暑くなってくると恋しくなる、冷たくてぷるんと喉ごしが良いゼリー。今回、ゼリー作りに欠かせない「ゼラチン」「寒天」「アガー」「ペクチン」について、“比べたがる栄養士”の私・野村ゆきが徹底的に違いを調べてみました。これからの季節にぴったりの「夏野菜のコンソメゼリー」と「フルーツ入り牛乳ゼリー」を実際に作って食べ比べ、固まり方や食感の違い、使い方の注意点などをレポート。それぞれの個性を知って使い分け、ひんやりゼリーをより美味しくいただきましょう!
「ゼラチン」「寒天」「アガー」「ペクチン」の基礎知識
今回、違いを調べたのは「ゼラチン」「寒天」「アガー」「ペクチン」の4種類。総称して「凝固剤」「ゲル化剤」と呼ばれています。それぞれの特徴や基本的な使い方の違いは次の通り。
ゼラチンとは
寒天とは
アガーとは
ペクチンとは
大きな違いは「ゼラチン」が動物由来のタンパク質であるのに対し、「寒天」「アガー」「ペクチン」は海藻や果物などからできている植物由来であるということ。動物由来の「ゼラチン」は体温で溶け、口あたりがなめらかで、高齢者や子どもにも食べやすい点も特徴です(食物アレルギーの心配がある場合は注意してください)。一方、「寒天」「アガー」「ペクチン」はいずれもノーカロリー(寒天)または低カロリー(アガー、ペクチン)で食物繊維が豊富。便秘気味の人やダイエット中の人にもおすすめです。
「ゼラチン」「寒天」「アガー」「ペクチン」で見た目はどう違う?
違いを公平に判定するため、4種類とも粉タイプに揃えて、「粉ゼラチン」「粉寒天」「アガー」「ペクチン(LMタイプ)」で検証スタート。まずは見た目の違いをチェックしてみましょう。
粒子の細かさ・色・匂い・味を比較してみた
粉タイプの場合、アガーが最も粒子が細かく→ペクチン→寒天→ゼラチンの順に粗くなります。色はアガーが最も白く→ペクチン→寒天→ゼラチンの順に黄色っぽい。匂いはいずれも無臭に感じました(匂いに敏感な方は違いが分かるのかもしれませんが)。粉を舐めてみると、ゼラチンと寒天は味がしませんが、アガーとペクチンは粉そのものが甘いです(アガーは原材料にブドウ糖、ペクチンにはグラニュー糖が添加されています)。
それでは、実際にゼリーを作って食べ比べてみましょう。検証したのは、(1)透明な砂糖水ゼリー(2)夏野菜のコンソメゼリー(3)フルーツ入り牛乳ゼリーの3種類です。
レシピで検証(1)透明な砂糖水ゼリーで比較
ゼリーの魅力は、なんといってもぷるんとした涼しげな透明感です。見た目と食感の違いをシンプルに比べるため、同じ濃度(2%)の砂糖水で透明なゼリーを作って検証しました。
砂糖水ゼリーの材料(1人分)
・水:50ml
・砂糖:大さじ1
・「ゼラチン」「寒天」「アガー」「ペクチン(LMタイプ)」:各1g
どの粉も砂糖水に溶かし、温めて型に流し込む基本的な作り方は同じですが、液体に砂糖と粉を加えるタイミングや、熱する温度、ゼリー液が固まり始める温度が微妙に異なります。砂糖を使ったゼリー液の作り方の基本として、下記を参考にしてください。
基本的なゼリー液の作り方
▼ゼラチン:沸騰させない&冷蔵庫で冷やし固める
材料の水50mlから、ゼラチンの5倍量の水(5ml)を取り、ゼラチンをふやかしておく。鍋に残りの水、砂糖を加えて中火で温めながら溶かし、鍋肌がフツフツとしたら火を止め(40〜50℃が目安、湯煎で溶かす方法もあり)、ふやかしたゼラチンを加えてよく溶かす。容器に入れ、粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やし固める(固まるまで冷蔵庫で数時間かかります)。
▼粉寒天:よく沸騰させる&室温で固める
鍋に水と粉寒天を入れてよく混ぜてから中火にかけて、かき混ぜながら溶かす。沸騰したら弱火で30秒〜1分程度煮立たせ(90〜100℃が目安)、一度火を止めて砂糖を加えて溶かし、容器に入れて固める(室温で一番早く固まり始めます)。
▼アガー:ダマになりやすいため、最初に砂糖とよく混ぜる&室温で固める
鍋に砂糖とアガーを入れてよく混ぜてから水を加え、中火にかけて、かき混ぜながら溶かす。沸騰手前(70〜80℃が目安)で火からおろし、容器に入れて固める(室温で寒天の次に早く固まり始めます)。
▼ペクチン:ダマになりやすいため、最初に砂糖とよく混ぜる&室温または冷蔵庫で固める
鍋に砂糖とペクチンを入れてよく混ぜてから水を加え、弱火にかけて、かき混ぜながら溶かす。沸騰したら火からおろし、容器に入れて固める(室温で固まりますが時間がかかるので冷蔵庫が確実です)。
以上が基本的なゼリー液の作り方ですが、商品によって、事前のふやかしが不要のゼラチンや、熱湯で煮たたせなくてもOKの寒天もあるので、購入商品のパッケージに書かれている作り方を参考にしてくださいね。
寒天とアガーは、型に流し込んだ15分後には室温で固まり始めましたが、ゼラチンは室温では固まりません。また、ペクチンも室温での固まり方が遅いため、4種類とも粗熱が取れてから冷蔵庫でひと晩かけて冷やし固めました。
砂糖水ゼリーの完成です。「ゼラチン」「寒天」「アガー」はいい感じに固まっていますが、「ペクチン」はドロッとしたアメーバー状態。ペクチンは、砂糖水だけではゼリーになりませんでした。
実のところペクチンは、ゼリーを作るにはコツが必要な凝固剤です。前項で紹介したように、強めの酸と大量の糖、またはカルシウムやマグネシウムを含む液体でないと固まりにくい性質があるのです。
透明なゼリーを作りたい時は「ゼラチン」か「アガー」がおすすめ
透明感を比較してみます(ゼリーにならなかったペクチンは除外)。「ゼラチン」と「アガー」の透明感が際立っています。写真では全体の透明感はゼラチンの方がクリアに感じますが、スプーンなどでゼリーを砕くとアガーはガラスのようにキラキラ輝き、キレイです。「寒天」は白濁し、かろうじて「特選街」の文字が見える程度。透明感のあるゼリーを作りたい場合は、ゼラチンかアガーが適していることが分かりました。
切れの良さは「寒天」、ぷるるん感・口どけ感は「ゼラチン」と「アガー」に軍配!
次に、切れの良さ、ぷるるん感(弾力)、口どけ感を比べてみましょう。
【切れの良さ】寒天>ゼラチン>アガー>ペクチン
寒天の切れ味が特徴的。表面が固めで弾力に欠ける分、スプーンだけでスパッと切れます。ゼラチンは表面が柔らかくスプーンが抱き込まれるように入り、すくいやすい。アガーは表面の柔らかさはゼラチンに近いのですが、粘りがあり、ゼラチンと比べるとスプーンですくいにくく感じました。ペクチンは判定できませんでした。
【ぷるるん感(弾力)】ゼラチン&アガー>ペクチン>寒天
ゼラチンとアガーは、適度な弾力とふるふる感のバランスが秀逸。ペクチンと寒天はぷるるん感には乏しく、ペクチンはトロッとした粘りが口の中に残り、寒天はホロッと歯切れが良い口当たりです。
【口どけの良さ】ゼラチン>アガー>ペクチン>寒天
ゼラチンの口どけの良さが群を抜いています。口の中で優しく溶けてゆく印象。アガーも、わらび餅のような喉ごしの良さがあります。ペクチンは、やや口の中で貼りつく感覚がありました。寒天は口の中で容易に噛み砕けてチュルッと飲み込めるものの、口どけ感はなく、喉ごしの良さを楽しむものだと実感しました。
というわけで、透明感・ぷるるん感・口どけ感の良いゼリーを作りたい場合は、ゼラチンとアガーがおすすめ。歯切れと喉ごしの良いゼリーなら、寒天をおすすめします。
「寒天」の適量は0.8%濃度でコスパ良し
なお、寒天は2%濃度ではゼリーとして食べるには固すぎるようです。濃度を変えて作ってみたところ、0.8%程度の濃度が理想的だと分かりました(*4)。少量で液体を固められる寒天は、4種類の中で最もコスパが良いといえそうです。
(*4)作りたい液体量×0.8÷100が粉寒天の使用量の目安です。300mlのジュースを使ってゼリーを作る場合、300×0.8÷100=2.4gが粉寒天の使用量となります。
「ゼラチン」は夏の暑さが弱点
ゼラチンで作ったゼリーは暑さに弱く、室温20℃以上で溶け始めます。試しに夏の気温と湿度に近い35℃の環境(オーブンの発酵機能を活用)に10分放置したら、ご覧の通り。
ゼラチンは見事に溶け崩れたのに対し、寒天とアガーはゼリーの状態を維持し続けました(ペクチンは論外)。つまり、ゼラチンゼリーは家で作って食べるなら問題ありませんが、真夏に屋外で持ち歩くと溶けてしまう可能性が大です。気をつけましょう。
レシピで検証(2)夏野菜のコンソメゼリーで比較
次に、おかずとして楽しめるオードブルゼリーを作って比較しましょう。これからの季節におすすめしたい、夏野菜入りのコンソメゼリーです。赤パプリカ、オクラ、ミニトマトは夏が旬の緑黄色野菜で、ビタミンAが豊富に含まれています。
夏野菜のコンソメゼリーの材料(1人分)
・水:50ml
・顆粒コンソメ:小さじ1/2
・パプリカ(赤・黄):各1/8個
・オクラ:1本
・ミニトマト:1個
・「ゼラチン」「アガー」:各1g(濃度2%)
・「寒天」:0.4g(濃度0.8%)
・「ペクチン(LMタイプ)」:5g(濃度10%)
※前項の砂糖水ゼリーの検証結果から、寒天の濃度は2%→0.8%濃度に変更、ペクチンもゼリー化させるために濃度を2%→10%に変更
夏野菜のコンソメゼリーの作り方
(1)鍋にお湯を沸騰させ、顆粒コンソメを溶かす。
(2)パプリカはタネと芯を取り除き、オクラは少量の塩で板ずりして産毛を取り除く。ミニトマトはヘタを取る。
(3)パプリカとオクラを、沸騰したお湯で1分程度ゆでる。
(4)オクラは輪切り、パプリカは食べやすい大きさに切る。型抜きなどで星型にすると華やか。ミニトマトは縦半分に切る。切った野菜をシリコンカップなどの型に入れておく。
(5)(1)のコンソメ液に、「ゼラチン」「寒天」「アガー」「ペクチン」をぞれぞれ溶かし、型に流し込んで冷やし固めます。
【ゼラチン】最初に材料の水50mlから水5mlを取り、ゼラチンをふやかしておく。コンソメ液に入れたら沸騰させず、鍋肌が鍋肌がフツフツとしたら火を止めてよく溶かす(40〜50℃が目安、沸騰させない)。
【寒天】コンソメ液に入れたら温めながらよく溶かし、沸騰したら弱火で30秒〜1分程度煮立たせる(90℃以上が目安、沸騰させる)。
【アガー】コンソメ液に入れたらダマにならないよう温めながらよく溶かし、沸騰直前で火を止める(70℃以上が目安、沸騰直前でOK)。
【ペクチン】コンソメ液に入れたらダマにならないよう温めながらよく溶かし、沸騰したら火を止める(90℃以上が目安、沸騰させる)。
粗熱を取ってから、ひと晩、冷蔵庫で冷やし固めて完成しました。彩りの良い夏野菜が透けて、どれも美味しそうです!ペクチンも、使う量を増やして濃度を上げたことと、野菜に含まれる微量のカルシウムやマグネシウムと結びついて、ちゃんとゼリーになりました。
型から外し、ナイフで切り分けてみます。寒天が一番切りやすく、断面も美しいです。ゼリーの透明感は、前項の砂糖水ゼリーと同様に、ゼラチンとアガーがキラキラしています。なお、ゼラチンは切った後もゼリーと具のまとまり感があり、アガーは切ると具がバラけやすくなります。
夏野菜のコンソメゼリーを作るなら、「ゼラチン」と「アガー」がおすすめ
では、食感や味の違いはどうでしょう。4種類を食べ比べた結果を下記にまとめました。
【ゼラチン】フルフルした食感、口の中でゼリーが溶けてゆくのが心地よい。野菜とコンソメゼリーの一体感があり、家族にも「4種類の中で一番おいしい!」と好評でした。
【寒天】舌でゼリーを押しつぶして細かくして飲み込む感覚。口の中で夏野菜がゼリーからホロホロと離れ、ゼリーと具材がバラバラな印象。家族の評判もイマイチでした。見た目が美しかったので、もっとおいしいと思っていたのに……と少し期待を裏切られた感じです。
【アガー】ゼラチンと寒天の中間のような食感で、どちらといえばゼラチンに近い。寒天よりもゼリーがチュルチュルと柔らかく、家族にも「これもアリ!」と高評価でした。
【ペクチン】口の中でゼリーが貼りつくような、もったりとした粘りがあり、葛のような粉臭さが残ります。正直、おいしいとは言えません。
以上の結果から、夏野菜のコンソメゼリーに適しているのは、ゼラチンとアガーだと私は感じました。ゼラチンはゼリーと具のまとまりがあるので、パウンドケーキ型や牛乳パックを活用した細長いコンソメゼリーを作って切り分けたい場合も適しています。アガーは切り分けるよりも、ガラスコップやカップなどに作り、切り分けずにスプーンですくって食べるのがおすすめです。
レシピで検証(3)フルーツ入り牛乳ゼリーで比較
最後に、デザートゼリーで比較検証します。栄養士の私は、手軽にカルシウムが摂れる牛乳ゼリーを選びました。さらにビタミン補給も兼ね、生のフルーツを加えたいと思います。選んだフルーツは「キウイフルーツ」です。特に、ゴールドキウイには1個(約80g)あたりビタミンCが112mg含まれ、成人の必要量を1個でクリアできる優秀な食材です。(*5)
(*5)日本人の食事摂取基準(2020年版)、日本食品標準成分表2020年版(八訂)をもとに計算した推定値
フルーツ入り牛乳ゼリーの材料(1人分)
・牛乳:50ml
・砂糖:小さじ2
・キウイフルーツ(ゴールドキウイ): 1/4個
・「ゼラチン」「アガー」「ペクチン(LMタイプ)」:各1g(濃度2%)
・「寒天」:0.4g(濃度0.8%)
・水:5ml(ゼラチンのみ必要)
※前項の砂糖水ゼリーの検証結果から、寒天の濃度のみ2%→0.8%濃度に変更、ペクチンはカルシウムを含む牛乳を使うともゼリー化しやすいためゼラチン・アガーと同じ濃度にしました
フルーツ入り牛乳ゼリーの作り方
(1)キウイは皮をむいて好みの大きさに切り、あらかじめシリコンカップなどの型に並べておく。
(2)下記を参考に牛乳ゼリー液を作り、型に流し込む。牛乳は煮立たせすぎると泡立ったり膜ができたりするので注意しながら温める。
【ゼラチン】あらかじめ水5mlでふやかしておく。牛乳に砂糖を加えて弱火にかけ、沸騰させず鍋肌がフツフツとしたら火を止め、ふやかしたゼラチンを加えてよく溶かし、型に流し入れる。
【寒天】鍋に寒天と牛乳を入れてよくかき混ぜて溶かし、弱火にかけて沸騰状態30秒程度(強すぎないフツフツ状態で煮立たせる)で火を止め、砂糖を加えてよくかき混ぜ、すぐに型に流し入れる。
※一般的には、水と粉寒天を煮溶かした寒天液に人肌に温めた牛乳と砂糖を合わせる方法が失敗が少ないとされています。今回、濃厚な牛乳寒天ゼリーを作りたかったので上記の方法でやってみました。
【アガー】鍋の中で最初にアガーと砂糖とよく混ぜてから牛乳を加え、弱火で温めながらよく溶かし、沸騰直前で火を止め、型に流し入れる。
【ペクチン】鍋の中で最初にペクチンと砂糖をよく混ぜてから牛乳を加え、温めながらよく溶かし、沸騰したら火を止め、型に流し入れる。
キウイ入り牛乳ゼリーの完成です。ここまで「いいとこナシ」だったペクチンも、ゼリーになっています!
「ゼラチン」が固まらない…原因はフルーツ
完成したキウイフルーツ入り牛乳ゼリーで注目してほしいのは、ゼラチンです。ゼラチンは一部が崩れています。これは、キウイフルーツにタンパク質分解酵素(アクチニジン)が含まれているためです。ゼラチンは、動物性タンパク質が原料なので酵素の働きで固まりにくくなってしまうのです。キウイフルーツ以外にも、パイナップル、マンゴー、イチジク、メロンにも、タンパク質分解酵素が含まれ、同じ現象が起こります。また、柑橘類など酸が強いフルーツは、ゼラチンだけでなく、寒天も固まりにくくなることがあります。なお、缶詰のフルーツは加熱済みなので、問題なく使えます。
また、タンパク質分解酵素はゼリーを固まりにくくするだけでなく、苦味のもとになります。キウイフルーツと乳製品(牛乳やヨーグルト)を混ぜて長時間放置すると、牛乳の乳タンパク質(カゼイン)をキウイフルーツのタンパク質分解酵素が分解し、苦味が生まれると考えられています。その苦さは、「なにこれ?苦っ!」と思わず声が出るほど。私も今回、実際に作って食べてみて、想像以上の苦味のパンチ力に仰天しました。
参考までに、生のイチゴ入りの牛乳ゼリーも作ったところ、4種類とも美しく仕上がりました。
萌え断は「寒天」、ぷるぷる感は「アガー」がピカイチ
フルーツ入りゼリーを切った時の断面の美しさ、いわゆる「萌え断」も検証してみましょう。寒天とアガーの断面の美しさが際立ち、ペクチンも健闘しています。ゼラチンはキウイフルーツの酵素が原因で、型崩れを起こしています。
この「萌え断」検証をイチゴ入り牛乳ゼリーでも試したところ、寒天はフルーツの大小に関係なく美しい「萌え断」が成立します。アガーは、小さなフルーツだとやや離水して型崩れしやすい印象。ゼラチンも、イチゴの場合は型崩れを起こさないので、断面もそれなりに美しく切れました。とはいえ、寒天ほどスパッと切れません。アガーに近い感じです。
では実食です。食感や味の違いを比べてみましょう。
【ゼラチン】既に触れましたが、キウイ入り牛乳ゼリーは苦くて食べられません。イチゴ入り牛乳ゼリーはとても美味しかったです。ぷるるん感、口どけ感も◎。ただ、他の「寒天」「アガー」「ペクチン」と比べると、砂糖の量は同じなのに、甘みが淡白に感じられました。
【寒天】弾力はありませんが、歯切れの良さがとても美味しく感じました。また、4種類の中で甘みを最も強く感じました。これは食べ比べてみないと気づけなかった発見!
【アガー】寒天に近い喉ごしの良さと、ほどよい弾力があり、美味しいです。牛乳のミルキーさは4種類の中で一番感じられ、全体のバランスがとても良いです。
【ペクチン】アガーに近いなめらかさと、アガーよりも強い弾力が楽しめて、美味しいです。砂糖水ゼリー、コンソメゼリーは残念すぎる結果でしたが、牛乳ゼリーはペクチン(LMタイプ)もありです!(ちなみに、LMペクチンと牛乳の相性の良さを応用した商品が「フルーチェ」です)
以上の結果から、フルーツ入り牛乳ゼリーに適しているのは、寒天とアガーだと私は感じました。ペクチン(LMタイプ)も美味しいのですが、ゼリーのためだけにわざわざ調達する必要性は低い気がしました。
ペクチンの活用方法
今回あまり利点が感じられなかったペクチンですが、「フルーツジャム」や「ナパージュ」と呼ばれるフルーツなどの艶出しで、その実力を発揮してくれます。果物にはもともとペクチンが含まれていますが、イチゴやブルーベリーなどペクチン含有量が少ない果物は、LMペクチン(またはHMペクチン)で補ってあげると、ジャムらしいトロミが強くなり美しい仕上がりになります。
ゼリー本体は「ゼラチン」「寒天」「アガー」いずれかで作り、トッピングのフルーツの艶出しやジャムにペクチンを活用すると、相乗効果が期待できそうです。
ペクチンで作ったイチゴジャムを牛乳に溶かし、アガーで固めてイチゴミルクゼリーを作りました。仕上げにイチゴジャムをトッピング。アガー×ペクチンのコンビネーションゼリーです。
まとめ
今回の実験結果をおさらいしましょう。
◎透明感のあるゼリーを作りたいときは、アガーかゼラチン
◎夏の持ち寄りデザートなど、持ち歩く場合はアガーか寒天
◎フルーツ入りゼリーで「萌え断」を狙うなら、寒天
◎ペクチンはトッピングやジャムで活用すると、ゼリーの彩り効果が上がる
私のおすすめは、コンソメゼリーなどの料理系ゼリーは「ゼラチン」「アガー」、フルーツを使った甘いゼリーは「寒天」「アガー」です。
似て非なる「ゼラチン」「寒天」「アガー」「ペクチン」。固まる温度や注意点、得意・不得意な食材などの違いを上手に使い分けて、ひんやりデザート作りに役立てていただけたら嬉しいです。
※参考文献:松本美鈴・平尾和子編著『新調理学プラス』光生館,2020、下村道子・和田淑子編著『新調理学』光生館,2018
文◆ 野村ゆき(栄養士・編集ライター)
編集ライター歴25年以上。食と栄養への興味が高じて、栄養士免許と専門フードスペシャリスト(食品流通・サービス)資格を取得。食品・栄養・食文化・食問題にかんする情報を中心に分かりやすくお届けします。今回の記事のために3日連続でゼリーを作って食べ比べをしたところ、寒天やアガーの食物繊維効果でお通じ絶好調でした (苦笑)。