〈FFヒーターとは?〉キャンピングカーの必需品 壊れて初めて分かったその凄さ メンテンナンスが大切!

レビュー

筆者の住む北海道は、冬場はマイナス20度を下回ることも珍しくない、超寒冷地域。しかし、「FFヒーター」を装備したキャンピングカーなら、ほとんど寒さを感じることなく、冬のキャンプを楽しんでいます。キャンピングカーの装備の中でも1位、2位を争う人気の「FFヒーター」。この「FFヒーター」が、冬場に突然動かなくなるというアクシデントを経験した筆者が、プロの助言を受けて「FFヒーター」のトラブル対策とメンテナンスについて解説します。

お話を聞いた人

橋爪顕次さん

今回 、FFファンヒーターについての質問に答えていただいた橋爪顕次(はしづめ・けんじ)氏は、北海道最大級のキャンピングカー専門店「キャンピングレンタサービス工業株式会社」の代表取締役。30年以上にわたって、数多くのキャンピングカーの販売や修理などを手がけています。お店のイメージキャラクターは、ヤドカリ。北海道でヤドカリのステッカーを貼ったキャンピングカーをみかけたら、それは「キャンピングレンタサービス工業株式会社」で販売されたもの。かなり頻繁にみかけるのでびっくりします。

「FFヒーター」ってなに?

日本語にするなら「密閉式強制吸排気型暖房」

キャンピングカーのオプションや車中泊を楽しむ人たちのなかで、よく話題になる「FFヒーター」。「FF」は「Forced draught balanced Flue type」の略で、無理矢理、日本語にするなら「密閉式強制吸排気型暖房」です。

普通に室内などで燃料を燃焼させると、熱も発生しますが、有毒な一酸化炭素などを含む燃焼ガスが発生します。これに対して「密閉式強制吸排気型暖房」すなわちFFヒーターは、燃焼用の空気を外部から強制的に取り入れ、排気は給排気筒を室外に出す方式。そのため暖房する室内の空気が汚れず、有害なガスなども発生しないので、換気の必要がない暖房方式です。

キャンピングカーに設置された「FFヒーター」。後部座席の下などに設置されていることが多いです。本体は思う以上にコンパクト。

キャンピングカーの人気ナンバーワン装備が「FF ヒーター」

換気の必要ない「FFヒーター」(密閉式強制吸排気型暖房)は、住宅などにも使用されますが、その場合には「FFストーブ」と呼ばれることが多いようです。換気の必要がないので、狭い自動車の車内、キャンピングカーの室内などのオプション暖房として採用されることが多く、こちらが一般的に「FFヒーター」と呼ばれています。

この車載用の暖房としての「FFヒーター」は、自動車のエンジンをスタートさせるためのバッテリーとは異なるサブバッテリーで駆動し、エンジンを停止した状態でも、換気の必要もなく車内を暖めることができるのです。そのため、キャンピングカーの人気ナンバーワンオプション装備ともいわれています。

多くの場合、自動車の燃料タンクから燃料が供給されるため、別途燃料を確保しなくても安心して使えるのも人気の理由です。

「FFヒーター」の温風の吹き出し口。 暖かな空気が噴き出してきて、キャンピングカーの室内全体を暖めてくれます。

「FFヒーター」が突然止まったら?

解説をしていただいた橋爪顕次さん(以下、橋爪さん)がいうには「FFヒーター」は、さほど故障しやすいものではないそうです。しかし、冬場のキャンプ先で突然「FFヒーター」が点火しない、もしくは止まってしまうと非常に焦ります。そんなとき、まずはチェックすべきは、3つのポイントを橋爪さんに教わりました。

Check1:サブバッテリーの電力は十分?

「本当にそんな人がいるの?」と驚く方もいるでしょうが「FFヒーターが動かない!」と「キャンピングレンタサービス工業株式会社」に助けを求めてくる人の、もっとも多い原因が、サブバッテリーの電力不足だといいます。

そのため「FFヒーターが動かない!」というときは、まずは慌てず、騒がずサブバッテリーの電力を確認しましょう。ほとんどのキャンピングカーなどでは、サブバッテリーの電力量が確認できるインジケーターが装備されているはずです。

サブバッテリーの電力や電圧が十分ではない場合は、外部電源をつないだり、走行充電をするなりして、サブバッテリーを充電したあと、再度「FFヒーター」を付けてみましょう。

サブバッテリーの電力不足が「FFヒーター」が動かない原因の場合は、これだけで問題は解決するはずです。

サブバッテリーの電力残量などをチェックするインジケーター。ほとんどのキャンピングカーにはどこかに装備されているはずです。

Check2:排気管は詰まっていないか?

サブバッテリーの充電も問題なく、電力も十分なら、次に確認すべきは「排気管が詰まっていないか」だといいます。

一般的なキャンピングカー用の「FFヒーター」には車外に向けて、吸気管と排気管があります。しかし、吸気用の管は、ゴミなどを吸い込んだりしないように、外部からちょっとみた程度ではわからない位置に取り付けるので、車外からみてわかるのは排気用の管だということです。

深い雪道や雪がシャーベット状になった路面を走った後やクルマを止めた状態で大雪が降ったときなど、この排気管が雪や氷で塞がってしまうことがあります。すると「FFヒーター」は動作しなくなるのです。状況に問題があると勝手に止まる賢い暖房ともいえますが、知らないと故障だと思う方も多いでしょう。

この場合は、排気管に詰まった雪や氷を除去して「FFヒーター」を再起動すれば、問題なく使えるといいます。

筆者のキャンピングカーの「FFヒーター」の排気管。吹雪や大雪、シャーベット状の路面を走ると詰まることがあるといいます。

Check3:夏用軽油を入れたままではないか?

「うち(キャンピングレンタサービス工業株式会社)にも毎年何件かヘルプの電話があるのですが、どうにもできないのが、夏用軽油の問題です」と橋爪さん。

筆者も知らなかったのですが、キャンピングカーには意外と多いディーゼルエンジンの燃料である軽油には「夏用」と「冬用」があるといいます。

北海道のような寒冷地では、寒くなってくるとガソリンスタンドで給油する軽油は「夏用」から「冬用」に切り替わり、日常的に給油しているうちに、凍らない「冬用」に入れ替わるしくみ。正確には軽油が凍るわけでなく、低温で結晶化して粘性が上がり、エンジンや「FFヒーター」などに燃料が正常に供給されなくなるそうです。ガソリンスタンドが季節に合わせて、供給する軽油の種類を変更してくれるので、ユーザーが意識しなくても、凍らない軽油に切り替わるしくみ。

問題は、例えば冬場に都内で軽油を満タンにして、大洗からフェリーに乗り、零下の苫小牧に到着、しばらく走っているうちに「FFヒーター」はもちろん、エンジンまで動かなくなるパターン。さらにキャンピングカーならではのパターンとしては、夏休みに使ったあと軽油を満タンにして、真冬、冬休みや正月休みに久しぶりにキャンピングカーを使おうとしたら、夏用軽油が凍っているという例。

これには「実は即効性のある救出方法がありません」。橋爪さんがいうには、低温で粘性の上がった夏用軽油は「FFヒーター」やエンジンの内部にまで入り込んでいるので、クルマ全体を時間をかけて適温に戻し、必要なら夏用軽油を抜いて、冬用軽油に入れ替えて、冬用軽油をクルマ全体に送り込む必要があります。そのため、即効性のある救出方法がないのが現状。寒冷地に行くときは軽油は少なめに、寒冷の現地で冬用の軽油をたっぷりと給油するプランを立てるしかないようです。

「軽油用凍結防止剤」といった製品もありますが、橋爪さんに聞いてみたところ「エンジンはともかく、「FFヒーター」に対する影響がどこまで考慮されているか不明なので……」ということでした。

スイッチをひねるだけで、タンクの燃料を使って暖房してくれる「FFヒーター」は本当に便利。しかし、燃料が軽油の場合、季節や気温への注意も必要です。

「FFヒーター」メンテナンスと故障

シーズンオフも月に1回は動作させるのがおすすめ

真冬の寒冷地で突然動かないと命にも関わる「FFヒーター」。トラブルを回避するために普段から行えるメンテナンスはないのか? 橋爪さんに伺いました。

「暖房の必要ないシーズンでも月に1度、それも難しいなら2カ月に1度くらいは「FFヒーター」を動作させてほしい」。

理由はキャンピングカーの「FFヒーター」の空気の流れは、ヒーターが燃焼していなくても起きているため。ヒーターが燃焼していなくても、吸排気の管に空気の流れがあり、雨の日に走ると湿気が、ホコリのなかを走るとチリなどが吸排気管に入り込みます。この入り込んだ汚れをクリーンにするためにも、キャンピングカーを使った後は、シーズンに関係なく「FFヒーター」を動かして、吸排気管内を清潔に保つことがおすすめだといいます。

今回、さまざまな疑問などに丁寧にお答えいただいた橋爪さんの「キャンピングレンタサービス工業株式会社」。新千歳空港や札幌からも近く便利な立地です。

「FFヒーター」故障・筆者の場合はポンプ交換で約7万円

新車から8年目を迎えた筆者のキャンピングカー、今シーズン突然「FFヒーター」が止まりました。普段から家の横に止めて仕事部屋としても使用しているので、今回は出先で急に「FFヒーター」が止まったわけではありません。しかし、それでも冬場に突然暖房が使えなくなると非常に困ります。

橋爪さんに教えてもらった「サブバッテリー」「排気管」「夏用軽油」といったポイントをチェックしても「FFヒーター」は動いてくれません。そのため「キャンピングレンタサービス工業株式会社」で点検・修理となったのですが、燃料ポンプ交換とヒーター本体を脱着してオーバーホール、点検などで7万円となりました。筆者にとってはかなり痛い出費です。それでも旅先で急に壊れることに比べたらはるかにマシ。

筆者の場合は、新車購入時から約8年が経っているので、ある意味仕方ないところもあるでしょう。定期的なキャンピングカーの点検に合わせて「FFヒーター」もチェックしてもらうことをおすすめします。

筆者の「FF ヒーター」はかなりの重症で燃料を供給するためのポンプ部分と写真の排気管なども交換しました。写真提供:キャンピングレンタサービス工業株式会社

まとめ

キャンピングカーの「FFヒーター」は本当に最高

キャンピングカーのオプション装備としても人気ナンバーワンだという「FFヒーター」。実はつけてよかったキャンピングカーのオプションとしても満足度が非常に高いといいます。実際、筆者もいちばん使っていて、いちばん満足度の高いキャンピングカーのオプションは「FFヒーター」だと思っています。

ちなみにいま持っているキャンピングカーに「FFヒーター」を後付すると約30万円、一般的なミニバンなどに後付けする場合は、クルマのメインバッテリーから電力供給はできないので、サブバッテリーを新たに搭載する必要があり、このサブバッテリーを充電するシステム(走行充電や100Vの外部充電など)を取り付けるので、トータルで50〜60万円ほどの費用がかかるそうです。筆者も一時期真剣にミニバンに「FFヒーター」の後付けを検討したことがあるのですが、この価格になってくると、最初から「FFヒーター」を搭載したキャンピングカーを検討する方が現実的だと気づきました。

冬のキャンプやアウトドア、車中泊において「FFヒーター」は本当に最高です。レンタルのキャンピングカーなどにも装備されていることが多いので、ぜひ一度体験してみてはどうでしょうか。

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齋藤千歳(フォトグラファーライター)

元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在はキャンピングカーを「方丈号」と名付け、約9㎡の仕事部屋として、車内で撮影や執筆・レビューなどを行っている。北海道の美しい風景や魅力を発信できればと活動中。

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