ホラー映画の名作「シャイニング」の続編『ドクター・スリープ』の試写会に行ってきました。最近の映画には、上映システムに合わせ、いろいろな「版」が存在します。有名なのは「3D」でしょうかね、専用眼鏡をかけると3Dに見えるというものです。今回のドルビーシネマは、映像と音響のパワフルな技術で、映画館で最高に魅力的なシネマ体験をさせてくれる、というのが謳い文句。私がそこで見たのは、映像の基礎を徹底させると「ここまでスゴいのか」ということでした。

映像の基本、三原色と白と「黒」

映画は「光のマジック」です。
このため、光の三原色を正確に出せることが重要です。これに加え、白と黒。白は全ての色が合わさった状態、黒は光が全くない状態です。

映画は、光を投影、スクリーンの反射光を使って人に映像を見せます。
スクリーンは、変な色が付かないように「白」が基本。少しの光でも、少しの色変化でも分かるように、正確に描写でき、見えるように設計されています。逆に言うと、非常灯や誘導灯などを常時点灯しなければならない、映画館での正確な黒再現はとても難しい、とされています。消防法により厳格に定められているからです。

これに対し、趣味で行うホームシアターは、逆に徹底して黒が追求できます。
このために、非常に高価な機材を投入します。また、部屋の壁にも黒カーテン。ま、オタクと言われてもおかしくはないですが、追求型の趣味は、行くところまで行ってしまいます。

その差はどのくらいかというと、よく例えに出されるのが、宇宙です。
東京で夜空を見上げても、見える星はわずか。しかし、長野県はどうか。満天の星です。これと同じと考えて見てもらええれば分かりやすいです。と言うのは、この星数の差の大半は、「空気の澄み具合」の差ではなく、「周囲の明るさ」の差が原因だからです。東京は都市全体、エリア全体が明るいのです。

ホームシアターも同じです。
例えば、スターウォーズの冒頭は、宇宙空間を背景に文字が移動するお馴染みのシーンです。黒がキチンと出ていると、この星の数が多いのです。つまり、等級の大きい暗い星も見える(描写される)と言うことです。実際イイもので体験すると、東京と長野どころでなく、ハワイ島マウナケア天文台で見上げるほどの差があります。

実際、「そんなのストーリーに関係ない」と言う人もいます。
しかし、これは手作りの背景です。不要なら、そんな面倒臭いことはしません。しかし、完全な黒の中に「A long time ago in a galaxy far, far away…」。そして無数の星、無限の拡がりを持つ宇宙にスクロールされていく文字。この見せ方は監督の意図であり、それが再生出来ないというのは「二級品」と言われても仕方がないとも言えます。

ドルビーシネマは「黒」「黒」「黒」

今回のドルビーシネマは、映像と音響のパワフルな技術で、映画館で最高に魅力的なシネマ体験をさせてくれる、というのが謳い文句。私がそこで見たのは、映像の基礎を徹底させると「ここまでスゴいのか」ということでした。

このため、映画館も最高のシステムを入れるわけですが、ドルビーシネマでびっくりしたのは「少しの反射さえも許さない」徹底した作りです。

劇場内部は、光を反射しない「マットな黒」に覆われています。
壁、床、椅子。全部そうです。照明は、ブルーLED。余りの徹底度にびっくりしました。高級オーディオメーカーにマッキントッシュという会社があります(パソコンのアップル社とは無関係です)。このメーカーのアンプは、ボディが黒で、メーター照明などが青なのですが、それを思い出しましたね。

画像: ドルビーシネマの劇場内部。椅子は反射しないようにマットな革張り。呆れるほど映像美NIこだわった仕様。

ドルビーシネマの劇場内部。椅子は反射しないようにマットな革張り。呆れるほど映像美NIこだわった仕様。

ここまで追求されると、お金がかかりすぎて、いわゆる古き良きノスタルジックな映画館は絶対について行けません。

その効果は、目を見張るモノがあります。
『ドクター・スリープ』はホラー映画ですが、全米のいろいろなシーンで構成されています。春のフロリダ。秋のアイオワ。冬のコロラド。これらの描写が実にキレイ。また、ホラーですから、薄暗がりのシーンも多いのですが、その描写も実に巧み。映像美を堪能しました。

また、エンドロールも見事です。白い文字がロールアップされていくだけなのですが、普通なら、ここでスクリーンが黒ではなく、濃灰に見え文字の輪郭がやや滲む感じですが、ビシッと決まっています。

監督が見せたかった映像を、100%描写された感じでした。

ドルビーシネマの導入劇場は以下の通りです。

▼MOVIXさいたま(埼玉県)
▼丸の内ピカデリー(東京都)
▼MOVIX京都(京都府)

画像: wwws.warnerbros.co.jp
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「液晶」は、現時点では100%の色再現性はない

ここで思い出すのが、テレビです。
平面テレビの導入当初は、「液晶」と「プラズマ」2タイプありました。液晶テレビは、バックライト光源とカラーフィルターにより色を描写するのに対し、プラズマは自家発光タイプです。この「黒の描写」が断然良く、繊細な描写に向いています。

ただ、プラズマは、液晶に比べて小型画面が作れない、消費電力が高い、といった問題があり、平面テレビの顔役になることができませんでした。

つまり、「画質」は「経済性」に負けたわけです。
実際、パナソニックの中村邦夫元社長も「お客様は映像が見えたらいい。結局、テレビは単純に作れる商品だから安くできる。だから安値戦争ばっかりやってきた気がする。」(2019年10月28日・日経新聞ウェブ版より引用)と言っています。

これほどまでに普及した「液晶パネル」ですが、実は、色再現性が100%はできない。その経済性において、普及しただけなのです。

逆に言うと、テレビだから「液晶」という言い方も成り立ちます。
今のテレビ番組はバライティーが多く、明るい「画」が好まれます。少なくとも、黒がきれいに見えるようにセットする必然性がないものが大半なのです。つまり、液晶の「苦手なところ」「悪いところ」が出て来ないわけです。

テレビ放送の場合、液晶も、自家発光で黒がきれいない有機ELも、差が出にくいのです。そうなると、わざわざ高いモノを買いません。逆に言うと、「見ることができたらいい映像を流している」だけ、という言い方も出来ます。

テレビを見直す時代に来ているのでは

私が、『ドクター・スリープ』の試写を見たあとに強く感じたのは、「ドルビーシネマでいろいろな映像を見てみたい」ということでした。理由は、映像評価の基準として使える、と感じたためです。また同時に、「大きな液晶テレビもいらなくなるのでは」とも思いました。

確かに、80インチの8Kテレビの映像はいいです。
しかし、色はどうでしょうか。私は、NHKが長年と撮り続けている大相撲の「画」を見て愕然としました。暗すぎるのです。力士の肌色、まわしの色もあんなモノではありません。もっとも艶やかで、華があります。

安価に映像が楽しめる時代ではあるのですが、今回のドルビーシネマ試写は、私に「家電の質」を再認識させてくれました。私は、有機ELテレビ他「NO技術」が、液晶のコストに追いつき、より良い映像を見せてくれることを期待します。

画像: スクリーン以外の要素を排除することによって、余計な事を気にせずにドルビーアトモスとドルビービジョンによる究極の音響と映像を満喫できます。それは、映画に命を宿し、完全に映画に没入する究極のシネマ体験を実現する究極のシアター。 www.smt-cinema.com

スクリーン以外の要素を排除することによって、余計な事を気にせずにドルビーアトモスとドルビービジョンによる究極の音響と映像を満喫できます。それは、映画に命を宿し、完全に映画に没入する究極のシネマ体験を実現する究極のシアター。

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◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。

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