基本無料で、誰でも4K動画の投稿が可能な『YouTube』については、そのクオリティは千差万別。『Panasonic 4K Japan』のような高品質の4K動画もあれば、『これで本当に4Kなの?』と疑いたくなるような映像もある。感覚としては、大手企業がコマーシャル用に『YouTube』にアップロードしている4K動画のクオリティは上々だ。
ネットと4K放送ではなぜ画質に大差がある?
読者からの質問
「YouTube」の4K動画は、本当の4Kでしょうか? 同じテレビで見ても、BS4Kのほうが圧倒的にキレイです。どこで差がつくのでしょうか?(U.Tさん 大阪府 39歳)
編集部:
この質問は、AV評論家の藤原陽祐さんに聞きます。
専門家の回答
専門家:
「ここにきて『YouTube』だけでなく、『Netflix』『Amazonプライム・ビデオ』『Apple TV』と、ネット動画配信サービスの世界も着実に4K対応が進んでいます。
『Netflix』を例に挙げると、チェスの才能を開花させた少女が、依存症に苦しみながら、スターへの道を確かなものにしていく『クイーンズ・ギャンビット』や、最新撮影技術を駆使し、生物たちの夜の世界を浮き彫りにしていくドキュメンタリー『ナイトアース』と、目をみはるばかりのクオリティ感に驚かされる作品が少なくありません。
ただ、基本無料で、誰でも4K動画の投稿が可能な『YouTube』については、ご指摘のとおり、そのクオリティは千差万別です。『Panasonic 4K Japan』のような高品質の4K動画もあれば、『これで本当に4Kなの?』と疑いたくなるような映像も少なくありません。
私の感覚では、総じて、大手企業がコマーシャル用に『YouTube』にアップロードしている4K動画のクオリティは上々で、ドキッとするような緻密な4K画質で楽しませてくれる作品が数多く存在します。
その半面、安価なデジカメで撮ったような4K映像が誰でもアップロードできるため、この種の映像はとても4Kクオリティとはいえないものが大半を占めています。撮影の段階からすでに4K解像度が確保できず、色再現、階調性、S/N感と、総合的な表現力を左右する画質ファクターについても低レベルなので、これを『YouTube』に4K動画としてアップロードしても、高画質になるはずがありませんね」
編集部:
安価なデジカメで撮ったものもあるので、「YouTube」には低画質な4K動画も多いということですね。
専門家:
「BS4K放送についても、95%以上が4K収録となっているNHKについては、本物の4K画質ですが、ほかのチャンネル(特に無料視聴が可能な民放5局)については、ほとんどがHD収録からのアップコンバートのため、通常のBS放送(2K)のほうが高画質に感じることが少なくありません。『YouTube』の4K動画といい勝負、と感じてしまうような番組もあるほどです。
『YouTube』の4K動画では、画質への影響が大きい転送ビットレート(1秒間に送受信できるデータ量)が低いことも挙げられます。BS4K放送が35Mbpsを常時確保しているのに対して、『YouTube』 はその半分以下。ネット環境によっては、さらに制限されるため、条件としてはさらに厳しくなります。
なお、『Netflix』の4K作品の転送ビットレートは15M~18Mbps程度ですが、先ほど紹介した作品などは、NHKのBS4K放送に勝るとも劣らないクオリティを実現しています。こうした状況を考えると、『YouTube』の4K動画作品の画質のバラツキは、やはり、高品質な撮影機材が用意できず、素材としての動画のもともとのクオリティに原因があると考えるのが自然だと思います」
編集部:
撮影機材のことと、転送レートや受信環境もあって、低画質に感じてしまうということですね。了解しました!
◆イラスト/はやし・ひろ