エクセルには、いろいろな使い方がある。基本は、セルと呼ばれるマス目に項目や数字を入れて表を作ること。さらに、関数機能を使って自動的に計算したり、データベースのように集計したり、これらが王道だ。
一方、エクセルを各種フォーマットの作成や作図に使う人もいる。こうした使い方は一部で「神エクセル」とも言われる。まず、その基本となる「エクセル方眼紙」の作り方を紹介しよう。その後、「神エクセル」の利用例とデメリットについて解説する。
※最終更新:2024年4月25日
※この記事の画面は、Microsoft Excel for Microsoft 365 バージョン2403(32ビット)を使用しています。バージョンや設定によってメニュー表示が異なることがあります。
すべてのセルの縦横を揃えて正方形にする
エクセル方眼紙とは、すべてのセルの縦と横の寸法を同じに揃えて方眼紙の状態にしたもの。そのためには、まずすべてのセルを選択する必要がある。
普通、複数のセルを選択するときはマウスを動かして必要な範囲を選択する。しかし、エクセル1シートのセルは1,048,576行×16,384列もあって、画面をスクロールして選択するのは現実的でない。
実は、一発ですべてのセルを選択できる簡単な方法がある。左側の数字「1」の上、斜め三角に塗り分けられた部分をクリックしよう。
これだけで、すべてのセルが選択された。この画面では見えていない16行目より下やL列より右も選択されている。
次に、セルの高さと幅を合わせるのだが、まずはシンプルな方法から。セルの高さを確認して、横幅を高さに合わせてみよう。
「1」と「2」の境にカーソルを合わせると、カーソルが上下の矢印に変わる。そのままマウスの左ボタンを押すと、セルの高さが25ピクセルだと分かる。
次に、「A」と「B」の境にカーソルを合わせると、カーソルが左右の矢印になる。そのままマウスの左ボタンを押して左にドラッグして、セルの幅を25ピクセルにしよう。
A以外の列も幅が25ピクセルになって、すべてのセルが正方形になった。
数値で指定して、1cm角の方眼紙を作る方法
上記の手順でエクセル方眼紙を作ってもいいが、横幅を合わせる操作が少し難しい。また、せっかくならセンチ単位やミリ単位の方眼紙を作りたい。
その場合は、まず画面右下の「ページレイアウト」ボタンを押す。
画面表示が変更された。この画面にすると、センチ単位でセルの高さや幅を指定することができる。
先ほどと同じように、画面左上の斜め三角を押してすべてのセルを選択する。
次に、「ホーム」タブのリボン右寄り、「セル」グループの「書式」を押して「行の高さ」を選ぶ。
「行の高さ」の入力枠が出るので、数値を「1cm」にして「OK」。
セルの高さが1cmになった。元の高さが0.66cmだったので、操作前よりセルが高くなった。
続いて、「セル」グループの「書式」から「列の幅」を選ぶ。
列の幅を「1cm」にして「OK」。
列の幅も1cmになった。画面右下の「標準」ボタンを押そう。
すべてのセルが縦横1cmのエクセル方眼紙ができた。
さらに細かな方眼紙や、縦横比の異なる方眼紙をつくる
もっと細かくしたい場合は、「行の高さ」と「行の幅」の数値を小さくすればいい。一例として、どちらも「0.5cm」にしてみた。
セルの高さと幅が5mmの細かなエクセル方眼紙になった。
縦横の寸法は、必ずしも同じにする必要はない。たとえば、高さ0.3cm×幅0.8cmとか、高さ1.2cm×幅0.4cmといった方眼紙を作ることも可能だ。
エクセル方眼紙を使って手書き用のフォーマットを作る
このようなエクセル方眼紙の使い方として、もっとも多いのが以下のような手書き用のフォーマットを作ること。この作業では、セルの連結や罫線を多用している。
印刷すると、このようになる。どこかの受付でこの用紙に記入するよう求められたら、ほとんどの人が問題なく記入できるだろう。
ここでは、ごく簡単な記入用紙を作成したが、もっと複雑なフォーマットや資料を作ることもできる。あるいは、「図形」の「挿入」機能を使ってフローチャートを作るときにも役立つだろう。
ところが、このようなエクセル方眼紙に対して否定的な意見がある。
エクセル方眼紙の問題点 - 入力に手間がかかりデータ活用が難しい
前出の記入用紙を印刷して手書きするのではなく、エクセルのファイルに数字や文字を入力してみた。すると、とても使いにくいことが分かる。
まず、会員番号、入会年月日、フリガナが1文字1セルになっているので、1文字入力して次のセルに移動し、また1文字入力するといった作業を繰り返す必要がある。
メールアドレスも同様で、@の左側を入力してから、セルを2つ移動して右側を入力しないといけない。
さらに問題なのは、これをデータとして管理したり活用したりするとき。エクセルは、会員番号、入会年月日、フリガナを、ひとかたまりの項目として認識できない。ひとつのセルに収まっていないので意味のないバラバラの数字や文字になってしまう。
メールアドレスも同様だ。@の左側と右側、その間に半角の@を入れて連結しないとメールアドレスとして使うことができない。
また、セルの連結を多用しているため、たとえば氏名や職業といった一部の項目だけ抽出して別のリストにまとめようとしても、その指定が難しい。
極めつけは「平成・令和」の選択方法で、ここでは図形機能で文字に楕円を重ねている。そのため、エクセルやコンピューターは、どちらが選ばれているのか認識できない。
生産性向上のために推奨される本来のエクセル使用法
では、どのような形式で入力するのが望ましいのか。今回の記入用紙の例では、最初から以下のような一覧表にするのが、やはり最適といえる。
「なんだ、よくあるやつね」「手書きには使えない」と言われそうだが、その通りだ。しかし、この形式になっているメリットは計り知れない。
たとえば入会日。年月日(実際は、その元になる数値)がエクセル標準の統一された形でひとつのセルに入っている。そのため、日付順に並び変えたり、特定期間のデータだけ抽出したりできる。
ここでは一例として、フリガナで50音順に並び変えてみよう。
まず、フリガナが入力されている列「D」をクリックして列全体を選択する。続いて「ホーム」タブのリボン右寄り「編集」の中にある「並べ替えとフィルター」を押して「昇順」を選ぶ。
「並べ替えの前に」という画面が出るので、「選択範囲を拡張する」に丸が付いていることを確認して「並べ替え」を押す。
フリガナが50音順になった。会員番号や氏名などの項目も同時に移動している。数百行あるデータでも同じように並べ替えが可能だ。
同様に入会日で並べ変えることもできる。新しく入会した人を上にしたい場合は、「降順」で並べ変えればいい。最初の状態に戻したいときは、会員番号を「昇順」で並べ変えよう。
また、メールアドレスがひとかたまりのデータになっていて、しかもハイパーリンクが有効になっている。そのため、アドレスをクリックすればメールソフトが起動してメールを書くことができる。
さらに重要なのは、このような形式になっていると、カンマ区切りなどの方法でデータを書き出して、他のソフトウェアや業務用のデータベースにデータを渡すことができる。しかも、そういった操作が頻繁にある場合はマクロ機能などを利用して自動的に行うことも可能だ。
あるいは、会社などで複数の人が同じファイルを使う場合も、このような形式になっていると効率がいいし、データの内容を統一しやすい。
カード型フォーマットも便利 – 「フォーム」機能を使って快適にデータを入力する
そうはいっても、このような表形式は「味気ない」「なじみにくい」という声があるかもしれない。そんなときは、以下のようにカード型のフォーマットを使うといい。
まず、マウス操作でデータが入っているセルをすべて選択する。データ未入力の場合は、1行目の項目名だけ入力して、そのセルをすべて選択する。
画面最上部の「クイックアクセスツールバー」にある「フォーム」ボタンを押す。項目名だけの場合は確認画面が開くので「OK」を押す。
1人分のデータが入ったカード型の画面が現れた。この画面で、データの追加(新規入力)、編集、検索、削除などができる。ただし、この画面を印刷することはできない。
まとめ
かつて、オフィスにパソコンが普及し始めたころ、手書きの原稿をワープロソフトで清書して印刷することが多かった。しかも、その文書を保存することなくパソコンの電源を切って、次に同じような文書を作成するときは、また最初から入力する人がいた。
今では信じられないほど非効率な方法だ。しかし当時は、パソコンを単に清書用の機械だと思っている人が実際にいたのだ。
今は、業務の生産性向上が強く求められている。テレワークも広まった。紙の資料は確実に減っている。
たとえば、この記事の中でサンプルとして作った手書きの記入用紙をどこかで使ったとして、それを紙で保存するのは効率が悪い。数人分なら紙の束にしたり、手作業でエクセルに入力してもいいが、数百人分、数千人分となると明らかに生産性が低い。
ましてやネットビジネスの時代、顧客データは数万件、数百万件というオーダーが珍しくない。
こうした時代背景を踏まえたうえで、どうしても紙の記入用紙や資料が必要で、基本的に自分だけが使う(他者とのデータ交換がない)なら、まだエクセル方眼紙(神エクセル)を活用できるシーンがあるだろう。