【3万円以下の炊飯器】これは破格モデルといえそう!タイガーのJPWシリーズ2機種をレビュー

調理家電

タイガー魔法瓶は、 3万円以下の価格帯の販売強化戦略として、 手ごろな値段ながらも使いやすさ他に徹底的にこだわったハイバリューモデル「JPW型」を新投入しました。今回は、3万円前後の炊飯器2機種について「味」に主眼を置いてレポートします。

3万円未満の炊飯器のシェア

高級炊飯器より手頃なモデルが人気

昔、「価格破壊」という言葉が流行りました。日本でも、ディスカウントショップの躍進、安い輸入品の増大などによって、それまでのメーカー主導型の価格体系が崩れ、消費財の価格がものすごく下落した時期があります。

一番、顕著だったのは、90年代後半。グローバル化が叫ばれた時代です。この時は、品質は後回しで、値下げを断行したものですから、もうグチャグチャ。また、この時代は、すごい時代で、PCの性能が伸び、デジタル化の基盤ができ、それまでアナログ一辺倒の家電が、デジタル化への歩みを始めた時でもあります。価値観が変わった時代です。それに加えて価格破壊。

日本のメーカーは活路を海外生産に見出すべく、海外進出が当たり前となった時でもあります。価格破壊、この少し前の「バブル崩壊」により一部のモノ(PC、ゲーム関係)しか売れなくなり、流通がこちらに舵をきったわけですが、以降、日本のものづくりは低調化します。

当然、日本メーカーは高級品で儲ける方向へシフトします。白物家電では「炊飯器」が典型例。この時期、「高級」炊飯器というカテゴリーが立ち上がったわけです。それから20余年。紆余曲折はありましたがすごいレベルのモノになりました。同時に、メジャーな技術もほぼ出尽くした感があります。

そんな炊飯器市場ですが、2020年度の日本電機工業会データによると、 IHジャー炊飯器における3万円未満のジャー炊飯器は約35.4%を占め、年間約150万台を超えるボリュームゾーンです。コロナ禍、先行きが不透明な中、大切な炊飯器といえども、ポンと10万円出すには抵抗があります。今後さらにこの価格帯の製品が増えるのではという見方もできます。

そんななか、タイガー魔法瓶は、 3万円以下の価格帯の販売強化戦略として、 手ごろな値段ながらも使いやすさ他に徹底的にこだわったハイバリューモデル「JPW型」を新投入しました。今回は、3万円前後の炊飯器を「味」に主眼を置いてレポートします。

炊飯器のラインナップの考え方

炊飯器ラインナップは、「火力」「圧力」「内釜」により決められています。

火力は、「ヒーター」(マイコン制御されるため、マイコンと呼ばれることもある)、「IH」。
圧力は、「なし」「あり」。
内釜は、「素材」「層数」「製造難易度」
で、分けられます。

火力と内釜は「炊飯」に、圧力は「吸水」「炊飯」に大きな影響を与えます。

このため、ラインナップは「マイコン」「IH」「圧力IH」と分類されています。右に行くほどお米を美味しく炊くことができます。技術構成は、それぞれ「ヒーター」のみ、「IHのみ」「IH+圧力」です。内釜はピンキリですから。それぞれの価格に合った内釜を使います。内釜性能で差が出るのが「蓄熱力」。全メーカーが目指す「かまど炊き」は、蓄熱性の良い「お釜」と熱の塊「火」の組み合わせですから、ちょっとやそっとで電気が敵うわけがありません。それに肉薄するために、お米に直接触れ温度コントロールを行う内釜に、開発リソースが注がれています。

では、それぞれどれ位の価格かというと、ざっとした区分けですが「マイコン」は1万円以下、「IH」は3万円以下、「圧力IH」はそれ以上で、という構図になります。

今回の縛りは3万円以下ですから、使える技術は、「IH」と「内釜」。価格の縛りを設けたのは、内釜の仕様を再現なく上げる開発者が出て来ないようにということと、そしてそれ以上高いとやはり売れないからです。

商品は「デザイン」「機能」「価格」の3要素のバランスです。高級品は「美味しい」という「機能」が「価格」を抑え込んでいますが、低価格指向のユーザーは、「価格」が「機能」を抑え込むという感じです。このため価格を上げて、機能をとっても評価されないのです。

タイガーが用意した2つの「ハイバリューモデル」炊飯器

2021年秋に、タイガーはJPWに2タイプの炊飯器をリリースしました。華麗にピカピカ光るA型と、黒くカッコいいB型です。価格コムの店頭販売データをみると、A型は、30,000円で導入、今は25,000〜26,000円で、B型は25,000円で導入、今は20,000円で売られています。差は5,000円ですが、20%の差です。

A型モデル:IHジャー炊飯器〈炊きたて〉JPW-A100/A180

IHジャー炊飯器〈炊きたて〉JPW-A100/A180

www.tiger.jp

B型モデル:IHジャー炊飯器〈炊きたて〉JPW-B100/B180

IHジャー炊飯器〈炊きたて〉JPW-B100/B180

この2つどんな味なのでしょうか。食べ比べてみました。

今回、使用したお米は、千葉県産の「こしひかり」です。

まず、予め言っておきますが、「圧力あり」の高級炊飯器とは「圧力なし」炊飯器とは一線を画します。「圧力なし」は、昔ながらの炊飯器の延長線上であることが感じられます。「圧力あり」のお米の芯まで十二分に水分のある感じの芳醇さには達していません。が、しかし、かなりのモノです。特にA型は高級炊飯の世界を考えないと、かなりのものと言えます。というより、私のファーストインプレッションは、「これ25,000円でいいの? 安すぎやしないか?」でした。じっくり食べると、高級炊飯器の、お米の芯辺りの水分の芳醇さでは敵いませんが、逆に粒状感がしっかりしていて美味しいです。日本人の下戸は、酒の代わりに白米を合わせ、おかずをより美味しく食べるのですが、まさにそんな時にピッタリという炊き上がりです。

一方、Bタイプは、どうかというと、Aタイプには届きません。普通に美味しいのですが、Aタイプとは明らかに違います。お米を炊くという行為は、お米の芯まで十分入れる行為と言い換えることができます。そうでないと美味しくない。高級炊飯器が十二分、Aタイプが十分とすると、Bタイプはそれにちょっとかける感じです。あと甘みも少々という感じですが、価格20,000円と聞くと、頭が下がりますね。それ以上の価値は十分ある炊き上がりです。

タイガーは「ハイバリューモデル」と言っていますが、まさにその通り。特にAモデルは、今までの枠からはみ出た破格モデルと言ってもいいと思います。

A型モデルとB型モデルの違い

では、この「5,000円差」で何をしたのでしょうか? それは内釜の厚みとコーティング差です。A:2mm厚、B:1.5mm厚。加えて、Aタイプは、遠赤3層構造の内釜に、お得意の土鍋コーティングが施されています。全部、蓄熱性強化。それほど、内釜で差が出てくるのです。「鉄」「炭」「土鍋」など、各メーカー色々な主張をしていますが、その差で炊飯に差が出てくるのですから、主張したくもなりますよね。

ちなみに、土鍋コーティングをしたAタイプの内釜の保証は3年。Bタイプは1年。今では少なくなりましたが、ちょっと前まで、内釜は人が思い思いの方法でゴシゴシ洗いますので、「内釜のコーティング剥がれ」は故障件数でトップでした。これを考えると、Aタイプがいかに「お買い得」かが察せられます。

このコーティング技術は、高級炊飯器開発で作り上げた技術の応用ですから、技術蓄積がいきたとも言えます。何をするにせよ、技術の蓄積は重要です。

使い心地は?

使い心地といいましても、炊飯器で一番手間なのは、日常の洗いです。JPWシリーズは、基本2つ、内釜と内ブタを洗えば用が足ります。楽です。ただパッキンの隙間などに入っている水はちょっとキレイにし難いので、布巾で拭いてから乾かした方がベターです。

また、内ブタを含むパッキング類は一度外すと取り付けることができません。まぁ外せない雰囲気がプンプンしていますが、中には力で外す人もいるかも知れません。実はパーツを一体化させるのは、安価コストで作る時に、しばしばみられる手法です。

ただパッキングは、へたって来ます。ここはなんとかして欲しいところです。

残念な点も…

しかし、ちょっとチープなところもあります。高級炊飯器と比べると、本体が熱を帯びるのです。断熱構造としては安全ギリギリなのではないかと思います。特にフタの開閉ボタンは熱くなります。一番熱いのは、炊飯直後。開閉ボタンも熱いのですが、それに加え、顔の位置によっては、フタをあげた時、湯気の直撃を喰らいます。

湯気の方は回避できますが、開閉ボタンの回避は不可。ここはメーカーとしてなんとかして欲しいです。

まとめ

ハイバリューモデルに偽りなし

ちょっといただけないところはありますが、JPX型はAモデル、Bモデルともに間違いなくハイバリューモデルといえます。買ってうれしい。ユーザーメリットてんこ盛り。これこそメーカーによる「価格破壊」というか、「新しい価値への再生」と言えます。今、タイガー魔法瓶は、このような商品を充実させています。JPX型も、その雰囲気のモデルです。この秋発売の「安くても侮れないモデル」の一つです。

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◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。

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