【コーヒーの基礎知識(1)】コーヒーの美味しさとはいったい何?実は「豆」ではなく「種子」のこと

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「おいしいコーヒー」を淹れるためには、道具が必要なのはもちろん、もっと大事なのはコーヒーそのものに興味を持つこと。自分が「おいしい」と感じるコーヒーを淹れるための第一歩にして最大のポイントは、自分好みのコーヒー豆を選ぶことだ。

コーヒーの「味わい」と「香り」

この本のテーマは「自宅でおいしいコーヒーを淹れること」。

ならばコーヒーの「おいしさ」とはいったい何だろう。

人の好みは千差万別なので、究極のところはその人が「おいしい」と感じればそれがおいしいコーヒーだ。

ただし、それだけだとコーヒーのおもしろさ、奥深さへの理解が止まってしまうので、ここではもうちょっと、コーヒーの「おいしさ」について考えてみたい。

コーヒーのおいしさをとらえるポイントは「味わい」と「香り」だ。

よくコーヒーについて「酸味のあるスッキリした味」とか「ほどよい苦みと甘みのある味」といった表現を聞くことがあるだろう。こうした人が舌(味覚)で感じる要素が「味わい」だ。

一方の「香り」は、いうまでもなく鼻(嗅覚)で感じる要素。これには下の表にあるとおり「フレグランス」「アロマ」「フレーバー」という三つのポイントがあり、それらを表現する言葉も多彩だ。

これら「味わい」と「香り」の要素が複雑に絡み合って、コーヒーの「おいしさ」になっている。

コーヒーの「おいしさ」とはいったいどういもの?

コーヒーの味わいを楽しむ大きな要素はこの五つ。特に「酸味」と「苦み」の強さは味わいの方向性を示す大きなポイントになる。

味わいとともにコーヒーを楽しむもう一つの要素が「香り」だ。香りには豆を挽くときに感じる「フレグランス」、抽出をするときに感じる「アロマ」、口に運んだときに感じる「フレーバー」の三つがある。香りを表現する言葉も多彩で、下に挙げているのはほんの一例だ。

香りの表現
・果実の香り(フルーティー)例:レモン、チェリー、オレンジなど
・草の香り(ハーバル)
・花の香り(フラワリー)例:ジャスミン、ハイビスカスなど
・ナッツの香り(ナッティー)例:アーモンド、ピーナッツなど
・麦芽の香り(モルティー)例:大麦、とうもろこしなど
・カラメルの香り(カラメリー)

コーヒー豆の生産国

自分が「おいしい」と感じるコーヒーを淹れるための第一歩にして最大のポイントは、自分好みのコーヒー豆を選ぶことだ。

そんなコーヒー豆選びに欠かせないのが豆の生産国や地域についての知識。まずは最低限、どんな国でコーヒー豆が生産されているかについては理解しておきたい。

上の地図にあるとおり、コーヒー豆は、赤道を挟んで北緯と南緯それぞれ25度付近までにある熱帯地域の国々で生産されるものが大多数を占める。このエリアは「コーヒーベルト」と呼ばれている。

中南米、ハワイ、オセアニア、アジア、中東、アフリカと、地球を一周するように分布するコーヒーベルトだが、平地の大規模プランテーションから山岳地帯の小規模農園まで、その生育環境はさまざま。その土地ごとの気候や風土に合わせて、多様な品種のコーヒー豆が生産されている。

特に生産量が多いのは中南米で、南米のブラジルやコロンビアは圧倒的な輸出量を誇るコーヒー大国として有名。ホンジュラスやコスタリカ、グアテマラ、エルサルバドル、ジャマイカといった中米も、山岳地帯を中心に良質なコーヒー豆を生産する。

中南米に次いで近年、生産が盛んなのがアジアで、特にベトナムやインドネシアでは、カネフォラ種(ロブスタ)の栽培も盛んだ。

アフリカは、エチオピア、ケニア、タンザニアなどで高品質なアラビカ種のコーヒー豆が栽培される。「モカ」や「キリマンジャロ」などがポピュラーだ。

それぞれの気候や風土に合わせた品種を栽培する

コーヒー豆の主要生産国
ブラジル
世界の生産量の3割を占めるともいわれるコーヒー大国。バランスの取れた味でブレンドのベースとしても人気が高い。
コロンビア
南米ではブラジルに次ぐ生産量を誇る。国土の大半が山岳地帯で、そこで栽培されるコーヒー豆はマイルドさで有名。
ホンジュラス
コスタリカ
エルサルバドル
グアテマラ
メキシコ
ジャマイカ
カリブ海の島国。ブルーマウンテン山脈で栽培される「ブルーマウンテン」が良質の高級コーヒー豆として有名。
ハワイ
ハワイ島のコナ地区で栽培される「コナ」が有名。爽やかな酸味と適度なコクが特徴のコーヒー豆として人気が高い。
中国
ベトナム
インドネシア
スマトラ島、ジャワ島を中心に世界有数の生産量を誇る。アラビカ種のマンデリンやカネフォラ種のロブスタを栽培。
Ⓜ︎オーストラリア
インド
イエメン
エチオピア
「モカ」の生産地の一つとして知られるコーヒー発祥の国。華やかな酸味やフルーティな香りで人気が高い。
ケニア
タンザニア
国の北東部にあるアフリカ最高峰の名を冠する「キリマンジャロ」があまりにも有名。しっかりとした酸味とコクが人気。

コーヒー豆とは?

意外かもしれないが、我々がふだん「コーヒー豆」と呼んでいるものは、実は豆ではない。

コーヒー豆とは、「コーヒーノキ」というアカネ科の植物が生育してつける「実」の中にある「種子」のこと。つまり、桃やブドウや柿など、果実の中にある種と同じようなものなのだ。

この種子が入っている赤い実のことを「コーヒーチェリー」と呼ぶ。色や形がサクランボに似ていることからこう呼ばれるが、収穫はこのチェリーの状態で行われる。

「コーヒーチェリー」は、外側から外皮、果肉、内果皮(パーチメント)、銀皮(シルバースキン)という層で構成されていて、その内側に二つの種子が向かい合わせで入っている。

コーヒーチェリーを加工して、この種子を取り出した状態がコーヒーの「生豆(なままめ)」。それが海を渡って日本に届き、焙煎されて一般的なコーヒー豆となるのだ。

コーヒーチェリーの中にあるのが生豆

コーヒーチェリーの皮や果肉などに包まれた中に、二つの種子が向かい合わせに入っている。この二つの種子を取り出したものがコーヒーの生豆になる。

コーヒー豆の種(品種)

現在流通しているコーヒーには「アラビカ種」と「カネフォラ種」という二つの大きな種がある。

アラビカ種」はエチオピアが原産で、世界で最も多く栽培されている種。世界のコーヒー生産量全体の58~63%がアラビカ種で占められるともいわれる。低地から高地まで、あらゆる場所で栽培されるが、病害虫に弱いという繊細な面もある。

アラビカ種は、ブルボン、カトゥーラ、ティピカ、ゲイシャなど、さらに細かい「品種」に枝分かれしている。いずれも味わいがよく、ストレートコーヒーとして飲まれるクォリティの高さが特徴だ。

一方の「カネフォラ種」は、ビクトリア湖周辺から西アフリカが原産で、流通している品種の多さから通称「ロブスタ」と呼ばれる。こちらはアラビカ種に比べて病害虫に強い強健さが特徴。

味は深いコクとパンチがあり、ブレンドコーヒーやアイスコーヒー、インスタントコーヒーなどに用いられることが多い。

味の特徴や用途が異なる二つのコーヒー豆

楕円形でセンターカット(中央にある割れ目)が上まで突き抜けている。多彩な品種が存在する。(ブルボン、ローリナ、カトゥーラ、ティピカ)

生産量トップ5(2003年輸出量ベース)
(1)ブラジル
(2)コロンビア
(3)グアテマラ
(4)ホンジュラス
(5)ペルー

涙のしずくのような形。センターカットが途中で切れている。全体に肉厚。品種はほぼロブスタのみ。

生産量トップ5(2003年輸出量ベース)
(1)ベトナム
(2)インドネシア
(3)ブラジル
(4)コートジボワール
(5)ウガンダ

*出典:UCCコーヒーアカデミーText Book/UCCホームページ「知る・楽しむ」(https://www.ucc.co.jp/enjoy/index.html)

■イラスト 田村 梓(ten-bin)
※この記事は『自宅で楽しむおいしい珈琲の淹れ方』(マキノ出版)に掲載されています。

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