中古ノートパソコンの場合、発売当時はハイエンドモデルだったとしても、それは過去の話。時を経た現在でも、使い物になるかを見極めるのは上級者でも手を焼くが、それでも最低限抑えておくべき鉄則がある。例えば、購入前に発売時期やコンディション、スペックなどをポイントを抑えて目を通すだけでも、致命的な失敗を避けることができる。今回は、中古ノートパソコン選びの際に役立つ目利きポイントをレクチャーしよう。
中古ノートパソコンの「目利き」ポイント
スペックを鵜呑みにしてはいけない
新品のノートパソコンは、CPUやメモリー、ストレージなど、いずれも最新鋭のパーツを採用しているため、他機種との性能比較も簡単に推し量れるが、中古の場合はそうはいかない。
例えば、CPUひとつとってみても、同じ「Core iシリーズ」でも世代によって性能は大きく異なる。極端な話、ハイエンドCPUに分類されるCore i7プロセッサーでも、世代差がそれなりにあるとエントリーCPUであるCore i3プロセッサーにすら歯が立たないことがあるほどだ。
つまり、高性能を期待して買った中古のハイエンドノートパソコンが、実は現状ではローエンド相当ということも十分ありうる。
こうした手痛い失敗をしないためには、中古ノートパソコンの性能をあらかじめきっちり現状分析しておく必要がある。
中古ノートパソコン選びで大事な3つのポイント
中古ノートパソコン選定時に、最低限抑えておくべきポイントとしては以下の3項目を挙げたい。
・発売時期
・コンディション
・CPUの世代
メモリー搭載量やバッテリーの状態など、ほかにも細かいポイントはいくらでもあるが、すべてをくまなく調べるのは手間も時間も掛かる。それに、そもそもパソコンに不慣れなビギナーが、これらのポイントを漏らさずチェックするのは無理があるというものだ。
しかし、この3点だけなら誰でも簡単に調べられるし、言葉は悪いが有象無象の中古ノートパソコンを購入候補からまとめて除外できるため、機種選びの手間を大幅に削減することが可能だ。
それでは次節から各ポイントについて順を追って解説していこう。
まず「発売時期」をチェック
発売時期がわかればおおよその性能を把握できる
「Core i7プロセッサー搭載のA4ノートがたったの5万円!」──そんな売り口上を目にすると、つい衝動買いしてしまいそうになるが、それはちょっと待ったほうがいい。
というのも、ひと口に「Core i7」といっても世代によって性能はまちまちで、当然ながら古い世代ほど処理性能は落ちてくるからだ。
とはいえ、中古ノートパソコンを購入する際に、CPUの世代を始め、メモリーの速度やストレージのアクセス速度など、緻密な基本スペックまで精査して比較検討するのは非常に手間が掛かる。
そんなとき目安となるのが、中古ノートパソコンの「発売日」だ。目当ての製品がいつ発売されたかがわかれば、あくまで大雑把ではあるが、そのパソコンの大体の性能も推測可能だ。
・2018年~現在まで
→現行モデルに近い性能を期待できる
・2015~2017年まで
→用途次第では十分快適に使える可能性大
・2014年より前
→当時のハイエンド機以外は実用が難しい場合もある
もちろん、これはあくまで大雑把な線引きであって、実際には、同じ発売時期の中古ノートパソコンでもハイエンドやローエンド機の括りによって厳密な性能は異なってくる。
しかし、そうした点を差し引いても、発売時期だけでおおよその性能を推測できるというのは、非常に便利であることは間違いない。複数の購入候補がある場合、足切りの基準として利用するにはちょうどいいだろう。
中古ノートパソコンを買うなら2018年以降のモデルがオススメ!
筆者としてはビギナーにオススメしたい発売時期は、やはり直近の「2018年」までとしたい。これよりあとに発売されたノートパソコンなら、世代が違ってもシリーズが同じならCPUの性能に大きな差はないはずなので、スペックの吟味にさほど神経質にならずに済む。
一方、発売時期が2015~2017年の中古パソコンは、Windows10のリリース日が2015年ということもあって、10自体は問題なく動作するはずだ。しかし、さすがに5年以上前のモデルとなるとスペック的には周回遅れは確実であり、パソコン作業の内容によっては、パフォーマンス不足を感じる可能性も少なくない。
10のリリース前に発売された2014年以前の中古ノートパソコンは、正直なところ、見極めも使いこなしもビギナーには非常にハードルが高い。当時のフラグシップモデルならそこそこ快適に使える場合もあるだろうが、ミドルレンジ以下のモデルは動作が重くて実用にならない可能性が高い。安いからといって、安易に手を出さないほうがいいだろう。
コンディションのチェック方法
利用頻度が高そうな使い込まれた中古品は原則避けるべき
パソコンに限った話ではないが、当然、中古品は使用頻度が低い美品のほうがいい。さらに、精密機器であるパソコンの場合、使用頻度の高低は単に外観だけの問題ではなく、性能面にも関わってくる点にも注意したい。
なぜなら、消耗品であるストレージは無論のこと、厳密にはCPUやメモリーなど、内部のチップも使い込むほど発熱によるダメージが蓄積されていくからだ。不安定な動作や予期せぬフリーズなど、原因不明のパソコントラブルは、こうしたパーツ類の劣化が関係している可能性もありうるので、コンディションはあまり軽視しないほうがいいだろう。
キーボードの刻印からコンディションを量る
本来、コンディションのチェック時には、筐体の傷やディスプレイの劣化具合、細かいところではストレージの状態も見ておきたいところだが、通常、店頭ではそこまで実機をしっかり確認できないことがほとんど。もっとも店頭なら実機を見られるだけまだマシなほうで、ネット通販では商品の写真や説明などから状態を判断するしかない。
そんな限られた条件下でコンディションを量るしかないのなら、まず真っ先に見ておきたいのが「キーボードの刻印」だ。
もし、キーの刻印がかすれていたり、キートップが摩耗していたりするのなら、これは「黄色信号」といっていい。以前のユーザーによって相当ハードに使い込まれている可能性があるので、大事を取って購入候補から外したいところだ。
無論、使い込まれているのはキーボードだけで、パソコン内部の状態は良好なケースもあるだろうが、それは運次第の「掘り出し物」に過ぎない。中古品といってもパソコンは決して安価ではないし、堅実路線で少しでも良いコンディションの商品を選んだほうが賢明だ。
CPU性能はシリーズ名ではなく「世代」で判断
Core iプロセッサーは「型番」から「世代」がわかる
パソコン愛好家にはよく知られた話だが、インテル製CPUの「Core iプロセッサー」シリーズは「型番」から「世代」を判別可能だ。具体的には「Core i7」「Core i5」といったシリーズ名にあとに続く、はじめの数字が「世代」を意味する。
例えば、「Core i7-8565U」は「i7」に続く数字が「8」のため、「第8世代」ということがわかる。
【第10世代】 Core [i+シリーズ名]-10xxxx
→(例)Core i7-10710U
【第9世代】Core [i+シリーズ名]-9xxxx
→(例) Core i7-9750H
【第8世代】Core [i+シリーズ名]-8xxxx
→(例) Core i7-8565U
【第7世代】Core [i+シリーズ名]-7xxxx
→(例)Core i7-7500U
数世代落ちのCPUはリリース当時はハイエンドでも、今となっては処理性能はローエンドCPUとさして代わり映えしなくなる。中古ノートパソコンを購入する際は、CPUのシリーズ名に惑わされることなく、くれぐれも「世代」で判断してほしい。
中古ノートパソコンで狙い目のCPU世代は?
当然、新しい世代ほど好ましいが、予算の都合などで発売時期の新しい中古ノートパソコンには手が出ない場合もあるだろう。それでも性能面をできる限り犠牲にしたくないのなら、内蔵グラフィックス機能の「Intel HD Graphics 4200」をひとつの目安としたい。
Intel HD Graphics 4200以降は「4K出力」に対応しているので、ノートパソコンで外部ディスプレイを利用する際も製品選択の幅が格段に広がる。
内蔵グラフィックス機能としてIntel HD Graphics 4200が搭載されたのは、第4世代のCore iプロセッサーとなる。つまり、それ以降の世代なら、ノートパソコン本体に映像出力端子さえ備わっていれば、4K出力を利用できるということだ。
もっとも第4世代のCore iシリーズは、いまとなっては処理性能はお世辞にも高いとはいい難く、実用面を考えればもう少し上の世代を選んだほうがいい。中古ノートパソコンを購入する際は最低でも「第4世代」以降といった具合に、あくまでボーダーラインとして捉えてほしい。
まとめ
信頼できる中古パソコン専門店を利用しよう
今回は、ビギナー向けに中古ノートパソコンの選定方法をレクチャーしたが、購入先は実店舗や通販を問わず、やはり信頼できる「中古パソコン専門店」を利用するのが無難だ。
運悪く初期不良などのトラブルが生じた際のサポートも受けられるし、商品として販売する以上、ひと通りの動作チェックをしている点も信頼感がある。オークションやフリマアプリの相場よりはいくぶんか高くなることは間違いないが、万が一のときの「安心代」と思えば安いものだろう。
◆篠原義夫(フリーライター)
パソコン雑誌や家電情報誌の編集スタッフを経て、フリーライターとして独立。専門分野はパソコンやスマホ、タブレットなどのデジタル家電が中心で、初心者にも分かりやすい記事をモットーに執筆活動を展開中。