「宮本カレー」は、京都嵐山に近い上桂エリアにオープンした京のおそうざいを食べるカレー専門店。TBSのテレビ番組『坂上&指原のつぶれない店』のお店再生企画で話題になり、今も行列の絶えない人気店です。なかでも注目したのは、お母さんが作るおばんざい。直接お話を伺い、作り方のコツを伝授していただきました。
宮本カレーとは?
テレビ番組をきっかけにお店を再生
自分たちのお店を持つことが夢だった宮本ご夫婦は、お父さんの定年退職後、居酒屋『おばん菜 宮本』を開業。思ったようにお客さんの数が伸びないなか、テレビ番組『坂上&指原のつぶれない店』のお店再生企画に採用されました。そして年商360憶円の有名チェーン店『とんかつ かつや』の臼井社長のプロデュースのもと、おばんざいとスパイスカレーを組み合わせたランチ限定のカレー専門店が誕生。2020年6月4日オープン以来、1日50食限定のカレーは13時過ぎに完売するほどの人気店です。
店名
京のおそうざいを食べるカレー専門店
「宮本カレー」
住所
〒615-8216 京都市西京区松尾鈴川町85-7
営業時間
11時~15時(売り切れ次第終了)
定休日
火曜日、第2・4月曜日
京のおばんざいとカレーは相性抜群
カレーはオリジナルカレーとグリーンカレー、バターチキンキーマカレーの3種類。すべてのメニューには季節のおばんざいと煮卵、レッドキャベツが彩りよく盛りつけられ、追加でチキンやポークをトッピングできます。おばんざいは京風の上品な薄味でスパイスカレーとの相性は抜群!特に『とんかつ かつや』の臼井社長が絶賛した「ねぎじゃこ」は、これだけでご飯が何倍でも食べられるおいしさです。
宮本カレーのおばんざいの特徴
カレーに合う京風の味つけ
おばんざいは、お母さんが子どもの頃から親しんできた家庭の味が中心。京風の上品な薄味は、素材本来のおいしさを引き立て、スパイスの効いたカレーにもぴったりです。
一晩寝かせて味をなじませる
毎朝、お父さんが昆布とかつおぶしで丁寧に取っただし汁を使い、お母さんが調理。手際よく作ったおばんざいは、一晩じっくりと寝かせ、翌日に提供します。しっかりと味がなじんでいるのに煮くずれしない。これがキレイにおいしく仕上げるコツです。
お母さんの経験と勘、愛情で仕上げる
おばんざいは何度も改良を重ね、納得いくものに仕上げたそうです。材料の分量や調味料の配合は、「毎日50食分を大量に作るのでレシピはなく、すべて目分量です」というお母さんの経験と勘に基づいたもの。お客さんに喜んでいただきたいという愛情が、おいしさの秘訣です。
京のおばんざい「ねぎじゃこ」
ごはんの上にたっぷりと盛られた「ねぎじゃこ」は、ごま油の香りとだし醤油の上品な味わいが特徴。ねぎのシャキシャキ感とちりめんじゃこのサクサクとした食感がたまりません。お客さんによくレシピを聞かれて教えるものの、「お店と同じような味にならない」という声が多いそうです。
材料
・細めの九条ねぎ(または青ねぎ)
・ちりめんじゃこ
※九条ねぎとちりめんじゃこは3:1の比率
<調味料>
・だし醤油…少々
・ごま油…少々
おいしく仕上げるコツ
◎細めのねぎを選び、できるだけ細く切る
◎作り置きせず、出来たてを食べる
細くて柔らかいねぎを細かく小口切りにすると食感がよく、おいしく仕上がります。時間が経つとねぎから水分が出るため、宮本カレーでは1日4~5回に分けて作り、出来たてを提供しています。
作り方
(1)ねぎは細めの小口切りにして水にさらす。ザルに空け、時間をかけて水気をよく切る。
(2)(1)のねぎとちりめんじゃこをボウルに入れ、だし醤油とごま油を少々加えて混ぜ合わせ、味を見ながら調整する。
京のおばんざい「揚げなすの煮びたし」
油と相性のいい、なす本来の味を引き出した定番のおばんざい。食べた瞬間、口の中にじゅわっと広がる旨みが何とも言えない、毎日食べても飽きないおいしさです。
材料
・なす
・だし汁
・サラダ油(素揚げ用)
<調味料>
濃口醤油・みりん…適量 砂糖・塩…少々
おいしく仕上げるコツ
◎油で揚げたなすは、熱いうちにつけ汁に浸す。
◎なすから水分が出るため、少し濃いめに味付けする。
素揚げなすを熱いうちに浸して半日ほど味をなじませます。時間が経つとなすから水分が出てくるので、つけ汁は「少し濃い」程度に味付けするのがポイントです。
作り方
(1)鍋にだし汁を入れて火をかけ、調味料を加えて味を調整する。
(2)なすは食べやすい大きさ(3cm程度)に乱切りする。
(3)180~190℃の油でなすを素揚げする(2~3分)。
(4)油を切ったなすを熱いうちに(1)のつけ汁に浸し(なすが浸かる程度の分量)、半日ほど味をなじませる。
京のおばんざい「お揚げと小松菜の炊いたん」
小松菜の鮮やかな彩りとシャキシャキとした食感が楽しめる料理。油揚げの代わりにシーチキンの缶詰を汁ごと使ってもおいしく仕上がるそう。
材料
・小松菜
・油揚げ
・だし汁
※小松菜1束に油揚げ1/3枚が目安
<調味料>
・薄口醤油・みりん…適量
・砂糖・塩…少々
おいしく仕上げるコツ
◎茹でた小松菜は氷水に浸してアク・えぐみを取る。
◎小松菜はつけ汁で炊き、ひと煮立ちさせたら火をとめる。
小松菜は「茹でる→氷水に浸す→つけ汁でひと煮立ち」の工程をスピーディにすると、彩りよくシャキシャキ食感に仕上がります。
作り方
(1)ボウルに小松菜を根本から入れ、砂や土を水で洗い流す。
(2)鍋にお湯を沸かして小松菜をさっと茹で、氷水に浸す。
(3)小松菜をよくしぼってから3cm程度に切る。油揚げは縦半分に切ってから短冊切り(5mm)にする。
(4)だし汁に調味料を入れ、お吸い物よりも少し濃い程度に味付けをし、油揚げと小松菜を入れる。
(5)ひと煮立ちしたら火を止め、半日ほど味をなじませる。
京のおばんざい「小芋の炊いたん」
関東や東北は甘辛い味付けが多いですが、だしを効かせて薄味に仕上げるのが京風。白い肌の小芋のホクホク感としっとりした程よい食感が優しい味わいです。
材料
・小芋
・だし汁
・かつおぶし
<調味料>
・薄口醤油・みりん…適量
・砂糖・塩…少々
おいしく仕上げるコツ
◎小芋は竹串が刺さる程度で火を止め、煮過ぎない。
◎だし汁+かつおぶしで濃厚な旨みを出す。
キッチンペーパーで包んだかつおぶし(お茶パックに入れても可)をだし汁に加えると旨みが濃厚になり、小芋にしっかり味が浸みこみます。
作り方
(1)小芋の皮をむいて水で洗う。
(2)鍋に小芋とだし汁、キッチンペーパーで包んだかつおぶし、調味料を入れて火にかけ、沸騰したら弱火にする。
(3)小芋が竹串に刺さるくらいになったら火を止め、半日ほど味をなじませる。
「ねぎじゃこ」「揚げなすの炊いたん」を作ってみた
「ねぎじゃこ」は細めの九条ねぎをできるだけ細かくカット。水にさらしてから水気をしっかりと切り、上品な薄味を目指してだし醤油とごま油をほんの少量加えました。出来たてはサクサクとした食感で味も満足できる仕上がりでしたが、九条ねぎは細すぎて青臭さが気になりました。ねぎ選びが重要なポイントです。「揚げなすの炊いたん」は、素揚げしたなすをつけ汁に入れるところまでは良かったのですが、半日経つと思った以上に水っぽくなり、薄味に。これは何度かチャレンジしてコツをつかみたいですね。
最後に
お話を聞いていたときは、「自分にもできそう」と思いましたが、実際にやってみると醤油や塩の加減が難しく、1回のチャレンジで納得のいく味に到達できませんでした。それでも久しぶりに昆布とかつおぶしでだしを取り、一つひとつ丁寧に料理をしていると心が穏やかに。休日に作り置きしておけば、常備菜としても重宝します。みなさんも京のおばんざいづくりに挑戦してみてください。
◆藤田美佐子(編集ライター)
京都在住。フリーランスの編集兼ライターとして観光、食、求人、医療、ブライダルなど幅広い取材・執筆活動を行う。1児の母。趣味はマラソン、家事は面倒くさいと言いながらも手作りにこだわる料理好き。