単3形充電池を自動充電してくれるENEROID(エネロイド)シリーズ、ずっと気にはなっていたのですが、自動充電の快適さだけに1万円を超える出費はちょっとと、ためらっていました。しかし、単3形専用となり実勢価格が1万円を切った新型「ENEROID EN10A2」を導入、実際の使い勝手や従来機との違いなどをレビューします。
執筆者のプロフィール
齋藤千歳(さいとう・ちとせ)
元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータ元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラバッグなどのカメラアクセサリー、車中泊グッズなどの記事も執筆している。目下の悩みは月1以上のペースで増えるカメラバッグの収納場所。
実勢価格1万円を切った新型の登場でとうとう導入
1万円越えの初代ENEROIDは業務用途向け
ENEROID(エネロイド)を知っていますか?
日本国内で正式販売された初代はENEROID EN20Bで2017年8月に発売されました。単3形ニッケル水素/ニカド充電池に対応した自動充電器で最大20本もの電池を本体上部から、流し込むようにプラス/マイナスの方向も気にせず、入れると自動で連続充電を行ってくれるというスグレモノで、単3形充電池を大量に使う業務用途向けの製品です。ただし、業務用途向けのためか、実勢価格は2020年6月末現在も12,000円前後と1万円越えとなっています。
2代目はなぜかデラックスになり、より高価に
フォトグラファーという職業柄、単3形電池を使うカメラ用のストロボを使う機会が多いのですが、使い終わった乾電池を捨てることに背徳感を覚えます。そのため、カメラのストロボだけでなく、ワイヤレスマウスやテレビなどのリモコン、家庭内の細かなものまで単3形や単4形の充電池で運用したいのですが、充電管理はしたくないのです。
そんな筆者にとって、ENEROIDは家庭に導入したい業務向け製品で、より価格の安いものが登場するのを待っていたのですが、初代となるENEROID EN20Bの発売から、約半年後2018年2月に追加された新製品はENEROID EN20Dで時計機能とUSBポートが3つ追加され、実勢価格も2020年6月末時点で18,000円前後とより高価になり、家庭用としての導入は諦めていました。
やっと登場した実勢価格1万円以下の新モデル
ENEROID EN20B発売から約3年、エコロジー意識だけでなく、コスト削減の意味もあって使っている単3形充電池の充電管理が面倒だからという理由だけで、1万円以上もするENEROIDを導入するのは本末転倒であると我慢し続けていたわけです。しかし、2020年6月12日から実勢価格8,800円前後の新型ENEROID、ENEROID EN10A2とENEROID EN10A3が発売されました。今回からは単3形自動充電用のENEROID EN10A2と単4形自動充電用のENEROID EN10A3がそれぞれラインアップされています。
従来モデルのENEROID EN20BとENEROID EN20Dでは、単4形→単3形変換アダプターが4本付属して、単4形充電池も充電可能でした。しかし、新モデルからは単3形充電用と単4形充電用が別モデルとなったわけです。当然、単3形充電池と単4形充電池の両方が充電したいので、かなりがっかりしました。
単4形の充電には対応していないが単3形用ENEROID EN10A2を導入
一度に投入できる充電池の数は20本から12本に
単4形の充電ができないのは残念ですが、普段充電する充電池のメインは単3形なので単3形自動充電用のENEROID EN10A2を選択しました。また、もしかすると単3形自動充電用のENEROID EN10A2なら単4形充電池を単4形→単3形変換アダプターを使って充電できるのではないかという、わずかな期待は捨てていません。
従来モデルのENEROID EN20BやENEROID EN20Dに比べて外観上の大きな変化は、本体サイズが約92(W)×212(H)×120(D)mmとやや細長い印象であった従来モデルに比べ、一度に投入できる電池の数が20本から12本に減少していますが、ENEROID EN10A2とENEROID EN10A3は本体サイズが約115(W)×178(H)×125(D)mmと高さが低くなり、安定感のあるデザインになりました。本体質量は、どのモデルも約620gから640gとほとんど変わりません。
自動充電器と急速自動充電器の違い
認識している方は少ないかもしれませんが、新型ENEROIDのENEROID EN10A2、ENEROID EN10A3と従来モデルのENEROID EN20BやENEROID EN20Dの最大の違いは、価格を除くと新型が自動充電器なのに対して、従来モデルは急速自動充電器であることです。
単純にいうなら、従来モデルのほうが電池の充電に掛かる時間が短くなっています。
違いは下記のようになっています。
新型ENEROID EN10A2のニッケル水素およびニカド単3形充電池2本の場合
電池容量(例)1,000mAh 充電時間 約3時間
電池容量(例)2,000mAh 充電時間 約4時間
電池容量(例)3,000mAh 充電時間 約5時間
従来型ENEROID EN20B、ENEROID EN20Dのニッケル水素およびニカド単3形充電池4本の場合
電池容量(例)950〜1,000mAh 充電時間 約35〜40分
電池容量(例)1,900〜2,000mAh 充電時間 約60〜80分
電池容量(例)2,400〜2,500mAh 充電時間 約75〜100分
急速自動充電器である従来型のほうが価格の高いだけのこともあり、圧倒的に充電時間が短いことを認識しておきましょう。また、ENEROID EN10A3は単4形充電池しか充電できないので、単純な比較はできませんが充電時間は下記のようになっています。
新型ENEROID EN10A2のニッケル水素およびニカド単3形充電池2本の場合
電池容量(例)300mAh 充電時間 約1時間
電池容量(例)500mAh 充電時間 約2時間
電池容量(例)800mAh 充電時間 約3時間
同時充電できるスロットの数も異なる
自動充電の全体的な充電の速度を決定する大きな要素に同時に充電できる電池の数、メーカーのWEBなどではスロットと呼ばれている部分の数があります。新型ENEROID EN10A2、ENEROID EN10A3の充電スロットは2個に対して、従来型のENEROID EN20B、ENEROID EN20Dの充電スロットは4個です。
すなわち同時充電できる電池の数が2本に対して4本ということになります。
単純に計算してみます。
ニッケル水素充電池パナソニック エネループ スタンダードタイプの電池容量min.1,900 mAhを充電すると想定
新型ENEROID EN10A2で1日に充電できる単3形充電池の数
電池容量(例)2,000mAh 充電時間 約4時間
充電スロットは2個
24時間で充電できる電池の数
24時間/4時間×2スロット=約12本
従来型ENEROID EN20B、ENEROID EN20Dで1日に充電できる単3形充電池の数
電池容量(例)1,900〜2,000mAh 充電時間 約60〜80分 70分で想定
充電スロットは4個
24時間で充電できる電池の数
24時間は1440分/70分×4スロット=約82本
1日で充電できる単3形充電池の数の差は約7倍になります。
まとめ
業務用途でなければ新型ENEROIDで十分
急速自動充電器である従来型のENEROID EN20BやENEROID EN20Dは、1日、24時間で約82本の単3型充電池が充電可能で、まさに大量に充電池を使う業務用途にぴったりといえます。とはいえ、80本を超える充電池を個人で所有しており、しかもそれを一度に充電したいという要望のある方は、よっぽど特殊な人といえるのではないでしょうか。
筆者のように単3形電池を使用するカメラ用ストロボを複数台使用し、連日仕事することもあると考えると、1台につき単3形電池が4本に掛けるストロボの台数で夜戻ってきて、翌朝までに充電したいという場合などは高価な従来モデルのほうが便利かもしれません。
しかし、現実にはなにかあったときのために、充電済みの予備電池なども用意しているため、よっぽどのことがない限り筆者の使い方では、新型のENEROID EN10A2の充電速度で不満を感じることはありませんでした。時間は掛かっても、勝手に自動で充電してくれるメリットのほうが大きく感じます。また、個人的にはほとんど使うことはないと思いますが、従来モデルには電池を使い切らずに継ぎ足し充電を繰り返すことで起こる、一時的に電池の電圧が低くなるメモリー効果を解消するリフレッシュ機能が搭載されていましたが、このリフレッシュ機能は新型モデルには非搭載です。
とはいえ個人的には単4形充電池が充電できないことを除けば、まったく不満はありません。一家に一台あると本当に便利なアイテムだと思います。