すでにスマホやパソコンで音楽配信を利用している人は、すでにネットワークオーディオを実践しているのだが、これから本格的なオーディオ装置をそろえたいという人は、シンプルなアクティブスピーカーを使ったスタイルがおすすめだ。スマホやパソコンとUSBケーブルで接続するだけで、ハイレゾ音源にも対応する高音質が楽しめるのだ。
本稿は『極上 大人のオーディオ大百科 2023』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
アクティブスピーカーがあれば、手軽に始められる!
難しい知識も不要で誰でも挑戦できる
広く普及してきたものの、やはり「ネットワークオーディオ」というと、まだ難しいイメージがあるだろう。だが、これはインターネット経由で音楽を再生するという意味。つまり、すでにスマホやパソコンで音楽配信を利用している人は、すでにネットワークオーディオを実践しているのだ。
特に、サブスクリプション(サブスク。月々定額)サービスの「Apple Music」や「Amazon Music」では、音質劣化のほとんどないロスレス音源やCD以上の高音質であるハイレゾ音源も配信しているので、優秀なコンポやヘッドホンで再生すれば、かなり満足度は高い。
アンプやスピーカーといった本格的なオーディオ装置をこれからそろえたいという人は、シンプルなアクティブスピーカーを使ったスタイルがおすすめだ。
これは、スピーカーの中に、駆動するためのアンプや、デジタル信号を受け取るD/Aコンバーターを内蔵したもの。スマホやパソコンとUSBケーブルで接続するだけで、ハイレゾ音源にも対応する高音質が楽しめるのだ。
これなら、見た目やサウンドが気に入ったアクティブスピーカーを選ぶだけでいいし、また、比較的コンパクトなモデルが多いので、自室の机の上に置いて使えるなどのメリットもある。初心者にも安心のスタイルで、音質面でも本格的といえるネットワークオーディオに、ぜひ挑戦してみよう。
スマホやパソコンが直接つながる
スマホ/パソコン側
ふだん使っているスマホやパソコンとUSBケーブルで接続するだけの簡単さ。スマホの場合は、「USBカメラアダプタ」や「USB OTG」(On-The-Go)ケーブルなどを使う必要がある。
アクティブスピーカー側
USB DAC内蔵のアクティブスピーカーには、接続用のUSB端子があるので、パソコンやスマホと直接ケーブルで接続できる。USBだけでなく、アナログ入力などを備えるモデルもある。
USB DACを内蔵し、ハイレゾ音源にも対応
アクティブスピーカーとは、正確には「アンプ内蔵スピーカー」の意味だが、本格的なオーディオ再生を楽しめる高音質モデルでは、その多くがUSB DACを内蔵している。
スマホやパソコンと直接デジタル信号をやり取りできるので、音質劣化の少ない高音質再生が期待できる。また、高音質モデルではハイレゾ音源にも対応しているので、ハイレゾならではの高音質も存分に楽しめる。
接続は、基本的にはスマホやパソコンとUSBケーブルで接続するだけ。そのほかは、左右のスピーカーどうしを専用ケーブルでつなぎ、スピーカーを電源に接続すればいい。専用ケーブルや電源コードは製品に付属しているので、別途購入する必要はない。
パソコンで使う場合は、アクティブスピーカーのドライバーソフトのインストールが必要な場合もあるが、最近はドライバー不要で使えるものが多い。
スマホの場合は、iPhoneでは接続に「Lightning-USBカメラアダプタ」を使う必要がある。Android端末は機器に合ったデータ転送対応のケーブルが必要で、再生するアプリによっては、端末上の制限で音声出力が48kヘルツまでとなる。96kヘルツ以上のハイレゾ音源は、そのままの音質で再生できない場合があることを覚えておこう。
なお、アクティブスピーカーには、光デジタル音声入力やアナログ音声入力を備えたモデルもあって、テレビと接続して楽しむこともできる。リビングで使う場合は、こうした入力端子の種類もチェックしておくといいだろう。
今、注目したいアクティブスピーカー
クリプトン
KS-11
実売価格例:5万4780円
●サイズ/幅89mm×高さ176mm×奥行き105mm
●重量/800g(1本)
コンパクトなサイズで省スペースで使える
ノートパソコンにもピッタリな小型モデルながら、音質のよさでも定評のあるモデル。内蔵DACは最大192kヘルツ/24ビットに対応し、35ワット+35ワットのデジタルアンプを内蔵する。ブルートゥース対応で、ワイヤレス再生も可能だ。
エアパルス
A80
実売価格例:9万5700円
●サイズ/幅140mm×高さ255mm×奥行き240mm
●重量/4.8kg(1本)
リボンツイーターとアルミウーハーの採用で、音質にこだわった作りが魅力
リボンツイーターと硬質アルマイト処理されたアルミニウム合金コーンウーハーによる2ウエイモデル。内蔵DACは最大192kヘルツ/24ビットに対応し、ツイーターとウーハーをそれぞれ専用のアンプで駆動する。
KEF
LSX II
実売価格例:23万1000円
●サイズ/幅155mm×高さ240mm×奥行き180mm
●重量/7.2kg(セット)
独自の同軸2ウェイユニットを採用
独自の同軸2ウエイ「Uni-Qドライバー」を採用。最大384kヘルツ/24ビットのデジタル入力をサポートするほか、Wi-Fi内蔵で音楽配信サービスやAirPlay 2、Chromecastなどにも対応。高度なネットワーク機能を備えている。
サブスク型は最新の曲を含め、膨大な数の曲がある
毎月定額払い
サブスク型の音楽配信
サブスク型は、毎月一定の料金を支払うことで膨大な曲が聴き放題となるサービスだ。ストリーミング配信なので、基本的にWi-Fiなどデータ通信が行える環境でないと使えないが、サービスによってはスマホやパソコンに曲をダウンロードしておき、オフラインで再生することも可能だ。
ネットの音楽配信サービスは、今ではサブスク型が主流で、毎月定額料金を支払うことで膨大な楽曲を楽しめることが大きな特徴。楽曲数やシステム内容はサービスごとに違いがあるが、日本の音楽レーベルも積極的に参入しており、楽曲の充実度は十分に満足できるレベルだ。
ここでは、「Spotify」「Apple Music」「Amazon Music Unlimited」という3つの主要サービスを取り上げよう。
「Spotify」はCD品質の圧縮音源を配信するサービスで、定期的に広告が表示される無料プランもある。
「Apple Music」と「Amazon Music Unlimited」は有料サービスで、より高音質なハイレゾ音源やロスレス音源、サラウンド音源を配信しており、音質にこだわる人なら、これらのサービスを利用するのがおすすめだ。
曲を再生するには、各サービス専用のアプリを使用する。アプリには検索機能をはじめ、独自のプレイリストも提供されているので、好みのジャンルやアーティストに関連した曲を見つけることも容易だし、自分の知らない曲に出会える楽しみもある。
再生アプリは、いずれのサービスもスマホ用、パソコン用ともに無料で提供しており、初回契約時には無料体験期間も用意されているので、聴きたい曲があるかどうか、使いやすさなどを試してみるといいだろう。
注意したいのは、常時データ通信を行うストリーミング再生のため、屋外などWi-Fiが使えない場所ではデータ使用量が増えてしまうこと。データ使用量を節約するためには、Wi-Fiが使える場所でだけ利用したり、よく聴く曲は本体にダウンロードしておき、それを聴いたりするようにするといい。
また、あまり事例は多くないが、アーティストやレーベルの契約が終了すると、それまで聴けていた曲が聴けなくなることもある。
注目のサブスク型音楽配信サービス
Spotify
●料金:月額980円(Standard)
●楽曲数:約7000万曲
●音質:最高ビットレート320kbps
無料でも利用できるサブスクの最大手サービス
国内でのサブスク型音楽配信サービスの最大手で、プレイリストの充実度やアプリの使いやすさでも定評がある。圧縮音源での配信だが、無料プランもあるため、人気が高い。有料プランでは広告の挿入がなく、再生機能も充実している。
Apple Music
●料金:月額1080円(個人プラン)
●楽曲数:約1億曲
●音質:最高192kHz/24bit(ハイレゾロスレス)
●空間(3D)オーディオ対応
ロスレス音源など質の高い楽曲を提供
アップルが運営するサブスク型サービス。ハイレゾ音源の楽曲も充実しているが、ロスレス音源も独自のリマスターを行って、質を高めている。独自の空間オーディオは対応機器が少ないものの、サラウンド感は優秀。
Amazon Music Unlimited
●料金:月額980円(プライム会員880円)
●楽曲数:約1億曲
●音質:最高192kHz/24bit(Ultra HD)
●空間(3D)オーディオ対応
ハイレゾ音源のフォーマットを詳しく確認できる
Amazonが運営するサービスで、楽曲の充実度や機能性も優秀。ハイレゾ音源の楽曲では、サンプリング周波数などのフォーマットを詳しく確認できる。空間オーディオは、Dolby Atmosと360 Reality Audioがある。
ダウンロード型は楽曲を自分で所有できる
アルバム単位・曲単位で購入
ダウンロード型の音楽配信
古くからある音楽配信の形態で、楽曲単位・アルバム単位で音楽データを購入し、パソコンなどに音源をダウンロードして保有できる。メディアは存在しないが、CDを購入するのと同じようなスタイルだ。再生するにはプレーヤー(音楽再生)アプリが必要になるが、無料・有料ともに豊富な種類がある。
サブスク型と異なる音楽配信サービスが、ダウンロード型。楽曲を配信サイトで購入して、音源データをパソコンのHDDなどに保存するスタイルだ。
購入した曲は複数回のダウンロードが可能なほか、バックアップも作れるので、パソコンやスマホ、NAS(ネットワーク対応HDD)などに保存しておける。CDなどと同じように、著作権の私的利用の範囲で自由に使用できる。
楽曲の購入はアルバム単位、曲単位で行うことが可能。決済をしたらダウンロードとなるが、まれにダウンロードがうまくいかず、再生できないこともあるので、購入した曲は、すぐに再生して問題がないか確認しよう。
このほか、パソコン内で楽曲を管理したり、バックアップをしたりなど、多少の手間はかかるが、再生ソフトは自由に選べるし、再生ソフトによる音質の違いを試せるなど、マニアックな魅力も多い。
注目のダウンロード型音楽配信サービス
mora
●対応ファイル形式:AAC、FLAC、DSD
圧縮音源とハイレゾ音源があり、曲は充実
「WALKMAN公式ミュージックストア」で、CD品質の圧縮音源(AAC)とハイレゾ音源(FLAC、DSD)の楽曲が用意されている。ハイレゾ音源は、多くがFLAC形式の96kヘルツ/24ビットとなっていて、DSD音源は少数だ。
e-onkyo music
●対応ファイル形式:WAV、FLAC、MQA、DSD ※5.1chもあり
高音質レーベルも充実した老舗サービス
ネットワークオーディオの初期からサービスを行っている老舗サイト。同じ楽曲でも複数のフォーマットやファイル形式を用意していることが多い。世界中の高音質レーベルの楽曲が充実しているなど、マニアックさも大きな魅力だ。
■解説/鳥居一豊(AVライター)
※情報は記事作成時のものです。
※この記事は『極上 大人のオーディオ大百科 2023』(マキノ出版)に掲載されています。