夏の風物詩「鱧(はも)」は、「料亭でしか味わえない高級料理」というイメージがありますが、京都では、近所のスーパーや鮮魚店で目にする身近な食材。骨切りされた鱧を購入すれば、家庭でも簡単に調理ができます。今回は、定番の「湯引き」をはじめ、鱧1本でできる4つの料理を紹介します。どれも技いらずで、調理に時間のかからない簡単メニューばかりです。
鱧(はも)の豆知識
鱧の「旬」は梅雨明け
「梅雨の雨を飲んで美味しくなる」と言われる鱧は、梅雨明けの7月になると脂が乗り、旬を迎えます。ちょうど、祇園祭の時期に重なることから、祇園祭は「鱧祭」とも言われています。
京都で鱧を食べる理由
内陸である京都の中心地では、新鮮な魚は貴重なもの。交通手段が発達していない昔は、日本海の若狭などから鯖街道を通り、さまざまな鮮魚を運んでいました。その中でも鱧は、夏の暑い時期でも生きたまま京都まで運ぶことができた、生命力の強い魚だったのです。その後、骨切りという独自の技術が生み出され、夏の滋養強壮の食材として京都の人々に親しまれるようになりました。
美肌が期待できる栄養素が豊富
鱧や鰻(うなぎ)のような、体をくねらせて泳ぐ魚は、皮に豊富なコラーゲンを蓄えています。特に鱧の皮は、脂質が少なく、ひときわ高い保湿力があり、有名化粧品の原料にも使われるほど。さらに、美肌効果が期待されるビタミンA、ビタミンD、コンドロイチンといった栄養素を豊富に含んだ女性に嬉しい食材なのです。
骨切り鱧を使った簡単レシピ
鱧1本で4つの料理に挑戦!
今回は、鱧料理の定番である「湯引き」をはじめ、「鱧カツ」、「鱧と野菜のガーリック炒め」を作ります。スーパーで、骨切り鱧1本は800~1000円程度。鱧の頭と骨を入手できたら出汁の効いた「鱧骨スープ」も作ってみましょう。
湯引きの調理時間は5分
今回は、京都新聞の日曜日版に連載されている『京の知恵 しあわせの食』で、料理研究家の小宮理実さんが紹介しているレシピを参考に、自宅にある食材を使って調理しました。鱧の湯引きの調理時間はわずか5分。技がなくても簡単にでき、4種類すべて作っても所要時間1時間という手軽な料理ばかりです。
(1)鱧の湯引き梅肉ソース添え
梅肉ソースでさっぱりといただく湯引きは、ふんわり柔らかい鱧の食感を楽しめる定番の鱧料理です。私はつるんとした食感が好きなので片栗粉をまぶしますが、何もつけずに茹でると、あっさりした味わいに。その際には、鱧を入れたらすぐに火を止めましょう。
レシピ(2人分)
鱧…4切れ
片栗粉…適量
梅干し…1個
みりん…適量
大葉…2枚
作り方
(1)小鍋にお湯を沸かします。
(2)1口サイズに切ったハモに軽く塩をふり、片栗粉をまぶします。
(3)梅干しの種を取り、包丁でたたきます。
(4)(3)の梅干しとみりんをすり鉢ですりながら合わせます。
(5)お湯が沸騰したら鱧を入れて20~30秒したら火を止めます。
(6)氷水で冷やし、水を切ります。
(7)器に大葉、鱧、梅肉ソースを盛りつけます。
(2)鱧(はも)カツ
天ぷらは「技」が必要な料理ですが、カツは失敗なく作ることができます。鱧の淡白な味わいを衣に閉じ込めたカツは、香ばしい風味とサクサク食感が絶品。お好みで、塩やソースをつけていただきましょう。
レシピ(2人分)
鱧…4切れ
小麦粉…適量
溶き卵…適量
パン粉…適量
塩・こしょう…適量
サラダ油(揚げ油)
作り方
(1)鱧は一口サイズに切り、塩・こしょうをふります。
(2)小麦粉、溶き卵、パン粉の順に鱧をつけます。
(3)180℃の油でさっと揚げます。
(3)鱧と旬野菜のガーリック炒め
鱧は和食のイメージが強いですが、パンチの効いたニンニクとの相性は抜群です。三度豆はアスパラガスやインゲン豆などで代用してもOK。スキレット鍋を使えば、そのまま食卓に出すことができ、洗い物も少なくすみます。
レシピ(2人分)
鱧…1/2本
三度豆(インゲン)…3本
玉ねぎ…1/4個
しめじ…適量
ニンニク…1片
オリーブオイル…大さじ1
塩・こしょう…適量
作り方
(1)鱧は一口サイズに切り分けます。
(2)三度豆は軽く下茹でして食べやすい長さにカットします。
(3)ニンニクと玉ねぎはスライス、しめじは石づきをカットします。
(4)フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れて熱します。
(5)ニンニクの香りが出てきたら鱧を加えます。
(6)玉ねぎ、しめじ、三度豆の順に入れ、塩・こしょうで味を調えます。
(4)鱧の骨スープ
鱧の頭と骨からは、とても上品で濃厚な出汁が取れ、栄養価も満点です。ただし、時間が経つと魚の臭みが出てくるので、出来立てをいただきましょう。
レシピ(3~4人分)
鱧の頭と骨…2本分
水…1000ml
みりん…適量
塩…適量
玉ねぎ…1/4個
黒こしょう…適量
作り方
(1)鱧の頭と骨を小鍋に入れ、水を加えて15分加熱します。
(2)頭と骨を取り出し、みりん・塩で味を調えます。
(3)玉ねぎスライスを加えて沸騰直前で火を止めます。
(4)器に盛りつけ、黒こしょうで味にアクセントをつけます。
最後に
いかがでしたでしょうか。鱧はお店で味わうイメージが強いですが、京都人にとっては日常的な家庭料理。実際に作ってみると「思ったよりも簡単で美味しくできる!」と驚く人は多いのではないでしょうか。ぜひ、今年から夏の定番メニューのひとつに加えてみてください。
◆藤田美佐子(編集ライター)
京都在住。フリーランスの編集兼ライターとして観光、食、求人、医療、ブライダルなど幅広い取材・執筆活動を行う。1児の母。趣味はマラソン、美味しいものを食べること。夏は鴨川の納涼床を楽しんでいます。