〈冬カメラ〉イルミネーションの撮影設定や雪の撮影方法 単焦点レンズで“冬の風物詩”をおしゃれに撮る

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“冬”は、日照時間も短くて、外気温も低くなります。また、一年の内で最も彩りの少ない季節でもあります。つまり、撮影に対するテンションが上がりにくい季節…。それが、冬に対する一般的な捉え方でしょう。しかし、他の季節にはない、“冬の風物詩”は数多くあります。クリスマスや正月といった期間限定のイベントだけでなく、寒い季節ならではの装飾類や自然現象は、写真のテーマとして魅力的なのです。そんな冬の風物詩を、ひと味違う“目を引く作品”に仕上げるために、今回は「単焦点レンズ」に注目しました。ズームレンズとは異なる、単焦点レンズの特徴(特長)や魅力を探りながら、積極的に冬の被写体を撮ってみましょう。

執筆者のプロフィール

吉森信哉(よしもり・しんや)

広島県庄原市生まれ。地元の県立高校卒業後、上京して東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ)に入学。卒業後は専門学校時代の仲間と渋谷に自主ギャラリーを開設し、作品の創作と発表活動を行う。カメラメーカー系ギャラリーでも個展を開催。1990年より、カメラ誌などで、撮影・執筆活動を開始。無類の旅好きで、公共交通機関を利用しながら(乗り鉄!)日本全国を撮り続けてきた。特に好きな地は、奈良・大和路や九州全域など。公益社団法人 日本写真家協会会員。カメラグランプリ2021選考委員。

早朝の霜や霜柱

マクロレンズで自然の造形をクローズアップ

非常に小型軽量な設計だが、優れた光学性能や防塵・防滴性能などを備える望遠マクロレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」。その最大撮影倍率は2倍(35mm判換算で2倍)と強力。

冬の代表的な自然現象と言えば、やはり「雪」ですよね。しかし、太平洋側の沿岸部や平野部などでは、いつも降雪や積雪が見られる訳ではありません。ですが、そんな雪景色が珍しい地域でも、冬らしい自然現象を見る事ができます。

少し早起きをして、自宅の庭先や近所の公園などに行ってみてください。そして、地面を観察してみましょう。そこには、冷え込んだ早朝などに発生する霜や霜柱が見られるはずです。こういった、多くの人が見逃しがちな足元の自然現象を、冬の被写体として捉えるのです。

しかし、普通に足元にレンズを向けて撮るだけでは、この地味な被写体は“目を引く作品”には仕上がりにくいでしょう。そこで活用したいのが「マクロレンズ」です。

一般的な標準ズームレンズでも、ある程度のクローズアップ撮影は可能です。しかし、草や枯れ葉などに発生(付着)した霜を主役として捉えたいなら、より高い撮影倍率(※)が得られるマクロレンズの出番になります。なお、レンズの焦点距離に関しては、標準マクロも悪くありませんが、できれば少し離れた位置から大きく撮れる、中望遠や望遠マクロレンズの方がお薦めです。

ただし、撮影倍率が高くなるほど、ピント合わせをシビアに行う必要があります。わずかなピント位置のズレでも、大きなピンボケにつながるからです。また、高倍率撮影では、カメラブレの危険性も高まります。これらのリスクを考えると、三脚を使いたくなりますよね。ですが、足元の小さな被写体を思い通りの大きさやアングルで捉えようとすると、不自由さのほうが気になってきます。ですから、どちらかと言えば、手持ち撮影の方を推奨したいですね。

そこで重要になるのが、AF撮影時の設定です。AFエリアモードは狭めに設定して(1点やスポットなど)、AFモードはシャッター半押し中は常に測距を続けるAF-Cがお薦めです。また、カメラブレを防ぐために、光量に恵まれていない状況では、絞りは中途半端に絞り込まない事。もし、開放絞りでもシャッター速度が遅めなら、ISO感度を高く設定する。…そういった対策が必要になるでしょう。

※撮影倍率:撮像センサー上の像の大きさを実物と比較した倍率。つまり、最大撮影倍率が高いレンズほど、小さな被写体が大きく写せる。ちなみに、マクロレンズの最大撮影倍率は、35mm判換算で1倍(等倍)や2倍が一般的。

◆標準ズームレンズ
望遠端で限界まで接近してみたが…

ここで使用した標準ズームの最大撮影倍率は0.23倍(35mm判換算で0.46倍)。「マクロ」を謳わない製品としては優秀な値だが、小さな草に付着した霜を狙うには十分とは言えない。

◆望遠マクロレンズ
草に付着した霜の結晶が美しい

フォーカスリミットスイッチを近接(0.19~0.4m)に設定し、AFの駆動範囲を制限。その上で、最短撮影距離に近い所で撮影。撮影倍率は2倍相当に近くになり、小さな葉に付着した霜の結晶の形まで見えるようになる。その結晶が朝日を浴びて、とても美しくみえた。
オリンパス OM-D E-M1 MarkII M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 絞り優先オート F5.6 1/125秒 WB:オート ISO800

霜柱がまるで氷柱のような描写に

公園の日陰に目をやると、地面の下に白い霜柱が見えた。望遠マクロレンズを使って、その霜柱を部分的に切り取る。一般的には絵になりにくい霜柱も、こうやってクローズアップすると、肉眼の印象とは異なる写真に仕上がる。そう、まるで氷柱や鍾乳石のようだ。
オリンパス OM-D E-M1 MarkII M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 絞り優先オート F5.6 1/13秒 -0.3補正 WB:曇天 ISO800

イルミネーション

明るい絞り値で光源を大きくぼかす

金属部分を多用した重厚感のある外装や、シャープさと美しいボケ描写を兼ね備えた描写が印象的な「トキナー atx-m 85mm F1.8 FE」。イルミネーション撮影にはうってつけの中望遠レンズである。

夜の街や通りを彩るイルミネーションも、冬を代表する風物詩のひとつです。まあ、冬の風物詩と言うよりも“クリスマスの一部”という印象の方が強いかもしれませんが…。しかし、クリスマス以降も年明けまで実施している所は多いですし、2月末くらいまで実施している所もあります。そういった場所を見つけて、イルミネーションの撮影を楽しんでみましょう。

イルミネーション撮影には、いくつかのパターンが考えられます。街並や通りを風景として捉える。特定のイルミネーション(動物やキャラクター、ツリーやオブジェなど)を狙う。華やかな光をボケ効果で見せる。…といったパターンです。

その中でも、単焦点レンズの特徴(特長)を生かした撮影なら、最後に挙げた“華やかな光をボケ描写で見せる”というパターンがお薦めです。開放F値がF2より明るい標準や中望遠のレンズを選択し、開放やその付近の絞り値で撮影するのです。そうすれば、一般的なズームレンズとは違う大きなボケ効果により、華やかな光(光源)をより幻想的に表現できます。

少し注意したいのが、絞り開放付近での口径食(ビネッティング)です。これは、レンズに斜めから入射した光が鏡筒などで遮られて、点光源ボケが円形ではなくレモンのように変形する現象などです。そんな描写が気になるケースでは、開放から1~2段くらい絞り込むと自然な円形に整うでしょう。もちろん、そのぶんボケ具合は弱くなりますが、開放値がF2よりも明るいレンズなら、結構満足できるボケ効果は得られます。

◆望遠ズームレンズ
ズームの中望遠域も結構ボケるが…

70-300mmの一般的な望遠ズームレンズで、近くの被写体を自然な間合(距離)で写せる85mmの中望遠域で撮影。この時の開放値はF4.5で、まずまずのボケ効果は得る事ができる。

◆中望遠単焦点レンズ
前後の大きな“玉ボケ”で幻想的な場面に

F1.8の明るさによって、背景の点光源がより大きな“玉ボケ”として描写された。また、画面右下の自転車も良い感じにボケているし、画面左にある手前の玉ボケの大きさも印象的。
ソニー α7 III トキナー atx-m 85mm F1.8 FE 絞り優先オート F1.8 1/80秒 +0.7補正 WB:白色蛍光灯 ISO800

マイクロフォーサーズ機に装着しているのは、60mm相当の“少し長めの標準レンズ”になる「シグマ 30mm F1.4 DC DN | Contemporary」。鏡筒も少し長めになるが、開放F1.4の明るさは魅力的。

1段絞って玉ボケの形を整える

ウミガメ親子のイルミネーションを狙う。手前には自由に接近できる点光源があったので、それに接近して画面内に入れてみる。すぐ手前にある点光源は、イメージ通り大きな玉ボケになってくれる。だが、ウミガメに重ならないよう画面周辺に配置するため、開放絞りでは口径食で変形する。そこで開放から1段ほど絞って撮影した。
オリンパス E-PL7 シグマ 30mm F1.4 DC DN | Contemporary 絞り優先オート F2 1/80秒 WB:晴天 ISO250

降雪や雪のある風景

中望遠マクロで多角的に狙ってみたい

雪は、豪雪地帯や雪害の危険性がある場所に住む人にとって、厄介な存在かもしれません。しかし、あまり雪が降らない地域の人にとっては、魅力的な撮影機会や被写体と言えます。降雪の場面や、雪のある風景。そういうシーンに出合った時も、単焦点レンズを活用して撮影してみましょう。

開放がF2より明るい標準や中望遠レンズで、大きなボケ効果を狙うという方法もあります。ですが、ここでは中望遠マクロレンズを使って、多角的にアプローチしてみたいと思います。そう、マクロレンズの得意ジャンルは、マクロ撮影だけではないのです。

前述の通り、マクロレンズは最大撮影倍率が高く、小さな被写体を大きく写す事ができます。また、その際の画質も画面全域で良好です(最大撮影倍率の高さを謳うズームレンズなどは、画面周辺部で画質劣化する場合が多いです)。しかし、通常の撮影域(距離)においても、極めて高い画質が得られるのです。また、単にシャープなだけでなく、円形絞り※の採用により、少し絞った際に整ったボケ描写が得られる製品も数多くあります。

そんな“万能レンズ”のようなマクロレンズなら、雪が降る場面を風景として捉えたり、降り積もった雪をクローズアップしたり…と、いろんなアプローチが可能です。雪が降る場面では、暗めの背景を探し出して写せば、雪の形や降り具合をハッキリ見せる事ができます。ちなみに、多くのマクロレンズは、絞り開放からシャープでクリアな描写が得られます。ですから、中途半端に絞るより開放付近で撮影して、降る雪を高速シャッターでシャープに捉えたいものです。

また、降り積もった雪のクローズアップ撮影では、形や色が目を引く小さな被写体を探しましょう。そして、その被写体に雪が積もった様子をアップで撮影すれば、情緒のある写真になりますよ。

※円形絞り:絞りを絞った際(多くの場合は開放から2絞り程度)の口径が、角が目立たず円形に近い形になる絞り機構。これにより、点光源ボケなどが自然な形に再現できる。

暗い軒先を背景に、雪の白さや形が際立つ

色鮮やかな五重塔に降る雪を絡めて撮影。五重塔を切り取る際、あえて日陰になる軒先部分が多くなる構図を選択。それによって、そこに降る雪の白さや形が、より鮮明に描写されるからだ。
オリンパス OM-D E-M1 MarkII M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro マニュアル露出 F2.8 1/400秒 WB:曇天 ISO800

同じ五重塔だが、ここではカラフルな五色幕をメインにした構図を選択。画面全体が華やかな雰囲気になるが、その明るさや色彩に負けて、降る雪はあまり目立たない。

マクロ撮影で“色彩+雪”に迫る

雪が降り積もる寺院の境内は、全体的に色彩が乏しい風景・被写体が多かった。そんな中に、ナンテンの赤い実が印象に残った。元々赤色が目を引く被写体だが、降り積もった白い雪との対比で、その色がより美しく感じられる。ここでは、最大撮影倍率(35mm判換算で2倍)に近い大きさで狙い、特定の実の“赤色と雪”との組み合わせに迫った。
オリンパス OM-D E-M1 MarkII M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 絞り優先オート F2.8 1/100秒 WB:曇天 ISO400

ピントを“空中”に設定して雪を主役に

前述の通り、降っている雪を目立たせるには、その先にあるモノ(背景)の暗さがポイントになります。ですが、実際にピントを合わせて撮るのは、別の被写体や風景になる事が多いでしょう。もちろん、そういった撮り方でも雪をテーマにした写真になりますが、ここでは“降っている雪にピントを合わせた写真”にトライしてみたいと思います。ちなみに、ここでも中望遠マクロレンズを使用し、絞りは開放で撮影します。

ただ、実際にトライしようとすると「AFだと背景にピントが合ってしまう」という問題が生じます。そこで提案したいのが“雪が目立つ背景を選び、MFでピント位置を手前に設定する”という撮り方です。この方法ならば、降っている雪にピントを合わせる事ができるのです。

…ただ、現実はそうアマくありません(笑)。動画撮影なら、その方法で雪が降り続く様子がイメージ通りに表現できるでしょうが、一瞬だけを切り取る静止画撮影では、ピントを設定した位置(距離)にうまく雪が写り込むケースが少ないのです。そこで、ピント位置を背景が適度にボケる距離に設定し、できるだけ数多く撮影します(高速連写が理想的)。その中から、イメージに近い降り具合に写っているカットを選ぶのです。

◆五重塔にピント…
雪ではなく塔が主役に

降る雪の先にある五重塔にピントが合った状態。雪の降り方がよほど極端でない限り、AFモードではこういうピント位置になるだろう。当然、この写真でも雪が降っているのは分かるが、あくまでも主役は五重塔で、雪は脇役的な存在になる。

◆MFで近距離にピント…
ピントの合った雪がほとんど見られない

ピント位置は1m未満(50cmくらいかも)。雪にピントが合えば雪の存在感は高いはず。だが、ここまで近距離になると、面積的にもピントの奥行的にも、ピントが合う雪を写し込むのは難しい。

◆MFで中距離にピント…
ピントの合った雪が多くなる

ピント位置は3mくらいだろうか(レンズに距離指標がないので明言できない)。ピント位置をここまで遠くなると、画面内に写り込む雪はかなり増えてくる。また、背後の五重塔も適度にボケてくれる。この条件で高速連写で数十枚撮影し、その中から雪の写り具合が良いカットを選択した。
オリンパス OM-D E-M1 MarkII M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 絞り優先オート F2.8 1/400秒 -0.3補正 WB:曇天 ISO400

まとめ

単焦点レンズに対する意識が重要

大口径単焦点レンズの明るさを生かした大きなボケ描写や、マクロレンズの高い撮影倍率で霜や雪などの存在感を高める。今回の冬の被写体の撮影では、こういったアプローチを紹介してきました。
もちろん、使用レンズがズームレンズでも、撮り方によっては似たような表現は可能でしょう。ですが、両単焦点(大口径とマクロ)レンズを選択する事で“ボケ質の追求”や“小さな被写体への関心”は、より高まってきます。その意識の高まりこそが、単焦点レンズを選択する重要なポイントなのです。メインレンズはズームレンズでも、大口径やマクロの単焦点レンズも携行する。そういった撮影スタイルをお勧めしたいと思います。

植込みや街路樹に設置された、カラフルなボールと星のようなイルミネーションの組み合わせが美しい。そんなフォトジェニックな場面で、メインの被写体に据えたのは水色のボール。そして、その前後のボールと多数の星のような光源を、開放F1.8による大きなボケ描写で幻想的に再現した。
ソニー α7 III トキナー atx-m 85mm F1.8 FE 絞り優先オート F1.8 1/250秒 +0.3補正 WB:オート ISO100

撮影:吉森信哉

早朝の公園で見つけた落ち葉と草を、望遠マクロレンズでクローズアップ。普段なら気にも留めない素材だが、霜が付着した事で“魅力的な冬の被写体”になっている。太陽の日差しと長く伸びる影が、早朝の時間帯の雰囲気を感じさせてくれる。
オリンパス OM-D E-M1 MarkII M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro 絞り優先オート F5.6 1/125秒 -0.3補正 WB:オート ISO400

撮影・文/吉森信哉

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