耳鳴りやめまいは改善できない症状ではありません。原因に則したケアを行うことで、大きく改善することが可能です。今回は、耳鳴りやめまいに悩む患者さんに、セルフケアとして必ずお勧めしている「ふくらはぎマッサージ」をご紹介します。【解説】坂田英明(川越耳科学クリニック院長・埼玉医科大学客員教授)
解説者のプロフィール
坂田英明(さかた・ひであき)
川越耳科学クリニック院長・埼玉医科大学客員教授。埼玉医科大学医学部卒業。帝京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科助手、ドイツ・マグデブルク大学耳鼻咽喉科研究員、埼玉県立小児医療センター耳鼻咽喉科副部長、目白大学保健医療学部教授などを経て、2016年より川越耳科学クリニック院長。『あきらめないで!耳鳴りは1分でよくなる』(マキノ出版)など、著書多数。
川越耳科学クリニック http://www.jikagaku.jp/
血流をよくすることが症状解決のカギ
耳鳴りやめまいというと、高齢者の病気だと思う人も多いでしょう。しかし、近年では、30代後半から40代でもこうした症状を自覚するかたも多く、長い年月悩んでいるかたもたくさんいらっしゃいます。
耳鳴りもめまいも、病院で診察を受けても「なるべく気にしないようにしましょう」「上手に付き合っていくしかないですね」などと言われ、改善を諦めてしまうことが少なくありません。
しかし、これらは改善できない症状ではありません。なぜなら耳鳴りもめまいも、それを引き起こす原因があるからです。その原因に則したケアを行うことで、大きく改善することが可能です。
とはいえ、その原因を特定するのはなかなか難しいことです。一見関係なさそうな生活習慣や別の不調が原因となることもあります。だからこそ、セルフケアを行うことがたいせつになってきます。
そこで私が耳鳴りやめまいに悩む患者さんに、必ずお勧めしているのが「ふくらはぎマッサージ」です。
多くの場合、めまいは耳から起こり、耳鳴りは耳と脳から起こります。耳と脳はつながっているので、めまいと耳鳴りが同時に起こることも少なくありません。
耳から脳へ至る部位は、外耳、中耳、内耳で構成されています。内耳にある蝸牛と三半規管は、骨でできており、その中はリンパ液で満たされています。
この内耳がむくむと、耳鳴りやめまいが起きやすくなるのです。
《耳の構造とめまいが起こるしくみ》
血液がドロドロで流れが悪いと、血管の浸透圧が低下して水分が漏れ、むくみの原因となります。めまいの予防は、「内耳のむくみとの戦い」と言っても過言ではありません。
耳や脳などの毛細血管ほか、全身の血流をよくするのにとても有効なのがふくらはぎマッサージです。
ふくらはぎは、足の血液が鬱滞して固くなりやすい場所です。ここをもみほぐすことで、足の血液を心臓に戻してむくみをとり、同時に全身に血液を循環させます。
気がついたときに自分でマッサージしやすい点からもお勧めです。
ふくらはぎは血液循環の要
ふくらはぎマッサージのやり方は、ふくらはぎから心臓へ血液を戻すイメージで、下から上へほぐしていくことが基本となります。
ほぐすと言っても強い力でグイグイ押すと、リンパ管がつぶれて流れがよくなりません。軽くもむ程度の力加減でじゅうぶんです。
ふくらはぎは、歩くことで全身の血液を循環させるポンプのような役割を果たしています。
ところが、長時間座ったまま事務作業を行っていたり、あまり歩かなかったりすると、血流が滞り、むくみの原因となります。
特に長時間座って仕事をすることが多い人は、こまめにふくらはぎをほぐして、血液を循環させるように心がけてください。
また、私はふくらはぎマッサージのほか、耳鳴りやめまいを防ぐために、以下のことを患者さんに指導しています。
●入浴前・就寝前には、コップ1杯の水を飲む
●入浴は半身浴で。長風呂や熱い風呂に入るのは避ける
●夕食は寝る3時間前までに終える
どんなによい治療薬ができたとしても、原因となる習慣を生活の中から取り除いていかない限り、耳鳴りもめまいも一時的にはよくなったとしても、また再発するでしょう。
ふくらはぎマッサージほか、脳の血流量を増やす生活習慣をしていくことが、症状の予防・改善には必要なことなのです。
「ふくらはぎマッサージ」のやり方
※下から上へ、心臓に血液を戻すイメージで行う
※左右の足で3〜5分ずつ行う
※あまり強くもみ過ぎない
※睡眠の1時間前に行うのがお勧めだが、いつ行ってもよい
❶準備運動として、ひざの曲げ伸ばしを5回行い、左右の足首を5回ずつ回す
❷ふくらはぎの内側を下から上に、心臓のほうへ向かってもみほぐしていく。同様に、アキレス腱からひざ裏に向かってもみほぐす
❸ふくらはぎの外側を下から上に向かって、もみほぐしていく。同様に、足首からひざに向かって、すねをもみほぐす
❹もう一度、アキレス腱からひざ裏に向かってもみほぐした後、足首からひざに向かってすねをもみほぐす