顔の骨にはいろいろな形の空洞があり、総称して副鼻腔と呼んでいます。そこでは常時、NO(一酸化窒素)が産生されているのです。NOは平滑筋という組織に働きかけて血管をやわらかく広げる働きがあり、その結果全身の血流がスムーズになるのです。【解説】竹野幸夫(広島大学大学院 耳鼻咽喉科教授)

解説者のプロフィール

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竹野幸夫(たけの・さちお)
1987年、京都大学医学部卒業。 91年、広島大学大学院医学系研究科修了。医学博士。帝京大学助手などを経て、現在、広島大学大学院耳鼻咽喉科教授。

鼻呼吸ができていない人が少なくない!

皆さんは、ふだん自分の呼吸について意識したことはありますか。あまりに自然な行為なので、特段気にしていないかたが多いのではないでしょうか。

私たちの生命活動の根幹を担っている呼吸ですが、実は正しくできていない人が少なくありません。

本来の生理的呼吸というのは、鼻から息を吸って鼻から吐く、いわゆる「鼻呼吸」です。一方で、正しく呼吸できていないと、口で息を吸って口から吐く、口呼吸になってしまいます。

私たちの鼻は、さまざまな機能を果たしていますが、呼吸をスムーズに行うこともその重要な機能の一つです。

鼻の粘膜は、線毛というごく細く短い毛がびっしりと生えた細胞に覆われています。また、鼻粘膜からは、絶えず微量の粘液が分泌されています。

鼻から吸い込まれた空気は、これらの働きによって、鼻腔の中を通るうちに適切な温度(約36度)と湿度(約90%)を与えられます。そうして、肺に届けられた空気は、肺の中でスムーズに循環できるようになります。

鼻呼吸ができないと様々な機能低下が起こる

NO(一酸化炭素)が副鼻腔から供給されなくなる

鼻呼吸が適切に行われないと、冷たく乾いた空気が直接肺に送り込まれてしまい、その空気に満たされることで、肺はダメージを受けます。結果、機能低下につながりかねません。

鼻の粘膜は、吸気に混じったほこりなどの異物を除去しますが、その役割も果たされなくなります。

さらに近年注目されているのは、NO(一酸化窒素)が副鼻腔より供給されなくなることです。

顔の骨にはいろいろな形の空洞があり、鼻腔を取り囲むように存在しています。これらの空洞を総称して副鼻腔と呼んでいます。

この副鼻腔にも鼻腔と同様に粘膜があり、線毛細胞に覆われています。そこでは常時、NOが産生されているのです。

画像: 鼻呼吸で血流アップ物質が産生

鼻呼吸で血流アップ物質が産生

血管を若々しく保つNOの働き

肺と心臓の血液循環の一助に!

NOは、血管の内皮細胞からも分泌される物質です。血管の中膜にある平滑筋という組織に働きかけて血管をやわらかく広げる働きがあり、その結果、全身の血流がスムーズになるのです。

血管を若々しく保つ物質として、欠かせないといえるでしょう。

NOの働きはこれだけではありません。殺菌作用があるため、気道を清浄に保ち、病原菌などから体
を守ってくれます。さらに、産生されたNOが肺に運ばれることで、肺と心臓の血液循環の一助にもなります。

排出量を増やす方法

鼻歌を歌うとNO排出量が増える!

さて、このように、私たちの健康を保つうえで重要な役割を担うNOですが、鼻歌を歌うと、副鼻腔内からのNO排出量が増えるというおもしろい研究があります。

これは、スウェーデンで2002年に発表された研究です。安静時と、鼻歌を歌った直後の呼気に含まれるNOを比較したところ、鼻歌を歌うと、安静時よりもはるかにたくさんのNOが作られていたのです。

その量は、実に15倍。鼻歌の響きによって副鼻腔が共鳴腔として振動し、それにより鼻腔を経由してのNO排出量が増えたのだと考えられます。

これまで、口呼吸の健康面での弊害はしばしば指摘されてきました。日常的に口呼吸をしていると、口腔内の衛生状態が悪化しますし、菌が体内に侵入し病気にもなりやすくなります。また、集中力が低下するともいわれています。

若々しい血管を保つためにも毎日を元気に過ごすためにも、正しい呼吸を心がけましょう。

画像: この記事は『壮快』2019年2月号に掲載されています。

この記事は『壮快』2019年2月号に掲載されています。

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