栄養学や医学を学ぶうち、免疫機能のことや、飲んだ薬が吸収されるために、肝臓や腎臓にどれだけ負担をかけているかを、初めて知ったのです。ショックでした。そこでなるべく薬を飲まず、食事で病気を治していこう、と決意したのです。【体験談】井上亜耶(管理栄養士・スパイス料理研究家)

プロフィール

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井上亜耶(いのうえ・あや)
福岡県在住。中村学園大学栄養科学部卒業。管理栄養士、薬膳コーディネーター、フードスペシャリストの資格を持つ。6年前に初めてインドを旅し、インドの食文化や生活スタイルなど、さまざまなインドの魅力に魅せられ、 1年に1度渡印している。2012年から約6年間、北インド人シェフと共にインド料理店を経営。その後は料理教室やスパイス講座などを行い、インドスパイスの魅力や栄養学を伝える活動をしている。

10種類の抗生物質を毎日飲んでいた

私は「原発性免疫不全症候群」という国指定の難病を持って生まれました。これは、遺伝子のほんの小さな欠損で起こる自己免疫疾患です。

でも、小学生に上がるまで、病名すら分かりませんでした。発熱や肺炎、帯状疱疹、口の中でカビが繁殖するなど、生後2週間から原因不明のさまざまな症状に見舞われたことが、母子手帳に記されています。

免疫系が正常に機能しないので、カゼをひくとすぐ肺炎になりました。何を食べてもアレルギー反応が出るので、何を食べさせてよいのか、母はずいぶん悩んだといいます。

かかっていた病院の医師も、効果が判然としないまま、薬を出していました。私自身、熱が出たら入院すればいいと思っていましたし、10種類の抗生物質を毎日飲むのが普通なほど、感覚がマヒしていました。

そうして高校時代を迎えるころには、むくみがどんどんひどくなり、7つの合併症を抱えるようになっていました。

さすがに不安を覚えながら、将来の進路を考えていたとき、管理栄養士という職業があることを知りました。食べ物で病気を予防したり、体を元気にしたりする仕事です。

もし自分の体が食べ物で治るのであれば、薬を飲まなくていいし、もっと元気になれるかもしれない。そう思い、大学の栄養科学部に進学しました。

そこで栄養学や医学を学ぶうち、免疫機能のことや、飲んだ薬が吸収されるために、肝臓や腎臓にどれだけ負担をかけているかを、初めて知ったのです。ショックでした。

そこでなるべく薬を飲まず、食事で病気を治していこう、と決意したのです。まずはインターネットで自分の飲んでいる薬を検索し、さほど影響はないと思われる8種類をやめ、いろいろな食養生を試しました。

玄米菜食にしてみたり、酵素を飲んでみたり、断食をしてみたり……。しかしどれもなかなか続かず、薬のリバウンドにも悩まされるつらい日々が続きました。

そんな私が、スパイスを取り入れた食養生を実践するようになって、すっかり元気になったのです。

今では薬も不要!黒ずんだ肌もきれいに!

25歳のとき、もともと好きだったインドカレー屋さんで、北インド出身のシェフが作るまかないカレーを食べる機会がありました。

そのカレーは、お店で出す油の多いカレーではなく、とてもシンプルな、野菜のスパイスカレーでした。それが、ものすごくおいしかったのです。

そのおいしさに衝撃を受け、思い切ってそのシェフを誘い、自分の店を開きました。

店を営む中で、シェフの作った、シンプルなスパイスカレーを毎日食べ続けました。するといつの間にか、カゼをひいたり、肺炎を起こしたりすることがなくなってきたのです。

抗生物質を飲み続けていたせいで腸内環境が悪くなり、何をしても改善されなかった便秘も、すっかりなくなりました。

また、靴下をはかないと眠れないほど末端冷え症だったのに、体温は36.9℃に上がり、長年ステロイドをぬっていたせいで黒くくすんでいた肌は、角質がポロポロ取れて、洗えば洗うほどきれいに!

そして、そういう生活を3年ほど続けたとき、医師から「元気そうだから、もう毎月は検診に来なくていいよ」と言われるほど元気になったのです。

少々荒療治でしたが、今では薬を飲むこともなく、特に不調を感じることはありません。6年前には、念願のインドにも行くこともできました。

シェフの作る料理は、私がそれまで食べてきたインド料理とは全然違いました。

例えば、「今日はちょっと頭が痛い」とか「今日は寒いね」などと言うと、「じゃあ、このスパイスを入れよう」というように、その日の私の体調やニーズに合わせてスパイスを調合する、いわばオーダーメイドだったのです。

シェフの出身地は、病院に行くにも2時間歩かなければならないような、ヒマラヤの麓の小さな村です。現地を訪ねて分かったことですが、そこでは、村のお母さんたちみんなが、家族の健康を考え、子どもやお年寄り一人ひとりに合わせてスパイスを調合し、料理を作っていました。

インドの食養生の原点は、そんなスパイス使いだったのです。

スパイスで難病を克服した自分の体験を広め、不調がある人を元気にしたいとの思いから、私はスパイスを取り入れた食養生の料理教室を始めました。

スパイスを家庭料理に取り入れるのは難しいと思われているようですが、そんなことはありません。スパイスは英語で「ちょっとした」という意味でもあるように、炒め物や煮物などにほんの少し加えればよいのです。

下項で、簡単にできるレシピをご紹介していますので、ぜひ作ってみてください。

簡単インドのおかず
アルージーラ

画像: 簡単インドのおかず アルージーラ

【スパイス】
クミンシード……小さじ1
ターメリック……小さじ1
クミンパウダー……小さじ1/2
コリアンダーパウダー……小さじ1/2

【材料】(4人分)
ジャガイモ……中3個
ショウガ(千切りにする)……1かけ
タマネギ(薄切りにする)……中1/2個
トマト(細かく刻む)……中1個
バター……8g
塩……小さじ1/2
水……100ml

【作り方】
ジャガイモは皮をむいて小さめの乱切りにし、水にさらす。
フライパンにクミンシードとショウガ、バターを入れて火にかけ、タマネギを加えて炒める。
タマネギが半透明になったら、トマトと水気を切った①を加えて炒める。
③にターメリック、クミンパウダー、コリアンダーパウダーと塩を入れ(その都度混ぜる)、水50mlを回しかけてふたをし、5分ほど弱火で煮る。
ふたを開けてさらに水を50ml入れ、再度ふたをして10分ほど弱火で煮て、ジャガイモに火が通れば出来上がり。

インドの養生がゆ
キチュリ

画像1: インドの養生がゆ キチュリ

【スパイス】
ターメリック……小さじ1
クミンシード……小さじ1
コリアンダーパウダー……小さじ1/2
クミンパウダー……小さじ1/2

【材料】(4人分)
ムーングダール(下記参照)……1/2カップ
または、豆腐……1丁分
タマネギ(みじん切り)……1/2個
トマト(ざく切り)……1個
ご飯……茶碗1杯分
水……600ml
塩……小さじ1/2
ギー(バターを熱して作られた油)……小さじ2 (なければサラダ油でよい)

画像2: インドの養生がゆ キチュリ

ムーングダール
緑豆の皮をむき、ひき割りにしたもの。ムングダール、ムング豆とも呼ばれる。胃腸に優しい食材として、インドでよく食べられている。エスニック食材を扱う店や、インターネットで購入可能。

【ムーングダールを使う作り方】
ムーングダールはよく洗い、たっぷりの水(分量外)に15分ほど漬けておく。水を切って鍋に入れ、水500ml、ターメリック、塩ひとつまみ(分量外)を入れて火にかけ、沸騰させる。
別の鍋にギーとクミンシードを入れて火にかけ、タマネギを中火で炒める。
①のムーングダールが柔らかくなったら、②とご飯、塩、コリアンダーパウダー、クミンパウダー、トマトを入れる。
③に水を100ml入れ、ときどき鍋底からかき混ぜながら、ふたをして弱火で10分ほど炊く。

【豆腐を使う作り方】
鍋にギーを入れて火にかけ、クミンシードとタマネギを炒める。
①にご飯と水500ml、小さく切った豆腐1丁分、ターメリックを入れて、火にかけ沸騰させる。
塩、コリアンダーパウダー、クミンパウダー、トマトを入れ、ときどき鍋底からかき混ぜながら、ふたをして弱火で5~10分ほど炊く。
◎ムーングダールを使うよりも雑炊のようになり、とろみは少ないですが、こちらも食べやすくおいしいですよ。

この記事は『安心』2020年6月号に掲載されています。

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