レコード盤は、基本的に記録時間によって、30センチのLPと17センチのシングル盤に分類できる。再生時にはフォノイコライザーが必須だが、最近は内蔵プレーヤーも増えている。カートリッジとは、簡単にいえばレコード針のことだ。いい音で末永く楽しむため、メンテナンス方法や保管方法も知っておきたい。
レコードから音が出る仕組みとは?レコード盤の種類も覚えておこう!
V字形の音溝に刻まれた音楽情報を針がトレース
レコード盤には渦巻状に細い音溝が刻まれている。そこに音楽情報をアナログ信号の大小としてそのまま記録。その一本道をトレースして、機械振動(音楽信号)として拾い上げるのがレコード再生の仕組みだ。
●レコードの仕組み
断面は上図のようにVの字になっており、V溝とも呼ぶ。1本の針で左右のステレオ信号が拾えるのは、互いに45度の角度で振動がセパレート(独立)しているからだ。
レコードは両面記録なので、A面の再生が終ったら、ひっくり返してB面にかけ替える。CDとは違うこの一手間がアナログ再生の作法として好まれ、若者には新鮮に見えるのだろう。
再生にはフォノイコが必要で、内蔵プレーヤーも増加
レコード盤のサイズは、基本的に記録時間によって、30センチのLPと17センチのシングル盤に分類できる。
LPは「ロングプレイ」のことで、交響曲がまるまる入る長時間ディスクだ。ジャズや歌謡曲もあり、多数曲の収録もできるため、アルバムとも呼ぶ。
17センチはEP盤(エクステンデッドプレイ)やドーナツ盤とも呼ばれ、表と裏に一曲ずつの2曲収録だ。そういえば、昔は、硬貨を投入するとレコードで一曲再生される「ジュークボックス」という機器もあったものだ。
●レコードの種類
さて、LPとEPとでは、回転数も違う。LPは、1分間に33と1/3回転(回転の単位はrpm)が標準。EPはサイズが小さいぶん、45回転に上げて音の劣化を防いでいるのだ。プレーヤーにかける際は、手動で回転数を切り替える必要がある。
補足しておくと、以前は中間サイズの25センチLPもあった。回転数については、現在、LPでありながら45回転盤や、なんと78回転盤まで登場している。後者は、78回転に対応したプレーヤーでのみ再生できる特別仕様だ。
また、近年では、高音質な180グラム重量級レコードが人気で、マニア向けの復刻リマスター盤などに多い。
もう一つ覚えておきたいのが、レコードの録音特性はフラットではないこと。
低音を下げ、高音を上げた「RIAA」(アメリカレコード協会が定めた規格)という補正カーブでカッティングされているため、再生時に元に戻すフォノイコライザーが必須。通常はアンプのフォノ入力端子につなぐが、最近は、フォノイコ内蔵プレーヤーも増えている。
プレーヤーは大きく分けて2タイプある。操作もセッティングも難しくない!
レコードプレーヤーはどれも見た目が似ているが、駆動方式によって主に2タイプがある。回転を行う心臓部はいずれもモーターだが、その動きをターンテーブルに伝える方式が違うのだ。
一つが「ベルトドライブ」で、構造がシンプルなため古くから世界中で広く使われてきた。モーターの回転力を、ゴムや樹脂製のベルトを介してターンテーブルに伝える仕組みである。
モーターから離すことで振動を受けにくくなり、ベルト自体が振動を吸収し、回転も滑らかになるというメリットがある。
二つめは「ダイレクトドライブ」だ。こちらは日本のお家芸で、ターンテーブルの直下にモーターを置く方式。一部の国内メーカーが採用している。
モーターの軸がそのままターンテーブルのスピンドル(回転軸)になるため、モーターの回転力が無駄なく伝達され、起動が最もスピーディかつトルクが強いのが特徴だ。
また、かつて、英・ガラードなどが採用した「リムドライブ」は、今では見かけなくなった。アイドラーと呼ぶゴム車を介して回転を伝達。起動が速く、すぐ止まるのが特徴だ。
プレーヤーのセッティングは、ラックの上に水平に置いて、アンプのフォノ入力とケーブルで接続(アース線もつなぐこと)。操作は、ターンテーブルにレコードを乗せ、回転数を合わせて針を落とすだけ。
細かい設定も必要だが、説明書どおりに行えば難しくない。
ベルトドライブとは? | ダイレクトドライブとは? |
モーターの回転をゴムベルトを介してターンブルに伝える方式だ。立ち上がりがゆっくりだが、振動を吸収して回転が滑らか。高級機では、糸ドライブもある。 | モーター軸にターンテーブルを直結した駆動方式で、「DD方式」とも呼ぶ。モーターは低回転数で回り、強い駆動とクオーツ制御による回転数の正確さが特徴だ。 |
カートリッジってどういうもの?選び方・使い方のポイントはここ!
カートリッジは、簡単にいえばレコード針のこと。実際には小さな発電機で、盤に刻まれた元のステレオ信号を電圧変化として取り出す仕組みだ。
発電するためには、針の振動によって磁石、またはコイルが動く(磁界を切る)必要がある。磁石が動けば「ムービンマグネット=MM型」で、コイルが動けば「ムービングコイル=MC型」と覚えよう。
レコード再生は、まず、このカートリッジ選びからスタートだ。カートリッジこそが音の源流、アナログ再生の肝になるからだ。それぞれの特徴をズバリ解説しよう。
MM型は、3~5ミリボルト程度の高出力で、針交換も自分で可能。シンプルで使いやすいので入門者向けだ。プレーヤーに付属しているカートリッジは、ほぼMM型と思って間違いない。明るくポップで、キレのあるサウンド。DJに使われるのも、タフなMM型である。
一方、MC型は高級機ユーザーに人気で、一品一品手作りだ。振動部のコイルを小さく軽量にでき、固定された磁気回路が強力なために、より本格的なハイファイサウンドが楽しめるのだ。ワイドレンジで解像度が高く、演奏の空気やダイナミズムまでもリアルに再現する。
MC型は、出力がMM型に比べてほぼ一桁低いため、昇圧用のトランスが別途必要。針交換はカートリッジごと店に預け、新品交換となるため、それなりに費用がかかる。ただし、得られる感動はそれ以上だ。
MM型(VM型)とは? | MC型とは? |
針の振動をマグネットの動きに変えて発電する方式だ。出力電圧が大きく、針交換も簡単で、入門者に最適。オーディオテクニカが独自の特許を持つVM型も同じタイプである。 | 針の振動をコイルの動きに変えて発電する方式。ワイドレンジで解像度も高く高音質だが、低出力のためMC(昇圧)トランスが必要になる。オーディオマニア向けだ。 |
レコードプレーヤーの基本を覚えよう!
❶ターンテーブル
シートを敷き、レコードを乗せて回転させる。駆動方式には、ベルトドライブとダイレクトドライブとがある(写真の製品はベルトドライブ方式)。
❷ヘッドシェル/カートリッジ
音溝の振動を拾うのがカートリッジで、ヘッドシェルに取り付けて使用する。
❸START/STOP
ターンテーブルの回転をスタートさせたり、停止させたりするボタン。
❹回転数切り替え
レコードの回転数に合わせて。「33 1/3rpm」か「45rpm」かを選ぶ。「78rpm」が選べる機種もある。
❺トーンアーム
カートリッジを支え、レコードをトレースするための機構を持ったアーム。
❻バランスウエイト
トーンアームのバランスを取ったり、針圧を調整したりするときに使う重り。補助のためのサブウエイトもある。
❼ダストカバー
その名のとおり、ターンテーブルやアームをホコリから守るためのアクリル製カバー。レコード再生中は、ダストカバーを外すといい。
知っておきたい基礎用語
●回転数
1分間に何回転するか、盤径によって回転数が決まっている。30センチLPは33 1/3回転、17センチEPは45回転だが、LPでも音質を重視した45回転盤や78回転盤がある。
●フォノイコライザー
RIAAカーブに対応した補正特性を持つ回路のこと。アンプやプレーヤーに内蔵され、低域をプラス20デシベル、高域をマイナス20デシベルに補正してフラット化する。
●フォノ端子
レコードプレーヤー専用の入力端子のこと。CDなどのライン入力よりもはるかに微弱な信号(1/1000程度)を扱うため、つなぎ間違いはNGだ。アース用端子も付いている。
●MCトランス
MCカートリッジはMM型に比べて出力が低く、1/10程度だ。それを10倍に高めてアンプに入力するための専用トランスのこと。昇圧トランスとも呼ぶ。
レコードはどうやって保管するのがいいの?
レコードの素材は、熱に弱い塩化ビニールだ。火気の近くはもちろん、直射日光やカーテン越しの日光にも注意したい。レコード盤が反ったり、ジャケットが変色してしまってからでは手遅れになる。
また、湿気やカビ、そしてホコリにも注意したい。湿っぽかったり、ホコリっぽい場所はNG。具体的には、台所や風呂場の近くは避けよう。
レコードを保管する際は、第一に日の当たらない、風通しのいい場所を選ぶこと。もちろんディスクは、中袋とジャケットに収めておくのが常識。
できればレコード収納棚を用意して、きちんと立てて収納するのが理想だ。重ね置きをしている人もいるようだが、これは溝を傷めるのでご法度。斜め置きも反りの原因となる。正しく置いて、大切なレコードを守りたい。
知っておきたいレコードのメンテナンス方法
レコード愛好家なら、盤面を指で触らない、必要なメンテナンスを怠らない、これは常識だ。
レコードのちょっとしたホコリなら、レコードスプレーや乾式のクリーナーを使って軽く拭き取るだけでOK。
だが、保存状態によっては、油分が溝に付着したりカビがはえていたりということもある。この場合は、パッド部分に専用の液を滴下して、丁寧にクリーニングできる湿式クリーナーがおすすめ。
大量にレコードを所持しているコレクターなら、洗浄液とブラシを備えたクリーニングマシンを使いたい。簡単な手動式と、高性能な全自動マシンがあるので、予算によって選ぼう。
このほか、日常のメンテとしては、除電ブラシによる静電気対策も有効だ。愛用のレコードを大切に、いい音で末永く楽しんでほしい。
■解説/林正儀 (AV評論家)