【脳梗塞予防】原因の一つに「ストレス」も 背中を緩める肩甲骨ストレッチで自律神経を整えよう

美容・ヘルスケア

ストレスをため込む日々が続くと、交感神経が過剰に緊張した状態になります。すると、血管は収縮し、脈拍は早くなって血圧は上昇します。その影響を受けて末梢血管の血流も悪化するので、脳梗塞が起こりやすい状況になるのです。【解説】森本将史(横浜新都市脳神経外科病院院長)

解説者のプロフィール

森本将史(もりもと・まさふみ)

医学博士。脳神経外科医。IMS横浜新都市脳神経外科病院院長。京都大学医学部卒業後、国立循環器病研究センター、ベルギーのルーヴェン大学などで研鑽を積み現在に至る。専門分野は、脳卒中疾患(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血)。できるだけ薬に頼らず、脳卒中疾患を克服できるように生活習慣を改善することを提唱している。

脳梗塞は「ストレス」も起因している

増大したストレスが末梢血管の血流を悪化

[別記事:脳梗塞の重症化を食い止める秘訣→]

最近、脳梗塞に罹患する30代や40代の患者さんが増えています。この点を踏まえると、以前から指摘されていた高血圧や肥満だけが、脳梗塞を引き起こす因子だとは思えません。

私は、さまざまな観点から「ストレス」も起因していると考えています。

私たちが生きていくうえで、心身の機能を無意識のうちに調整しているのが「自律神経」です。自律神経には、体が活動しているときに活発となる「交感神経」と、安静時やリラックス時に活発になる「副交感神経」の二つが存在します。ふだんは、両者がバランスを取り合って体の調子を整えています。

現代社会はストレスに満ちています。特に、30代から40代の働き盛りの皆さんは、仕事に追われ疲労やストレスをため込みがちです。また、生活の不安、病気の心配などから、ストレスに苦しめられるのは、年代を問わない問題でしょう。

こうした日々が続くと、交感神経が過剰に緊張した状態になります。

すると、血管は収縮し、脈拍は早くなって血圧は上昇します。その影響を受けて、末梢血管の血流も悪化するので、脳梗塞が起こりやすい状況になるのです。

交感神経が過緊張の状態になると、頭痛肩こりなどが起こり、さらにストレスを増大させることになります。

そこで、脳梗塞を予防するうえでは、ストレスを解消し、自律神経の正しいバランスを取り戻すことが重要になります。

脳梗塞の予防にはストレスの解消も重要

では、ストレスを解消するには、どうすればいいのでしょうか。精神面での負担が生じないように気楽に構えるとか、くよくよしないとか、考え方を変えればいいのは確かです。

しかし、それはなかなか難しいもの。そこで私は、行動や習慣を変えることをお勧めしています。

体とメンタルはリンクしているので、体の状態を改善することは、自律神経の正しいバランスを取り戻すうえで非常に有効なのです。

具体的に、皆さんに実践していただきたいことは、次の三つです。

ゆっくり呼吸

よい姿勢を心がける

肩甲骨ストレッチをする

ゆっくり呼吸をして交感神経の緊張をほぐす

交感神経が緊張していると、呼吸は自然と浅くなります。そこであえて意識的に、時間をかけて呼吸をしてみましょう。深くゆっくりと息を吸って、深くゆっくりと吐くので

こうしたゆっくり呼吸をくり返すと、心拍数が落ちてきて、しだいにリラックスモードへと移行していきます。交感神経の緊張状態がほぐれて、副交感神経が優位の状態へと移行していくでしょう。

例えば、朝、目が覚めたとき、食事をとったあと、夜寝る前に、呼吸をゆっくりするようにしましょう。さらに、気づいたときにも、意識して実践することをお勧めします。

よい姿勢を心がけよう

次に、姿勢についてお話ししましょう。姿勢というのは、自律神経の乱れと密接にかかわっています。疲れ果ててストレスがたまっている人は、呼吸が浅くなるだけでなく、姿勢も悪くなります。

ネコ背は、背中と肩の筋肉がかたくなるばかりか、背骨にも負担をかけます。背骨の中にある脊髄をしっかり機能させるためにも、正しい姿勢は非常に重要です。

具体的には、イスに腰掛けるときには、浅く座るように心がけてください。お尻が、座面の最前部に当たるくらいの位置に座るのです。こうすれば、自然と背すじがピンと伸びるものです。また、自然に肋骨も持ち上がります。

さらに、その状態のまま立ち上がると、肋骨が持ち上がったよい姿勢を保てます。日ごろから、背すじをまっすぐにする意識を持てば、自律神経のバランスが整います。

ストレッチを行う

最後は、ストレッチです。交感神経が過度に緊張すると、筋肉はこわばり、肩や首、背中がガチガチにこってきます。肩甲骨周辺の筋肉を緩める肩甲骨ストレッチをぜひやってみてください(やり方は下の図参照)。

頭上で手を伸ばすと、体幹から指先までの筋肉が連動して、よく伸びます。その姿勢からひじを曲げていくこのストレッチをすれば、かたくなりやすい肩甲骨周辺の筋肉をほぐすことができます。

筋肉をやわらかく、しなやかにすることは、自律神経のバランスを整えるうえで欠かせません。

この項でご紹介した呼吸やストレッチを根気よく続けてください。なにより大事なのは、ご自身で体調を変えようとする意欲です。すべてを医療や薬に頼るのではなく、体をきちんとケアし、生活を見直すことが、脳梗塞に打ち勝つ早道です。

肩甲骨ストレッチのやり方

頭上で手のひらを合わせて両手をまっすぐ伸ばす。
できるだけ体の後方を通るように、左右の肩甲骨を近づける意識を持ち、ひじを曲げていく。これをくり返す。
※5回を1セットとして、1日3セット行う。

この記事は『壮快』2020年3月号に掲載されています。

 

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