「かかとが痛くて歩けない」「朝、足の裏が痛む」…そんな症状に悩んでいる人はいませんか。それは「足底腱膜炎(そくていけんまくえん)」という足の炎症かもしれません。足底筋膜炎(そくていきんまくえん)ともいわれます。長時間の立ち仕事や、スポーツが原因で起こりやすく、近年はランニングブームの影響で患者数が増えています。軽度の場合は、適切なセルフケアで改善することがあります。難治性の足底腱膜炎への治療法としては、保険適用の「体外衝撃波治療」があります。
【解説】高橋謙二(船橋整形外科病院 スポーツ医学・関節センター部長)

解説者のプロフィール

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高橋謙二(たかはし・けんじ)

船橋整形外科病院 スポーツ医学・関節センター部長。医学博士。1992 年、徳島大学医学部卒業。千葉大学整形外科入局。2018 年より現職。ミュンヘン大学留学。膝、足関節の鏡視下手術、体外衝撃波治療を中心に診療を行う。日本整形外科学会専門医、日本臨床スポーツ医学会代議員、日本運動器Shock Wave 研究会世話人など。NTT コミュニケーションズシャイニングアークス ラグビー部チームドクター。
▼船橋整形外科病院(公式サイト)
▼専門分野と研究論文(CiNii)

足底腱膜炎とは?

過度な負荷で足裏に炎症が起こる

私たちの足は、たくさんの骨が組み合わさって、前後方向と横方向にアーチ状の構造を作り、歩行や起立時の衝撃を吸収しています。このアーチを下から支えるのが足底腱膜(足底筋膜ともいう)という膜状の腱組織です。かかとの骨から5本の指のつけ根の骨に向かって、扇状に広がっています

足の甲の骨は、アーチ状(弓状)になって体重を支えていますが、足底筋膜はこのアーチを弓の弦のようにピンと張って支える役割があります。

走りすぎや長時間の立ち仕事などで、足底腱膜に過度な負荷がかかると、炎症や小さな断裂起こり、痛みが生じます。これが、足底腱膜炎です。

足底腱膜のうち、かかとの骨に付着する部分に炎症が起こりやすいため、「かかとが痛い」という訴えが多くなります。それ以外にも、足底腱膜の中央部分に起こることがあり、その場合は土踏まず(足の裏中央の部分)に痛みが生じます。

画像: 過度な負荷で足裏に炎症が起こる

発症初期は自然に治ることも

足底腱膜炎はごくありふれた病気で、アメリカのデータでは人口の約10%に起こるといわれています。発症初期は、自己修復能力によって自然に治ることもあります。

しかし、小さな損傷をくり返すと、正常な組織が治りづらい組織(変性組織)へと変わっていくため、難治性の足底腱膜炎に進行してしまいます。炎症がくり返されると、かかとの骨に付着する部分の足底腱膜が骨化して、X線(レントゲン)でトゲのように写ります。これを骨棘(こっきょく)といいます。骨棘自体は痛みの原因ではありませんが、炎症がくり返されていると判断する材料になります。

足底腱膜炎と診断された人の1割程度に、症状が慢性化し、常に痛みを生じるようになるケースがあります。ひどくなると、松葉杖を使わずには歩けないこともあります。

足底腱膜炎は、症状などから比較的容易に診断できます。典型的な症状を、次項で解説します。足の裏の痛みが数日経っても治まらない場合は、整形外科を受診することをお勧めします。

起き抜けの第1歩がすごく痛い

足底腱膜炎の特徴的な症状は、「朝起きて、歩きだす1歩目に強い痛みを感じる」というものです。歩くうちに痛みは徐々に軽くなりますが、しばらく座っていて、また歩き始めるときに再び痛むこともあります。炎症の起こっている部分を押すと、痛みを感じるのも特徴です。

また、「長時間立っていると足の裏に痛みやしびれ感が生じる」、「長く歩いたり走ったりしていると足の裏が痛くなる」、「足が地面に着く瞬間に足の裏に痛みがある(裸足で硬いフローリングなどは痛くて歩けない)」といった症状も、足底筋膜炎が考えられます。

症状が悪化すると、足底腱膜に痛みを伴う「しこり」ができたり、安静にしていても足の裏が痛んだりするようになります。

なお、足の裏の痛みでも、押した痛みがない人、朝より夕方に痛みが強くなったり、歩くと痛みやしびれが強くなったりする人、足の裏全体や指にしびれがある人は、ほかの病気の可能性があります。その場合も、数日続く場合は整形外科を受診しましょう。

原因となる動作や姿勢、生活習慣など

足底腱膜にかかる負荷は、大きく2つあります。

圧迫力…足の裏にかかる荷重や、着地したときの衝撃
牽引力…足を蹴り出すときに引っ張られる力

そして、このような負荷がかかる要因として、以下のようなことが挙げられます。

スポーツによる足の使い過ぎ

ランニングやジャンプの動作などで、圧迫力と牽引力の両方がくり返されることで、足底腱膜に大きな負荷がかかります。マラソンやサッカーなどの走るスポーツ、バスケットボールやバレーボールなどのジャンプの多いスポーツをしている人に多くみられます。

長時間の立ち仕事

かかとで全体重を支え続けることで、足底腱膜への圧迫力が増します。

加齢による柔軟性と筋力の低下

加齢により足の筋力が低下すると、土踏まずのアーチが崩れ、いわゆる扁平足になってペタペタ歩くようになります。すると、重心が常に後ろ寄りになるので、かかと部分の足底腱膜に負担がかかるようになります。
また、加齢に伴い、足底腱膜自体の柔軟性や足の裏の筋力も衰えてきます。柔軟性や筋力が低下すると、足底腱膜への牽引力が強くなり、負荷が増します。

足首の関節が固い

足首の関節には、着地時の衝撃を吸収する働きがあります。足首の関節が固いと、かかとからつま先への重心移動がスムーズにいかず、ペタペタ歩くことになります。これが足底腱膜への圧迫力を増加させます。

肥満

体重が重過ぎると、当然、足の裏に負荷がかかります。長時間の立ち仕事と同様、足底腱膜への負担が増します。

靴の不適合

クッション性のない靴を履いていると、足が着地したときの衝撃が足の裏に伝わりやすく、足底腱膜に負荷をかけることにつながります。
また、きつい靴も、歩くときに足の指が使えないため後ろ重心になり、足底腱膜への圧迫力が増大します。

どのような治療をするのか?

第一選択は理学療法

足底腱膜炎の治療には、主に理学療法、薬物療法、体外衝撃波治療、外科手術があります。

治療の第一選択は理学療法です。理学療法の目的は、足底腱膜に負荷がかかることを防ぎ、痛みが出ないようにコントロールすることです。症状が軽い場合には、理学療法で回復が期待できます。

足底腱膜炎の理学療法には、ストレッチや筋力トレーニングがあり、インソール(靴の中敷き)の装着なども含まれます。インソールを装着することで、足の裏にかかる圧力を和らげたり分散させたりして、足底腱膜への負担を軽減するのです。

自宅でできるストレッチ

病院での治療と並行して行うセルフケアとしては、ストレッチが有効です。
転ばないように、必ず手すりや壁などで体を支えて行ってください。足の前半分を段差に乗せ、かかとをゆっくりと上げ下げします。1日に10回ほど行うといいでしょう。特に、体力に自信のない人や高齢の人は無理をせず、段差の低い場所で行うようにしてください。

また、イスに座って床に広げたタオルを足指でつかんだり、たぐり寄せたりする運動も効果的です。

こうした運動によって、足底腱膜やアキレス腱の柔軟性を高めることで、足底腱膜にかかる負荷を軽減させることができます。

画像: タオルを足指でつかんだり、たぐり寄せたりしよう

タオルを足指でつかんだり、たぐり寄せたりしよう

痛みを和らげる薬を使う

足底腱膜炎の薬物療法は、断裂した足底腱膜の組織を修復するものではありません。一時的に痛みを取り除いたり和らげたりする対症療法です。最初は、鎮痛消炎効果のある湿布や塗り薬などの外用薬がよく用いられます。

それでしばらく様子を見て、症状が改善しなければ、ステロイド剤の局所注射をするというのが、一般的な治療の流れです。

ステロイド注射は炎症を抑えて、痛みを和らげるのに有効ですが、何度もくり返し行うと、しだいに効果が現れなくなってきます。また、過剰に行うとステロイド剤の副作用で組織が弱くなり、腱が切れてしまうおそれがあります。ですから、私たちのようなスポーツ医学の医師は、ステロイド剤はなるべく使わずに治療するというのが基本です。

ほかには、関節炎などによく用いられる、ヒアルロン酸の注射も行われることがありますただし、ヒアルロン酸は効く人には効きますが、効かない人もいて、一定して効果が期待できるとはいえません。

従来は外科手術しかなかった

こうした治療を行っても、痛みが治まらずに慢性化してしまった場合、従来は足底腱膜の一部を切除する手術しか治療の選択肢がありませんでした。
しかし、手術は体を傷つけます。傷跡が残りますし、術後に患部が腫れて、治るまでに数ヵ月かかったりするといった課題がありました。

足底腱膜炎の最新治療

体外衝撃波治療とは?

そうしたなか、近年だいぶ普及してきた選択肢として、「体外衝撃波治療」があります。2012年に保険適用となりました。リハビリテーションなどの保存的な治療を6ヵ月以上継続しても効果が見られない、難治性の足底腱膜炎に対して行われています。

体外衝撃波治療はもともと、尿路結石に対して用いられていました。尿路結石は腎臓にできた石(カルシウムなどのかたまり)が尿管や膀胱に詰まって痛みを起こす病気ですが、体外から衝撃波を当てることで、この石を破砕するものです。

足底腱膜炎に用いられる体外衝撃波の機器は、尿路結石用に比べると、パワーがかなり低く抑えられています。それでも患部に衝撃波を当てると、患者さんは最初、痛みを感じることが少なくありません。患者さんの反応を見ながら、徐々に出力を上げて治療を行っていきます。

なぜ効果が現れるのか?

体外衝撃波治療が、足底腱膜炎に効くしくみは、実ははっきりとはわかっていません。衝撃波が、痛みを伝える末梢の神経を壊したり、細胞を活性化させて傷んだ足底腱膜の修復を促したりして、痛みを和らげると考えられています。実際に、MRIの画像から組織の修復が観察できるケースもあります。

治療機器は現在、超音波エコーを当てて焦点を確認しながら患部に衝撃波を照射するタイプのもの(下の右側の写真)と、エコーがなく直接患部に当てるもの(下の左側の写真)の2種類があります。いずれの機器も十分な有効性はありますが、痛みに耐えうる、できるだけ強いレベルで照射を行います。高齢のかたに比較的低いレベルの照射をした場合でも、有効性が見られることがよくあります。

画像: なぜ効果が現れるのか?

治療の頻度と費用

体外衝撃波治療を終えると、マッサージした後のように痛みが和らいでいることが多く、患者さんに喜ばれます。ただ、1回で治ることはまれで、しばらくすると、また痛みが出てくるので、間隔を空けて何度か治療を行います。当院では、2週間から1ヵ月の間隔で3回の治療を1クールとしています。なお、治療に要する時間は1回10~15分程度です。

かかる医療費は保険適応であり、患者さんの自己負担額が3割なら、3ヵ月一律で1万5000円です。

約8割の患者が痛み半減

私たちは、2008年からこの治療を取り入れています。治療前の痛みのレベルを10とすると、痛みレベルが0~5まで下がる、つまり「痛みが半分以下になる」のを治療成功例とした場合、1クール(3ヵ月)の治療で約6割、1年で約8割の人に有効という結果が得られています。多くは再発もありません。

具体的な症例を紹介しましょう。
70代の女性Aさんは華道のお師匠さんですが、足底腱膜炎が悪化して歩くのが苦痛で出げいこができなくなり、引退を考えていたそうです。すでに6ヵ月以上の保存的な治療を行って、効果がなかったと当院を紹介されてきたので、体外衝撃波治療を行いました。

3回の治療を終えたころには痛みが出なくなって、「また元気に出かけられるようになりました」と喜んでいらっしゃいました(下の写真参照)。

画像: 約8割の患者が痛み半減

また近年、マラソンやランニングがブームとなっていますが、「足が痛くて走れなくなった」と来院される患者さんが増えています。そうした患者さんが治療を受けて、「また走れるようになりました!」と報告してくださるケースもよくあります。

治療中に痛みを感じることのほかには、副作用はほとんどなく、安全性の高い治療といえるでしょう。しいていえば、治療後に一時的に痛みが増すことはありますが、その痛みが持続することはありません。

体外衝撃波治療を受けるには

体外衝撃波治療の機器が高価なため、どこの病院でも受けられるわけではありませんが、徐々に普及してきています。インターネットなどで検索して、お近くの病院を探してみてください。
日本メディカルネクストのHPで検索できます。

なお、保険適用にはなっていませんが、アキレス腱炎やジャンパーひざ、テニスひじなどにも、体外衝撃波治療が有効であることがわかってきています。これらはスポーツ選手によく見られる病気で、保存的治療が有効でなければ、現在は手術の選択を迫られます。スポーツ医学の立場からすれば、今後はこうした病気にも、体外衝撃波治療の保険適応が広がっていくことを期待したいところです。

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