テクニクスのコンパクトで安価なスピーカー、同軸型2ウエイブックシェルフのSB-C600は、意外にも大傑作なのだ。テクニクスのスピーカーはトールボーイ型SB-G90M2で音質的に飛躍、SB-C600はその普及版である。音の歪みを追放する特別な仕組み「重心マウント構造」が光る。アンプとプレーヤーは、デノンの900シリーズを合わせた。
本稿は『極上 大人のオーディオ大百科 2023』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
[別記事:【麻倉怜士推奨】おすすめコンポ6セットはコレ!スピーカー中心でセレクト→]
スピーカー テクニクス「SB-C600」
日本
実売価格例:11万円(ペア)
●幅173mm×高さ293mm×奥行き283mm
●6.3kg(1本)
同軸2ウエイのバスレフ。 ウーハーは150ミリ・コーン型、その中心のツイーターは25ミリ・ドーム型。同一のアルミ振動板素材で音色を統一している。
CDプレーヤー デノン「DCD-900NE」
日本
実売価格例:6万9300円
●幅434mm×高さ107mm×奥行き328mm
●4.9kg
部品や回路を吟味して設計。ネットワーク機能は相棒のアンプ、PMA-900HNEに任せ、ディスク再生に徹底。USB入力端子にて、ハイレゾ再生も可能だ。
プリメインアンプ デノン「PMA-900HNE」
日本
実売価格例:11万8800円
●幅434mm×高さ131mm×奥行き375mm
●8.3kg
デノン独自のネットワークプレーヤー機能、HEOS入りの最新プリメインアンプ。上級のPMA-A110から回路構成、高音質部品などを踏襲している。
組み合わせ価格:29万8100円
ジャパンブランドの最新傑作スピーカーを愛でる
日本メーカーのスピーカーは、ヨーロッパのそれに大きく後れを取っているという印象が強い。ところが、テクニクスのコンパクトで安価なスピーカー、同軸型2ウエイブックシェルフのSB-C600は、意外にも大傑作なのだ。
テクニクスのスピーカーは、昨年のトールボーイ型、SB-G90M2で音質的に飛躍。質感のよさ、響きの麗しさ、丁寧なグラデーションなど、日本製らしい繊細な音調を獲得していた。SB-C600は、その普及版である。
原理的に同軸だから点音源となり、明瞭な音像定位、音場再現に大いに資する。同軸上のツイーターとウーハーは、どちらも同じアルマイト処理をされたアルミニウム振動板素材を搭載し、音色を統一している。
さらに、音の歪みを追放する特別な仕組みが光る。それが「重心マウント構造」。ボックス内部に21ミリの厚みを持つMDF製のマウントバッフルを設け、そこにユニットを固定。ユニットの上下左右の揺れを減少させ、正確な振動板ストロークを行う。つまり、振動エネルギーがロスなく音に変換されるという仕組み。歪みの少ない、正しい音として発音されるのだ。
アンプとプレーヤーは、デノンの900シリーズ。ネットワーク機能、HEOS搭載アンプPMA-900HNEと、CD専用プレーヤーDCD-900NEだ。いずれも上位機の回路、高音質パーツを数多く載せている。
SB-C600はコンパクトサイズだが、予想外に低域の量感が再現される。「チーク・トゥ・チーク」では、同軸ユニットのメリットを発揮し、ボーカル音像が明瞭に立ち、ピアノの叙情感も気持ちよく感じられる。ベースの音階進行の弾みが軽やかで心地いい。
音場感が優れ、左右のステレオ感だけでなくオーケストラ演奏での弦、管、打楽器の奥行き方向での位置関係も、うまく表現している。
もう1つ特筆したいのが、低域ユニットと中高域ユニットのつながり。このクロスオーバーの部分の再生はなかなか難しいのだが、円滑に気持ちよく推移し、それも質感の高さにつながっている、この小さな音楽箱を気持ちよく鳴らしてくれるのがデノンのアンプとCDプレーヤーだ。デノンとの音調的なバランスがとてもいい。
■解説/麻倉怜士(デジタル・メディア評論家)
※情報は記事作成時のものです。
※この記事は『極上 大人のオーディオ大百科 2023』(マキノ出版)に掲載されています。