インターネットでパソコンやスマホから診察を受けられる「オンライン診療」。今回、新型コロナウイルスの感染リスクを避けるために暫定的に規制が緩和され、初診であってもオンライン診療が受けられることになりました。厚労省が発表しているオンライン診療のガイドラインのポイントについて、対象疾患は何か、診察料の支払いはどうするのかなど、メリットやリスクについても調べました。実際にオンライン診療を行っている、工藤千秋医師(くどうちあき脳神経外科クリニック院長)は、「オンライン診療にはメリットとデメリットがある。患者本人はもちろん、家族も理解したうえで活用してほしい」とコメントしています。(2020年5月14日更新)

オンライン診療とは

病院に行かずに受診できる

「オンライン診療(遠隔診療)」とは、病院やクリニックに出向かなくても、パソコンやスマホを通して診察を受けられる診療方法です。パソコンやスマホの映像と音声で医師の問診を受け、処方箋を出してもらって、自宅近くの薬局で薬を受け取ったり、薬を送ってもらったりできます。
このようなオンライン診療に対し、医療機関に足を運んで受診する方法を「対面診療」といいます。オンライン診療は、すでに2018年度診療報酬改定で保険導入されていました。ただし、オンライン診療はあくまでも対面診療の補完として位置づけられているため、これまでは、かかりつけ医がいる場合や、受診歴のある患者に限って認められてきたのです。

オンライン診療のガイドライン

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(PDF)は、平成30 年3月に厚生労働省が発表しています(令和元年7月一部改訂)。オンライン診療のポイントを挙げてみましょう。

①初診は原則対面診療
医師が患者から必要な情報を求めたり、双方の信頼関係を構築したりするために、対面診療が必要。オンライン診療になったあとも同一の医師による対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められます。

②別の病気で薬を処方する場合も初回は対面診療
例えば、糖尿病でオンライン診療を受診していた患者が、オンライン時に花粉症を訴えた場合、花粉症の薬を処方してもらうには、一度、対面診療を受ける必要があります。

③オンライン診療はビデオ診察を中心とする
オンライン診療の通信手段は、「リアルタイムの視覚、および聴覚の情報を含む情報手段」、つまりビデオ通信と定められています。文字や写真、録画画面のみでは診察を受けられません。

④オンライン診療を行う医師は厚生労働省指定の研修を受講する
医学的知識だけでなく、情報通信機器の使用や情報セキュリティ等に関する知識が必要だからです。

⑤患者が薬局に出向き、薬剤師から対面で服薬指導を受ける
薬剤師法および医薬品医療機器等法で、服薬指導は対面で行うことが義務づけられています。

以上の5点は、医師にとっても患者にとっても、より確実な診察・治療を行ううえで重要なポイントといえます。
しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の事態に当たり、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(2020年4月7日閣議決定)において、院内感染を含む感染防止のため、非常時の対応として、オンライン・電話による診療と服薬指導の制度の見直しを行いました。

新型コロナの影響で緩和された点

オンライン診療について臨時的・特例的に、上記の5つのポイントが緩和されました(※)。
※出典:厚生労働省4月10日事務連絡(PDF)

①初診からオンライン診療が受けられる
ただし、初診時に医師が「医学的に可能であると判断した範囲において」という条件がつきます。

②受診履歴のある患者に新たに生じた症状についての診療・処方は、初診からオンライン診療可能
糖尿病でオンライン診療を受けていた人に、対面診療なしで花粉症の薬を処方できるようになりました。

③ビデオ通信でなくても、電話でオンライン診療が受けられる
本人確認のために保険証のコピーをFAXで送ったり、記載事項を口頭で伝えたりすることがあります。

④研修を受けていない医師でもオンライン診療を実施できる
新型コロナウイルスの感染が収束したら、研修の受講が必要になります。

⑤処方箋は医師から薬局へFAX等で送付。患者は電話等で薬剤師から服薬指導を受け、薬は郵送などで送ってもらうことができる
ただし、薬剤師が必要と判断したら対面による服薬指導に切り替えられます。

新型コロナに対するオンライン診療はNG!

相談窓口は各都道府県に

継続した発熱はもちろん、軽度の発熱や、鼻やのどの症状、腹痛、 頭痛など、新型コロナウイルスへの感染が疑われる場合については、オンライン診療は行うことができません(※)。視診と問診だけでは重症度の評価が難しく、PCR検査などもできません。また、ぜんそくやほかの感染症などを見逃すリスクもあるためです。
※出典:厚生労働省(PDF)

息苦しさや強いだるさ、高熱などの強い症状があったり、高齢者や基礎疾患のある人がカゼの症状に見舞われたりしたときには、各都道府県が設置している帰国者・接触者相談センターにすぐ相談してください。
▼新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安(PDF)

軽症の新型コロナウイルス感染者のオンライン診療

新型コロナウイルス感染者のうち、自宅療養または宿泊療養する軽症者についても、オンライン診療を活用するケースがありそうです。
例えば、軽症者が自宅や宿泊施設で療養中、症状が悪化したり、別の病気の発症が疑われたりする場合です。患者の診断を行った医師から情報を受けた別の医師が、患者の求めに応じてオンライン診療を行い、必要な薬を処方することができるとしています。この場合も、薬局で出された薬は配送され、服薬指導はオンラインで行われます。

画像: 軽症の新型コロナウイルス感染者のオンライン診療

オンライン診療を受けるには

オンライン診療と相性のいい病気

オンライン診療は、すべての病気・症状で受けられるわけではありません。基本的には、継続的な治療が必要となる慢性的な疾患が適応となります。例えば、結核、悪性新生物、甲状腺障害、糖尿病、高血圧、不整脈、心不全、ぜんそく、胃潰瘍、慢性肝疾患などです。
▼オンライン診療適応疾患一覧(※)
※出典:MedionLife

電話で受けられるケースも

オンライン診療は、映像を通じて行うことが想定されていますが、パソコンやスマホなどがない場合は、医師の判断で電話でも受けることができます。専用アプリを使ってオンライン診療をする医療機関が多いようですが、詳細は各病院に確認してください。その際、保険証などの情報を伝える場合もあるので、手元に用意して電話しましょう。
加藤厚生労働大臣は記者会見で「近くの医療機関や薬局が対応しているか調べていただき、多くの方に利用していただきたい」と述べました(4月10日のNHKニュースより)。
オンライン診療は、すべての医療機関で行っているわけではありません。調べる方法はいくつかありますので、次項でご紹介しましょう。

オンライン診療を行う医療機関の見つけ方

厚生労働省ホームページ

厚生労働省では、オンライン診療に対応する医療機関のリストを、都道府県ごとにまとめて公表しています。
▼対応医療機関リスト(都道府県別)
※横長のPDF形式のリストなので、スマホだと見づらいかもしれません。

Yahoo!検索「地名+オンライン診療」で検索できるように

ヤフー株式会社では、厚生労働省の公開情報をもとに、オンライン診療に対応している医療機関を検索できるようにサービスを拡充しました。具体的には、「Yahoo!検索」、「Yahoo! MAP」アプリ(iOS版、Android版)、およびウェブ版「Yahoo!地図」、「Yahoo!ロコ」(スマートフォン版のみ)で、オンライン診療を行っている医療機関を検索できるようになったのです。

画像1: Yahoo!検索「地名+オンライン診療」で検索できるように

「Yahoo!検索」の場合、“地名+オンライン診療”で検索すると、オンライン診療に対応している医療機関が一覧で検索結果に表示されます。
また、医療機関名や、“地名+内科"など受診したい診療科目名で検索すると、診察を受けたい医療機関がオンライン診療に対応しているかどうかも確認できます。医療機関名をクリックもしくはタップすると、詳細が確認できます(スマホの場合はYahoo!ロコに移動)。

画像2: Yahoo!検索「地名+オンライン診療」で検索できるように

ウェブ版「Yahoo!地図」では、“オンライン診療”と入れて検索するだけで、オンライン診療に対応している医療機関を地図上で表示。スマホなら、「Yahoo! MAP」アプリで画面の「オンライン診療」ボタンをタップするだけで、対応している医療機関がわかります。

画像3: Yahoo!検索「地名+オンライン診療」で検索できるように

オンライン診療のメリット

時間と交通費を節約できる

オンライン診療は、自身の都合に合わせて自宅や職場などで診療を受けることができます。そのため、通院時間や待ち時間が不要になり、交通費も節約できます。

病気の悪化を予防できる

多忙なときや体調不良ときも、受診を継続しやすくなります。また、家族などに付き添ってもらう必要がないので、気兼ねなく受診できます。結果的に通院が途切れず、病気の悪化を予防できるのです。さらに、病院に足を踏み入れないので、院内感染や二次感染を回避できます。

薬の受け取りや会計が簡単

薬の処方箋を郵送してもらい、近くの薬局で薬を受け取ることができます。先述したように、現在は臨時的に、薬の説明をオンラインで受けたり、薬を郵送してもらったりすることも可能です。会計はクレジット、または次回通院の際に窓口で払うこともできます。

画像: 薬の受け取りや会計が簡単

オンライン診療のリスク

診察時の情報量が少ない

ビデオ画像や音声から得られる情報は限られているため、全身の状態を把握することができません。そのため、重症化の兆候を見逃す危険性や、患者が想定している病気以外の症状を見落とすおそれがあります。

緊急治療に対応できない

予約してから、実際のオンライン診療までにタイムラグが生じるため、すぐさま治療が必要なケースには対応できません。また、尿や血液の検査、酸素飽和度(血液中の酸素量)の測定、レントゲン撮影などもできません。そのため、診断が確定できず、治療に取りかかれないケースも出てきます。

慢性疾患で症状が安定しているケースが適応

患者本人だけでなく家族も理解を

実際にオンライン診療を行っている、くどうちあき脳神経外科クリニックの工藤千秋院長は、オンライン診療を受ける際の注意として次のように解説しています。

「感染症が蔓延している現在、人と接することなく受診できるメリットは大きいでしょう。待ち時間も通院の時間もないので、患者さんの負担は少なくなります。
ただ、オンライン診療では、カメラ越しの視診と、マイク越しに息遣いを聞く程度の聴診しかできません。触診したり、聴診器やレンズを使ったり、血液や心電図を調べたりすることもできないので、診療には限界があります。
オンライン診療に適しているのは、高血圧や糖尿病、関節痛といった慢性疾患で、状態が安定している患者さんです。「だんだん悪くなっている」「最近急に調子がおかしい」という場合は、オンラインではなく、直接診察する必要があります。

また、よくあるのが、高齢の患者さんがオンライン診療を受ける際、本人は姿を見せず、代理の家族が対応してしまうケースです。状態が安定していても、患者さんの顔を見ることでわかることがあります。必ず、患者さん本人を画面に出してください。
例えば、ひざ痛の患者さんで、痛みは安定しているが、画面越しの顔がむくんでいるとします。それを見て、『薬の副作用かな?』『別の疾患が隠れているのか?』など、診断の選択肢が増え、治療の幅が広がるのです。「いつもと顔が違うね」と声をかけることで、患者さんと医師の距離も縮まります。オンライン診療の精度を上げるために、患者さんご本人はもちろん、ご家族にもオンライン診療への理解を深めていただきたいと思います」(工藤千秋医師)

まとめ

初診からオンライン診療を受けられるのは、新型コロナウイルスの感染拡大が問題となっている間だけの、暫定的な措置です。オンライン診療は本来、対面診療を受けて治療方針を決め、その後、継続的に状態を診るために行われます。今回、オンライン診療を始めるのに適しているのは、慢性疾患を持ち、これまで服薬治療を継続している人でしょう。「そろそろ薬が切れるけれど、病院に行くのは心配」という人は、まずかかりつけ医に電話で相談してみてください。

解説者のプロフィール

工藤千秋(くどう ちあき)

脳神経外科専門医であるとともに、認知症、高次脳機能障害、パーキンソン病、痛みの治療、漢方薬処方にも精通する。医学博士。東邦大学客員講師。日本脳神経外科学会専門医。日本認知症学会専門医。 
▼くどうちあき脳神経外科(公式サイト)

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