【大恐慌に備える】来るかドミノ倒し…「家計防衛時代」を生き抜くために確保しておきたい“9つ”のこと

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こんにちは、家計コンサルタントの八ツ井慶子です。今回は、懸念される「家計防衛時代」がやってくることを想定し、いまからどのように備えたらいいのかを考えてみたいと思います。雨が降ることに備えて、傘を準備するようなイメージです。雨は防げなくとも、濡れることは軽減されます。今後の暮らし方に、少しでもプラスになるようなヒントになれば、うれしく思います。

執筆者のプロフィール

八ツ井慶子(やつい・けいこ)

生活マネー相談室代表。家計コンサルタント(FP技能士1級)。宅地建物取引士。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。アロマテラピー検定1級合格者。城西大学経済学部非常勤講師。

埼玉県出身。法政大学経済学部経済学科卒業。個人相談を中心に、講演、執筆、取材などの活動を展開。これまで1,000世帯を超える相談実績をもち、「しあわせ家計」づくりのお手伝いをモットーに活動中。主な著書に、『レシート○×チェックでズボラなあなたのお金が貯まり出す』(プレジデント社)、『お金の不安に答える本 女子用』(日本経済新聞出版社)、『家計改善バイブル』(朝日新聞出版)などがある。テレビ「NHKスペシャル」「日曜討論」「あさイチ」「クローズアップ現代+」「新報道2001」「モーニングバード!」「ビートたけしのTVタックル」など出演多数。
▼生活マネー相談室(公式サイト)
▼しあわせ家計をつくるゾウ(Facebook)

起こるべくして起こる「大変化」

ここでいう「家計防衛時代」とは、簡単にいうと、大不況です。恐慌といってもいいかもしれません。金融クラッシュによって大量倒産、大量失業が起こり、多くの方の暮らしに影響がある状況をイメージしています。その規模は、リーマンショック時よりもはるかに大きいのではないか、と私は考えています。よろしければ、前回のコラムもお読みいただけましたらうれしいです。

まず、具体的な備え方を考える前に、家計防衛時代は、新型コロナウィルスによるパンデミックがなくても、起こるべくして起こるのではないか、という点について触れておきたいと思います。

いま、至る所で“大変化”が起こっていますが、すべてが新型コロナによってもたらされたものではなく、新型コロナによって、変化スピードが“加速化”された面が非常に強いと思います。デジタル化の進展は分かりやすい例でしょう。そして、家計防衛時代への突入もその一つだと思うのです(突入するとして…)

「超低金利」が銀行に大打撃

その理由の一つが、金利が長期間にわたって「超低空飛行」を続けている点です。

1999年2月、日本では、日本銀行によって「ゼロ金利政策」が導入されました。多少の動きはあったものの、以来20年以上にわたって金利は上昇していません。ましてや、2016年2月には「マイナス金利」が始まっています。2012年末からの「アベノミクス」によって株価は上がっても、金利は上昇をみせていません。

仮に、超低金利が数年の動きであれば、それは“トレンド”と言えるかもしれませんが、20年以上も続けば、“常態化”といっていいのではないでしょうか。個人的に、「金利は今後も上がらない」と予想しています。
前回のコラムの続きとして加えて言うならば、流通する貨幣量に「上限」を設け、「無限に貨幣量を増やさない」とするならば、金利は「存在しない方がいい」とすら考えています。いまの金融制度の“常識”からみたら、突拍子もない考え方でしょうが、私自身は真剣にそのような世界が望ましいのではないか、と考えています。

金利が上がらなければ、預金金利と融資金利の差である「利ざや」をおもな収益源とする銀行業は、大打撃です。マイナス金利の影響で、銀行の収益が圧迫されているというニュースは、皆さんも聞いたことがあるでしょう。

これまで、銀行の専売特許とされてきた資金決済業務(簡単にいうと、振込や引落などで支払いを完了させること)も、「フィンテック」の進展とともに“お金”が電子化され、新興企業におびやかされている状況です。

こうした流れを受けて、“本業”で稼げなくなったきた銀行が、窓口での投資信託や保険の販売に力が入るのも無理はありません。最近の業界全体の動きをみても、店舗やATMの統廃合、人員削減、各種手数料の値上げが続いていますが、必然といえそうです。

超低金利とフィンテックの進展により店舗やATMの統廃合、人員削減、各種手数料の値上げが続いている銀行業。

生保会社にボディブロー

金利が上がらない状況で困るのは、銀行だけではありません。生命保険会社にも大きく影響します。

生保会社は、契約者から支払われる保険料の一部を、将来の支払いに備えて市場で運用します。生命保険の性格柄、その期間は長期にわたり、資金量も大きいものです。

その際、あらかじめ何%で運用するかを約束している利率を「予定利率」といいます。生保各社が商品ごとに任意に決められるものですが、金融庁が決定する「標準利率」を元として決定されるので、極端に市場金利水準と乖離することはありません。

影響は証券会社にも…

標準利率には3種類ありますが、現在そのうち2つが、0%。前代未聞です。

これを受けて、一部の生保商品(いわゆる貯蓄性のある保険)で、予定利率の引き下げや販売中止が相次ぎました。予定利率よりも実際の市場での運用利率が下回れば、生保会社の財務を悪化させます。それを未然に防ぐには、売り止めは究極の方法でしょう。

とはいえ、生保各社は、いまの金利水準よりも高めの予定利率の既契約をすでに保有しています。前述の通り、生保の契約は長期にわたるため、金利が上がらず、運用環境の悪い状態が長く続けば(既契約の予定利率を変えることは基本的にはできないので)、ボディーブローのように生保会社にダメージを与えます。

生保商品の販売が厳しくなれば、銀行窓販にも影響します。そもそも運用環境が厳しければ、投信の販売等にも響き、証券会社にも影響します。要は、「経済」が以前よりも熱くない、ということに尽きるのだと思います。
※だからといって、「いまの“経済”を活性化させることが大事ということではない」ということは、前回のコラムからお分かりいただけるとありがたいです

生保会社へのダメージが銀行、証券業界へと広がる…。

「ドミノ倒し」で市場が教えてくれる!?

金利水準は、金融業界に多大な影響をもたらすものですが、それだけではありません。日本では、加えて人口減、少子高齢化、超長寿化が同時進行中です。これは、「未経験の時代」に突入しているといっていいでしょう。

つまり、私たちの暮らしは、新型コロナウィルスの発生以前から、すでに変化を迫られていました。

この、大きな潮流によって変化するであろう日本経済の「形」に、いまの金融制度はそもそもマッチしていないと思うのです。しかし、その変化に対応できるような制度改革できるか、というと、アベノミクスがいまだに続いていることを考えれば、そう簡単にはいかないのでしょう。となれば、じり貧。いずれ金融機関が連鎖的にドミノ倒しにあってもおかしくないのではないでしょうか。

「いまの政策はマッチしていませんよ」

…と、このような構想を5年くらい前から考えていました(われながら長い…)

アベノミクスの最大の欠点は、出口のコンセンサスがないことだと思います。ゴールの「目標」はあっても、どうなったときに「失敗」なのか、失敗した時にはどう対応するのか、といった戦略がありません。あまりにゴールを「唯一の正解」と信じすぎてはいないでしょうか。

つまり、「いまの政策はマッチしていませんよ」と、市場が私たちに厳しく教えてくれるとしたら、それは“ドミノ倒し”であろう、と思うのです。

「出口戦略なき政策」が行き着く先は…?

備えておきたい「9つ」のこと

かなり前置きが長くなりましたが、「家計防衛時代」は、コロナ禍がなかったとしても、起こり得ることだと思うのです。

ではここで、(ようやく)家計防衛時代に備えておきたいことを、私・八ツ井の独断と偏見でまとめてみたいと思います。一見、どれも当たり前のことのように感じるかもしれませんが、実は思っていてもなかなか実行できない、難しい準備でもあるのです。何か一つでもご参考になればうれしいです。

(1)「心の準備」をする

「家計防衛時代がやってくるやも」という心の準備です。歩いている先に段差がある場合、事前に分かっていれば「転ぶこと」は防げます。仮に転んでしまったとしても、大怪我にはならないでしょう。まずは心の準備が必要です。

(2)「心のケア方法」を知っておく

私たちは、良くも悪くも「見えない将来」を不安に感じる動物です。ましてや、家計防衛時代に入ればなおさらでしょう。そこで、そんな時でも心が折れないよう、自分の心のケア方法を知っておきましょう。例えば、ただ歌う、ひたすら寝る、おいしいものを食べる、自然に触れる、走る、泣く、瞑想等々。自分が心地よくいられ、平静を取り戻せるようなものを、ぜひ今のうちに洗い出してみてください。

「見えない将来」に対し有効なのは「心の準備」と「自分の心のケア方法」を知っておくこと。

(3)「ネットワーク」を持っておく

つらいとき、社会的にも精神的にも孤立しないために、今うちに気の合う仲間との「ネットワークづくり」を意識しましょう。このコロナ禍で、良くも悪くも人の性格が露呈してきた、という面がないでしょうか。おそらく今後もこの傾向は続くと思われます。

(4)「食」を見直す

私たちの命をつなぐのは「食」です。「食の見直し」はいつでも重要なのですが、家計防衛時代には食費カットを迫られることがあるかもしれません。これを機に、飽食時代といわれる「いまの食」がそもそも適当な量なのか、考えてもいいのかなと思います。

現在、1日3食の方が多いと思いますが、1日3食の歴史はそう長くないとも聞きます。私自身もかつては1日3食でしたが、紆余曲折(?)あって1日2食に落ち着きました。年に数回は2~3日の断食も行っています。いたって健康です。「食事の量を単に減らそう」ということではありません。健康を維持しながら、ご自身にとっての適量を、1日3食という固定観念にとらわれず、考えてみてはいかがでしょうか。

(5)緊急時の「住まい」を確保する

特に、家賃や住宅ローンの返済がある方は、収入が減少したり、途絶えたりした場合に、緊急避難的な「住まい」があるかどうかを、あらためて確認しましょう。頼れる親族などがいるか、自治体にはどのような救済制度があるか。はたまた、いまや空き家はたくさんありますから、場所を柔軟に検討できれば選択肢はグッと広がります。自治体の空き家対策も含めて情報収集し、どういった住まい方が自分に合うのか、「頭の体操」をしておくといいでしょう。

(6)「当座のお金」を確保する

資金の備えです。金融危機に備えるとしたら、当座の資金は現金がいいかもしれません。できれば数か月暮らせるくらいの現金を手元に確保しておくと、より安心かと思います。

(7)自分の「個性」を知る

社会的混乱が起こったとき、おそらく、さまざまな“助け合い”の動きが出てくると思います。その際に、自分の「できること」を他者に提供することで、コミュニティに貢献できます。何が得意か、好きか、経験があるか、褒められたことがあるか等、「個性の棚卸し」をしてみましょう。このことは、翻って「他人の個性を認める」ことにもつながります。他人と違ってあたり前。違うから排除(分断)ではなく、違うからこそ協調できるわけです。

社会的混乱が起こったとき、自分の「できること」を他者に提供することで、コミュニティに貢献することができる。「個性の棚卸し」をしてみよう。

(8)「正しいお金の使い方」を身につける

ここでいう「正しい」とは、「絶対的な正解」を意味するのではなく、一人ひとりにとっての「正しい」です。“正”とは、“一”に“止”と書きます。一線で止まる、度を越えない使い方をしましょう。「一線」はその人の価値観、考え方、好みなどによってそれぞれです。

つまり、自分が本当に欲しいもの、必要なものを購入し、後悔するような使い方を見直していくことです。いわゆる「死に金」を減らし、「生き金」の割合を多くします。あなたの支出は、誰かの収入です。ありがたく使い、お金を循環させていくことを意識して使ってみてください。

(9)「デジタル化」へ対応する

いまや、コミュニケーション手段としてデジタル活用は必須でしょう。ますますその存在価値は高まりそうです。「やらずギライ」を卒業し、できることから徐々にデジタルに慣れていくといいでしょう。

以上です。
いかがでしたでしょうか。
懸念される「家計防衛時代」がやってくることを想定し、今後の暮らし方に少しでもプラスになるようなヒントになれば、うれしく思います。

文/八ツ井慶子(家計コンサルタント)

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八ツ井慶子(家計コンサルタント)

生活マネー相談室代表。家計コンサルタント(FP技能士1級)。宅地建物取引士。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。アロマテラピー検定1級合格者。城西大学経済学部非常勤講師。個人相談を中心に、講演、執筆、取材などの活動を展開。これまで1,000世帯を超える相談実績をもち、「しあわせ家計」づくりのお手伝いをモットーに活動中。

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