季節は秋です。新型エアコンの発表時期です。しかし私が注目したのはパナソニックの加湿空気清浄機「F-VXT90」。理由は、このモデルがエアコンとの連携を強く意識したモデルだからです。エアコンと連携することでより快適な空調が実現するのです。
空調はエアコンだけでは完結しない!
コロナ禍の時代、外食していると、職業柄かお店の人から「どんな空調機を置けば良いのか?」と聞かれることがあります。お客様に少しでも、安心して来てもらえる様にという店主の心尽くしが感じられます。イメージは、空気中を浮遊しているだろうウイルスを少なくしたいという思いです。その上、一時、次亜塩素酸水の効果を疑問視する発表などがあったものですから、混乱も起こしました。
いろいろ話を聞いている内に、多くの人が空調に関する知識が欠けていることも、混乱を大きくしている原因であるとも思いました。このため、空調の役割についてまとめ直すと共に、最新の空気清浄機を紹介したいと思います。
では、空調とはそもそも何か?
空調とは、人が快適に、健康にすごせるよう空気を調整することです。何を調整しているのかというと、お馴染みの「温度」「湿度」に、次の4つ「二酸化炭素濃度」「気流(風)」「空中を浮遊する微粒子(花粉、バイ菌、PM2.5など)」「揮発性化学物資(VOC。人体に影響ある物質は数百あるが、新建材から揮発するアセトアルデヒドが有名)」を加えた計6要素から成り立ちます。
そのなかでも「二酸化炭素量」は生死に関わります。「浮遊微粒子」「揮発性化学物質」も身体に害を及ぼします。浮遊微粒子の一つ「花粉」は花粉症を、「PM2.5」は健康被害を、「ウイルス」は言うまでもありません。念入りに空気をコントロールする必要があります。
では、これらをコントロール出来ないエアコンが、なぜ空調家電の王様の様にもてはやされているのでしょうか?理由は、エアコンがコントロールしているのが「温度」で、効果=快感だからです。要するに、冷蔵庫の中に水を入れておくと、冷えた水になる様に効果が明確なのです。
ここまで効果が明確な空調家電は、エアコンと扇風機しかありません。「温度」と「湿度」の半分「除湿」、そして「風」の一部をコントロールしているだけですが、ボス的な存在として扱われるのです。
エアコンに足らない要素をコントロールする連携家電
空調といわれる機器には、加湿を行う「加湿器」。風関係の「扇風機」「サーキュレーター」、浮遊物をフィルターでトラップする「空気清浄機」。トラップすらできない微細有機浮遊物を破壊する「イオン発生器」。ニオイ、ウイルスに対応できる次亜塩素酸水を使った「清浄機」。化学物質を吸着させる活性炭フィルターを使った「空気清浄機」、二酸化炭素を外に逃す「換気扇」があります。
しかし、これらを一定理論の下、効率よく使うには、その部屋の空気の状態を正確に知ることと、効率的な空調家電の連動が必要です。
IoTやAIが話題になっていた時から、連動家電の開発はスタートしていたのですが、より良い空調を実現する家電には条件があります。感度のいいセンサーを搭載している事、IoTのための通信機を内蔵している事、ビッグデータをもとにしたAIをクラウド上に持っている事、元になる理論がしっかりしている事、連動ソフトがある事などが条件です。
今回、パナソニックが新しく発売する加湿空気清浄機「F-VXT90」は、それをクリアしたモデルです。
加湿空気清浄機
F-VXT90
パナソニックの加湿空気清浄機「F-VXT90」は何ができるのか?
「F-VXT90」の売りは「うるおい暖房」です。エアコンで暖房すると、熱交換の関係で湿度が下がります。ひどい時には、いくらお茶を飲んでも潤わないことも。このため、多くの場合、別途加湿機を使い加湿しますね。
しかし、冬は元々温度が低いですから、空気が許容できる水蒸気量も低い。余った水蒸気は、どこか温度が低いところで結露します。日本の場合、温暖〜亜熱帯性の気候な上、菌類の種類が他エリアより断然多いため、空気の中には菌類の胞子がワンサカ。(ただし人体に影響を与えるほどではない。)このため、カビが生えますね。そんなふうに大量繁殖すると人体に悪影響を及ぼすこともあります。
そうとはいえ、インフルエンザ、コロナウイルスなどから身を守るためには、高湿の方がベターです。しかし、結露はさせたくない。この矛盾した状況を打破するためにパナソニックがとったのが、エアコンと連動できる加湿空気清浄機を世に出すこと。F-VXT90はその1号機となります。
イオン発生器が2台ある事に
シャープのプラズマクラスターが有名ですが、パナソニックも「ナノイー」「ナノイーX」というイオン発生器を持っています。エアコン、空気清浄機にも搭載されています。
実はイオンですが、効果は「イオン濃度」によります。例えば、ウイルスを不活性化するイオンの場合、ウイルスとイオンが出会わなければ不活化出来ません。要するにイオン濃度が高くないと効果がないわけです。
連動させれば、エアコン・空気清浄機ともにイオンを発生させますので、通常の倍の効果があります。このような連携機能をラクラク繰り出せるのが、IoT、AIの実力なのです。
まとめ
しばらくは同一メーカー内の対応か
聞くだにいい感じの空調家電の連携ですが、全メーカーの全モデルが対応しているわけではありません。
今回は、同メーカーだからこそできる連携です。本当なら、どのメーカーでも連携ができることが望ましいのですが、今しばらくは無理。ここしばらくは、大手空調メーカー(総合空調家電メーカー)が市場を引っ張る事になりそうです。
しかし、これは大きな目標への、小さな第一歩。今後、空調の自動コントロールを目指して頑張って欲しいものです。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。