愛知県出身の明治大学理工学部卒、ベンチャー企業経由、起業家26歳。現在地点は、レンタル電動自転車とスマホ一台で月収100万円以上を稼ぐ「出前館」配達員(業務委託パートナー)。2021年2月現在、都内で1000人以上といわれる出前館配達員の中で、彼は十指に入るドライバーだ。持ち前の頭脳を生かし、いかに戦略的に稼ぐかを常に考えているという。脱出世・脱所有「ミレニアル世代」とデジタルネイティブ「Z世代」のはざまに生きる岩澤岳志さん(仮名)に話を聞いた。(聞き手=今村友信・特選街web編集長)
出前館の配達員を始めたきっかけ
出前館の配達拠点にしているという、JR大久保駅(東京都新宿区)近くの喫茶店で待ち合わせると、ドコモ・バイクシェアの赤いレンタル電動自転車でやってきた岩澤さん。どこにでもいる、育ちの良さそうな好青年という印象だ。まずは現況と、出前館の配達員を始めたきっかけについて尋ねた。
――ずいぶん若いんですね。理工系の有名大卒。進路の選択肢はそれなりに多かったと思いますが…。
岩澤 現在26歳です。地方公務員の両親のもと愛知県で育ち、大学入学を機に上京しましたが、卒業後、新卒で入ったベンチャー企業が3ヵ月で倒産。その後、IT系大手企業に転職。そこで、さまざまな事業者や企業経営者とのつながりを得、それらを足がかりに職業紹介の事業を立ち上げようと、一人で起業しました。少資本でも参入できる業界だと思い、一念発起、脱サラしましたが、そう簡単にうまくいくはずはありません。事業を回すためにも、日々の生活をするためにも、とりあえず日銭を稼がなくてはなりません。そこで、事業を継続しつつ、短期・単発・日払いのバイトも同時にするようになったのです。
――本業がなかなかうまく行かず、日銭稼ぎでバイトを。
岩澤 はい。まずは、「時給がいいから」という理由で、大手レストランチェーン店専属の宅配バイトをはじめました。それが、今の仕事につながるデリバリーサービスとの最初の出合いです。バイク免許は持っていたものの、配達経験なし土地勘なしの状態からスタートでした。そんな状態で、レストランチェーン店の仕事を少しずつ覚えていきました。それとは違う単発バイトの一つに「出前館」がありました。試しにちょっとやってみましたが、当時の出前館には、時給アルバイトでの雇用形態しかありませんでした。1日5件配達しようと20件配達しようと同じ報酬であることに嫌気がさし、業務委託契約が結べるUber Eats(ウーバーイーツ)で働き始めます。この頃から「稼ぐ」ということにこだわるようになったと思います。
Uber Eatsをやめて出前館へ
――出前館のアルバイトからUber Eatsへ。
岩澤 しかし、ここで大きな問題が生じます。それは、配達手段が無いことです。今までの単発バイトでは、当たり前のように乗っていた雇用先の配達用バイクがありません。バイクや自転車を自前で買う金もない。そこで、必然的にレンタル自転車(ドコモ・バイクシェア)で配達を行うようになりました。これは今でも変わりません。家賃の安い自宅(川崎市)から職場(新宿区)まで電車で移動してレンタル自転車で稼ぎ、そしてまた電車で自宅へ戻るというスタイルは、とても合理的で自分に合っていると思います。
――Uber Eatsは稼げましたか。
岩澤 Uber Eatsでは、比較的順調に稼げたと思います。休むのがもったいないほどで、毎日9時から23時まで働けば、週に20万円弱の収入になっていました。ただ、Uber Eatsは、お客様から受けた注文が自動的に配達員に振り分けられるため、「もっと稼ぎたい」という自分にはやや不満でした。その後、さまざまなデリバリーサービスが参入してくる中、出前館も(アルバイトだけでなく)業務委託パートナーの募集を開始したと知り、ある程度稼げていたUber Eatsを完全に辞め、出前館の配達員一本で勝負しようと思いました。それが2020年9月ごろ、25歳のことです。
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出前館の配達員が稼げる理由
――ある程度稼げていたUber Eatsから、出前館の業務委託パートナーへ。出前館の配達員一本で勝負しようと思ったのは、なぜですか。
岩澤 出前館の配達員一本にしたのは、Uber Eatsやmenu(メニュー)など他のデリバリーサービスにはない「メリット」があるからです。それは「より多く稼げる」ということです。なぜ多く稼げるのか。それは、出前館の受注システムに特徴があるからです。受注システムの大きな特徴は、大きく分けて二つあります。一つは、受注の可否は「早押しで決まる」ということ。そしてもう一つは、お客様からの注文時に「届け先(お客様)の住所が表示される」ということです。特に後者は、配達員から見れば最大のメリットといえます。
――注文時に客側の住所がわかるのは、なぜメリットなのですか。というか、Uber Eatsは、最初の受注時点では「どこの店舗か」までは分かるけど、「どこに届けるか」までは配達員はわからないのですね。
岩澤 そうなんです。出前館の場合、お客様から注文が入ると、配達員のスマホ画面には「注文内容」が表示されます。配達員は、それを受けるか受けないか、一瞬の判断で決定しなければいけません。(スマホ画面を見せながら)ほら、いま音が鳴ってお客様から注文が来ています。画面はこんな感じです。この画面に「受け取り店舗」と同時に、「○○区○○町○丁目」という「届け先のだいたいの住所」まで表示されているでしょう。この小さな違いが、圧倒的な収入の差を生むんです。この情報が、効率よく配達するのにとても重要なのです。
――届け先のだいたいの住所が出ることが、それほど大きいのですね。
岩澤 これがあるのとないのとでは大違いです。お客様から注文が入った瞬間に、自分(配達員)の位置と店舗までの距離、店舗からお客様の距離がだいたいどの程度離れているか、信号が少ないルートで行けるか、頭の中でパッと組み立てることができます。ある程度慣れてくると、これを利用して、移動中に複数の注文を受け、「ダブル」(一回の配達で2件の注文を処理すること)や「トリプル」、そして「4件持ち」などを達成することができます。ちなみに4件持ちは、配達員仲間の間では非常に羨ましがられます(笑)。適当に注文を取っていただけでは、1時間で1件、もしくは2件がいいところ。ここが腕の見せどころ。いかに効率の良い注文を取り、最適なルートを組むかということに腐心しています。
出前館の報酬について
――なんだか、話を聞いているとマグロ漁船に乗り込んで一攫千金を狙うような感じでワクワクしますね。現在の実績と報酬を教えてください。どのくらいの単価なんですか。
岩澤 現在の配達実績は、月平均で1200件程度。自己ベストは、11~21時で57件(2020年12月期)。出前館一本で、コンスタントに月収100万円以上を稼いでいます。配達1件あたりの報酬は言えませんが、件数と月収でだいたいの目安がわかると思います。ちなみに平日の報酬は、2021年2月現在、基準単価より1.2倍、土日祝日は1.4倍というブースト(引き上げ)価格になっていて、1件あたりの配達報酬が1000円を超えることもあります。現在、都内で1000人以上いる出前館配達員の中には、バイク部門で私よりも稼いでいる「超人」がまだ数人いるようですが、自転車部門ではおそらくトップクラスではないかと…。
――月1200件というと、1日平均40件! 10時間の稼働として1時間に4件配達。しかも休みなし…。それ以上の猛者もいるとか。スゴすぎる…。
岩澤 あとは、「拠点」と「エリア」を選ぶことです。私は、新宿拠点の中でも新宿・大久保エリアを主戦場にしていますが、そのエリアは、都内で注文件数ベスト4に入る激戦区です。店舗が、ある程度同一地区に集中していること。人が多くて道が狭いこと。一方通行が多く、車やバイクが入りづらいこと。自転車配達員は、そんなエリアを選びます。そのような立地のほうが、自転車の良さが生きるからです。逆に、新宿拠点の中でも、高田馬場エリアは店が点在していて道路は直線が多いので、バイクの配達員が非常に多いです。だから、自分の配達スタイルに応じて「拠点」と「エリア」を選ぶことが大切です。
出前館の客層について
――出前館とUber Eatsの両方を経験している岩澤さんですが、客側の特徴ってそれぞれ違うんですか。
岩澤 出前館のお客様の特徴を挙げるとすれば、常連さんが多いことですね。Uber Eatsと比べてそう思います。私は、自分の配達するエリアをあえて絞っているため、同じお客様に1日2回以上とか、5日連続とか配達させていただくことも珍しくありません。なので、お客様とのコミュニケーションも多くなります。余談ですが、注文のたびにマスクを複数枚いただける常連さんがいて、私はもう、半年ほどマスク買ったことありません(笑)。あと、これは私の拠点の特徴だと思いますが、外国人のお客様も多いです。中国系、韓国系、あとはどこの国かわからない超富裕層の外国人(笑)。お釣りをチップ代わりにいただくこともあります。
――新宿は、高所得者向けの超高層マンションも多いですが、そんな客層も出前館を利用するんですね。
岩澤 出前館は、クーポンの発行や送料無料キャンペーンなど、さまざまな販売促進を行っています。面白いのが、超高層マンションの上層階に住んでいるような、いかにも「高所得者です」みたいなお客様のほうが、クーポンやキャンペーンを積極的に利用しつつ、さらにキャッシュレスでポイントをためて…みたいに「お得」で「賢い」利用の仕方を実践しているように感じます。やっぱり、ある程度お金を持っている人は、そのへんがシビアだから成功できるのかな、と思います。
出前館のデメリット
――反対に、出前館の短所ってあるんですか。
岩澤 あくまでも、出前館の配達員側から見たデメリットですが、「配達時間が指定されていること」が挙げられます。他社、たとえばUber Eatsやmenuなどは、配達しなければならない時刻を、配達員は知らずにお客様へ届けます。だから、商品を受け取ってから、焦ることなくお客様のもとへ届けることができます。しかし出前館は、基本的に注文を受けてから「30分」でお客様の元へ届けなければなりません。1件を30分かけて運ぶのであれば簡単ですが、「できるだけ稼ごう」と思っている、私のような野心的な(笑)配達員には、それが少し足かせになります。最初の注文から、5分ずらして2件目、更に5分ずらして3件目と受注し、配達ルートを組んでいくと、「ピック」(=店舗で受け取り)から「ドロップ」(=お客様へ届ける)まで、残り10分無い…なんてこともしばしば。精神的に焦ります。
――いわゆる「ダブル」「トリプル」は時給換算ではメリットになるけれど、精神的なデメリットになるということですね。
岩澤 そうです。あともう一つデメリットを挙げるとすれば、スマホの誤タップによる「意図しない受注」があります。これは「早押し」の弊害でもあります。自分が受注したかった案件でなく、違う案件を間違って受注してしまった時は、凹みます(笑)。そういった場合はたいてい、現在地から店舗へも、店舗からお客様までも距離があることがほとんどです。それ以降の自分の配達プランが狂ってしまいます。この点に関しては、出前館の受注システムが、メリットでもある「早押し」である以上、しかたのないことなのですが…。
出前館の配達員の日課
――ここで、岩澤さんの配達員としての日常が、どんなスケジュールで動いているのか、教えてください。
岩澤 スケジュールといっても、あるのはこの日課だけです。これが365日続く感じです(笑)。出前館の配達員として、「できるだけ稼ぐこと」を目的とした日課です。副業として、ちょっとお小遣いを稼ぎたいという人には参考にならないかもしれません。私の場合、雨の日も、台風が来ても稼働します。むしろ、悪天候のほうがライバル(ほかの配達員)がいないからチャンスです。
・9時半…起床
・10時…自宅(川崎)から電車で職場(新宿)へ
・11時…レンタル自転車で業務開始。昼ピーク
・15~17時…休憩(しない時もあり)
・17時…夜ピークに備え
・22時…業務終了。現金を扱うので、事務所(拠点)へ精算へ向かう
・23時…自転車を返却。終電で自宅へ
――夏と冬では、どちらがつらいですか。
岩澤 どちらもつらいですが(笑)、夏のほうがつらいかもしれません。出前館は、お届け時の「キャップ着用」というルールはありますが、ユニホームや指定バッグの着用義務はありません。しかし、半ズボン禁止(長ズボン着用)なので、夏はかなり暑いです。でも、冬は冬で、指先のしもやけがつらいです。
――この配達員の生活を、一日の休みなく「週7」で毎日行っているんですね。2020年4月と2021年1月に、緊急事態宣言が計2回出ました。緊急事態宣言が出た後と、解除された後では、何か変化があるものなんですか。
岩澤 意外に思うかもしれませんが、緊急事態宣言の前後で、注文が急激に増えたり、減ったり、というようなことはありませんでした。印象としては、ずっと右肩上がりで全体の注文件数が増えている感じです。きっと、この便利なデリバリーサービスは、コロナをきっかけに需要が増えはしましたが、コロナ後も、おそらく続くでしょう。それほどお客様の満足度は高く、新しい生活様式として定着したと思います。
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出前館の配達員で稼ぐコツ
――岩澤さんの口からは、「稼ぐ」という言葉が何度も出てきますが、これから出前館の配達員になる人に向けて、まず何をアドバイスしますか。
岩澤 出前館で稼ぐためのコツとして、配達スキル以前に、「誰でもすぐに出来ること」があります。それは、「現金を取り扱うようにすること」です。というのも、出前館の配達員(業務委託パートナー)は、業務委託の契約時に、初期設定として「現金の取り扱いなし」のアカウントが発行されます。
――なるほど。カードや電子マネー利用のお客様に絞ることで、お釣りのやり取りが発生する現金の取り扱いをしないほうが初心者の配達員には負担が少ないだろう、という出前館の親心なんですね。
岩澤 そうだと思います。しかし出前館は、お客様の現金支払いの比率が意外と多いのです。ざっと、注文の半分くらいが1000~2000円の現金支払いです。なので、現金の取り扱いなしのアカウントでは、最初の段階で、実際の注文の半分くらいしか参戦できないことになります。さらに、前述のとおり受注は「早押し」です。だから、初心者の配達員は「一日やっても注文が全然取れない…」なんてことになってしまうのです。こうならないために、早い段階で「現金取り扱いあり」にするよう、後輩には指導しています。もちろん、業務終了後に事務所(拠点)へ精算に行かなければならず、それなりに手間はかかります。しかし、これをするだけで、誰でもすぐに1日の件数を伸ばせると思います。
――実践面では、稼ぐコツはありますか。
岩澤 とにかく地図を覚えること。これに尽きます。「配達経験まったくなし」という、完全な初心者の場合、1日10件くらい(実働9時間くらい)が平均的な数字です。1ヶ月くらいでちょっと慣れてくると、スマホの地図アプリ(Googleマップ等)を見ながらであれば、1日20件くらいは普通にいくようになります。しかし、1日30件以上稼ごうとすると、地図を「覚えること」が必須になります。まずは、現在地から店舗へは、地図を見ずに行けるようになること。そして受注時に、スマホ画面に表示された店舗名を見たら、現在地から店舗までのルートを一瞬のうちに思う浮かべ、自分の理想ルートで行けるようにします。受注から、ピック&ドロップ(受け渡し)まで、どのくらい時間がかかるのか把握する力が要求されます。1日40件以上となると、お客様の家(マンション等の建物)も地図無しで行けるようになる必要があります。配達と配達の間でも注文を取れるよう、常に気を張っておく必要があります。端的に述べましたが、件数ごとの必要能力は、おおよそこんな感じです。
いい店舗、困る店舗
――毎日たくさんの注文を受けていると思いますが、配達員から見て、積極的に配達したい店舗、できれば敬遠したい店舗ってあるんですか。
岩澤 「稼ぐこと」を目的とした配達の場合、優先的に受注したい注文は、いわゆるファストフード店です。マクドナルドやロッテリア、バーガーキングやケンタッキーフライドチキンなどです。その理由としては、商品提供までの時間が短く、配車に融通が効かせやすいからです。特にケンタッキーは、ドリンクの扱いがないので(2021年2月現在)、「こぼし」を嫌う配達員としては積極的に受注したい店舗といえます。これらのファストフード店は、店舗側がデリバリーサービスに慣れている、という強みもあります。ドリンクなどは足場(飲料の転倒を防ぎ固定する紙製ホルダー)を用意してくれたり、時間的なロスがなかったりと、受け渡しがスムーズです。一方、やや困るのは、コロナ禍をきっかけに新規参入した店舗でしょうか。これはある意味しかたありませんが、事業者として、デリバリーサービスの経験が乏しく、そのノウハウが従業員に共有されていないことがあります。その他、パッキングが甘かったり、崩れやすかったりするものを扱う飲食店、あと調理時間が長い料理(揚げ物など)、大型の商品(ピザなど)、大量注文が比較的多いメニュー(寿司など)は、配達員側としては、どうしても構えてしまいます。配達員の報酬はあくまでも「1回配達で○○円」なので、商品が大きかったり量が多かったりしても、報酬は同じだからです。また、店舗によっては、1円単位のお釣りが出るお店があります。計算が面倒なので、1円単位のお釣りが出る飲食店の注文も、ちょっと受注ボタンをタップするのをためらいます(笑)。
困るお客さん
――では今度は、配達員から見て、困るお客さんっていますか。
岩澤 一番困るのは、お客様が自分で入力した住所が「違う」というパターン。例えば、「1丁目2-3」にお住まいのお客様がいたとして、その住所を「1丁目1-2-3」と入力してしまうかたが意外と多いのです。その場合、アプリ上での配達先は「1丁目1」を指してしまいます。物件名でお客様の入力ミスに気付けることも多いですが、気付かずに配達先へ向かうと、当然その家が見当たらない。そうなると、大きな時間ロスになり、頭の中で組み立てた配達ルートが崩れてしまいます。あと、新宿拠点で歌舞伎町への配達が多い「あるある」なのですが、ホテルへの配達が多いです。それはそれで問題ないのですが、直接部屋(○号室)まで届けることができないホテルがあります。その場合は、目的地(ホテル)まで到着した段階でお客様に電話をし、入り口まで取りに来てもらうというのが通例です。しかし配達先が、ホテルはホテルでも「ラブホテル」だった場合、お届け予定時刻に到着してお客様に電話をしても「お取り込み中」で電話に出てくれないことも多々あります(笑)。
クレームについて
――出前館に限らず、最近のデリバリーサービスの「配達マナーの悪さ」がSNSなどで話題になることが多いですが、実際にクレームってあるんですか。
岩澤 クレームはあります。でも、配達員へのクレームというより、「注文間違い」が圧倒的に多いです。お客様側の注文ミスのパターンもありますし、店舗側の受注ミスの場合もあります。配達員側へのクレームは「こぼす」が比較的多いですね。なので、ドリンクや汁物はとても気を遣います。店舗によっては、上蓋を二重にしたり、容れ物と上蓋の間にラップを挟んでくれたりと工夫をしてくれますが、どんなに気をつけても「こぼし」は一定程度出てしまいます。特に、温かい汁物(豚汁など)は、水蒸気が発生してパックが甘くなり、どうしてもこぼしがちに。一方で、意外と「配達が遅い」というクレームはほとんどありません。
配達員あるある
――出前館やUber Eatsなど、配達員としてのキャリアが豊富な岩澤さんですが、いわゆる「配達員あるある」ってありますか。
岩澤 やはり「転倒事故」でしょうかね。出前館やUber Eatsをはじめ、配達員の悪い運転マナーが話題にのぼることがあります。なので、私自身は自転車の運転マナーにはかなり気を遣っています。しかし、どれだけ気を遣っていても、避けられないのが事故です。昨年春、実は私も転倒事故を起こしました。鎖骨の骨折でした。聞くところによると、骨折箇所の「鎖骨骨折」もあるあるなのだそう。ほかの「あるある」といえば、「トイレ我慢しがち」です。少しでも稼ごうとすると、どうしても注文優先になってしまい、トイレに行く暇がありません。配達員が男性8割以上で女性が少ないのは、そんなところも原因なのかもしれません。あと、なぜかはわかりませんが、配達員は「喫煙者」が多いように思います。飲食物を扱うのでタバコのニオイには気を遣いますが、路上の喫煙所には配達員ばかり、みたいな光景をよく見ますね。
今後について
――1年後、2年後。短期的な目標や夢はありますか。
岩澤 夢は、やはり本業(起業)のビジネスを軌道に乗せたいですね。端的にいうと、お金持ちになりたいです(笑)。そのために、とりあえず出前館で今以上にお金を稼ぎます。あと、今は「ゴーストレストラン」にも注目しています。ゴーストレストランは、リアル店舗を持たず、デリバリーやテイクアウトに特化した飲食店のことですが、この1年でかなり増えてきている印象です。新しいビジネスモデルとして、とても参考になります。
◆話を聞いた人=岩澤岳志(仮名)=ぴざ@出前館配達員(@Moobereats)として、Twitterで配達員のリアルを発信中。