「小型家電をきちんと処分できていますか?」と問われて、何人の人が「できています」と答えられるでしょうか?結構少ないのではと思います。ブラウンのシェーバーを扱うP&Gでは、シェーバーのリサイクル事業を始めました。シェーバーのリサイクルと聞いてもピンとこない人も多いでしょう。今回は、小型家電の廃棄・リサイクルに関するレポートです。
家電リサイクル法と小型家電リサイクル法
小型家電は自治体主体で回収
「家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)」は、皆さんも良くご存知の法律ですね。法文を読んだことがない人でも、大きな家電を買うと店の方で色々説明してくれます。この法律のポイントは、「エアコン」「テレビ」「冷蔵庫」「洗濯機」という大型家電にしか、適用されないと言うことです。
それ以外の家電のリサイクルは3つに分けられます。
1つはパソコン。こちらは「資源有効利用促進法」により、メーカーによる回収とリサイクルが義務づけられています。このため、メーカーに問い合わせます。
2つ目は、大きめの家電。こちらは粗大ゴミです。私が住んでいる江東区では、一辺の長さが、おおむね30センチ以上となっています。
そして3つ目が小型家電。こちらは、余り知られていませんが、「小型家電リサイクル法」に則った対応が義務付けられています。こちらの法律は平成25年(2012年)4月に施行ですから、まだ馴染んでいないのかも知れません。実際はこれに沿った形で、各自治体が運営方法を決め、回収されますので、それを知っていれば、法律を詳しく知る必要はありません。
私が住んでいる東京都江東区では、15×25センチメートル以下の小型家電(電子機器)は回収ボックスへの出すように指定されています。
回収対象の小型家電の例には、以下のようなものがあげられています。
「携帯電話・デジタルカメラ・ビデオカメラ・ポータブル音楽プレーヤー・小型ゲーム機・電子辞書・電卓・カーナビ・ポータブルDVDプレーヤー・携帯用ラジオ・携帯用テレビ・付属品類(コード類を含む)・ハードディスクドライブ・リモコン・電子基板など(パソコンは不可)」
※携帯電話は、アドレス帳など個人情報を完全に消去のこと
問題は回収ボックスです。区に21ヶ所。区役所、出張所、区民センター、文化センター、図書館などに設置されています。江東区の面積は、42,99km2ですから2km2に一つ。正直言うと、結構遠い。行くだけで一仕事です。
ペットボトル回収では80〜90%と言う日本ですが、P&Gの調査によると、使わなくなった電気シェーバーを「家庭ゴミとして捨てている」と回答した男性は全体の44.7%。これは「⼩型家電リサイクルに出している」と回答した23.5%のほぼ倍。まだまだリサイクル先進国、環境先進国と言うには、ほど遠いです。
ブラウンからの提案「使用済みシェーバーのリサイクル」
自治体の回収と何が違う?
このような状況を踏まえ、シェーバーメーカーの雄、ブラウンが行動を起こしました。
名付けて、『ブラウン、使⽤済みシェーバーリサイクルプログラム』。全国の量販店にシェーバーの回収ボックスを置き、利便性を高め、リサイクルを促す考え方です。
自治体との違いは、電池とその他のパーツに分けてもらい別々に回収することです。後述しますが、これはとても重要なことで、どのメーカーの取説にも、電池の外し方は記載されています。
目標は、プラスチック10t/年。これはシェーバー:10万台に当たります。ブラウンは日本市場で約100万台/年 販売しますので、10%の回収を見込みます。そして、リサイクルですから、この再生プラスチックの使い方を決めておく必要があります。ブラウンは植木鉢を作るそうです。
できたものには、「ネコノヒゲ」を植え、子供たちや図書館他に無料配布。これでリサイクルの道筋ができたわけです。落語家なら、「ヒゲ剃りがヒゲに化けたよ!これが本当の化け猫だー」と宣うところでしょう。ギスギスした世の中ですから、これくらいの洒落っけは欲しいですよね。
この回収ボックスの設置は、2021年11月1日から。他の小型家電はさておき、シェーバーは量販店でも廃棄できる時代が来ようとしています。
回収時に電池を抜く理由
さて、ブラウンは回収時に「小型電池を外す」と前述しましたが、なぜでしょうか?
それは電池はエネルギー(電気)の入れ物、要するにガソリンタンクのようなものだからです。当然、使いやすく、安全に改良を重ねた結果、今の形があるのですが、中には高エネルギーが詰まっていることに替わりありません。
例えば、ゴミ収集車。大量のゴミを運ばなければならないので圧縮機を持っています。潰して車内に入れ込むのですね。充電池を圧縮するとどうなるか、その時の状態でも変わってきますが、中のエネルギーが一気に解放されるわけで、発火します。こうなると笑い事ではありません。
リサイクルは、ある程度パーツに分けますが、分けられないものは細かく砕き、磁石などで金属とプラスチックに分けます。しかし電池はこの工程に乗せることができません。このための措置です。
約10%キャッシュバック!太っ腹なキャンペーン付き
このリサイクルは、SDGsに沿った流れで、これができなければメーカーとしてやっていけません。しかし、確実に数量を集めないと、軌道に乗りません。100台しか集められなければ、人件費の分、大きな損がでます。まぁ元々利益を追求するモデルで組まれていないとはいえ、効果がなければ、やる価値はありません。
このため、キャッシュバックキャンペーンが組まれました。名付けで「ブラウンシェーバー&替刃リサイクルキャンペーン」です。
まず、古くなったシェーバーやブラウンの替刃を協⼒家電量販店の店頭に持っていきます。刃はともかく、シェーバーのメーカーは問わないとのことです。太っ腹ですね!
まずは、取説を見ながら、内蔵バッテリーを外します。次に提出用の写真を取り、その後回収ボックスへ。次に売り場で、ブラウンのシェーバー、もしくは替え刃を購入します。そのレシートを撮影して、WEBもしくは応募用紙で応募します。基本的にスマートフォン対応が一番楽なように設計されているので、WEB対応がお勧めです。
さて、キャッシュバック金額ですが、購入品により異なります。
・ブラウンシリーズ8/9 を購⼊:5,000円のキャッシュバック
・ブラウンシリーズ5/6/7 を購⼊ :2,000円のキャッシュバック
・ブラウン替刃(シリーズ5〜9)を購⼊:500円のキャッシュバック
現在、ブラウンのフラッグシップは、シリーズ9 PRO。量販店で、約6万円なので8.3%のキャッシュバッグ。他も基本10%前後のキャッシュバックが想定されています。リサイクルの認知度を上げ有効活用できるようにし、シェアも増やしてしまおうという、一石二鳥を狙ったキャンペーンですが、ユーザーにもおいしいキャンペーンと言えます。
最後に
2022年には「プラスチック資源循環法」が施行されます。メディアの報道は、使い捨てコップ、ストロー、カトラリーで盛り上がると思います。しかし、これらは完全プラ製で量も出ます。実は割と回収しやすいのです。
回収しにくいのは、一部だけ樹脂が使われているもの。家電などは典型例です。これに対し今回のブラウンは対応は、それに対する一つの回答です。しかし、これらが有効に働くには、認知度と利便性がミソ。どこまでうまくいくか、しっかり見守っていきたいと思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。