません。

受粉樹が必要な果樹

ウメ
「南高」は花粉の多い「花香実」と相性がよい。「甲州小梅」「豊後梅」「竜峡小梅」は1本でも結実するが、受粉樹としてもおすすめ。

ブルーベリー
ブルーベリーは大きく、ハイブッシュ系とラビットアイ系があるので、それぞれ同じ系統のものを受粉樹とする。

リンゴ
「ふじ」「つがる」「紅玉」は受粉樹向きでそれぞれの相性もよい。「アルプス乙女」は1本で結実することもある。

ナシ
「幸水」と「豊水」は相性がよく、どちらも西洋ナシを受粉樹にしてもよい。「幸水」は「親水」「秀玉」では結実しない。

西洋ナシ
「ラ・フランス」と「ル・レクチェ」は相性がよい。和ナシの「幸水」や「豊水」も受粉樹にできる。「バラード」「カルフォルニア」は受粉樹不要。

クリ
クリは収穫期の異なるものを一緒にするのがおすすめ。早生の「ぽろたん」には中生の「利平」や晩生の「銀寄」などを。

サクランボ
「紅秀峰」「高砂」は受粉樹としておすすめ。「ナポレオン」「佐藤錦」も受粉樹に使える。「ステラ」は1本で結実する。

オリーブ
「ルッカ」は相性のよい品種が多い。「ミッション」「マンザニロ」などもおすすめ。「ピクアル」は1本でも結実しやすい。

本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

受粉樹が不要な果樹

受粉樹が不要な果樹

イチジク
カキ
温州ミカン
雑柑
キンカン
ユズ
レモン
ビワ
ブドウ
ブラックベリー
ラズベリー
モモ
ジューンベリー
ザクロ

雄木と雌木が必要な果樹

キウイフルーツ
「ゴールデンキング」「イエロークイーン」は早生タイプの雄株と。「イエロージョイ」は「ロッキー」を受粉樹に、「香緑」は「トムリ」を受粉樹にすると相性がよい。

苗木の種類

苗木は、繁殖方法、年齢、流通時の状態などにより、呼び方がさまざまです。繁殖方法で分類すると、接ぎ木苗、挿し木苗、実生苗の3タイプがあります。流通が多く育てやすいのは接ぎ木苗です。
年齢の分類では棒苗と大苗があります。苗木は、接ぎ木や実生からの年数によって、1年生苗、2年生苗、3年生苗と数えますが、一般に1年生苗は棒苗、2〜3年生苗は大苗のことです。
流通時の状態では、鉢苗、ポット苗、裸苗があり、店頭でよく見かけるのはポット苗の状態です。

繁殖方法での分類

接ぎ木苗
親木から切り取った枝(穂木)を、別の種類の木(台木)に接いだ苗木。幹の根元に接ぎ跡が確認できる。親木と同じ性質を受け継ぐ。

挿し木苗
親木から切り取った枝を土に挿してふやした苗木。接ぎ木苗よりも大量に生産でき、価格も安価だが、果樹の種類が限られる。

実生苗
タネから育てた苗木。果樹の場合、親木とちがう性質になってしまうため、一部の果樹のみ流通する。

年齢ごとの分類

棒苗(1年生苗)
接ぎ木後1年間、畑で育ててから掘り上げた苗。小さいときから樹形を整えやすいので庭植え向きだが、木が充実して実がなるまでに数年かかる。

大苗
接ぎ木したあと2〜3年間、畑やポットで育ててから掘り上げた苗。年数により2年生苗、3年生苗と呼ぶ。ある程度生長し、枝葉が多くつき根が充実しているため、実がなるまでの期間が短くなる。なかには実つきのものもある。

流通時の状態の分類

ポット苗
流通上の管理がしやすく、店頭でも一般的。ポットのままでは育てられないが、購入後すぐに植えつけができないときはそのままの状態で置いておける。

鉢苗
鉢植えで数年間管理された苗木で、実がついたものもある。根詰まりなどがなければ、しばらくはそのまま育てられるが、生長したら植え替えが必要になる。

裸苗
畑から掘り上げたままの状態の苗。土を落とし根が見えているものや、根鉢のついたものがある。入手後はすぐに植えつける。

本稿は『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

よい苗の見分け方

よい苗の見分け方

落葉樹の場合

落葉期に出回ることが多く、おもに枝と芽に注目する。枝が太すぎたり細すぎたりせず、芽が枝全体につき、芽と芽のあいだ(節間)が開きすぎていないものを選ぶとよい。
ポット苗や鉢苗では、根元がぐらつくものは避ける。

常緑樹の場合

枝や芽のつき方とともに、葉数が多くて色つやがよいものを選ぶ。
葉が縮れていたり黄ばんでいるものは、根が傷んでいたり、病害虫の被害を受けている場合があるので注意。

お店でチェック!実際に見てみよう

鉢底から根が飛び出ているものは根詰まりを起こしている可能性がありますが、地上部が元気なら植えつけや植え替えで苗木もリフレッシュして元気になります。
接ぎ木苗の場合は、接ぎ木部分より下から出ている芽は台木の芽。穂木である本来の果樹の生育が悪くなっている可能性があるので確認しましょう。

上部だけでなく、ポットの底、接ぎ目もチェックしよう。

ラベルについて

果樹では種類とともに、ナシなら「豊水」、ブドウなら「巨峰」などの品種名がわかると安心です。とくに受粉樹が必要な果樹は、適した品種の検討に必要です。

ラベルには原産地や、暖地向き、寒冷地向きなど栽培に適した地域、乾燥に強いか弱いかなどについて書かれていることがあります。水やりや肥料の与え方など栽培管理の情報などが記載されていることもあるので、参考にするとよいでしょう。

◇◇◇◇◇

なお、本稿は書籍『おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで』(西東社)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。果樹を育てたいけれど、どんなものがいいのか…。基本的には自分の好きなもの、食べたいものを選ぶのがいちばんです。だた果樹栽培に慣れていない人は、庭の広さや環境、手間をかけられる時間などを考慮して育てやすそうなものを選ぶのも一案です。本書では、苗木の選び方、幼木から成木までのお世話のコツ、肥料や病害虫対策など、果樹栽培の基本的な知識や、収穫した果実の保存方法とレシピなど、豊富な写真とともに紹介しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。

おいしい果樹の育て方 苗木選びから剪定、料理まで
¥1,540
2022-01-25 9:35

※(3)「【果樹を選ぶポイント】果樹の生育適温 庭植え・鉢植えを考えよう|ガーデニング」の記事もご覧ください。

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