最近は、とびきりコンパクトな筐体サイズを実現しつつも、フルサイズのノートPCにも負けない高性能を備えた超小型パソコン「UMPC」がなにかと話題だ。とはいえ、これほど小さいマシンが、はたして実用に耐えうるのか、と半信半疑な人も少なくないだろう。そこで今回は、UMPCの基本から代表的なモデルまでを初心者向けにわかりやすく解説していく。
いま話題の「UMPC」とは?
聞き慣れない人も多いだろうが、そもそも「UMPC」とは「Ultra-Mobile PC」の略語で、2006年3月にインテルやマイクロソフトなどの企業が中心となって提唱したPC規格の一つだ。
やや乱暴な括り方かもしれないが、ざっくりと説明すれば、UMPCは「超小型のノートパソコン」とほぼ同義と考えてしまって構わないだろう。
もちろん、厳密な定義はしっかり決まっている。
例えば、
- 9型以下のタッチパネルディスプレイ搭載
- Atomなどの超消費電力CPU
- 重量は2ポンド(907グラム)以下
など、さまざまなガイドラインが策定されている。
しかし、こうしたルールが定められたのは今から13年も前ということもあって、例えば、インテルの「Atomプロセッサー」は開発が終了するなど、最新のパソコン事情とはかけ離れた部分も出てきている。
つまり、現在は、9型以下、重量907グラムという筐体サイズを満たした、超小型のノートパソコンをひと括りにUMPCと呼んでいるというのが実情だ。
ほかに縛りがあるとすれば、OSは原則「Windows10」というくらいだろう。
UMPCのメリットとデメリット
メリット
軽量コンパクトで楽々と持ち運べる
ハードウェアキーボードでしっかり文字入力ができる
豊富なWindowsアプリを利用できる
Windowsの機能をすべて使える
デメリット
画面が小さく見づらい
サイズによってはタッチタイピングが困難な場合も
タッチパッドなどが非搭載の場合、タッチパネルでカーソル操作を行う必要がある
クラウドファンディング経由でしか購入できない場合もある
ご覧のとおり、UMPCの超短所はいずれも「筐体サイズ」に起因するものばかりだ。
メリットとデメリットは切っても切れない関係を持つことが多いが、それはUMPCでも変わらない。
例えば、最大の特長である「軽量コンパクト」は、抜群の携帯性を生み出す反面、狭い画面や小さいキーボードといった操作性の問題に直結してしまう。
「長所と短所は表裏一体」とはよくいったもので、なにかしら飛び抜けたメリットがあるときは、それに付随したデメリットもより大きくなっていく。
つまり、UMPCはなんでもこなせるオールマイティー端末ではなく、コンパクトであることに全力投球な一芸特化型のパソコンと理解すべきだろう。
UMPCのOS
UMPCが誕生した経緯は冒頭でも触れたが、やはりマイクロソフトが関わったパソコン規格ということもあって、OSにはおなじみのウィンドウズが採用されている。
現在、ウィンドウズの最新バージョンは、ご存知のとおり「Windows10」だが、UMPCの小さい画面で上手く扱えるのかと心配する人も多いだろう。
しかし、Windows10は、以前のOSバージョンとは違って、タッチ操作向けの「タブレットモード」を備えるなど、小型デバイス向けのOSとしても使い勝手が飛躍的に向上している。
もちろん、通常サイズのノートパソコンと比べれば、筐体サイズが小さいぶん、どうしても操作性は落ちることは否めない。
ただし、それでもタブレットモードを用意するなど、小型デバイスでの操作を考慮しているわけで、ある程度割り切った使い方さえ受容できれば、さほどストレスを感じることはないはずだろう。
UMPCの筐体サイズ
規格上、UMPCの筐体サイズは「9型以下」と定義されていることもあって、現在発売されている端末の多くは6~9型程度の画面を採用している。
ユーザーによっては、せっかく「UMPC」という超小型マシンを買うのだから、できる限り小さいサイズを、と考えるかもしれないが、それはちょっと待ってほしい。
というのも、例えば、メインの用途が文章入力中心なら、しっかりとしたキーボードを備えた、比較的大きいサイズのほうが向いている。
逆に、ウェブ閲覧やメールチェック、ゲームなど、キーボードがさほど必要ない作業なら、より小型サイズでも問題ない。そんな具合に、実際の用途によってベストな筐体サイズが異なってくる。
ゆえに、UMPCを選ぶ際は、筐体の大きさだけではなく、操作性や画面サイズなども考慮して、自分にとってベストなサイズを探るようにしたほうがいいだろう。
UMPCの購入方法
UMPCゆえの特殊な事情として、購入先の問題がある。
現在は、メジャーなモデルなら大手量販店や直販サイトなどでも入手できるようになりつつあるが、それでも、いまだに海外の「クラウドファンディング」サイトを通じてしか購入できないモデルも存在している。
クラウドファンディングサイトを通じてUMPCを購入するときは、「プロジェクトに対してユーザーが出資する」という体裁を採り、そのリターンとして端末が提供される場合が多い。
ただし、通常は支援金を募っている段階では、端末の生産が始まっていないことがほとんどなうえ、なんらかの事情でプロジェクトが頓挫した場合は、出資金が戻ってこないというリスクもある。
さらに、プロジェクトが成立したとしても、実際に生産が始まってユーザーの手元に届くまでには、1年以上掛かることも珍しくはない。
つまり、普通のネットショッピング感覚でクラウドファンディングのUMPCに手を出すと、手痛い失敗をする可能性もあるということだ
もちろん、クラウドファンディングには、「製品化された端末より割安」「話題の端末がいち早く手に入る」など、通常の購入方法にはない大きなメリットもある。
あくまで自己責任にはなるが、ある程度のリスクを覚悟できるならチャレンジする価値は大いにあるだろう。
国内でも入手できるおすすめUMPCはこれ!
8.9型&850グラムのコンパクトサイズながら高スペックを実現!
【8.9型】GPD Pocket2 Max
Pocket2 Max
P2 Max
最薄部5.5ミリ、重量650グラムの軽量スリムを実現した8.9型モデルで、CPUには第8世代のCore m3プロセッサーを搭載。
画面は2560ドット✕1600ドットの高解像ディスプレイを備え、10点マルチタッチのほか、スタイラス入力にも対応。
さらに、指紋認証機能やType-Cを含む全3基のUSB端子、マイクロHDMI端子を用意するなど、機能面も申し分ない。バッテリー持続時間は最大8時間。
「道具」感覚で使えるベーシックな低価格モデル
【6型】GPD MicroPC
MicroPC
GPDMICROPC
幅153ミリ✕高さ23.5ミリ✕奥行き113ミリ、重量440グラムの軽量筐体を誇る、携帯性抜群の6型モデル。
CPUはCeleron N4100プロセッサー、メモリーは6Gバイトと高スペック仕様ではないものの、オフィス文書の作成やメールチェック、ウェブの閲覧といった一般的な用途なら十分こなせるパフォーマンスを有する。
一方、USB端子はType-Cを含む全4基、標準サイズのHDMI端子、RS-232の映像出力も備えるなど、拡張性は通常サイズのノートパソコンにも匹敵する。バッテリー持続時間は最大6~8時間。
アルミ削り出しの優美な外観を備えた7型モデル
【7型】GPD Pocket2
ミニノートブック
pocket 2
第8世代のCore m3プロセッサーを搭載した7型モデルで、画面には1920ドット✕1200ドットの高解像度ディスプレイを採用。
重量510グラム、幅181ミリ✕高さ8~14ミリ✕奥行き113ミリ、重量465グラムと7型としてはトップクラスの軽量スリムを実現しつつも、人間工学を考慮した打鍵感のいいキーボードを備えるなど、使い勝手や操作性にも徹底的にこだわっている。バッテリー持続時間は最大6~8時間。
高性能な全部入りマシン! 2in1スタイルでも使える!
【8.4型】OneMix3
OneMix3 Pro
2560ドット✕1600ドットの高解像度ディスプレイを搭載した8.4型モデル。
CPUは第8世代のCore m3プロセッサー、メモリーは8Gバイト、さらにストレージには256GバイトのSSDを備えるなど、スペック面は盤石。さらに、360度回転式のヒンジを採用することで2in1スタイルにも対応し、ディスプレイを折り返してタブレット感覚でも利用できる。
一方、4096段階の筆圧検知に対応したタッチペンが付属するほか、指紋認証も備えるなど、機能面も極めて充実している。サイズ・重量は、幅204ミリ✕高さ14.9ミリ✕奥行き129ミリ・659グラム。
デュアルアナログスティック搭載! PCゲームメインならこれで決まり!
【6型】GPD WIN2 2019バージョン
WIN2 2019バージョン
人気の6型UMPC「GPD WIN2」の2019年バージョンで、CPUは第8世代のCore m3プロセッサー、ストレージは256GバイトのSSDにグレードアップ。
さらに、メインマザーボードの設計を見直し、放熱性をアップさせたほか、オーディオ性能の改良や、マイクロSDカードスロットの性能向上を実施するなど、多数の改善が施されている。
ゲームとの相性の良さは変わらずで、アナログスティック2基や十字キー、操作ボタン、振動モーターを備えるなど、アクションからシミュレーションまで、あらゆるジャンルに対応可能だ。サイズ・重量は、幅162ミリ✕高さ25ミリ✕奥行き99ミリ・460グラム。
まとめ
UMPCの魅力は、サイズは小さいものの、通常サイズのパソコンと同じ作業をこなせるという点に尽きるだろう。
作業の内容によってはスペックが足りない場合もあるだろうが、最近のUMPCは、Coreプロセッサーを搭載するなど、かつてとは比較にならないほど高いスペックを備えるようになってきている。
例えば、オフィス文書の編集はもちろん、ちょっとしたフォトレタッチや動画編集程度なら十分こなせるはずだろう。
ただし、コンパクト筐体ゆえ画面サイズは当然狭くなるえ、使い勝手も決して万人向けというわけではない。特にUMPCビギナーの場合は、店頭でチェックしたり、知り合いにユーザーがいれば試させたりもらうなどして、なるべく実機を確認してから購入を決めたほうがいいだろう。
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◆篠原義夫(フリーライター)
パソコン雑誌や家電情報誌の編集スタッフを経て、フリーライターとして独立。専門分野はパソコンやスマホ、タブレットなどのデジタル家電が中心で、初心者にも分かりやすい記事をモットーに執筆活動を展開中。