「魚料理に白ワイン、肉料理には赤ワイン」くらいの知識はあるが、あらためて「酒とつまみのペアリング」と言われると甚だ自信がない。「ぬるめの燗に炙った烏賊」もペアリングなのか?そんなペアリング初心者の私にうってつけの本『いつものお酒を100倍美味しくする 最強おつまみ事典』を発見。本書をテキストに、さっそくペアリングにチャレンジしてみた。
まずは味玉
味玉は4種類漬けてみた
本書には、基本の味玉を含め7種類紹介されていた。その中から私は4種類をチョイス。琥珀系ビールに合う「八角風味」と日本酒に合う「カレー風味」、焼酎に合う「粕漬け」、レモンサワーに合う「ナンプラー風味」。
調味料の配合はどれもシンプルで作りやすい。この時点でいい香りがして、心が躍る。特に、「粕漬け」の漬け床を混ぜているときには、「これ、肉とか漬けても美味しいのでは。おにぎりに塗って焼いても絶対美味いやつだ……」と妄想が広がった。
琥珀系ビールに合う「八角風味」
味玉は一晩漬ければ食べられる。最初にビールで八角風味の味玉を食べてみよう。ビールは、ホップの香りと深いコクが特徴のよなよなエール。さて、うまくペアリングできただろうか?
味玉を口に入れると、フワッと八角の香りが広がる。漬け汁にはしょうゆと砂糖、鶏がらスープの素、鷹の爪が入っているのだが、この配合が絶妙。甘辛さがちょうどいい。これ、ビールです。ビールください。という味。うむ。ペアリング成功。
レモンサワーに合う「ナンプラー風味」
漬け汁は、ナンプラーとオイスターソースと砂糖。我が家はあまりエスニック料理を食べないので、ナンプラーはタイカレーを作るときにしか使わない。しかも漬け汁として使うのは初めて。魚を発酵させた調味料なので当たり前だが、魚っぽいにおいがする。オイスターソースも牡蠣が原料なので、なんとなく磯の香り。ゆで卵を漬けてどうなるのか、想像がつかない。
味玉には、思ったより色がついていない。味はどうかな?あら何このちょうどいい魚風味。魚臭さではなく、「出汁」が染みてる感じ。そしてちょっとエスニック。そこにレモンサワーを流し込むと、「あ、うまーい。合うー」と思わず声が。
日本酒に合う「カレー風味」
コンソメスープに砂糖としょうゆ、カレー粉、塩、ニンニクを入れた漬け汁に、ゆで卵を漬ける。日本酒に合う?ほんと?というのが正直な気持ち。だってカレーだよ?美味しいと思うけど、合わせるのは日本酒かなあ。と、半信半疑で試してみた。
卵はほんのり黄色に染まっている。が、カレーの香りは強すぎない。これ、やっぱり漬け汁の配合がちょうどいい。カレーというより、ほんのりスパイスが香る感じ。日本酒、いけます。『いつものお酒を100倍美味しくする 最強おつまみ事典』では、日本酒の中でも「にごり」を推奨していたが、このときウチにはにごりがなかったのだ。本当は、ちょっと微発砲したにごりと合わせたい。あああ!にごり!飲みたい!
焼酎に合う「粕漬け」
粕漬けの味玉は、漬け込むときから「絶対に泡盛と食べよう」と思っていた。私は、焼酎なら芋、もしくは泡盛が好き。そう。匂いの強い焼酎が好きなのだ。粕漬けの味玉なら、泡盛の個性にも負けないはず。さて、どうだろうか。
泡盛の水割りと粕漬け味玉で、夜な夜な「ひとりお疲れ様会」を行った。これは良い。粕漬味玉、黄身までトロッと濃厚になっている気がする。半玉で泡盛の水割りを1杯。もう半玉で泡盛をお湯割りにして飲んだ。しみじみ美味い。大人になってよかった。
続いてポテトサラダ
具材次第でアレンジ多彩な便利サラダ
ポテトサラダというと、玉ねぎとキュウリ、ハムが入ったマヨネーズ味が定番。我が家でもよく作る。が、酒のつまみとして用意したことはない。たいてい肉料理の付け合わせか、サンドイッチの具だ。今回は、通常のポテサラを作る際、多めにジャガイモを蒸して、本に載っている「酒のつまみポテサラ」2品に挑戦。それぞれお酒と合わせてみた。
グレープフルーツサワーに合う「明太子ポテサラ」
蒸かしたジャガイモに明太子とマヨネーズを和え、千切りにした青じそをのせて完成。簡単です。
味も想像どおり、とっても美味しい。ギリシャ料理とかトルコ料理に出てくるタラモサラダっぽいけど、明太子がピリリと効いてお酒が進む味。ここにグレープフルーツサワーを投入!あー、これは合う。グレープフルーツの甘さとほろ苦さが、明太子の辛さにぴったり。実を言うと我が家には「明太子は生臭くて嫌い」という者がいるのだが、「グレープフルーツサワーと一緒だと、美味しいねえ」と。絶妙な組み合わせに脱帽。
日本酒に合う「じゃこ海苔ポテサラ」
本のレシピでは長芋を使うのだが、ジャガイモをたくさん蒸かしたのでジャガイモで作ってみた。ジャガイモにちりめんじゃこを加え、味付けはしょうゆとマヨネーズ。ちぎった海苔と小口切りの青ネギを混ぜたら出来上がり。
ポテトサラダにじゃこや海苔は初体験だったが、これは美味しい!じゃこも海苔も青ネギもいい仕事してる。これが日本酒に合わないわけがない。マヨネーズ味で日本酒?と思ったのだが、マヨが全体をまとめ、まったりとした口当たりにしているのだ。ああ、お酒が進む。これ、お弁当に入ってても嬉しいな。
砂肝、白子にもチャレンジ
レモンサワーに合う「砂肝のねぎ塩レモン炒め」
砂肝は大好物なのだが、たいていアヒージョか、薄切りを湯がいてポン酢だ。ねぎ塩レモンで炒めるのは初めて。下処理をして下味をつけた砂肝をゴマ油で炒め、塩麹とみじん切りのねぎ、レモン汁でさっと煮絡めれば完成。
これはね、塩麹の偉大さがよくわかる料理です。砂肝が歯ごたえを残しつつ柔らか。ねぎ塩レモンが本当に美味しくて、このタレだけで酒も飲めるし、ご飯もイケる。確かに、レモンサワーを呼ぶ味です。
からあげは下味を変えて2種
からあげも酒のつまみの定番。今回は、ウイスキーやハイボールに合う「黒胡椒にんにく味」と、米・麦焼酎に合う「柚子胡椒味」の2種を作った。鶏肉を2つに分けてビニール袋に入れ、それぞれ下味をつけるだけだから簡単だ。
黒胡椒のピリッとした辛さとにんにくの香りが、ハイボールをどんどん進ませる。柚子胡椒味の方は、鼻に抜ける香りがいい。これは焼酎をロックで飲みながらつまみたい。
辛口の日本酒に合う「白子のムニエル」
どこにも行かない年末年始、ちょっと外食気分を味わおうと、「白子のムニエル白味噌クリームソース」に挑戦。白子は居酒屋の「白子ポン酢」しか知らなかったし、今まで買おうと思ったことがなかったので気づかなかったが、普通に売ってるのね、スーパーに。そして、鱈の白子ならさほど高価でもない。ということで、作ってみました。
これはね、ああもう、美味しいとしか言えない。白子ってもともとクリーミーじゃないですか。そこに白味噌と生クリームを合わせたソースが絡まって、もう……(悶絶)。このソース、柚子果汁を少し加えてあるのが憎い。濃厚さの中に爽やかな香りが立って、このソースだけで酒が飲める(食欲旺盛な若者は、このソースをパンでぬぐって食べていました)。ムニエルというと洋酒を合わせたくなるけれど、これは辛口の日本酒ですね。少しにごった微発砲の辛口と合わせたい。合わせました!最高!
まとめ
「ペアリング」というと身構えてしまうが、「酒も料理も美味しくなる組み合わせ」ということなのだ。酒単品、料理単品でも美味しいが、うまく組み合わせると双方がもっと美味しくなる。ちょっとしたコツを知っているだけで、家呑みも外呑みもより充実するし、「ワインをもらったから、アレを作って合わせよう!」など、料理づくりのモチベーションにもつながる。
今回参考にした『いつものお酒を100倍おいしくする 最強おつまみ事典』の料理は、酒のつまみとしてだけでなく、ご飯のおかずとしても最高だ。実際、数種類作った味玉とポテサラとからあげは、家族のお弁当に入れても大好評であった。飲む人も飲まない人も楽しめる「最強おつまみ」、次は何を作ろうかな。