北海道の冬に「車中泊」はつらいのです。外気温がマイナス20度なんてこともあるので、本当に命がけになります。これを避けるために、念願の「FFファンヒーター」付きキャンピングカーを購入しました。当然、キャンピングカーも、雪が降る前に「冬タイヤ」に交換しなくてはなりません。しかし、高さが3mを超える我が家のキャンピングカー。どこで、どんなタイヤに変えればいいのか、わからないのです。そこで、ダンロップタイヤ北海道の担当者に、タイヤの基礎から聞いてみました。
執筆者のプロフィール
齋藤千歳(さいとう・ちとせ)
元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラバッグなどのカメラアクセサリー、車中泊グッズなどの記事も執筆中。最近ではとうとう「究極のカメラバッグ」ともいえるキャンピングカーを購入した。作例の撮影という名目で北海道各地を旅行する生活を楽しんでいる。
まず、何をチェックすればいい?
まったく何もわからないのでプロに聞いてしまおう
30代後半まで、免許は持っているが運転はしない、いわゆるペーパードライバーであった筆者。北海道に住むようになり、各地で撮影をするためにクルマで移動、車中泊を繰り返すうちに、年間3万キロ近く運転するようにはなったものの、クルマのことはまったくわかっていません。しかし、マイナス20度を下回ることもある北海道での車中泊は、比喩ではなく「命がけ」なので、とうとう中古のキャンピングカーを購入してしまいました。トヨタ カムロードベースのヨセミテ スポーツです。トラックベースの「キャブコン」と呼ばれる種類になります。
北海道の冬に活躍してもらうため購入したキャンピングカーですが、冬を迎えるためには、いま装着している夏タイヤから冬タイヤに交換しなくてはいけません。いままでどおりの、近所のお店で簡単に変えられるのか? いっしょに付いてきた冬タイヤはまだ使えるのか? わからないことをまとめてプロに聞きたいと思います。
キャンピングカーのタイヤ交換はどこでも気軽にできるのか
齋藤千歳(以下、齋藤):とりあえず、キャンピングカーのタイヤ交換はどこでもできるのですか?
対馬秀明さん・志村博史さん(以下、対馬・志村):…ちょっとまってください。まず、乗っているキャンピングカーの車種やタイヤサイズはわかりますか?
齋藤:タイヤサイズというと…うちのミニバンと同じくらいのサイズだと思います
対馬・志村:まず、車種はトヨタ カムロードですね。ということは、トヨタのライトトラック、トヨエース・ダイナがベースになります。また、タイヤサイズはタイヤのサイドウォール(側面)に書いてある「○○○/○○R ○○ ○○○/○○○L」といった表記をことです(本記事ではISO表示で解説しています)。
対馬・志村:齋藤さんのカムロードであれば「195/70R15 106/104L」のはずです。
最初の「195」は「タイヤの断面幅(mm)」(素人は単純に幅だと理解しておけばよいみたいです)を表しています。次に「70」は「偏平率(%)」(タイヤの断面高さ/タイヤの断面幅×100で求められるが、覚える必要はないようです)です。「R」は「構造記号」で「RADIAL(ラジアル)タイヤの頭文字」で、「BIAS(バイアス)タイヤ」というのもありますが、ほとんど目にすることはないでしょう。「15」は「リム径(インチ)」で「ホイールの直径」です。
サイズが合えば、どのタイヤでもいいのか
齋藤:ということは、「195/70R15」のタイヤなら装着できるのですね。
対馬・志村:残念ですが、そうではないです。
キャンピングカーやライトトラック、ハイエースなどでも重要なのが、その次の「106/104」になります。「LI(ロードインデックス)」といい、規定の条件下において、タイヤ1本が支えることができる最大負荷能力を示す指数です。タイヤのカテゴリーによって、最大負荷能力に対応する空気圧も違うので注意が必要になります。
齋藤さんのキャンピングカーの場合、この「LI」が「106/104」とふたつありますよね。実はこれ、前の「106」が「単輪」の場合、後の「104」が「複輪」の場合の数値です。トラックなどで後輪が4本になっているものをみたことがあるのではないでしょうか。ダブルタイヤなどとも呼ばれますが、あれが「複輪」です。「複輪」の場合のほうが1本当たり「LI」は小さくなります。また、普通車用のタイヤには「LI」がひとつしか記載されていないのが普通です。
対馬・志村:弊社DUNLOPのウェブサイトに、「乗用車用タイヤ検索」があります。この「タイヤサイズから探す」から「195/70R15」のタイヤが検索できますが、「LI」の足りないものなども表示されるので、注意書きにあるように、キャンピングカーやライトトラックのタイヤ検索は行わないでください。
また「195/70R15 106/104L」の最後の「L」は「速度記号」です。規定の条件下で、そのタイヤが走行できる速度(最高速度=能力)を示しています。参考までに「L」は「120km/h」、「J」は「100km/h」、「N」は「140km/h」、「Q」は「160km/h」、「S」は「180km/h」です。
店頭で選んで、その場ですぐに交換できるの?
齋藤:店頭で「195/70R15 106/104L」のタイヤを選べばオッケーですね
対馬・志村:確かに在庫があれば「195/70R15 106/104L」のタイヤを選んでいただき、店頭で交換できれば問題なしなのですが……。
おそらくですが、人気のハイエース用を除くと、一般的な小売店さんで「195/70R15 106/104L」のようなライトトラック用のタイヤを在庫しているところは少数派になります。在庫を確認し予約してから店頭にいっていただくか、店頭で確認してお取り寄せのなることがほとんどだと思います。
さらにですが、お話を伺っている限り、キャンピングカーはかなり車高が高いですよね。3m近くあるのでは?(実際、車検証を確認すると293cmでした)そうなるとタイヤ交換のためのピット(作業場)にキャンピングカーが入らないという店舗もあると思います。ピットに入らなくてもジャッキで対応してくれるということもあると思うので、どちらにしても要確認だと思います。
タイヤの寿命は?
タイヤの寿命は大きく「摩耗」と「時間」のふたつ
齋藤:タイヤって実際のところ、どのくらい持つのですか。
対馬・志村:大前提として聞いていただきたいのですが、タイヤの寿命については、使用される環境や運転の仕方、保管状況といったさまざまな要素で大きく変わるので、一概にはいえません。そのため、不安を感じる要素があれば、タイヤショップやクルマディーラー、カーショップなどのプロに相談してください。
これらを踏まえたうえでの一般論として、タイヤの寿命の関する大きな要素は「摩耗」と「時間」があります。
溝の深さが1.6mm未満のタイヤの使用は法律で禁止
齋藤:「摩耗」というのは、走ってタイヤが減ってしまうことですよね。
対馬・志村:そうですね。クルマが走っているうちに摩耗して、溝が減っていきます。
実はタイヤの溝が1.6mm未満のタイヤは法律で使用してはいけないことになっています。そのため、タイヤのサイドウォール(側面)には「▲」マークが数カ所あり、この延長線上にスリップサインが用意されているのです。タイヤの溝のなかで少し出っ張った部分がスリップサインになります。タイヤが減って、これが溝から露出するとタイヤの溝は1.6mm以下になっているサインです。すぐにタイヤを交換する必要があります。
対馬・志村:タイヤにスリップサインが出て、溝が1.6mm未満の場合はもう法律的に使用できないレベルです。基本的にはこの前の状態、溝の残りが4mmくらいになると制動距離が伸びはじめますので、4mm以下になったら早めに交換することをおすすめします。
冬用のスタッドレスタイヤについては、スリップサインが出る前に冬タイヤとして使うことができなくなるので、スリップサインと同じようなプラットフォームをチェックしてください。タイヤのサイドウォールにある「↑」マークの延長上の溝の中に出っ張った部分があり、このプラットフォームがタイヤの摩耗で露出するとスタッドレスタイヤは冬用としては使うことができません。この点も気を付けてください。
また、諸条件異なるので、ひとつの目安ですが、夏タイヤは約5,000kmで1mm、冬タイヤは約3,000kmで1mm、溝が減るといわれています。タイヤの寿命があとどのくらいかを知るひとつの目安になるかもしれません。
使用開始から5年以上経ったタイヤは販売店で点検を
齋藤:タイヤの溝が残っていれば、何年経っても平気なのですか。
対馬・志村:お出かけのときしかキャンピングカーを使わない方も多いでしょうし、タイヤがさほど摩耗しないという方もいるのではないでしょうか。しかし、タイヤはさまざまな材料からできたゴム製品です。ゴムの特性が経時変化するのに伴い、タイヤの特性も変化します。環境条件や保管条件、加重、速度、空気圧などの使用方法にもよりますが、ご自身による日常点検のほかに、使用開始から5年以上経過したタイヤについては、継続して使用できるかどうかをタイヤ販売店などでチェックすることをおすすめします。
また、製造後10年経過したタイヤは外見上摩耗などがなくても、新しいタイヤにすることがおすすめです。スペアタイヤについても同じになります。
まとめ
命がかかっているのでタイヤには多少神経質なくらいでいい
実は筆者は、クルマで走行中に、目の前でキャンピングカーのタイヤがバーストするのをみたことがあります。いったい何が起きたのかと思った瞬間でした。大きな事故にはならなかったようですが、記憶に強い残る瞬間でした。
キャンピングカーは、泊まりの旅行のときにしか使わないので、走行距離が短く、タイヤの溝が減らないので、何年も使っているタイヤに無頓着な人もいるようです。
また、筆者のキャンピングカーのタイヤは15インチと普通乗用車と変わらないので、どこでも、いつでも手に入るものだと思っていました。しかし、「LI」の高いライトトラック用は取り寄せになることが多いというのは意外でした。しかもキャンピングカーの場合、車高が高いとピットには入らないこともあるのが考慮する必要があるようです。まずは、タイヤの販売店などに相談してみるのが重要でしょう。
あと、普段乗っているクルマでも、月に1度はガソリンスタンドなどでタイヤの空気圧をチェックすることが重要だそうです。特に、キャンピングカーはタイヤの空気圧の高いものも多く、使用頻度が低い方もいるようなので、お出かけの時は出発前にガソリンスタンドに寄って、給油ついでに空気圧をチェックするとよいといいます。この出発前の空気圧チェックは筆者も習慣化したいと思います。まずは、家の近くでキャンピングカーのタイヤ交換に対応してくれて、キャンピングカー用のタイヤを取り寄せてくれる店舗を探そうと思います。