スパイスカレーブームなどで、家庭料理でも取り入れる人が増えた「スパイス」ですが、中華料理にも様々な種類のスパイスがあるのをご存知ですか?花椒、五香粉など、聞いたことはあるけど、どういう風に使えば美味しく使えるのかわからない…というお悩みを持つ方は多いのではないでしょうか。この記事では、アジア料理研究家の外処佳絵さんに、代表的な中華スパイス・調味料の種類や特徴、おすすめの料理を教えていただきます。

解説者プロフィール

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外処 佳絵(とどころ よしえ)

アジア料理研究家・国際中医薬膳師。料理教室PANDAKITCHEN主宰。アジア料理に魅せられ、各国を旅して現地の素材に触れ料理を学ぶ。現在はPANDAKITCHEN webレッスンを開講中。
PANDAKITCHEN 公式サイト

魅力あふれる中華スパイスの世界

中華スパイスの魅力とは?

皆さんは、中華料理はお好きですか?私も日本人なので、もちろん素材の味を活かした和食も大好きなのですが、和食だけだと、なんだか気持ち的にパワーが湧かない気がします。そういう意味では、色んな調味料を混ぜて作る中華料理は、作っても、食べても楽しいです。それなので、わたしはよく「香りの刺激」が欲しくなったら中華料理を作ります。

今回は、そんな中華料理の「パワー」の源であるスパイスや調味料についてご紹介していきます。現地での使われ方や、日本の家庭でも作りやすい素材との組み合わせなどもご紹介していきますので、参考にしてみてください。

外処さんと中華スパイスの出会い

今はこんなに料理に中華スパイスを愛用している私ですが、実は、香港、台湾、中国など中華圏に旅して現地で味わうまで、中華スパイスはあまり好きではありませんでした。

馴染みのない風味だったので、特に南の中華圏の方で食べる「八角」や「五香粉」の香りがするお料理は、すぐには慣れなかったのですが、香港で長期滞在してる内に、香港の長粒米には八角の香りの焼き物が合うな〜って思うようになったり、台湾でホームスティー先で作ってもらったルーロウ飯に入っている五香粉の香りがとても美味しく感じるようになりました。

現地の気候や食材の味を知り、長く旅すれば旅するだけ、鼻もなれ、街中で香る中華スパイスの香りに愛着が湧いて、美味しく感じるようになりました。いまでは中華スパイスの香りがするとほっとします笑

ぜひ、この記事を読んでいる皆さんにも、普段の家庭料理でも試しやすい料理で、中華スパイスの魅力を感じていただければと思います。それでは、家庭でも取り入れやすい中華スパイスを11種類ほどご紹介していきます。

甜麺醤(テンメンジャン)

画像1: www.yodobashi.com
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特徴

黒いペースト状のお味噌に見えますが、大豆ではなく、小麦粉とお塩で作られています。甘味が強い事から甜麺醤(甘い小麦粉のペースト状の物)と言われています。

現地での使われ方

甜麺醤で先ず思い浮かぶのは、北京の炸醤麵(ジャージャン麺)です。手打ちの硬めのうどんの様な麺に、きゅうり、紅心大根、枝豆などがトッピングされていて、なんと言っても、日本で食べる甜麺醤に比べて甘味のないのが特徴です。八丁味噌や韓国のジャジャン麺を使うチュンジャンに近い味わいの黄醤(大豆を発酵させた醤油と味噌の真ん中の様な調味料)を混ぜ、肉味噌を作ります。日本で食べる甘辛いお肉たっぷりのジャージャン麺とはまた全然違った物です。私は甜麺醤と八丁味噌を混ぜて本場の味に近づけて作ります

あと回鍋肉。本場の回鍋肉はキャベツではなくピーマンが入っている事が多いです。ちなみに回鍋肉とは、「回=戻す」という意味なので、一度鍋で茹でた肉をまた鍋に戻して調理する料理です。甜麺醤と豆板醤を中華鍋に熱して香りを出してから具材をさっと炒めます。

画像: 北京ダック(外処さん提供)

北京ダック(外処さん提供)

日本で売っている甜麺醤に似た味わいのものというと、一番に思い出すのは北京ダックの付けダレです。北京ダックのジューシーな油の旨味を活かす甘味が効いたジャンで、甜麺醤にお砂糖やごま油を混ぜて作ります。他にも麻婆豆腐、魚香茹子(麻婆茄子)、チャーシューの下味にも使います。

画像: 甜麺醤をつかった香港チャーシュー(外処さん提供)

甜麺醤をつかった香港チャーシュー(外処さん提供)

日本の家庭料理でのおすすめの使い方

日本の甜麺醤は甘さが強い分、砂糖使わず、甜麺醤の甘味を活かして、使う分量もお料理に合わせて調整してみると良いと思います。麻婆豆腐で甜麺醤を入れる場合は、量は少なくして、甘くならないように少しづつ入れてみると本場の麻婆豆腐に近くなります。

あとは、焦げないように、油で香味野菜の香りを出し、さらに甜麺醤を入れて弱火で香りを出し、そこに野菜を入れてさっと炒めると美味しいです。たくさん使うと主張する甘さになりますが、野菜炒めにも、少しだけお醤油と混ぜてごま油を入れて合わせ調味料にすれば、お味噌の旨味が良い仕事をしてくれますよ。

我が家では豚バラ肉を粗みじん切りにして、豚バラの脂を出しながら炒める、甜麺醤と、お醤油を入れて「肉味噌」を作ります。ストックしておけるので、その肉味噌を麺にのせてジャージャン麺にしたり、蒸し炒めしたキャベツに肉味噌をかけて回鍋肉風にしたり、チャーハンや焼きそばの隠し味に入れることもあります。

また、サンドイッチ用のパンを綿棒で軽くのばして、カリッと皮面を焼いた鶏モモ肉を野菜と一緒にロールして、北京ダックみたいに食べても美味しいです。甜麺醤とごま油少々を混ぜてレンジで軽く温めて付け味噌を作ります。

豆板醤(トウバンジャン)

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特徴

豆板醤は、そら豆と唐辛子、塩、麹などを発酵させた塩味が強めの辛い調味料です。写真の豆板醤は日本のものなので赤いですが、中国のピーシェンの豆板醤は日本の豆板醤に比べて、味噌の様に黒い物です。

現地での使われ方

麻婆豆腐は豆腐醬をたくさん使う料理です。豆板醤も油で火を入れ香りを出してからスープを入れて豆腐を煮る事で、旨味が出て美味しいです。

画像: 豆板醤、花椒(後述)、豆鼓(後述)をつかった麻婆豆腐(外処さん提供)

豆板醤、花椒(後述)、豆鼓(後述)をつかった麻婆豆腐(外処さん提供)

螞蟻上樹(麻婆春雨)にもよく使われます。挽肉が春雨に絡まり、まるでアリが木登りしてる様に見えるので、そう呼ばれているお料理です。日本の麻婆春雨より水分がなく、さっぱりとした辛さが特徴です。淡白な春雨が、挽肉と豆板醤の味を吸っています。焼餅と言うごまがたくさん付いた粉物に挟んで食べると美味しいです。

日本の家庭料理でのおすすめの使い方

一番簡単でちょっと変わった食べ方ですが、焼き餃子を食べる時に、お酢かレモン汁に豆板醤を溶いて付けダレにします。豆板醤は塩分があるので、お醤油をいれなくても充分です。さっぱりピリ辛でおすすめです。あるいは、塩焼きそばを作る時に、豆板醤を入れて味を絡めることもあります。魚介類とニラを具材にして、少しピリ辛な塩焼きそばに仕上げます。

卵とトマトの炒め物を、普段は塩とお砂糖で味付けしますが、ピリ辛が食べたくなったら豆板醤を少し入れます、むきエビを一緒に炒めても、エビチリみたいな味わいで美味しいです。

画像: 豆板醤をつかったエビチリ(外処さん提供)

豆板醤をつかったエビチリ(外処さん提供)

香酢(コウズ)

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特徴

有名な鎮江香醋は浙江省で作られているお酢で、日本でも黄色の蓋の瓶で売られています。もち米と麦麹、塩、水等で発酵熟成して作られた、お醤油の様に黒いお酢で、熟成されているので、香りがよく、酸味はまろやかでアミノ酸が豊富です。塩味が少し付いているので、そのまま付け酢として使えます。少しバルサミコ酢に似たお酢です。

現地での使われ方

上海の酢豚には必ずこの香酢が使われています。あのとろっと黒いタレは香酢の色です。米酢や日本の黒酢で作ると酸味が強く、発酵した独特の香りが出ません。また、酸辣湯も本場の味にしたかったら、この香酢を入れて下さい。香酢はお鍋でぐつぐつさせないで、器に直接入れ、スープを注いで混ぜて食べると香りが良いです。

画像: 香酢をいれた酸辣湯麺(外処さん提供)

香酢をいれた酸辣湯麺(外処さん提供)

また上海の生煎包(焼き肉まん)や上海蟹を食べる時の付けだれとして使います。蟹は身体を冷やす食材ですので、血行を良くして温める香酢は薬膳料理にも使われます。

外処先生のおすすめの食べ方

焼き饅頭や焼き餃子を香酢だけ付けて食べます。付けダレはもちろんですが、炒め物にもよく使います。私は、じゃがいもの千切りか、キャベツのざく切りを、ニンニクの香りをきちんとうつしたガーリックオイルでさっと炒め、鷹の爪を入れ香酢と塩、お砂糖、お醤油少々で炒めて作る北京の定番おかずを本当によく作ります。

画像: 香酢をつかった北京の定番おかず(外処さん提供)

香酢をつかった北京の定番おかず(外処さん提供)

魚のあんかけソースも。人参、セロリ、竹の子などの千切り野菜たっぷりに、米酢に香酢を混ぜてあんかけを作ります。また、レモンと混ぜて、お砂糖と塩を混ぜると、例えば大根と大葉などの野菜と和えても美味しいですし、そのソースに水で戻した切り干し大根を漬けても美味しいです。

花椒(ホワジャオ)

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特徴

日本の山椒のように青い物もありますが、一般的に売られているものは、赤茶色をした乾燥した状態の粒状か、粉引きになったものです。舌が痺れる辛さと、爽やかな香りが特徴のスパイスで、消化を助ける効果があります。粒状の物は、たまに黒い硬い種が入ってますので、使用する前に取り除くようにしてください。粒状、粉状どちらとも、使う前に乾煎りしてから使うと、香りがグッと良くなり、味に締まりがでますよ。

現地での使われ方

麻婆豆腐、辣油たっぷりで煮る水煮牛肉など四川のお料理に良く使われます。また滷味ルーウェイ(おでんのようなもの)の煮汁の隠し味のスパイスの中にブレンドされています。あとは揚げ物などに振りかけて使う、花椒塩があります。

画像: 花椒をつかった羊肉のスパイス焼き(外処さん提供)

花椒をつかった羊肉のスパイス焼き(外処さん提供)

外処先生のおすすめの食べ方

一番良く使うのが、花椒油です。ガリーリックオイルを作るように、花椒を軽く潰し、弱火でサラダ油にじっくり香りを移し、熱し油を作ります。千切り白菜に塩とお酢を和えておき、熱し油をかけて作る和え物に使っても美味しいですし、同様にキャベツや大根、カブなどで作っても。

画像: 花椒と五香粉の入った辣油(外処さん提供)

花椒と五香粉の入った辣油(外処さん提供)

また醤油と香酢、砂糖、花椒の付けダレに拍子切りに切った大根を漬けこむお漬物も、中国で有名です。そこに煮切った紹興酒を入れれば更に本格的なあじわいになります。あとアサリ蒸しや、アクアパッツァに入れても。私自身もいろいろアレンジして楽しんでますよ!

五香粉(ウーシャンフェン)

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特徴

八角、花椒、陳皮、茴香、丁子がブレンドされた5種の香りのスパイスです。このスパイスはお肉の臭みを消してくれます。また、身体を温めてくれる効果や、胃腸を整えてくれる効果があるので、脂っこいお肉料理の消化も助けてくれます。

日本人にあまりの馴染みのない香りをしているので、最初は苦手意識を持つ方もいますが、使う分量で丁度良い香り付けができれば、五香粉の香りがだんだん好きになると思います。少量ずついれて、味見をしながら自分の好みの量を知れば、きっと好きになるスパイスだと思いますよ。

現地での使われ方

台湾はそこらじゅうで五香粉の香りがしています。「滷」と付いたお料理にはほぼ五香粉が入っていますが、有名なものは滷肉飯でしょう。脂身がたくさんの豚肉をねぎ油で炒め、お醤油とお水、お砂糖でゆっくり煮込んだ物に、五香粉をいれます。脂っこいお肉でも、五香粉の香りで食欲が増します。また、台湾の屋台メニュー、鶏排(鶏の唐揚げ)の下味にも入っています。

画像: 五香粉の入った台湾の滷味(ルーウェイ)(外処さん提供)

五香粉の入った台湾の滷味(ルーウェイ)(外処さん提供)

初めて食べる人におすすめの食べ方

日本の家庭料理ではあまり馴染みのないシナモン、クローブ、八角などの香りがついた調味料なので、最初は抵抗がある人も多いかもしれません。まずはベーコンなどスモーキーな物と合わせてみてください。あるいは、中国料理に「焼きコロッケ」という料理があるのですが、里芋やじゃがいもなどの芋種に少し入れてみるときっときつく感じないと思います。

画像: 五香粉が香る香港点心ハムスイコー(外処さん提供)

五香粉が香る香港点心ハムスイコー(外処さん提供)

より五香粉を楽しみたい人には

おかずだけでなく、デザートでも使えます。焼き芋にアイスを添えて五香粉を好みの量振って召し上がってみてください。

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